[過去ログ]
大西武文(平成退屈男)のねずみ講にご注意 (542レス)
大西武文(平成退屈男)のねずみ講にご注意 http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/antispam/1202973125/
上
下
前
次
1-
新
通常表示
512バイト分割
レス栞
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
次スレ検索
歴削→次スレ
栞削→次スレ
過去ログメニュー
423: オレオレ!俺だよ!名無しだよ! [] 2015/02/17(火) 01:49:23.01 ID:0leMgD2J0.net 翌日、盛大な戦勝式典が執り行われた。マチアはバルバス提督から、軍人最高の勲章を授与された。 大観衆の中、居並ぶ軍人と、戦死した兵士の家族が並び、「月の歌」を斉唱した。 月影の 至らぬ里は 無けれども 眺むる人の 心にぞ澄む マチアは、勲章を首に掛けていたが、旗を見る事は無く、背を丸めて、ただただ、俯いていた。 エミリは常にマチアに寄り添っていた。胸を張って、旗を見上げ、小声で斉唱した。涙が溢れて止まらなかった。 夜、海に一人で行った。エミリは、星を眺めていた。 「どの星だろう・・・」 ウルコフの星を探した。そのとき、一筋の流れ星が走った。 「あ・・・」 エミリは、一人で叫んだ。 「ばかやろーッ!」 叫び終わる前に、流れ星は消えた。 大きな青い惑星が、夜空に浮かんでいた。 (母を頼む) ウルコフの声が聞こえた。エミリは、ただひたすら、一人で泣きじゃくった。 (了) http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/antispam/1202973125/423
424: オレオレ!俺だよ!名無しだよ! [] 2015/02/18(水) 22:45:39.14 ID:BzDfFyyD0.net 小説「故郷への凱旋」 故郷への凱旋 ・・・私はこの作品を、すべてのハンセン病患者に捧げる・・・ 昭和十七年春、十八歳の小宮山浩作は、家で母・オキナと食事をしていた。 「きっと戦闘機乗りになる」 息子が言うと、母は、 「戦闘機は危ないよ。偵察機とか、そういう安全な飛行機にしな」 しかし息子は、 「男なら、零戦(れいせん)だよ。敵をバッタバッタと、撃ち落すんだ」 「零戦はそんなに凄いのかい?」 「世界一の戦闘機だ。ドイツのメッサーシュミットや、イギリスのスピットファイアや、アメリカのグラマンより、はるかに、はるかに」 「困ったもんだねえ。父さんは中華事変で戦死して、息子はおまえだけだ。何とか、生きて帰ってきて欲しいけどねえ」 「母さん、御国のために、出征するんだ。御国のためは、家族のため。母さんのためなんだよ」 「そんな屁理屈・・・」 食べ終わると、 「じゃあ、行くよ」 立ち上がった。母は見送りに出る。家の周りでは、近所の人たちが、日の丸を振って、歓声を上げた。 「頑張れよ、浩作!」 「コウちゃん、英雄になって帰ってくるんだよ!」 思い思いに声援を送った。迎えに来ていた兵隊が、 「さあ、小宮山、行こうか」 声を掛けると、 「はい!」 と、まだ赤い頬で返事をした。 皆は「ウオー」と、大歓声を上げる。母は、一応、皆の前では、笑っていた。そして、一人息子は、旅立った。 http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/antispam/1202973125/424
425: オレオレ!俺だよ!名無しだよ! [] 2015/02/22(日) 23:04:48.18 ID:WjOaNfPg0.net 浩作は、霞ヶ浦の予科練で、訓練を受けた。そして、卒業を迎える。七つボタンの制服で卒業式を迎えると、いよいよ、配属の発表だった。順番に、名前が呼ばれる。そして、浩作の番だった。 「小宮山浩作!」 「はい!」 「ラバウル海軍航空隊!」 「はっ!」敬礼した。 浩作は、日本軍最強部隊、いや、世界最強部隊の、ニューブリテン島・ラバウルに配属になった。 同期の数人と共に、輸送船で、ラバウルに着任した。昭和十八年春だった。上陸すると、上官が出迎えた。名前を確認すると、 「ついて来い」 基地へ向かう。