[過去ログ] サムスピ総合エロ萌えSS 4 (538レス)
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498: 2013/04/30(火)12:42 ID:AuydKfUu(1) AAS
保守
499(1): 2013/09/28(土)13:38 ID:qGwqPMCR(1) AAS
>>491
もう5年か…リムルルの人、どうしてるのかね…
とつぶやきつつ保守
500: 陸捨肆 2013/10/06(日)09:28 ID:xApXeJRz(1/8) AAS
そこは、暗く冷たい場所だった。
何も聞こえず、何も見えない。
五感を通して感じられるのは、ただ冷たいということだけの場所だった。
いつからここでこうしているのか。どうしてここでこうしているのか。
どうしてこんな凍えてしまいそうな場所で、じっとしているのか。
そんな疑問さえも、冷たさの中にすうっ……と動きを止めて、沈み、泡になって消えていく。
そして再び、思考も判断も必要としない世界が姿無き姿を見せる。
何十年、何百年……カムイ達の時代よりもずっと前からそこを動かない、澄み切った黒のような世界。
リムルルは、自らの心という深海の底に魂を沈め、眠っていた。
力を抜き去った身体をふわふわと水底に漂わせ、かすかな水流に身を任せていた。
省28
501: 陸捨肆 2013/10/06(日)09:28 ID:xApXeJRz(2/8) AAS
――ひとり……か。
リムルルはもう一度その言葉を胸によぎらせ、くぷくぷと泡粒に乗せて飛ばす。
泡は何の障害も受けずに、まっすぐに上っていった。そうなるのが、当たり前のように。
自分も泡みたいになったのだ、リムルルはふとそんなことを思った。
リムルルを邪魔するものは何も無いのだ。何万年も変わらない暗い景色に溶け込んで、
滑らかな砂と一緒に海底に沈んでいるだけ。これがリムルルにとっての当たり前だったのだ。
――そんなことにも気づかないで、わたし……遠回りしちゃったんだ。
ひとりきりは嫌だと、自分の姿を失わないように、水面に波を立たせ、水玉を蹴飛ばして。
滝壷の下から遥かな空を見上げては、その向こうで誰かが待っていてくれるような気がして。
そして自分が行くべき場所はこの滝を登った先なんだと、信じ込んでいたようなものだったと、
省16
502: 陸捨肆 2013/10/06(日)09:29 ID:xApXeJRz(3/8) AAS
########################################
降りしきる雪。止まらない涙。
「うぅっ、うっ……。リムルル……」
うっすらと積もった雪と、コンクリートの冷たさ。
――リムルル……何で……なんでだよぉ……?」
コウタは人気の無い裏路地に倒れたまま、ぎっと唇を噛んだ。
――お前のために、お前と一緒にこれからもずっと、過ごすために……
――今日という日を、特別なものにしようと思っていたのに……!
「どうして……こんなのアリかよ? 畜生! ちくしょおお!」
コウタの声は、静かに降り積もる雪に吸い込まれては、消えていく。
省41
503: 陸捨肆 2013/10/06(日)09:30 ID:xApXeJRz(4/8) AAS
コウタを取り巻く世界は、再び静まり返った。
雪の日に特有の、無慈悲なほどに静かな世界。
自分の呼吸さえ聞こえない、白い息と、白い雪だけが動く世界。
だが、そこに――
かたっ、かたかた。
どれくらいの時間が経っていたのだろうか。
かたかたかたっ! がたっ! がた・がたん・がたっ!
腰のあたりから変な音がして、雪まみれとなっていたコウタは、はっと我に返った。
「……? んん?」
雪を払うのも忘れ振り返ると、レラに貰ったマキリがベルトの間で音を発して震えていた。
省28
504: 陸捨肆 2013/10/06(日)09:31 ID:xApXeJRz(5/8) AAS
何かにのしかかられ、さらに熱風に煽られているはずのコウタの背中が、びしりと凍りつく。
――まさか、これは……!
