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【まどか☆マギカ】杏子×さやかスレ34【杏さや杏】©2ch.net (177レス)
【まどか☆マギカ】杏子×さやかスレ34【杏さや杏】©2ch.net http://matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1489316133/
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61: 紡がれる幸せ7 [sage] 2017/05/14(日) 22:03:31.28 ID:6R9e2QYr0 ここにキュゥべえがいたら彼女よりも万倍の難解さでもって、万倍の説得力ある論を展開しただろう。 これはいわゆる錯視と同じだ。 ”そう見える絵”は描けても、”そう見える目”に作り変えることはできない。 「もしあんたが魔法をかけてあたしがそれにかかってたとしたら……こんな話はしないわよね? 逃げ出したあんたを追いかけることさえさせなかったハズだよ。逃げる姿を見せなければいいんだから」 全て杏子の仕組んだことなら辻褄が合わない、と彼女は言う。 何もしなくても上手く行っていたものを、わざわざ壊してしまったのだと彼女は批判する。 「あたしたちは血は繋がってない。でもそれだけが家族じゃないでしょ? もし血の繋がりだけで決めるなら……。 本当の家族は親子だけってことになっちゃうじゃん。夫婦だって姉妹だって血は繋がってないけど家族だろ?」 「………………」 「同じ部屋で寝て、みんなで一緒にご飯を食べて……それだけでいいじゃんか。家族ってそういうものだろ?」 「………………」 「あんたは難しく考えすぎ……っていうか家族はこういうものだ、って考え方にこだわり過ぎてんだよ」 杏子は何も言えない。 「さっきの例え話。バカだと思うけど、もしお母さんたちが杏子を見捨てようとしたら、あたしが全力で止めてやるから。 それでもダメならあたしも一緒に出ていく。ま、ありえない話だけどさ」 彼女はとうとう観念したようにその場に座り込んだ。 全身から力が抜けて頽(くずお)れたその肩を、さやかがそっと包み込むように抱く。 「あ……う、ああぁぁ…………!!」 母にはすぐに戻ると言い置いたが、幼子のように泣きじゃくる杏子が落ち着くにはまだまだ時間がかかるだろう。 だが、いくら遅くなってもかまわない。 杏子は必ず帰るのだから。 緊張という桎梏から解放され、母はもう何度も安堵のため息を漏らした。 その度に深紅のスタンドミラーを見ては心を落ち着け、混濁した記憶を解(ほど)いていく。 2人は全てを打ち明けた。 杏子の過去、魔法少女という存在、奇跡、魔法。 そのどれもが現実と乖離しすぎていて正しく理解するのは容易ではなかったが、そこは流石さやかの母親である。 そういうものだ、と大雑把且つ曖昧に受け止めることができた。 魔法少女のことは伏せておいてもいいのでは、というさやかの言を退けて杏子が何もかも告白したのは、 家族を前に隠し事をしたくないという想いがあったからだ。 「魔法少女、ねえ…………」 「うん…………」 「信じられないけど……ええ、信じるわ。今にして思えばそうとしか考えられないから」 ここで取り乱さないあたり、彼女は娘よりもはるかに豪胆だ。 「ひょっとして薄々勘付いてたりした……?」 「育ちの良いところの娘だってことはすぐに分かったわ。普段のちょっとした仕種を見てるとね。 うちに来た時はちょっと粗野に振る舞ってる感じだったけど、そういうところは隠せないものよ? さやかにも見習ってほしいって思ってたくらいだもの」 たとえば箸使いや、外出先から帰ってきた際の靴の扱い方、台所や浴室の使い方にそれらが表れていたという。 http://matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1489316133/61
62: 紡がれる幸せ8 [sage] 2017/05/14(日) 22:09:17.46 ID:6R9e2QYr0 「あ、あたしのことはいいってば」 「だからこそ、ある時から疑問を抱いたの。さやかを見れば分かるけど、私の育て方とは違う、って。 それなのに私の中では杏子を産んで育てたことになってるの。記憶がこんがらがるってこんな感じなのね」 「………………」 「でもね、現実にないものはどう頑張っても作れないの。たとえ魔法の力であっても、ね」 母はちらりと杏子を見る。 彼女はばつ悪そうに俯いた。 「杏子はモモちゃんの世話をよくしていた面倒見の良い娘だわ。とても立派なお姉さんよ。 そう、お姉さんとして。杏子、あなた……妹の面倒は見ていたけれど子育てをしたことはないでしょう?」 「子育て…………?」 あるハズがない。彼女自身がまだまだ大人の庇護を必要とする少女なのだから。 