浩作は頬を紅潮させていた。 (世界最強の精鋭に選ばれた) それだけで、興奮が収まらない。上官の後について、歩いていく。 そのときだった。 「ウイーーーーン」 と、けたたましくサイレンが鳴った。上官が、 「しまった。来やがった」 と、手をかざして、海の方を見ている。浩作たちも、そちらを見た。すると、空から、どす黒い塊が、近づいてきた。 「野郎、アメ公め・・・」 そういうと、 「おい、おまえら!」 「はい!」 「適当に基地で待ってろ。俺も飛ぶ」 そういうと、走り出して、去ってしまった。浩作たちは、歩きながら、基地に向かうが、見ていると、空の塊が、どんどん迫ってくる。そして、一機、二機、三機、・・・と、地上から、零戦が飛び立つ。 http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/antispam/1202973125/425
426: オレオレ!俺だよ!名無しだよ! [] 2015/02/27(金) 23:03:41.23 ID:AiD5jKGQ0.net アメリカ軍の空襲だった。それを、ラバウル航空隊が迎え撃つ。見ていると、敵の編隊と、味方の編隊が、空で交差した。 そして、入り乱れ、やがて、火を吹いて墜落してゆく機体が、一機、また一機と、現われた。零戦は、まず爆撃機を狙っているらしい。 大型の航空機が、次々と墜落してゆく。しかし、中には、零戦が、敵戦闘機にやられて、墜落していた。 一時間も経ったであろうか。やがて、両軍は散らばって、アメリカ軍は帰投していった。 迎撃に向かった零戦が戻ってくる。 「おい、出迎えよう」 だれかが言うと、浩作たちは、戻って来る味方を出迎えに行った。中には、被弾して、血を流している飛行兵も居る。整備兵たちが、それらを抱き抱えて、診療所に連れて行く。 「すげえ・・・これが、戦争か」 誰かが唸った。すると、一人の飛行兵が、近づいてきた。階級章を見ると、「一等飛行兵曹(一飛曹)である。 自分たちは「二等飛行兵曹(二飛曹)」だから、たかが一階級上である。新米の連中は、挨拶程度に「敬礼」をした。するとその一飛曹は、 「あほんだらーーっ」 と、全員を殴り倒した。 「な、なんです、か・・・」 と、反抗した新米は、もう一発、殴られた。訳が分らない。 「貴様ら! 何を見ている! 大将のつもりか!」 怒号が轟く。 「す、すみません。初めてなもんで」 と言った新米にも、もう一発鉄拳が下った。 「な、・・・」 と、皆、ただただ、怯えている。一飛曹の飛行兵は、 「貴様らも手伝わんか! ろくに戦闘できな奴が、偉そうにするな!」 「は、はい!」 と、全員立ち上がって、とにかく、負傷者を探したが、もう、皆運ばれていた。 「どうしよう」 と、おろおろしていると、 「おい」 と、今度は「上等飛行兵曹(上飛曹)」が、声を掛けてきた。 「なんや、おまえら?」 すると浩作が、 「は、はい! 今日、着任しました!」 そういうと、 「ふん」 と、無視して、行ってしまった。 http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/antispam/1202973125/426
427: オレオレ!俺だよ!名無しだよ! [] 2015/03/06(金) 22:29:41.41 ID:rCkc4adp0.net とにかく、訳が分らない。みんな、何を怒っているのか??? すると今度は、「少尉」の階級章を付けた飛行兵が寄ってきた。これには、さすがに、驚愕した。みな、一斉に、「敬礼」をする。すると少尉は、「敬礼」を返してきた。そして、 「おまえら、誰なんだ? さっきから見ていると、うろうろしているだけじゃねえか」 「は、はい! 小宮山二等飛行兵曹であります!」 すると、みんなが、順番に名乗った。 「ああ、分った。新米だな」と、少尉。 「はい。ただ今、着任しまいたいしまいた!」ろれつが回らない。 「ついて来い」 そう言って、歩き出した。皆は、少しホッとする。付いていった。 基地に入る。飛行兵たちが、飛行服を着替えていた。浩作たちが部屋に入ると、皆が一斉に「ジロ」と、睨んで、無視した。ビビッていると、少尉は、「じゃ」と、どこかへ行ってしまった。 浩作たちは、呆然と立っている。すると、また一人、「一飛曹」が寄ってきて、真ん前に立った。 