最悪の予感が胸をよぎるや、頭上で渦巻いていた爆発音がひときわ大きく響き渡ると、
まるでスイッチを切ったかのように爆風が収まった。
コウタは握ったままのハハクルを抱き寄せて、再び反射的に頭を伏せた。
だが強烈な熱も、身体を引きちぎりそうな風も、不気味なほどに成りを潜めている。
『間一髪だったな……。コウタ、立て』
キーンという爆発の残響が耳にこびりつく中、明らかに外からではない声が、
再びコウタの頭の中に直接飛び込んできた。爆発の直前に聞いたのと同じ、
やけに落ち着いた、大人の男性の声だ。
省32
505: 陸捨肆 2013/10/06(日)09:33 ID:xApXeJRz(6/8) AAS
闇夜の中、目を眩ませる白い炎に縁取られた空洞が、道のど真ん中に出現していた。
まるでサーカスの火の輪のように燃え盛るそれは、車が通り抜けられるぐらいの穴を
何もなかったはずの虚空に形作っている。しかし、決定的におかしいのはその日輪の中だ。
うっすら雪をかぶった道が続くはずのそこは、深さを持つ別の空間に繋がって
いるようだった。中は暗くて見えないが、どんよりとした紫色の霧が日輪の淵から
こんこんとあふれ出し、白い炎が放つ熱波に煽られ、コウタの足元まで達してきている。
だが何よりも、コウタと、そしてシクルゥの視線を釘づけにしているものが、日輪の中央に
存在していた。
『コウタ兄ちゃん……あれ、知ってるのな?』
「ああ。知ってる」
省35
506: 陸捨肆 2013/10/06(日)09:34 ID:xApXeJRz(7/8) AAS
「痛ッ――! ッツ――!」
後頭部と鼻っ柱の両方を押さえながら、コウタは声にならない声を上げ、
芋虫のように雪道をのたうち回る。
『コウタ兄ちゃんっ! 大丈夫な!?』
「なわっけ……! ねえだろっ!」
『シクルゥのおっちゃん、兄ちゃん元気! 大丈夫そうなっ!』
「おまっ……どうしてそういう判断に……って、シクルゥ!」
能天気なマキリのカムイのキンキン声に頭をふらつかせながら、コウタは
火の輪の方へと歩んでいくシクルゥを呼びとめた。
「あいつが羅刹丸だ! 俺とリムルルを襲ってきたやつだ!」
省45
507(1): 陸捨肆 2013/10/06(日)09:36 ID:xApXeJRz(8/8) AAS
>>499
聞かないでください、オナシャス! 続き書きますから!
……先は長いですが頑張って完走しますんで、お付き合いください。
508: 2013/10/09(水)00:49 ID:iCUr2PHb(1) AAS
>>507
おかえりなさい!待ってたよ!
509: 2013/10/12(土)11:31 ID:eyZm6vD6(1) AAS
ネ申キタ━(゚∀゚)━!
これで勝つる!
完走頑張ってください!
510: 陸捨肆 2013/10/19(土)08:12 ID:I9Am4IzT(1/7) AAS
心の海に自らの魂を沈めて、どれぐらいの時間がたったのだろう。
リムルルは未だ、いつ終わるとも知れない暗い海の底へと向かっていた。
だが、冷たさも暗ささえも意味を失い、感じることができなくなってきた。
――『おわり』、かな……?
リムルルは、おぼろげに理解した。
誰も訪れたことの無いほどの深さ、感じることも許されない暗さが支配する世界と、
自分自身の魂が同一になろうとしているのだ。
話に聞いたポクナモシリは、ここには無かった――いや、そもそも自分は死ぬのとは違う、
リムルルはそう思う。ポクナモシリは死後の世界だ。死んだ先の話。死んだ後の未来の土地。
だが、リムルルが歩むものは――
省22
511: 陸捨肆 2013/10/19(土)08:13 ID:I9Am4IzT(2/7) AAS
小さな唇が、誰に宛てるでもなく、その言葉を形作り――
『どうして?』
微かな女性の声だった。遠い瞬きが、突然リムルルに問いかけた。
だが、閉じかけた扉の向こうからの呼び声に、リムルルは応じるつもりは無い。
落ちていく自分そのままに、光の届かない方へと沈み行く。
『こんなに若くて、清らかな魂……。どうして自ら終わろうとしているの?』
今にもはじけそうな瞬きは、なおも問いかける。
『こんなに暗くて冷たい場所に、何を隠しているの? 何を……恐れているの?』
返事も無いまま、消え行く深海の主へと言葉を投げかける。
『分かるわ。どんなに辛い過去が、この闇の中に隠されているか……でも』
省28
512: 陸捨肆 2013/10/19(土)08:14 ID:I9Am4IzT(3/7) AAS
