[過去ログ] 【テレ朝】林美沙希part14【Jチャンあいつ今麻雀LOVE】 [無断転載禁止] [無断転載禁止]©2ch.net (1002レス)
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133: 2019/01/03(木)09:30 ID:BCC0C/ko(11/12) AAS
「さあ、歸らうか。」と云つて、榮一は裾の埃を拂つて、同じ道を下つた。墓地近くなつて、のろ/\下りて來る弟を待ち合せて、妹の墓と祖母の墓とへ詣つた。
目が窪んで息の臭かつた妹の死際の醜い姿は辰男の記憶にはまざ/\と刻まれてゐて、妹といふと直ぐそれを思ひ出したが、今墓場に立つてゐると、×子の墓と彫つた新しい石碑に對して追慕の感じは起らないで、
石の下の棺の中で蛆に喰はれてゐる死骸の醜さが胸に浮んだ。僧侶が投機に凝り出してからは、寺は雨戸を鎖して空屋のやうに汚れて、墓場の道は草が生え木の葉の散るにまかせてゐた。兄弟は朽葉を踏んで墓地を下つた。
「辰は家で許したら、學校へ入つて眞劍に英語の稽古をしようといふ氣があるのかい。」榮一は前とは異つて穩やかに話しかけた。が、辰男は兄の言葉に甘えた快い返事をしようとはしなかつた。
「別段學校へ入りたいといふことはありません。」と、干乾びた切口上で答へた。「せめて、もう四五年早く決心して、強硬に親爺を説き付けたなら、東京へ英語研究に行けんことはなかつたらうのに。
勝代さへ行くやうになつたのだもの。……しかし、お前は今からぢやあまり遲過ぎるね。」家へ歸ると、辰男は外に自分の身を置く所がないやうにテーブルの前に腰を掛けたが、作りかけの文章に目を向けるのが厭な氣がした。午過ぎになると
、所在なくて、文典など讀みだしたが、今までのやうに傍ら人無きが如き態度ではゐられなくて、兄の足音が聞えると書物を脇へ片寄せた。
階下で兩親や才次などが一家の雜務に取り掛つてゐる間に、二階では三人が各自の部屋に籠つて、それぞれに讀んだり書いたりしてゐた。一人も他の部屋へ入つて無駄口を利くこともあまりなかつたが、階下から才次などが上つて來て勉強を亂すことは尚更稀だつた。
良吉のゐた時分のやうな賑やかな笑ひ聲や打ち解けた雜談は二階では跡を絶つてゐて、榮一の歸省は勝代が豫期したやうな明るみを家の中へ齎さなかつた。榮一は自分を憚つてゐる辰男に向つて強いて話を仕掛ける氣はなかつたが、でも、折々辰男に對しては神經を凝らしてゐた。
ランプの下で難解な英字に青春の根氣を疲らせてゐる弟の青黒い顏の筋肉の微動をも、襖越しに見透してゐるやうに感ずることもあつた。しかし自分に親しみを寄せたがつてゐる勝代をば、極めて淡く見過してゐた。
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