「それが現実にないもの。あなたは”お母さん”を経験したことがないから、完璧に私に錯覚させることができなかったのね。 魔法というよりも催眠みたいなものかしら? 知らなければどうしようもないのは仕方ないわ」 「えっと……どういうこと?」 さやかが訊いた。 「私の記憶では杏子を産み育てたことになってるの。でもね、それだけなの。それしかないのよ。 抱っこしたり、ミルクを飲ませたり、オムツを替えたり、悪戯を叱ったりした記憶がひとつもないのよ。それだけじゃないわ。 抱き上げた時、おんぶした時、背中をさすった時……その感触さえ残ってないの」 「………………」 「そこで気付いたわ。何かおかしいって。アルバムを見ればすぐに分かった。杏子の写真がないって。 この時の感覚が一番不思議で分からなかったわ。私が産み育てた杏子と、さやかが連れてきた杏子。 まるで2人が同時にいるみたいな感覚だったもの。正直、そういう病にでも罹ったのかと疑ったものよ」 「それは……あたしの所為で……」 不要な混乱を招いたことを杏子は何度も詫びた。 「いいのよ、それは。分かってしまえば、そういうことだったんだって納得できるから」 母は決して彼女を責めなかった。 錯覚を起こさせるという、信に悖る行為にも怒りは湧いてこない。 今はただ、全ての記憶が元あるべき場所に戻ったことに対する安心感と。 杏子が戻ってきたことへの安堵で彼女の心はいっぱいだった。 「でもお母さんはどうやって魔法を破ったの? そのまま魔法にかかりっぱなしって可能性もあったハズだよね?」 それがさやかには分からない。 魔法少女の力に対抗できるのは同じ魔法少女だけだ。 「たぶん、あれだと思う」 母がスタンドミラーを示した。 「杏子からもらったものよ。何かひっかかるものを感じた時にね、思わず鏡の中の自分に向かって言ったのよ。 何かがおかしい、私の本当の記憶はどこにあるの? って。小さい頃の癖って抜けないものね」 そう言って母は笑ったが、直後に寂しそうな顔をして、 「そこからはハッキリとは覚えてないわ。いろんなものが頭の中を駆け巡ったような気がする。 でも杏子に関する記憶が殆どなくなってたから、それでさやかに訊ねたのよ。杏子って誰だ、って」 再び記憶をなぞるように静かに言った。 「そっか……だから…………」 何かを悟ったように杏子が小さく頷く。 「母さんに贈ったあの鏡に魔法をかけてたんだ。普段から目にする鏡にあたしの代わりをさせれば、母さんがその鏡を使うたびに 魔法を重ねてかけることになるから。そのほうがより確実に効き目が出ると思って」 「なるほどね……ん? ちょっと待ってよ。あんたの魔法って――」 「ああ、鏡にかけたのはあたしが最初に使った魔法と同じ、錯覚させる効果しかない。上塗りするようなものなんだ。 母さんが鏡に向かって自分の記憶を疑っていることを口にしたから、そのとおりに魔法が働いたんだと思う。 さっき母さんも言ってたけど、催眠とか暗示に近い力だからね。鏡に疑問をぶつけることでその暗示を打ち消したんだ」 http://matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1489316133/62
63: 紡がれる幸せ9 [sage] 2017/05/14(日) 22:17:50.03 ID:6R9e2QYr0 つまりスタンドミラーに施した魔法はあくまで追い風としての効果しか発揮しなかったということだ。 純粋で疑うことを知らない者にかけた催眠をより強固にする一方、一度でも疑念を抱いた相手には逆にその疑念をより強く抱かせる。 そうなれば術者の与り知らぬところで鏡は正反対の方向に力を発揮し結果、母は自力で眩惑の霧を抜け出したのだ。 魔法というよりも魔術ね、と母は言ってから、 「でももうその力は必要ないわね。杏子――」 彼女を真っ直ぐに見据えた。 それから深呼吸をひとつする。 「ちょっと痛いけど我慢しなさい」 何が――と問う前に平手打ちが飛んだ。 「お、お母さん!? なんで……!」 その甲高い音にさやかは飛び上るほど驚いて抗議の声をあげた。 「娘が悪いことをしたら”母親”は叱るものなの。これはお母さんにウソをついた罰よ」 冷たく突き放すように言ったかと思えば、彼女は今度は杏子の首に手を回して胸元に引き寄せた。 「だけどちゃんと正直に言えたわね。えらいわ。ウソを認めるのはとても勇気の要ることよ」 囁くように言い、彼女の呼吸に合わせて頭を撫でる。 「かあ、さん…………?」 じわりと温かく、熱いくらいの体温を感じて杏子は彼女を見上げた。 「ごめんなさい……私がちゃんと母親になれなかったから……あなたに不安な想いをさせてしまったのね……。 娘にこんなつらいウソをつかせるなんて…………私は母親失格よね…………!」 真実を知ってから、母は何度も泣きそうになりその度に落涙を堪えていた。 