[過去ログ] 【まどか☆マギカ】杏子×さやかスレ34【杏さや杏】©2ch.net (177レス)
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57(1): 紡がれる幸せ4 2017/05/14(日)01:06 ID:6R9e2QYr0(4/10) AAS
「ねえ、お母さん。その話、ちゃんとするから今は……後でいい……?」
そう言いながら彼女はもう背を向けていた。
「杏子を連れ戻しに行くんでしょう?」
「うん……あいつ、飛び出していっちゃったし……」
「私の所為よ。警察を呼ぶなんて言ってしまったから――」
彼女は正当な理由なく住居に侵入された際の模範的な反応をしたらしい。
「仕方ないよ。それじゃ行ってく――」
「さやか!」
「な、なに……?」
テストで初めて0点をとった時、母は今のように怒鳴った。
それはただ成績が悪かったからではない。
答案用紙の大半が空欄だったからだ。
諦めるな、みっともなくても足掻け、歩みを無駄にするな。
彼女はそういう意味の叱責を込めて娘を導いた。
「杏子はきっと河川敷の――橋の下にいるわ。あの娘、何かあるといつもあそこに隠れてたから」
何もかもを悟ったような母の口調は力強く、心強かった。
(”いつも”…………?)
疑問が過ぎったが立ち止まってそれを考えている暇はない。
「分かった! すぐ戻って来るから!」
言うやさやかは風のように飛び出した。
彼女の助言は的確だった。
橋脚を背もたれにして、元々小柄な杏子はさらに身を縮こまらせて座っている。
魔法少女としてベテランならば同じ魔法少女の接近を察知できるものだが、今の彼女にはそれはできなかった。
いわば隙だらけも同然で、このようにさやかが背後から忍び寄るのを許してしまっている。
肩を掴まれた杏子は、それをしたのがさやかだと分かると逃げるのを諦めた。
「なんでここだって分かったんだ……?」
「さあ、なんとなく? ビビビっと感じちゃったワケよ」
「………………」
「ウソ。ほんとはお母さんが教えてくれたんだ」
「――そっか」
さやかは彼女の横に腰をおろした。
2人そろって視線は川面へ。
少し濁っていて、棚引く雲のように水草が揺れている。
「お母さんに訊こうと思ったけど、あんたから聞いたほうが早そうだね」
そう言う彼女の口調は少し怒っていた。
まだ全貌は明らかではないが混乱の渦中に放り込まれ、走り回ったのだ。
絡み合った謎が解けない苛立ちもある。
「たぶん、あたしの所為だ……」
言葉とは裏腹に、低く淀んだ声には確信を得ているような響きがある。
さやかは肯定も否定もせず、相槌を打つことも先を促すこともしない。
ここには2人しかいないし、当の杏子も逃げ出しはしないだろうから安心して次の言葉を待つことができた。
仮にそんな素振りを見せたとしても、さやかなら容易く追いつき、今度こそ離さないだろう。
「これがあたしの魔法なんだ……あたしの、っていうより応用かもしんないけどさ」
「………………」
「――ずっと恐かったんだ」
「えっ…………?」
少々のことでは反応すまいと思っていたさやかだったが、彼女の口から恐怖を感じていたと打ち明けられて耳を疑う。
「あんたに無理やり連れて来られて、最初はうぜえって思ってたんだ。余計なことしやがって、ってさ……」
「知ってる」
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