「おい」 「はい!」 「予科練で習わなかったのか?」 「は、何をですか?」 「馬鹿やろーーーっ!」 「ひえー」 また、大怒号である。とにかく、緊張して、訳が分らない。するとその一飛曹、 「挨拶だよ、挨拶! 阿呆か、おまえら!」 やっと、何を怒られているのかが、分った。 「は、はいっ。小宮山二飛曹、着任しました!」 と、また順番に、挨拶する。するとその一飛曹、耳に手をやって、 「はあ? いま、何か言ったか? 聞こえんぞ」 すると浩作たち、力の限り、咽が破れんばかりの大声を張り上げた。 「こみやまにひそうであります!!!」 と、皆が力を振り絞って、「挨拶」をすると、 「ははは」 と、部屋のみんなが、初めて、笑い始めた。 http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/antispam/1202973125/427
428: オレオレ!俺だよ!名無しだよ! [] 2015/03/15(日) 23:15:10.07 ID:sLPglOC70.net 「よおーし・・・」 と、一飛曹は、 「俺は、坂川一飛曹だ。おい、おまえ」 と、浩作を呼んだ。 「はっ」 すると、また、耳に手をやる。浩作は、 「はいっっ!!!」 と、力の限り、声を振り絞った。 「来い」 と、ベッドの方に行き、座ると、軍靴を脱いで、 「磨け」 浩作は、 「はいいい!!!」 と、返事をする。軍靴とブラシをもらうと、しゃがんで磨き始めた。 (やれやれ・・・これから、どうなるか・・・) その夜は、爆睡した。 http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/antispam/1202973125/428
429: オレオレ!俺だよ!名無しだよ! [] 2015/03/19(木) 22:54:51.32 ID:96FBqSo50.net 浩作たち新米は、数日間、おろおろして過ごした。とにかく、何をしていいのかが、分らない。その間、敵の空襲は無かった。 数日後、やっと、上官に呼ばれた。「大隊長」の部屋に一人で行く。 「小宮山二飛曹、入ります!!」 でかい声で挨拶して、入った。「大尉」の階級章を付けた、若い将校が机に座っていた。 「おう、小宮山か。座れ」 机の前の椅子を勧める。 「失礼します!!」 浩作は、律儀に座った。 「どうだ。ラバウルは?」 「はい! 私も早く飛んで、敵機を撃墜したいです!!」 大隊長は、笑った。 「今日から、栗屋大隊・第二中隊の長谷川小隊三番機を命ずる。小隊は三機で一小隊、三小隊で一中隊、栗屋大隊は、四中隊、大隊長と大隊付の二機を合わせて、全部で三十八機だ。覚えておけ」 「はっ!!」 「俺は、大隊長・栗屋大尉だ。よろしくな」 小宮山は、立ち上がった。 「はっ!! よろしくお願い申し上げます!!」 部屋を出て、飛行場に向かった。いよいよ、自分に飛行機が与えられる。ワクワクした。整備兵たちに聞いて、「長谷川小隊長」を探した。 「飛行兵曹長(飛曹長)」の階級章を付けた若い人が、零戦の傍に居るのを見つけて、走り寄った。 「失礼いたします!!! 小宮山二飛曹であります! 大隊長の命令により、長谷川小隊長のもとに参りました!」 すると、その小隊長は、 「おお、小宮山か。今日から、俺の三番機だ。おまえの乗る飛行機を見せよう」 「はい!!」 付いていくと、ちょっと古いが、しっかりした機体の、零戦の傍に来た。浩作は興奮する。 http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/antispam/1202973125/429