杏子がどれほど苦しんでいたか、杏子をどれほど苦しめてきたかを想えば、涙を流す資格などない。 裏切ったのではない。背いたのではない。 母としての彼女の至らなさが、娘を裏切らせ背かせたのだ。 「だけど……ね。これだけは信じて。杏子……あなたは、さやかと同じ――私たちの娘よ……。 あなたを産んだのが私じゃなくても……私はあなたの、母親――」 そこから先は言葉にならなかった。 「ごめん……ごめんなさい…………! 母さん……あたしは…………!!」 杏子が縋るように母の背中を抱きしめ、彼女もまたそれに応えるように赤い髪を愛撫した。 「まったく……世話焼かせるんだから、この妹は――」 さやかは微苦笑した。 http://matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1489316133/63
64: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2017/05/15(月) 06:09:36.80 ID:+bf+7HT30 まどマギを否定し、誹謗中傷する中指厨ファック野郎を 2ちゃんねるから追放させろ 掲示板住人が力を合わせて奴を永久アク禁に 追い込ませ路 そして中指厨の書きこみすべてに削除依頼を出すのだ 中指厨をまどマギ界から追放して、 平和なまどマギコミューンを取り戻せ それとすべてのカップリングスレは必要ない このスレはカップリングスレだ このスレは消して中指厨の遊び場を減らすんだ http://matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1489316133/64
65: 紡がれる幸せ10 [sage] 2017/05/15(月) 11:33:25.39 ID:DXwPfsCP0 ・ ・ ・ ・ ・ 「――なんてことが去年あったワケだけどぉ?」 嫌らしい笑みを浮かべるさやか。 その視線の先には耳まで真っ赤にした杏子。 「う、うるさいな! んなの、昔の話だろ!?」 「あん時の杏子は可愛かったな〜。こっんな憎まれ口なんて叩かない、そりゃあ愛い妹でさあ……」 「言っとくけど、さやかが勝手に言ってるだけであたしは妹になった憶えはないからな!」 「え〜、いいじゃん妹で。だってあたしより背低いし、何かと手はかかるし、お菓子好きだし」 「お菓子が好きかどうかなんて関係あんのかよ。だったらさやかだってクラシック音楽好きだから妹な!」 「そういうところが子どもっぽいから妹だって言うのよ……」 戦いに於いては勇猛果敢。 さすがベテランと唸らせるほどの体捌きを見せる杏子に、さやかも上達したとはいえ今一歩及ばない。 それがひとたび変身を解けば年相応か、それよりも幼い言動を見せる彼女に、さやかは過去を思い出して苦笑する。 出会った頃とは大違いだ。 獣のような眼光も、やや時代遅れの粗暴な物言いも、今ではすっかり鳴りを潜めている。 「じゃあもしお母さんがあんたのこと、妹だって言ったら?」 「それは…………」 痛いところを突かれて杏子は窮した。 あれ以来、母親には頭が上がらない。 些細なウソどころか、彼女に対しては何かを誤魔化すことさえも相当な逡巡が必要になった。 だがこれは彼女の生まれ育ちを辿れば当然のことで、神の啓示を授かるまでもなく忌憚すべきことだ。 「ま、まあ……母さんがそう言うなら――」 結局、親には敵わないということになる。 「それで今年はどうする? 去年は相談しないで決めたから微妙に被っちゃったんだよね」 贈ったふたつの鏡を彼女は今も大切に使っている。 もちろん、かけておいた魔法は解除されており、今は普通の――娘からのプレゼントだ。 http://matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1489316133/65
66: 紡がれる幸せ11 [sage] 2017/05/15(月) 11:38:04.87 ID:DXwPfsCP0 「そうだなあ……さやかは何か考えてるのか?」 さやかは腕を組んで唸った。 「肩たたき券、かな……」 「はあ? なんだそりゃ……幼稚園児じゃあるまいし……」 「その幼稚園の頃にプレゼントしたのよ。結局1回も使われなかったけどね」 厚紙を切って貼り合わせ、クレヨンで”かたたたきけん”と書いただけの。 女の子らしく四隅に花の絵を描いたつもりだが、当時の画力では何の絵かは判別できない。 「さすがにこの齢で肩たたき券はなあ……あ、そうだ! エステのチケットとかどうだ? あんまり高いのは無理だけど」 名案だろう、と言わんばかりに杏子が不敵な笑みを浮かべる。 その得意気な顔を見て、少し意地悪したくなったさやかは、 「つまり杏子はお母さんが美人じゃないから、エステに行って美人にしてもらえ、って言いたいワケね?」 わざとらしく蔑むような目をして言った。 