[過去ログ] 【PSPでも】高木順一朗part3【ティンときた!】 (1001レス)
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536: SS再掲/伊織・1 2009/06/07(日)22:19 ID:LTbFyX3m0(10/15) AAS
ここは765プロダクション社長室、つまりは私の部屋だ。
目の前には私の作業場、つまりデスクがある。その上にはティーカップ。
いつもなら音無君が特製のコーヒーをご馳走してくれるところだが、
今日はあいにく、律子君共々事務に追われている。
仕方なく、給湯室からパックを引っ張り出してきて、私自ら紅茶を淹れた。
自画自賛だが、味も香りも決して悪くは無いと思う。
ギィ、と椅子が小さく悲鳴を上げる。私の椅子ではない。いや、私の椅子か。
正確には、前者は「私が普段使っている」それであって、後者は「私が今、座っている」ものだ。
それともう一つ。先程、デスクについて述べたが、現在の私の位置はちょうど対面。
しかもギリギリ手の届かない範囲なので、受け皿は左手で持っている。
では、本来私の居るべき場所はどうなっているのか。逆光で表情はやや読み取りにくいのだが、
大きなリボンのシルエットだけははっきりとわかる。
小さな身を背もたれに預け、時折足をぶらぶらさせているのは、私もよく知っている人物だ。
「それで、こんな所まで来てくれるとは、一体どうしたのかな?伊織ちゃん。」
彼女の名は水瀬伊織。私の旧友であるあの男、水瀬の娘だ。
ついこの間までは母親の腕に抱かれていたのが、聞けばもう14才になったと言う。
「にひひっ。今日は伊織からぁ、高木のおじ様にぃ、ステキなステキな、プレゼントがあるんですぅー。」
身体を投げ出すように椅子からひょいと降りると、こちらへ回り込んできた。
私の顔を覗き込み、様子をうかがっている。
「ほう、それはうれしいな。ありがたく頂くとしよう。」
「本当?!伊織、とっても感激っ!!」
パァっと笑顔がはじけた。明る過ぎて、逆に不自然なくらいだ。
「はっはっは。……で、そのプレゼントとやらはどこかな?」
彼女の持ち物と言えば兎の人形、1体――1匹と呼ぶべきか、あるいは1人か。
となると、乗ってきた車のトランクにでも入っているのか。余り大きなものは困る、持ち帰りが面倒だ。
事務所に置いておけるものならいいが……律子君に叱られるな。
そんなことを考えていると、彼女は右手をすーっと伸ばし、ある場所を指した。
「コーコっ!」
鼻先。私のではない、彼女のだ。
「……どう言う意味かね?」
軽い舌打ちが聞こえたような気がする。私は一瞬、見てはいけないものを見てしまった、
そんな気分になった。
「もう!おじさまったらぁ、イ・ジ・ワ・ル!じゃあ、発表しちゃいまーす!
なんと!この世界一の美少女、伊織ちゃんを……トップアイドルにする権利でーすっ!!」
室内を静寂が包む。空調の大げさな動作音を耳にして、私の意識は戻ってきた。
「……は、はっはっは。い、いや、なかなか面白いジョークだね。」
「本気でしてよ?」
にこやかに微笑む。私は思わず目をそらしてしまった。大人として、ちょっと情けない。
「こんなチャンス、二度と無いと思うでしょー?伊達に年食って……じゃなくて、
人生経験豊富なおじ様なら、どうすればいいのか、わかりますよねぇー?」
「み……お父様は何と?」
「えっ?パ、パパ?えーっと……そ、そりゃあもう、大賛成ですわよ!お、おほほほ。」
今度は彼女が目をそらした。……やはりな。
「『こんなにかわいい伊織を、水瀬家の宝というだけで終わらせたら末代までの恥だ!
私が全力でバックアップしよう、金に糸目は付けん!』、なぁんて言ってましたわ!」
彼との付き合いは私の方が長いのだよ、お嬢さん。
「ま、パパのことはもういいでしょ!にひひっ、すぐにおじ様も上流階級の仲間入り、
させてあげるわっ!」
さて、私もそんなにヒマな身ではない。ゆっくりと一呼吸し、立ちあがってカップを机に戻す。
そのまま振り返らず、私は背中越しに彼女に語りかけた。
「ありがとう、君はとても優しい子だ。その気持ちだけ、受け取っておくことにしよう。」
「だーかーらー!、私は……」
「お父様から聞いたのだろうね。確かに、わが社からデビューしたアイドルはまだ一人もいない。」
「でしょー!」
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