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(4): 3:幽霊受け 2013/09/14(土)04:26 ID:??? AAS
>>26も参考にした。面白そうなスレだね。
【SS】3:幽霊受け

* * *

「もう成仏させてくれ〜」
 丑三つ時の街に、人ならざるものの悲痛な叫び声が響く。
 もしその場を霊感の強い者が通りかかったなら、人身事故の多さで有名な十字路の一角で、半透明の男が着物姿の男に組み伏せられているのが見えたかもしれない。
 そして霊感のない者が通りかかったなら、外人旅行客向けのような胡散臭い漢字柄の着物の男が、前をはだけてニヤニヤ笑いながら地面に四つんばいになっているのが見えただろう。
 しかし、時間が時間だったため、幸か不幸か、まわりには全く人影がなかった。

「君、いいよ〜。ピチピチの霊気だよ〜」
 着物の男が体をすりすりと密着させながら、うっとりとささやく。
 組み伏せられている幽霊は嫌悪を通り越して、もう泣きそうな表情である。
「やめてくれよ……」
「誘ってきたのは君じゃないか〜」
「誘ってなんか……くっ……」
「フツーの人ならあのまま道にでてって轢かれちゃうとこだよ〜。でも、そんな過激な子、ボク大好き〜」
 着物の男の手が霊の奥をまさぐる。
 幽霊は通常腰から下がもやになっていて見えないものだが、それでも『あるものはある』ということを、霊はこのとき初めて知った。
 知りたくなかった、と切実に思った。
「あはは〜。 ねえ、わかる? 大きくなってくのがわかる? ボクの事、気に入ってくれたのかな〜」
「俺にそんな趣味はないんだっ!」
「人生短いもんね〜。生きているうちに目覚めないって、よくあることだよ〜」
「とにかくやめろっ……」
「やめないよ〜」
 着物の男の手の動きが激しくなる。
 霊の中で、えも言われぬ熱いものがこみあげてくる。
 現世への未練や、生者への憎悪、男を長年この交差点に縛り付けていた強い感情が、熱によって溶かされていく。
 やがて……

「ああっ!」

 恍惚の声が響き、あたりは静けさと日常の気配を取り戻した。
 着物の男はためいきをついて立ち上がった。
「君もイッちゃったか〜」
 今回は、何人もの生者をひっぱってたやつだから、少しは手ごたえがあるものと思っていたのに。
「心が通じ合えた途端にお別れなんて、さみしいもんだね〜」
 男は乱れた服を調えようとして、その前に手を名残惜しげにぺろりとなめた。

 人は彼を『お祓い屋』とよぶ。
 だが、その実態は、ただの視えるホモである。

(終)
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