「え……いや、ちげーよ! そんなワケないだろ!?」 「お母さんに言ってやろ。あ〜、お母さん、落ち込むだろうなあ。そんなこと言われたらショックで寝込んじゃうかも」 「だから違うって! あたしはそんなこと思ってないからな!」 必死になって反駁する杏子を見てさすがにこれ以上は気の毒だと思ったさやかは、 「冗談だよ。あんたがどれだけお母さんを大事に想ってるか知ってるもん」 揶揄うような気遣うような目をして言った。 「あ、当たり前だろ……!」 「それにしてもあんたの口からエステだって……ぷぷ、エステ……! 違和感ありまくりなんだけど!」 「似合わなくて悪かったな!」 すっかり拗ねてしまった杏子は、その後さやかがお詫びにクレープをご馳走するまで機嫌が治らなかった。 さやかは笑い飛ばしたが、たまにはこういうのもいいだろうと結局、有名エステのチケットを贈ることになった。 とはいえ2人が貯めていた小遣いでも3回分を買うのがやっとだった。 そこは母はもともと美人で素敵だから、このくらいの回数でもちょうどいいということにする。 「結局これにするんだったら、散々言われたのは何だったんだよ……」 揶揄われただけ損だったと不服そうな杏子に、 「いいじゃん。クレープのトッピング全部乗せにしてやったんだから」 3人分くらいの値段だった、とさやかも口を尖らせた。 チケットを鞄の奥にしまい込み、いつもの果物屋へ行く。 リンゴとイチゴを買い、風見野の廃教会へ。 いつもさやかがついて来ることを申し訳なく思う杏子だが、それを聞くとさやかは決まって、 ”あんたのお母さんはあたしのお母さんだから” と当然のように言う。 墓前の供物はどれも瑞々しい。 妹モモが食べたくて仕方がなかった果物を手製の坏(つき)に盛ると、どこかから暖かい風が吹いた。 「あたしたちって贅沢っていうか恵まれてるのかもしれないね」 帰り際、ふいにさやかが呟く。 http://matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1489316133/66
67: 紡がれる幸せ12 [sage] 2017/05/15(月) 11:45:39.58 ID:DXwPfsCP0 「どうしてさ?」 「だって両親って普通は一人ずつしかいないじゃん。でもあたしたちには4人いる。それって実は凄いことだって思うんだよね」 「生きてりゃ――ね」 「うん…………」 「ああ、でも感謝する相手がたくさんいるってのは、悪くないね。それだけ恵まれてるってことだもんな」 さやかが自分を慰めるために言ったのだと気付いた杏子は、慌てて言葉を添えた。 そして彼女はこうも考える。 いつまでも亡き家族に縋っていては、今の両親に失礼なのではないかと。 過去を捨て去ることはできない。 かといって未来だけを見て生きていくのも違う。 この難題に答えはないし、手がかりをくれる人を探しても見つかりはしないだろう。 もしかしたら明日にでも答えを得るかもしれないし、死の直前まで糸口さえ掴めないかもしれない。 (だけど…………) 杏子は想う。 (今度は絶対に守る。守り通す……何があっても…………!) いま感じている幸せ、齎された恵みは決して手放してはならない。 彼女にその力と覚悟があるのなら、その身を捧げてでも守り抜かなければならない。 それが何も持たぬこの少女にできる、唯一の恩返しだ。 「姿が見えなくても、声が聞こえなくても……お母さんはいるよ。お父さんもモモちゃんも、ね――」 その言葉に杏子がどれほど救われたかは、彼女の知っている言葉だけはとても言い表せない。 すっかり緩くなってしまった涙腺がひとしずくの涙を流させる前に、天を仰いでそれを阻止する。 悔恨と感謝でぐちゃぐちゃになってしまった内心を、ひとつずつ解きほぐすように。 彼女はそっとさやかの手を取り、そして強く握った。 「な、なによ、いきなり……?」 じわりと掌から伝わる体温は、杏子が最も愛しいと思う者の生きている証。 決して失ってはならない温もりだ。 次第に熱を帯びてくる。 不意に手を握られて些か緊張しているようだ。 その素直な反応を、杏子は可愛いと思った。 許されるなら、この瞬間が永遠に続きますように――。 杏子は生まれて初めて、きわめて個人的なことを神に願った。 心からの贈り物を喜ばない者はいない。 母は2人から受け取ったチケットを大切にしまった。 使えばなくなってしまうが、決して安くはない品物だ。 欲しい物もあっただろうに、貯金を惜しげもなく使ってくれたことに彼女は心からの感謝を捧げる。 「お母さん、来週までいろいろと予定があってお店に行けないのよ……」 と彼女は申し訳なさそうに言った。 「いいっていいって。それ、有効期限とかないからお店が潰れない限り使えるし」 その点はさやかもよく確認していた。 せっかくの贈り物が期限切れで使えなくなってしまっては勿体ない。 「そう? それじゃあこれはその時まで大切にとっておくとして、もうひとつのチケットを使わせてもらおうかしら」 「ん……? もうひとつ? 杏子、あんた他にも用意してたの?」 杏子はかぶりを振った。 背を向けた母は微苦笑している。 鏡台の抽斗から取り出されたそれは少し色褪せているが、丁寧に保存してあったために折り目ひとつない。 http://matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1489316133/67
