[過去ログ] 自転車でキャンプツーリングに行くぞ35 (1002レス)
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684: 2019/12/10(火)22:19 ID:J1wYa/Eb(2/2) AAS
「……あっ? いや。夢じゃあ……ない。良かった…… 夢じゃない。これは夢じゃない…」
大きな、こんな豪華なベッドが自分の寝室にあるはずがない。
ここは彼女、富士谷ことりの部屋だ。一緒に眠りについた……。
鹿屋は数秒かけて、それを理解する。
青くなったその顔を幾筋も、大粒の汗が伝っていた。
一気に眠気も吹き飛んで、彼の見回す寝室の風景は、見慣れた自分の暮らす部屋ではない。
「ああああ…… マジで怖かった…… よかった……」
右手で抑えた胸の、動悸がひどい。
全然気が付かなかったが、起きてトイレにでも行っているのだろう、と鹿屋は思った。
寝室の扉を隔てた向こうで、確かになにやら音がする。
ほっと胸を撫で下ろし、彼は再び大きなベッドに身体を投げ出す。
「はあぁ……」
ため息と一緒に、軽く涙がにじむ。
そんな自分に、少し情けなくもなった。
穏やかに幸せに、少々激しい夢を見たが気持ち良く眠った。
その最後に、とびきりの悪夢を見た気分だった。
例の夢のせいで、起きた瞬間はギンギンに勃起していた彼の息子も、すっかり軟体生物へと戻っている。
……仕事でとんでもない大失敗をした。
次から次へ、色んな人に謝って謝って……謝り続けた挙句クビを宣告され、飛び起きたら夢だった。
鹿屋は幾度もそんな酷い寝起きを経験してきたが、それらとはまた次元の違う恐怖である。
彼女との出会いが夢、幻だったなんて事は……。
(はー…… 早く戻ってこねぇかな……)
立派なベッドに一人で大の字、白い天井を見上げた。
そして、眠りに落ちるまで繋いでいたことりの右手の、柔らかさ……てのひらの温もりを思い出す。
無性に彼女を抱きしめたい。彼女の優しさ、温もりをまた感じたい。
そう鹿屋は思った。
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