【ポチひとしは】フレオアイドル総合 2【出禁です】 (253レス)
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20: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2023/12/12(火) 08:04:45.18 「どうだい、こんな凄すごい景色はとても、こう云う時でなけりゃ見られないぜ。うん、非常に黒いものが降って来る。君あたまが大変だ。僕の帽子を貸してやろう。――こう被かぶってね。それから手拭てぬぐいがあるだろう。飛ぶといけないから、上から結いわいつけるんだ。――僕がしばってやろう。――傘かさは、畳むがいい。どうせ風に逆さからうぎりだ。そうして杖つえにつくさ。杖が出来ると、少しは歩行あるけるだろう」 「少しは歩行きよくなった。――雨も風もだんだん強くなるようだね」 「そうさ、さっきは少し晴れそうだったがな。雨や風は大丈夫だが、足は痛むかね」 「痛いさ。登るときは豆が三つばかりだったが、一面になったんだもの」 「晩にね、僕が、煙草の吸殻すいがらを飯粒めしつぶで練って、膏薬こうやくを製つくってやろう」 「宿へつけば、どうでもなるんだが……」 「あるいてるうちが難義か」 「うん」 「困ったな。――どこか高い所へ登ると、人の通る路が見えるんだがな。――うん、あすこに高い草山が見えるだろう」 「あの右の方かい」 「ああ。あの上へ登ったら、噴火孔ふんかこうが一ひと眼めに見えるに違ちがいない。そうしたら、路が分るよ」 「分るって、あすこへ行くまでに日が暮れてしまうよ」 「待ちたまえちょっと時計を見るから。四時八分だ。まだ暮れやしない。君ここに待っていたまえ。僕がちょっと物見ものみをしてくるから」 「待ってるが、帰りに路が分らなくなると、それこそ大変だぜ。二人離れ離れになっちまうよ」 「大丈夫だ。どうしたって死ぬ気遣きづかいはないんだ。どうかしたら大きな声を出して呼ぶよ」 「うん。呼んでくれたまえ」 圭さんは雲と煙の這はい廻るなかへ、猛然として進んで行く。碌さんは心細くもただ一人薄すすきのなかに立って、頼みにする友の後姿を見送っている。しばらくするうちに圭さんの影は草のなかに消えた。 大きな山は五分に一度ぐらいずつ時をきって、普段よりは烈はげしく轟ごうとなる。その折は雨も煙りも一度に揺れて、余勢が横なぐりに、悄然しょうぜんと立つ碌さんの体躯からだへ突き当るように思われる。草は眼を走らす限りを尽くしてことごとく煙りのなかに靡なびく上を、さあさあと雨が走って行く。草と雨の間を大きな雲が遠慮もなく這い廻わる。碌さんは向うの草山を見つめながら、顫ふるえている。よなのしずくは、碌さんの下腹まで浸しみ透とおる。 毒々しい黒煙りが長い渦うずを七巻ななまきまいて、むくりと空を突く途端とたんに、碌さんの踏む足の底が、地震のように撼うごいたと思った。あとは、山鳴りが比較的静まった。すると地面の下の方で、 「おおおい」と呼ぶ声がする。 碌さんは両手を、耳の後ろに宛あてた。 http://egg.5ch.net/test/read.cgi/indieidol/1702335008/20
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