68: 紡がれる幸せ13 [sage] 2017/05/15(月) 11:56:15.51 ID:DXwPfsCP0 「”かたたたきけん”、これも有効期限がないのよね」 「ええっ!? お母さん、それまだ持ってたの!?」 「当然よ。さやかから初めてもらった母の日の贈り物よ? 捨てるワケないじゃない」 「あ、あはは……物持ちいいね…………」 モノに宿る想いはそれぞれであり、またその感じ方も人によって異なる。 さやかにとってこの肩たたき券は幼い頃に作った、ただの拙い代物でしかなかったが、母にとっては娘からの真心の詰まった宝物も同然だった。 「えっと……あら、30分もしてくれるの? これはお得ね」 「30分? あたし、そんなの書いたっけ?」 「ちゃんと書いてあるわよ、ほら」 券の裏側には、”かたたたき 1かい 30ぷん”と確かにさやかの字で書いてある。 「ほんとだ…………」 「じゃあ早速お願いしようかしら」 「え、今から?」 「だってエステは来週まで行けないんだもの。じゃあしっかり頼むわね」 座りなおした母はわざとらしく肩が凝って仕方がないとアピールする。 「よし! じゃあ今日はお母さん専属のマッサージ師だよ!」 思い返せば今日まで、母親の肩を叩いたり揉んだりしたことなど殆どなかったと気付く。 しばらく叩き続けた後、見よう見まねで両肩を揉みほぐす。 幼い頃、おんぶされた時につかまっていた母の肩。 それが今は少し小さく感じられた。 「なあ、さやか……そろそろ代わってくれよ」 自分も早くしたい、と杏子はうずうずしている。 「いいけど……そんなに肩たたきしたいの?」 「や、まあ……何ていうか、さぁ……」 「…………?」 「さやかばっかり……ずるいっていうか…………」 拗ねたように杏子が言うと、さやかも母も揃って噴き出してしまった。 「あらあら、焼き餅焼いちゃったのね」 「それならそうと早く言えばよかったのに……」 「ちが……そういうんじゃなくて――!」 慌てて取り繕おうとするも既に遅い。 「分かった分かった。ちょうど10分くらい経ったから交代ね」 彼女はずっと前から、さやかだけの母親ではない。 ここにいる妹か、姉か、それとも双子か。 杏子にとっての母親でもある。 「親孝行な娘が2人もいるなんてお母さん、幸せだわ」 きっとそれは当たり前のことを何気なく呟いだだけなのだろう。 しかしあらゆる言葉には命が宿っている。 この”幸せ”は魔法によって捻じ曲げられて生まれたものではない。 誰かにそう呟くように、そう感じるように仕向けられたものではない。 彼女が心から感じた幸せだ。 そしてそれは彼女だけのものでは決してなく――。 「痛くない?」 「ええ、ちょうどいいわ」 杏子は亡き母にしてあげたくでもできなかった、全てのことをしようとした。 その機会が与えられているだけ彼女は恵まれていた。 「母さん――」 肩を揉みながら、顔を近づけてそっと――。 さやかには聞かれないように、囁くように。 「ありがとう……大好きだよ――」 その想いを伝えた。 終 http://matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1489316133/68
69: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2017/05/15(月) 12:04:02.54 ID:DXwPfsCP0 日を跨ぎましたが今年の母の日SSはこれで。 4年くらい続けたこのシリーズもだらだら続けるのも冗長なのでこれで完結です。 シリーズの締めは父の日に投下します。 それでは、また。 http://matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1489316133/69
