[過去ログ] スクールランブルIF16【脳内補完】 (756レス)
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24: 日常 04/10/30 19:01 ID:ZpiKchH6(10/30) AAS
「なあ」
「? なんでしょう」

 軽くズレている様に思えた体温計の位置を軽く正す。

「なんでお前はここに居るんだ?」
「はえ?」

 どうも言葉が足りなかったらしい。

「いや、だからどうして俺がここに居るって知ってたんだ?」
「あー、その事ですか」
省5
25: 日常 04/10/30 19:02 ID:ZpiKchH6(11/30) AAS
「まあ、先輩がどういう女性の趣味をしていようとも、私自身にはなんの関係も問題もないのですが、
日頃からお世話になっている先輩がピンチとなれば、純粋かつ真摯(しんし)な心で心配し
駆けつけもする程度には、私も義理人情というものをわきまえている……ということです」

 ……だから、なんだってお前はそう日本語に以下略。

「……ところで、ふと思ったんですけど、先輩と高野先輩ってどこか似てますよね」

 俺と高野?

「…………そうか?」
「はい、それはもう」
省5
26: 日常 04/10/30 19:04 ID:ZpiKchH6(12/30) AAS
「高野は……なんていうか。あらゆる点で俺以上って感じがするけどな」

 なんとなく。

「えーそうですかぁ? 先輩も負けてないと思いますけど……」
「いや、別に勝っても嬉しくないんだが」

 そんなやり取りをピピピッピピピッなんていう電子音が、有無を言わさずに中断させた。

「お、どれどれ……」
省7
27: 日常 04/10/30 19:06 ID:ZpiKchH6(13/30) AAS
「先輩、寝なさい」

 有無も否応もない言葉だった。

「こんなにヒドいなんて思いませんでした。早く寝ないともっと重い病気に発展しかねません。
 ほら、早く横になって、布団をかぶって」

 なんて、言葉と同じように有無も否応もない機敏な動作で動く彼女。
 しかし、俺自身はさっさと寝ようとしていたのに、その都度邪魔されて寝させてもらえなかった
というのが真実だったりするんだが……なんだか、非常に理不尽を感じる。

「先輩、何かして欲しい事はありますか? 水が飲みたいとか、氷枕が欲しいとか」
省6
28: 日常 04/10/30 19:07 ID:ZpiKchH6(14/30) AAS
 その後も、彼女は休み時間のたびに俺の元へ通い、色々と世話をしてくれた。……別に
変な意味は全くない。
 そして、一日に何回もある休み時間と違い、一日一回限定の昼休みがやってきた。
 ちなみに、姉ヶ崎保険医は昼食を摂りに席を外している。

「さて先輩。お昼にしましょう」
「……いつからそこに居た」
「……ふふふ、秘密です」

 口元に人差し指をあて、『シー』のポーズを取る彼女。他の人間がやったら怖気が走った
かもしれない動作(言葉込み)も、彼女がやると妙に絵になった。
省6
29: 日常 04/10/30 19:08 ID:ZpiKchH6(15/30) AAS
「けど、俺は昼飯を持ってないぞ」
「分かってますよ、ですからぁ――」

 そして、取り出す弁当箱――――と、購買のパン2点。

「はい、先輩」

 続いて差し出される彼女の右手。ちなみに、手のひらが上になっている。

「……ひょっとして、代金か?」
省10
30: 日常 04/10/30 19:09 ID:ZpiKchH6(16/30) AAS
「ごちそうさん」
「はい、お粗末さまでした」

 昼休みをだいぶ残し、昼食を終えた。まあ元々、そんなに量のある弁当じゃない
上に、それをふたりで分けたのだから、それも当然と言った所か。……まあ、
美味い弁当に箸がどんどん進んだというのもあるが……。ちなみに、
俺の箸は食堂で借りてきた物らしい。
 ……しかし、保健室で飲み食いしても良かったのだろうか。

「先輩、食後のお茶どうぞ」

 といった俺の懸念も、この一言に反応した瞬間霧散してしまった。まあ、人間の
省5
31: 日常 04/10/30 19:09 ID:ZpiKchH6(17/30) AAS
「……やっぱ美味いな」

 別に俺は紅茶党という訳でも、グルメという訳でもない。精々、家に時々置いて
あるパックのやつか、コンビニで売っている『午○の紅茶』(ペットボトル)を飲む程度だ。
 しかし、そんな心得のない俺でもこれは美味いと思えた。

「本当ですか? あはは、嬉しいです」

 まあ、淹れ方が上手いのか、美味い茶葉を使っているのか、あるいはその両方
なのかは知らないが。……多分、一番最後なのだろうけど。

「あ、すいません。ちょっとゴミ捨ててきちゃいますね」
省4
32: 日常 04/10/30 19:10 ID:ZpiKchH6(18/30) AAS
「あはは、大丈夫で――」

 俺の言葉に受け答えしながら、座っていた椅子から立ち上がろうとした彼女が、
その椅子の足に自身の足を引っ掛けられる……なんて表現は被害者の見方で
実際には彼女が足を引っ掛けたのだが、ともかく。