430: オレオレ!俺だよ!名無しだよ! [] 2015/03/29(日) 01:15:10.76 ID:NEbY6Rza0.net 「これが、おまえの搭乗機だ。尾翼に「K384」と書いてある。覚えておけ。 「は、はい!」 「どうだ。飛んでみるか?」 「い、いいのでありますか?」 「もちろんだ。俺に付いて来い。さあ、着替えてこい」 「はははい!」 小躍りして、兵舎に駆け込んで、飛行服に着替えた。部屋に居た誰かが、 「何を慌てている? 空襲か?」 浩作は、 「飛行機を与えられました。今から初めて飛びます!」答えた。 「はっはっは。そりゃよかったな!」 浩作は、すぐに自分の愛機に向かった。整備兵が整備している。長谷川小隊長が待っていた。 「さあ、乗れ」 浩作は、梯子を伝って、コックピットに乗り込んだ。小隊長が翼に乗って、指示してくる。 「基本操作は知っているな?」 「はい! これが、操縦桿、これがスロットル、これがフットバー・・・」と、自分で説明する。 「零戦は練習機の赤とんぼとは違う。速度も旋回能力も桁違いだ。 いいか、これが、機首の7カンマ7ミリ機銃のスイッチ、操縦桿のノブのボタンが、機翼の20ミリ機関砲だ。 機銃は、撃ち続けると、数分で弾が切れる。撃つ時は、タタン、タタン、と、数発づつ撃て」 「は、はい」 「今、小川さんが空砲を入れてくれている。この機を担当する整備兵だ。挨拶しろ」 見ると、機体の下で、その人が弾丸を込めていた。浩作は大声で、 「小川さん! 小宮山二飛曹です! これからよろしくお願いします!!」敬礼する。 小川さんは、ニコ、と笑って、 「頑張れよ。にいちゃん」 敬礼を返した。小隊長は、「おい」と、下に居た「一飛曹」の飛行兵を呼ぶ。 「はっ」と、その人も翼に乗ってきた。 「二番機の斎藤一飛曹だ。今から、三機で練習だ」 「よろしく。斎藤一飛曹だ」 浩作は「敬礼」して、 「よろしくお願いします! 小宮山二飛曹であります!」 「元気がいいですな」 長谷川と斎藤が笑った。 「よし、飛ぶぞ。とにかく、俺たちに付いて、同じ飛び方をしろ。俺たちはくっついて飛ぶが、おまえは馴れるまで、二十メートル離れて飛べ。衝突されたら叶わんからな」 「はい! 分りました!」 「よし、エンジン点火!」 「エンジン点火!」 復唱し、スイッチを回す。キュルルル・・・と、三つのプロペラが回り始めた。ポン、と、浩作の頭を叩くと、長谷川と斎藤は、下へ降りた。それぞれの愛機に乗り込む。浩作は、興奮して、体が震えてきた。 http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/antispam/1202973125/430
431: オレオレ!俺だよ!名無しだよ! [] 2015/03/30(月) 22:41:03.37 ID:z8EHiU+S0.net 整備兵の小川が乗ってきた。 「今日は、撃ちまくってもいいぞ。空砲だからな。でも、絶対に小隊長を狙うなよ」 冗談を言う。 「は、はい!」 見ると、長谷川が手を振っている。 「二人に付いて行け」 と言うと、小川は降りた。見ると、長谷川機が、動き出した。二番機の斎藤機も動き出す。浩作は、小川に「敬礼」をして、風防を締め、スロットルを上げた。機体が、動き始める。 「母さん、俺、戦闘機乗りになったよ」 独り言をいいながら、操縦桿を握る。長谷川機と斎藤機は、滑走路に入り、滑走を始めた。浩作も、付いていく。 まず、長谷川機が、滑走を初めて、飛び立った。次に、斎藤機が、飛び立った。浩作は、スロットルを上げて、滑走を始めた。機体が走り始める。50キロ、100キロ、と、速度が上がる。風景が、後ろに流れる。 スロットルを全開して、操縦桿を引いた。フワ、と、零戦が飛んだ。そのまま真っ直ぐ、空に向かう。 前の二機は、ゆっくり飛んで、待っている。浩作は速度を上げた。二機に追い付いて、二十メートル後ろに付く。 長谷川機が、機体を振った。すると、二機は、右と左に急旋回する。浩作は、小隊長の方に付いていった。すると、上から、何かが、こちらに向かってきた。 そして、ぴったりと真後ろに付かれる。長谷川が急上昇する。工作も上昇した。しかし、後ろの機は、付いてくる。良く見ると、斎藤だった。 「くそう。振り切ってやる」 勝手に、右に急旋回した。長谷川は、左に急旋回した。斎藤は、浩作の後ろに付いてくる。振り切れない。すると、長谷川が、斎藤の後ろを取った。斎藤は旋回して、逃げた。 長谷川が、浩作の横に付いた。斎藤の方に指を指す。浩作は「敬礼」した。斎藤を追いかける。斎藤は、わざとゆっくり飛んでいた。浩作は、その後ろを取った。操縦桿のノブに親指を掛ける。 「ドドドドー」 と、機銃が空砲を発射して、機体が振動した。斎藤は旋回して逃げる。わざと下手な逃げ方をしている。浩作は、追いかけた。すると、ヒューンと、少し離れた所を、オレンジ色の実弾が掠めた。 「敵か!」 と、驚いて後ろを見ると、長谷川だった。浩作は冷や汗を掻く。斎藤を放って、旋回して逃げた。 一時間ほど練習すると、三機は、地上に降りた。浩作は、機体を降りて、長谷川に駆け寄る。 「小隊長!」 「どうだ? 零戦の感じは?」 降りながら聞いてくる。 「はい、最高です!」 「そうだろう」と、話し掛けたのは、斎藤だった。 「おまえ、なかなかセンスいいぞ」褒めてくる。 「ありがとうございます!」 三人は、兵舎に向かって、歩き始めた。 http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/antispam/1202973125/431