70: 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2017/05/17(水) 18:14:05.33 ID:JoP9qW8Z0 広告少女ステマ☆マギカオワコンのお知らせwww ,' |八 :/ /⌒ヽ | .: | \ │ : : .l : : :l : : : :. ,' ′ ヽ :/ ,:しハ | .:/│ .::/ `ヽ| : : :l : : | : : : :. .: ∨ /:じ// 八..::/ l .:/,. == 、\ : :│ : : | : : : :: : / :/ (ヽヾ;/ ∨ ∨ ,二ヽ :.:| : ::|,二二/ :' ..:/ /⌒ ー' /し;ハ ∨ |/ : :| / | .::/ _, /.:じ/リ |l .: : : |,二二/ | :〈 .: (ヽ ヾ.::;/ :リ .: : : ;′ / | ; ヽ / ⌒ヽ '⊃′.;: : : ,: '. |/ヘJ ト 、 厂 / : :/ ⌒ヽ / まど豚って、ほんとバカ・・・ : :|///∧ <.::..> | / : :/ ノ / : :|////,∧ ;│ / // イ / :, .:|:////l/∧ .ノ // :/..:/ー / ?/// |//卜、. ___ .. <し / .:/ ..::/ / ,..._ li ,li |゙~ 'i | ー | |, _ .| ,..-、|ー |,.-、 ., -i | | i⌒i /、_l ,| |. ,| .i i , 〈' 〈' 〈 `.i ! i i l | ヽ | ゙ヽ ,! 〉 | http://matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1489316133/70
71: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2017/05/18(木) 11:35:16.51 ID:/sJG8zD+0 まどマギを否定し、誹謗中傷する中指厨ファック野郎を 2ちゃんねるから追放させろ 掲示板住人が力を合わせて奴を永久アク禁に 追い込ませ路 そして中指厨の書きこみすべてに削除依頼を出すのだ 中指厨をまどマギ界から追放して、 平和なまどマギコミューンを取り戻せ それとすべてのカップリングスレは必要ない このスレはカップリングスレだ このスレは消して中指厨の遊び場を減らすんだ http://matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1489316133/71
72: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2017/05/19(金) 06:30:40.59 ID:1kCrzyWd0 >>54-57 >>59-63 >>65-69 おお、いつの間にか超大作が投下されているッ!! 乙です 不穏な空気からどうなるかと戦慄しましたが、更に絆が深まったようで何よりです 杏さやに負けないくらい魅力的なさやかのお母さん 杏子のことをよく見ていた彼女には魔法の力すら及ばないのですね 魔法の本質を見極めて説得するさやかも流石! 母譲りの家族愛が心に響きます 後半は一転して明るいお話になって、ほんわかした気分になります そしてやはり大切に保管してあった「かたたたきけん」 最高の頃合で使っていただけました! 肩たたきしたくて焼餅を焼く杏子が可愛いです 一人の幼子には長かったはずの「30ぷん」も、二人の娘なら丁度良い 長い間眠っていた券は二倍美味しい券になって目覚めたわけですね 十分で交代したら最後の十分はどうなるのか気になりますが 何年も掛けて紡いでいく絆の物語は素敵です お姉ちゃんの地位争いに決着を見るのはいつになることでしょう これからも末永くお幸せに http://matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1489316133/72
73: 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2017/05/20(土) 14:23:11.94 ID:j0J077QS0 真性基地外まどか☆マギカ信者へ ,..._ li ,li |゙~ 'i | ー | |, _ .| ,..-、|ー |,.-、 ., -i | | i⌒i /、_l ,| |. ,| .i i , 〈' 〈' 〈 `.i ! i i l | ヽ | ゙ヽ ,! 〉 | http://matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1489316133/73
74: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2017/05/21(日) 10:27:40.49 ID:IT1meGQF0 まどマギを否定し、誹謗中傷する中指厨ファック野郎を 2ちゃんねるから追放させろ 掲示板住人が力を合わせて奴を永久アク禁に 追い込ませ路 そして中指厨の書きこみすべてに削除依頼を出すのだ 中指厨をまどマギ界から追放して、 平和なまどマギコミューンを取り戻せ それとすべてのカップリングスレは必要ない このスレはカップリングスレだ このスレは消して中指厨の遊び場を減らすんだ http://matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1489316133/74
