【ポチひとしは】フレオアイドル総合 2【出禁です】 (253レス)
1-

24: 2023/12/12(火)08:07 AAS
「君」
「ええ」
「ハンケチはないか」
「ある。何にするんだい」
「落ちる時に蹴爪けつまずいて生爪なまづめを剥はがした」
「生爪を? 痛むかい」
「少し痛む」
「あるけるかい」
「あるけるとも。ハンケチがあるなら抛なげてくれたまえ」
「裂いてやろうか」
「なに、僕が裂くから丸めて抛げてくれたまえ。風で飛ぶと、いけないから、堅く丸めて落すんだよ」
「じくじく濡ぬれてるから、大丈夫だ。飛ぶ気遣きづかいはない。いいか、抛げるぜ、そら」
「だいぶ暗くなって来たね。煙は相変らず出ているかい」
「うん。空中そらじゅう一面の煙だ」
「いやに鳴るじゃないか」
「さっきより、烈はげしくなったようだ。――ハンケチは裂けるかい」
「うん、裂けたよ。繃帯ほうたいはもうでき上がった」
「大丈夫かい。血が出やしないか」
「足袋たびの上へ雨といっしょに煮染にじんでる」
「痛そうだね」
「なあに、痛いたって。痛いのは生きてる証拠だ」
「僕は腹が痛くなった」
「濡ぬれた草の上に腹をつけているからだ。もういいから、立ちたまえ」
「立つと君の顔が見えなくなる」
「困るな。君いっその事に、ここへ飛び込まないか」
「飛び込んで、どうするんだい」
「飛び込めないかい」
「飛び込めない事もないが――飛び込んで、どうするんだい」
「いっしょにあるくのさ」
「そうしてどこへ行くつもりだい」
「どうせ、噴火口から山の麓ふもとまで流れた岩のあとなんだから、この穴の中をあるいていたら、どこかへ出るだろう」
「だって」
「だって厭いやか。厭じゃ仕方がない」
「厭じゃないが――それより君が上がれると好いんだがな。君どうかして上がって見ないか」
「それじゃ、君はこの穴の縁ふちを伝つたって歩行あるくさ。僕は穴の下をあるくから。そうしたら、上下うえしたで話が出来るからいいだろう」
「縁ふちにゃ路はありゃしない」
「草ばかりかい」
「うん。草がね……」
「うん」
「胸くらいまで生はえている」
「ともかくも僕は上がれないよ」
「上がれないって、それじゃ仕方がないな――おい。――おい。――おいって云うのにおい。なぜ黙ってるんだ」
「ええ」
「大丈夫かい」
「何が」
「口は利きけるかい」
「利けるさ」
「それじゃ、なぜ黙ってるんだ」
「ちょっと考えていた」
1-
あと 229 レスあります
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル

ぬこの手 ぬこTOP 0.003s