432: オレオレ!俺だよ!名無しだよ! [] 2015/04/14(火) 22:31:39.58 ID:amZwwGZD0.net 「これからは、三人、どこでも一緒だ。早く腕を磨け、小宮山」長谷川が激励する。 「はい!」 まだ興奮おさまらず、浩作は、その夜は、眠れなかった。 数日後、またアメリカ軍の空襲があった。「ウィーン」と、空襲警報が鳴り響く。昼の食事をしているときだった。 「小宮山、来い!」 長谷川が食事を放り出して、部屋に向かう。浩作も付いていった。急いで飛行服に着替える。 「行くぞ!」 「はい!」 浩作の初陣だった。武者震いしてくる。ずらっと並んだ零戦に、大勢の飛行兵が一斉に駆け寄る。浩作も、自分の機に乗り込んだ。無線を操作する。 「こちら長谷川、小宮山、聞こえるか?」 「はい。聞こえます」 「日本の無線は壊れ易いからな、壊れたら、とにかく俺のケツに付いて来い」 「はい。分りました」 「いくぞ! 斎藤、いいか」 「こちら斎藤、発進準備よし」 「俺に続け」 次々に零戦が発進していく。空を見ると、あの、着任していた日のように、黒い塊がこちらに向かってきていた。 「母さん、見ていてくれ」 「いくぞ!」 見ると、長谷川が滑走を始めた。続いて、斎藤が走り始めた。浩作は、スロットルを上げて、発進を始める。機体が滑走する。 充分に速度を上げたところで、スロットルを全開して、操縦桿を引いた。機体がフワ、と、浮かび上がる。 長谷川と斎藤と浩作は、編隊を組んだ。 「こちら大隊長、先に爆撃機を狙う。第二中隊は戦闘機を引き付けろ」 「こちら第二中隊長、了解」 すると、九機が、大きく突進した。 「ついて来い、小宮山」 「はい」 とにかく長谷川にピッタリ付いていった。 敵も、戦闘機が突進してくる。中隊は、高度を上げた。すると、敵も高度を上げてきた。 「ソウドウが居るぞ。斎藤、気を付けろ」 「了解」 「ソウドウ?」と、浩作が言うと、長谷川は、 「胴体が二つある戦闘機だ。ロッキードP38だ。あれには気を付けろ」 「珍しいですね」 「グラマンも前のF4Fじゃない。新型のF6Fだ。馬力が強い」 「了解」 遂に、両軍は交差した。 「こちら中隊長、小隊行動」 「長谷川、了解」 「三上、了解」 今度は、三機での行動になった。すれ違いざま、敵が機銃を撃ってきた。長谷川は急旋回した。斎藤と浩作も付いていく。 http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/antispam/1202973125/432
433: "rem+ran" [] 2015/04/14(火) 22:49:26.00 ID:TAHlZcLR0.net 西井佐輝子きちがい http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/antispam/1202973125/433
434: オレオレ!俺だよ!名無しだよ! [] 2015/04/25(土) 04:23:50.71 ID:tpg+QKlm0.net 「二時のグラマン四機を狙う」 「了解」と斎藤。 「了解」浩作も返事した。 右に捻り、上からグラマンの編隊を取った。ドドドド、と、長谷川が機銃を撃つ。グラマンは、散開した。長谷川は先頭の機を追った。斎藤は右の機に付いていった。浩作は、 「ならば」 と、左に旋回した。グラマンの後ろに付く。ドドドド、と、機銃を発射するが、全然当たらない。更に追う。また、ドドドド、と、発射するが、外れた。敵が右に急旋回する。浩作は喰らいつく。また、ドドドド、と、撃つが、当たらない。 「クッ。難しい!」 どうしても、当たらない。