75: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2017/05/21(日) 20:57:08.67 ID:nNTdPVIV0 >>72 ありがとうございます。 母の日だとか七夕だとかルミナリエだとか、行事行事でSSを投下していましたが、 わざわざSSにしなくてもさや杏は幸せになると思うのでこのあたりで区切りにしました。 さやか母がどんな人物か知りませんが、さやかの母であるからにはこんな性格かなと。 7月に伸びたアプリでもさや杏があればいいですね。(オンラインはいまひとつだったので) http://matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1489316133/75
76: 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2017/05/23(火) 18:50:28.56 ID:8qq55ybc0 真性基地外まどか☆マギカ信者へ ,..._ li ,li |゙~ 'i | ー | |, _ .| ,..-、|ー |,.-、 ., -i | | i⌒i /、_l ,| |. ,| .i i , 〈' 〈' 〈 `.i ! i i l | ヽ | ゙ヽ ,! 〉 | http://matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1489316133/76
77: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2017/05/23(火) 23:56:03.05 ID:K9rJx3ot0 >>75 さやかの母として全く違和感がなくて驚くほどです さやかの父とはどんな出会いをしたのでしょうね 初めから甘々だったのか、或いは杏さやのように険悪だったのか… http://matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1489316133/77
78: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2017/05/26(金) 05:56:42.78 ID:hzjn9u1g0 まどマギを否定し、誹謗中傷する中指厨ファック野郎を 2ちゃんねるから追放させろ 掲示板住人が力を合わせて奴を永久アク禁に 追い込ませ路 そして中指厨の書きこみすべてに削除依頼を出すのだ 中指厨をまどマギ界から追放して、 平和なまどマギコミューンを取り戻せ それとすべてのカップリングスレは必要ない このスレはカップリングスレだ このスレは消して中指厨の遊び場を減らすんだ http://matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1489316133/78
79: 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2017/05/27(土) 12:50:34.92 ID:qckgrP/G0 真性基地外まどか☆マギカ信者へ ,..._ li ,li |゙~ 'i | ー | |, _ .| ,..-、|ー |,.-、 ., -i | | i⌒i /、_l ,| |. ,| .i i , 〈' 〈' 〈 `.i ! i i l | ヽ | ゙ヽ ,! 〉 | http://matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1489316133/79
80: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2017/05/29(月) 06:16:14.83 ID:dGGMKmaG0 まどマギを否定し、誹謗中傷する中指厨ファック野郎を 2ちゃんねるから追放させろ 掲示板住人が力を合わせて奴を永久アク禁に 追い込ませ路 そして中指厨の書きこみすべてに削除依頼を出すのだ 中指厨をまどマギ界から追放して、 平和なまどマギコミューンを取り戻せ それとすべてのカップリングスレは必要ない このスレはカップリングスレだ このスレは消して中指厨の遊び場を減らすんだ http://matsuri.5ch.net/test/read.cgi/anichara2/1489316133/80
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