########################################
ぎひーっ、ばたむ。
玄関の扉がそっと閉まる音がして、コウタの部屋を流れる時間が、再び止まったかのようだった。
一糸纏わぬまま、レラはがっくりとうなだれ、ひとり、その空間に取り残されていた。
本当に、時間が止まってしまったのだろうか……そう感じるほどの静寂だった。
だが、窓から吹き込む風がむき出しになったレラの身体を撫ぜ、肉体に刻まれた無数の傷が
ひりつくような痛みを訴えた。非情なほどに、時は流れ続けている。
レラはひとり、身を硬くした。
「うっ……ううう」
嗚咽を漏らす頬に、寒風に晒されたのとは違う、熱い、熱い痛みが伝い、畳に砕けた。
省34
513: 陸捨肆 2013/10/19(土)08:15 ID:I9Am4IzT(4/7) AAS
レラは両肩を抱き、爪を立てた。そうでなくても痛む全身に、さらに追い討ちをかけるように。
「なのに……なのにダメだったわよ。ねえ、何で? 何でなのよ!? 私が見た真実が
間違っていたとでも?あなたと、あなたとの命の遣り取りは、絶対の真実だったでしょう? 違う?」
両手を肩から腕に、腕から胸に。
「ひとつ、ふたつ、みっつ……」
レラはカムイの森で刻まれた傷を丹念に数えていく。
「とお……痛ッ……! ほら、全部っ、全部本当」
腹、背中、太もも。
川底のように冷え切った部屋の中、痛みに顔を歪めながら、それでもレラは傷をなぞる。
「ここまで私を追い込んだ、他でもないあなたが刻んだ傷……全て、真実でしょ?」
省32
514: 陸捨肆 2013/10/19(土)08:17 ID:I9Am4IzT(5/7) AAS
レラには返す言葉は何も無かった。彼らの怒りはもっともだった。
アイヌモシリに罰を与えたければそうすればいい。しかし、全部がぜんぶ納得は出来ない。
カムイのやろうとしていることが真実だとは、到底感じられないのだ。
――なぜ……魔界の門を開こうなどと?
想像を絶するほどの災厄と地獄が封じ込められた、いわばこの宇宙の禁忌……魔界門。
かつて、幾多のウェンカムイや、ウェンカムイにとりつかれた人間達が魅入られ、
こじ開けようとし、何度封じ込められてきたというのだろう。
レラもその実体は見たことは無い。しかし一度開けば、大地はおろか太陽をも飲み込み、
その魔の手はカムイモシリやポクナモシリ(冥界)にまで及ぶことは、容易に想像がつく。
連綿と続いた世界の、終わりの始まり。それが魔界の真実だ。
省35
515: 陸捨肆 2013/10/19(土)08:17 ID:I9Am4IzT(6/7) AAS
「ふ ふふ」
レラは、縮めた肩を震わせて弱く笑うと、それ以上の行為にふけることは無かった。
――なるほど ね。コウタ……あなた、私なんかより、何枚も上手だったってわけね。
右手を濡らした蜜をぺろりと舐めて、深いため息をひとつ。
レラは、戦いでぼろぼろになった服に、再び袖を通し始めた。
「確かにあなたの言うとおり……私が欲しかったのは、あなたじゃないわ。隠すまでも無い。
私に必要なのは……羅刹丸。私を必要としてくれる、あの男だけ」
腰紐をぎゅっと締めて、レラはもう一度白い息を吐き、精神をひとつにしていく。
玉虫色に輝いて自分を惑わす『真実のようなもの』を追い払い、心の中から不純物を取り去っていく。
すると、レラは自分の内側から、力強い波動が蘇ってくるのに気がついた。
省20
516: 陸捨肆 2013/10/19(土)08:18 ID:I9Am4IzT(7/7) AAS
「ふっ、くくく……あははははは!」
真面目ぶった口ぶりから一転、レラはこらえきれず、腹を抱えて笑い出した。
「大自然の戦士? 半面? ははは! いい加減にして欲しいわねぇ、本当に」
自分以外には誰もいない部屋で、チチウシをしまうことも忘れ聞こえよがしに、大声で。
「供物だの何だの、失われた命を蘇らせるだの! あなた達、いい加減にしなさいよ」
カムイの森で言い渡されたときの衝撃は、もはやどこにもなかった。それどころか、
思い出すほどに滑稽で、ばかげた話に感じられてくる。
「いいこと、教えてあげる。私はねえ、風なのよ! あなた達にも、時代にも、宿命にも
縛られることはないの! そして私自身にもね!」
視界が、五感が、どこまでも拡がっていくかのようだ。
省16
517: 2013/12/29(日)02:52 ID:2sd00YmS(1) AAS
レラふつくしいよレラ
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