掠りもしなかった。それでも、なお、食いついた。敵は左に急旋回する。こっちも付いていく。敵は、右、左、右、と、捻って振り切ろうとする。それを追う。 すると敵は、ローリング(横回転)をした。すると、なんと、自分の機が、敵の前に飛び出してしまった。 「しまった!」 ドドドド、と、今度は敵に追われる立場になった。必死にかわす。 「小宮山! 小宮山!」と、長谷川。 「はい! 振り切れません!」 「いま行く。三時に逃げろ!」 「はっ」 と、右に急旋回した。ドーンと、機体が振動した。 「やられました!」 「落ち着け! 煙は出ていない。燃料計は減っているか?」 「いいえ!」 「貫通しただけだ。落ち着け!」 「はい!」 体がガタガタ震えてきた。すると、前方から、零戦が一機、突っ込んできた。 「うわっ」 と、思わず頭を下げる。ドーンと、爆発音がしたのは、後ろのグラマンだった。ウオーンと、煙を吐いて高度を下げていく。 「大丈夫か、小宮山」 「はい」 「今から前に行く。そのまま飛べ」 「はい」 真っ直ぐ飛んでいると、さっきすれ違った零戦が前に出てきた。 http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/antispam/1202973125/434
435: オレオレ!俺だよ!名無しだよ! [] 2015/04/29(水) 20:31:36.10 ID:71f3XcBf0.net 「おまえはまだ一人では無理だ。俺に付いてこい」 「了解」 「しまった! ソウドウだ!」 と、長谷川は、左の方を見ている。そちらを見ると、なるほど、胴体が二つある、異様な形の戦闘機が、一機、こちらに向かってきていた。 「小宮山、逃げろ!」 「はい」 分らないが、とにかく上昇して、雲のほうに向かった。長谷川を見ていると、その「双胴」と、やり合うつもりらしい。 「小宮山」 「は?」 「斎藤だ。小隊長を援護する。俺に付いてこい」 「はい」 斎藤の零戦が、寄ってきたので、それに付いた。長谷川は、「双胴」と空中戦をやっていた。 その上空から、双胴に向かって、突進した。斎藤が機銃を撃つ。浩作も撃った。すると双胴は、当たっていないのに、プロペラが止まって、落ちていった。 「やった!」 と、浩作が叫ぶと、 「ちがう! 曲芸だ!」と、斎藤。 見ると、双胴のプロペラが回り始めて、急降下して、どこかへ行ってしまった。 「追いますか? 小隊長」と、斎藤。 「三機でも無理だ。止めておけ」 「そうですね」 結局、その日、浩作は、二発の被弾を受けただけで、戦果は上げられなかった。 http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/antispam/1202973125/435
436: "rem+ran" [] 2015/04/29(水) 22:47:57.58 ID:L2K9xJr90.net 西井佐輝子きちがい http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/antispam/1202973125/436
437: オレオレ!俺だよ!名無しだよ! [] 2015/04/30(木) 01:35:10.24 ID:lCuro3bY0.net その夜、浩作が夕食を食べていると、長谷川が横に座った。 「どうだ、初陣の気分は?」 ちょっと考えてから、 「弾が当たらないのには、驚きました」 「弾か・・・まあ、経験だな」 「ところで小隊長」 「ん?」 「あの、双胴って、何者なんです?」 「ああ、もう、六機撃墜されている。物凄いパイロットだ。いいか、出くわしたら、一目散に逃げろ。おまえでは、まだ勝てない」 「そんなに凄いんですか?」 「見ただろう? 空中戦で曲芸をやる奴だ。俺も見たが、機体に日の丸が三十八個付いていた」 「どういう意味です?」 「三十八機撃墜しているんだよ。俺にも星が十七個書いてある」 「ええ」 「おまえも、早く愛機に星を書けるようになれ」 「はい」 「ところでどうだ、今夜、上陸するか?」 「どこへです? 戦争があるんですか?」 「はは、遊郭に上陸だよ」 「ああ・・・」 「行ったことあるか?」 「いえ、無いです」 「なら、付いて来い」 「は・・い・・・」 http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/antispam/1202973125/437
