[過去ログ] 【テレ朝】林美沙希part14【Jチャンあいつ今麻雀LOVE】 [無断転載禁止] [無断転載禁止]©2ch.net (1002レス)
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119: 2018/12/28(金)19:24 ID:TlIA0XSo(1/4) AAS
閾で仕切られてゐるだけで、嘗て襖の立てられたことのない自分の居間で、短い敷蒲團に足を縮めて横になつて目を閉ぢた。
何時もならば、目を閉ぢると直ぐに睡眠に落ちるのだが、今夜は慣例を破つて、まだ眠氣の催さぬ前に炬燵を離れたゝめか、頭が冴えて眠付が惡かつた。
何處かの障子を破つてゐる猫の爪音が煩く耳に付いた。辰男は「シツ。」と云ひながら疊をバタバタ叩いたが、
やがてランプを點けて音のする方へ行つて見ると、猫は最早障子の破れ目から縁側へ飛び下りて啼き聲を立てゝゐた。
雨戸を少し開けて猫を屋根の方へ追ひ出しながら、辰男は久し振りに自分の村の夜景色を眺めた。
十數町を隔てた小學校へ往來する外には、春にも秋にも殆んど一歩も門を出たことがないのみか、家の周圍にどんな騷ぎがしてゐようとも、
滅多に窓の外へ顏を出したことがなかつたので、平生雨戸一枚隔てた外の景色とは馴染みが薄いのだつた。
夕月は既に落ちて、幾百もの松明が入江の一方に繪のやうに光つてゐる。耳を澄ますと小波の音が幽かに聞えたが、空も海も死んだやうに鎭まつてゐる。
宮を圍んだ老松は陰氣な影を映してゐる。彼れは他郷から歸省した者のやうに、今夜は少年時代の自分の姿を闇の中の彼方此方に見詰めた。
……もつと快活で元氣のよかつた昔の事が未生前の事件のやうに心に浮んだ。
省6
120: 2018/12/28(金)19:34 ID:TlIA0XSo(2/4) AAS
お宮の松には梟が棲んでゐたのぢやがと、その不氣味な鳴き聲を思ひ出しながら、暗い梢を見上げてゐると、その木蔭から一羽の鳥が羽叩きして空を横切つてゐるやうな氣がした。
辰男は雨戸を閉めて寢間へ戻つてからも、何となく物哀れな氣持がした。側の壁に懸けて置きながら日頃忘れ果てゝゐた、
ヴアヰオリンに目がついて久し振りで彈いて見たくなつた。樂器を包んだ黄ろい袋は夜目にも目立つほどに汚れてゐた。
山間の寂しい小學校にゐた間、俸給の餘剩を積んで購つて、獨り稽古で勝手な音を出して、夜毎にこれを弄んでゐたことが、涙ぐまるゝやうな追憶となつて、乾いた彼れの心を潤はした。
「明日の晩には是非彈いて見よう。春高樓を彈いて見よう。」……彼れは新しい英字の變則な發音よりも、昔馴染みのヴアヰオリンの變則な音色に、
一層強く自分の魂が打ち込まれさうに思はれた。
辰男の明け方の夢には、薇の萌える學校裏の山が現れて、其處には可愛らしい山家乙女が眞白な手を露出して草を刈りなどしてゐた。
……と、誰れかに呼び立てられたやうな氣がして目を開けたが、左右の室には誰れもゐなかつた。良吉は最早出立したのか知らんと、急いで階下へ下りると、
弟は竹の手のついた煙草盆を膝に載せてゐる父親の前に不恰好なお辭儀をして、これから出掛けようとするところだつた。皆んなが上り框に突立つて見送つてゐた。
辰男はそつと皆んなの後ろに寄つて、默つて弟の出て行くのを見てゐたが、直ぐに二階へ引返して、
省2
121: 2018/12/28(金)19:38 ID:TlIA0XSo(3/4) AAS
AA省
122: 2018/12/28(金)19:43 ID:TlIA0XSo(4/4) AAS
AA省
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