438: オレオレ!俺だよ!名無しだよ! [] 2015/05/02(土) 21:45:54.03 ID:DyNknudw0.net それで、ラバウルの遊郭に行く事になった。長谷川は、 「夜は、上官も部下も無い。長谷川、でいいぞ」 「はい、小隊長」 長谷川は、浩作の頭を撫でた。遊郭に入る。 「いらっしゃい。おや、ハセさん、弟さんですか?」 「ああ。コウちゃんだ。よろしく」 座敷に案内された。芸者が踊り、二人で酒を飲んで、はしゃいだ。 「コウちゃんは、いくつ?」 「じゅ・・・じゅうくです」 「あらあ・・坊やね。今夜はお姉さんが、お相手してあげるわ」 長谷川は、笑っていた。 「ぼうや、ドウテイ?」 「え?」 「女性を抱いた事は、おあり?」 「ななな・・ないです」 「じゃあ、お姉さんが、教えてあげるわね」 芸者が擦り寄ってきた。胸の谷間が雪のように白かった。浩作は、興奮してしまった。 「まあ・・・ハセさん」 「なんだ?」 「この子、興奮してるわ。早くしてあげないと」 「ああ、連れていっていいよ」と、長谷川。 「じゃ、行きましょう」 「ど、どどこへですか?」 「部屋に決まっているじゃないの」 長谷川は、 「今日は、コウちゃん、空でも初陣だったんだ。一機落としたぜ。夜も初陣だな。はっはっは!」 酒を飲んで大笑いしている。 「さあ、コウちゃん」 芸者が誘う。興奮しながら、浩作は、付いていった。 http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/antispam/1202973125/438
439: オレオレ!俺だよ!名無しだよ! [] 2015/05/03(日) 23:10:03.69 ID:aj8yUr7n0.net 小さな赤い部屋に入る。布団が敷いてあった。 「さあ、コウちゃん、脱いで」 と、芸者は服を脱がし始めた。そして、裸にすると、アレをくわえてきた。 浩作は、大興奮する。芸者は、浩作の手を、自分の乳房に誘った。浩作は興奮しまくって、すぐに出してしまった。 「げきつーい!」と、芸者。 「なによ、コウちゃん。まだ何もしてないじゃない。さあ、もう一度」と、自分も、裸になった。浩作は、」また興奮してきた。 「さすがに若いわね」 一緒に布団に入る。 「お姉さん」 「なに?」 「ここはラバウルだぜ。戦争しているのに、なんでこんなところに居るんだ」 「従軍慰安婦だよ」 「ウーン・・・兵士を慰めているのか?」 「それが、私たちの勤め。私らも、戦争しているんだよ」 「朝鮮人か?」 「・・・」 「きれいだな。朝鮮人は・・・」 浩作は、朝鮮人に、童貞をあげた。 http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/antispam/1202973125/439
440: オレオレ!俺だよ!名無しだよ! [] 2015/05/05(火) 20:32:59.83 ID:W9pIN0bW0.net 数日後、またアメリカ軍の空襲があった。浩作は、初陣の時よりも落ち着いていた。今度は、午後の訓練中だった。 「ウィーン」と、空襲警報が鳴り響く。 「弾槽を詰めろ!」 「燃料補給! 急げ!」 整備兵たちが一斉に準備に入る。将校が一人、望遠鏡を覗いていた。 「爆撃機が多いな」 傍に居た長谷川が、 「双胴はどうです?」聞いた。 「見えないが、たぶん、居るだろう」 「準備完了!」と、整備兵。 「よし、小宮山、行くぞ!」 「はい!」 零戦に飛び乗る。整備兵の小川が、 「コウちゃん、まだ二回目だ。無理をするな」 「ええ。無茶はしません」 小川が「敬礼」をして、車輪止めを外した。浩作がエンジンをかける。 「小宮山、斎藤、聞こえるか」 「こちら斎藤、発進準備よし」 「こちら小宮山、準備よし」 「よし、発進!」 長谷川に続き、斎藤、そして、浩作、と、発進した。 「こちら大隊長、小隊行動。戦闘機を後回しにして、爆撃機を撃墜しろ」 「第一中隊、了解」 「第二中隊、了解」 「第三中隊、了解」 「第四中隊、了解」 栗屋大隊は、散開した。 「斎藤、小宮山、B17が見えるか?」 「見えます」と、斎藤。 「四発の大型機ですか?」と、浩作。 「そうだ。ボーイングB17だ」 「見えます。三機見えます」 「それをやるぞ。続け」 http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/antispam/1202973125/440
441: オレオレ!俺だよ!名無しだよ! [] 2015/05/21(木) 01:32:04.78 ID:Ho+LCu1X0.net 長谷川が速度を上げた。二機が付いていく。B17は、真っ直ぐラバウルに向かっている。その前方上空を取った。B17が反撃してくる。 「敵の機銃に気を付けて突っ込め!」 長谷川が、急降下した。二機が続く。B17に突進する。ドドドド、と、20ミリ機関砲を浴びせた。B17の一機が、煙を吐いた。下に突き抜ける。 「反転して、もう一度!」 長谷川が急上昇する。 ドーンと、そのとき、長谷川の零戦が爆発した。 「小隊長!」 浩作が叫ぶ。 「小宮山、後ろだ!」 「えっ?」 と、後方を見ると、「双胴」が、自分たちの後ろに付いていた。 「小宮山、付いて来い!」 「はい」 長谷川の零戦は、空中分解していた。斎藤は急降下する。浩作も続いた。しかし、双胴も急降下してきた。速度は、500キロに達した。海が目の前に迫ってくる。 「斎藤一飛曹、墜落します!」 「操縦桿を引け!」 「くっ」 スロットルを下げて、思い切り操縦桿を引いた。 「空中分解するぞ!」 自分で浩作が叫ぶ。しかし、双胴は、それでも付いてきた。オレンジの光が、機体を掠める。 二機は、海面すれすれで、上昇を始めた。しかし双胴は、平気で付いてくる。 「なんて奴だ」と、斎藤。 「どうします?」と、浩作。 「分かれよう。おまえは左へ旋回しろ」 「了解」 http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/antispam/1202973125/441
442: オレオレ!俺だよ!名無しだよ! [] 2015/05/23(土) 13:18:02.79 ID:pS8lDdJY0.net 斎藤は右、浩作は左に急旋回した。双胴は、右に旋回した。それを見て、浩作は、急上昇して、反転し、双胴を追った。双胴は、斎藤を完全に捉えている。 「だめだ。振り切れない。小宮山、逃げろ!」 ドーンと、爆発音がすると、斎藤の零戦が、煙を吐いた。しかし、うまい具合に、浩作は、双胴の真後ろに付いた。斎藤は、墜落した。 「くっそー!」 ドドドドドドドド、と、浩作は機銃を撃ちまくる。双胴は、旋回して避ける。それを浩作が追う。 ドドドドドドドド、と、更に撃ちまくるが、当たらない。双胴は、「ローリング」をした。すると、ス、と、浩作は、双胴の前に出てしまった。 「しまった!」 (やられる)と、恐怖する。完全に、双胴は、後ろを取っていた。しかし、なぜか、撃ってこない。 「くそう!」 左に急旋回する。すると双胴は、逃げていった。 「なんだ?・・・逃がしてくれたのか?」 驚いて見ていると、 「こちら大隊長。長谷川小隊三番機、上昇して雲に隠れろ」 (いやだ・・・) 浩作は、あえて、双胴を追った。双胴は、もう、零戦を一機、捉えていた。その後ろに浩作が付いた。すると、双胴は、上に逃げた。浩作が追う。 「こちら大隊長。長谷川三番機、命令を聞け! 軍法にかけるぞ!」 (いやだ!) 無視して、双胴を追った。すると双胴は、上昇の途中で、エンジンを切って、急降下し始めた。 「また曲芸か!」 それを追うが、双胴は、またエンジンを入れると、急上昇して、浩作に向かってきた。浩作は旋回して、相対する。真っ直ぐ、二機が正面から突っ込む。 浩作は、ドドドドドド、と、機銃を撃ちまくった。しかし、双胴は、撃ってこない。すれ違うとき、双胴のパイロットの顔が見えた。なんと、「Vサイン」をしていた。 「ふざけやがって!」 http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/antispam/1202973125/442
上
下
前
次
1-
新
書
関
写
板
覧
索
設
栞
歴
あと 100 レスあります
スレ情報
赤レス抽出
画像レス抽出
歴の未読スレ
AAサムネイル
Google検索
Wikipedia
ぬこの手
ぬこTOP
0.007s