 半ばお約束のように、バランスを崩した彼女はゆっくりと俺に向かって倒れてくる。
 俺には、それがひどくスローモーションで映った。人間、何からしらの
危機的状況に追い詰められると、驚異的な集中力を発揮し、それが普段眠っている
7割だか、8割だかの力……いわゆる、火事場の馬鹿力を発現させるという……。

 それはなんと、ただの主婦が赤ん坊を引きそうにあった車をひっくり返すだとか、
省5
33: 日常 04/10/30 19:11 ID:ZpiKchH6(19/30) AAS
 人ひとり分の重さは結構なはずなのに、あまり重たいと感じない彼女の存在。
 距離にして、およそ10cmも離れていない位置に彼女の瞳がある。目が合った。
 驚きで見開かれている。布団越しに感じる柔らかさ。……あの雨の日と同じ。
 その香りも、ぬくもりも、それは変わらずそこにあった。

 ――――そして、合わさった俺の唇と彼女の唇――――

 の、間に挟まった俺の右手。

 ま、間に合った……!

 心の奥底で安堵の言葉を紡ぐ。
 彼女が覆いかぶさってくる直前、その軌道を熱に犯されているにも関わらず、瞬時に
把握した俺は、半ば反射的に自分の唇に右手の甲を滑り込ませた。
34: 日常 04/10/30 19:12 ID:ZpiKchH6(20/30) AAS
 この時、もし俺が口に手のひらを当てていたら、彼女は硬い手の甲
へ顔面を打ちつけ、今頃悶え苦しんでいただろう……。今は日頃の部活で
鍛えられた俺の観察力と判断力を素直に褒めてやりたい。

 なんて、俺がほんの少しだけ自身の功績に浸ろうとしているというのに。

 ズイ

 という擬音と共に、彼女との距離が更に狭まる……いや、だから近い! すげー近いぞおい!!
 およそ10cmほど距離のあった俺と彼女の瞳がだんだんと近づいていく……9,8,7,6,5……

「お、おいちょ、何を――」
省6
35: 日常 04/10/30 19:14 ID:ZpiKchH6(21/30) AAS
「……ビックリしました?」

 って、確信犯かよ。

「……驚かない人間も居るだろうが、大体の奴らは驚くと思う」

 なんだか、一気に脱力した。今でならどんな事が起こっても眠れそうだ。

「あはは、すいません……色々と……」
「いや……別に気にしてない」
省5
36: 日常 04/10/30 19:15 ID:ZpiKchH6(22/30) AAS
「じゃあ先輩。身体起こして、動かないでくださいね」
「ああ、分かっ――」

 ……ん? なぜ動いちゃいけない?
 という疑問が頭を掠めたと同時。

 プチ……

 俺のワイシャツの第二ボタンが外されていた……彼女の手によって。
 ちなみに、第一ボタンは元々外してある。

「って! ちょ、おまっ! 何してんだ!!」
「え? あー、えーとですね。驚かせてしまったお詫びに先輩の手を
わずらわせる事なく、私が熱を測ってあげようかと……」
省5
37: 日常 04/10/30 19:16 ID:ZpiKchH6(23/30) AAS
「大声だしたらめまいが……」
「ほら無理しちゃダメですよ先輩。おとなしく私の手に掛かってください」
「……すごく不穏当な発言だぞ、それ」

 なんていう冷静なツッコミも虚しく、彼女はこっちへ身を乗り出してくる……って、
さすがにマジでヤバイだろ! もしこんなトコを誰かに見られ――

「おーい、アソー? まだまだ生きてる――――」

 ……まあ、この場合、だ。俺に過失があったとすれば、それは彼女の奇行に気を取られ、
接近していた菅の気配に気づかなかった事くらいだと思う……。
 別に、俺は彼女にこうしてくれと頼んだわけではない。むしろ拒絶した側だ。
省1
38: 日常 04/10/30 19:17 ID:ZpiKchH6(24/30) AAS
「――アソ……懐かしいよな。ザリガニやらカエルやらを追いかけていた小学校時代……」

 そうだな。その頃、俺とお前はまだ知り合ってなかったけどな。

「中学校時代……女の子に初めて告白をして、フられた俺を慰めてくれたよな……」

 そんな思い出も記憶もないけどな。

「俺、お前と高校で知り合えてよかったよ」
省7
39: 日常 04/10/30 19:18 ID:ZpiKchH6(25/30) AAS
「明日から平穏な生活を送れると思うなよぉぉぉぉぉおっ!!」

 体育祭で見た播磨の猛ダッシュをも上回る勢いで廊下を疾駆。……そのダッシュが出来れば
もう少し、あのリレーも楽になったんじゃないだろうか。

「今の人……以前に先輩の家を教えてくれた人ですよね?」
「ああ……まあ、多分な」

 あの走りを見る限り、本人かどうか怪しいものだが。

「それはそれとして、先輩。ほら早く熱を測りま――」
省9
40: 日常 04/10/30 19:20 ID:ZpiKchH6(26/30) AAS
 彼女は午後以降も保健室へ足を運んでくれたが、特にコレといった事もなく放課後を迎え、
早々に部活(茶道部らしい)へ行った。
 対する俺は、授業も結局全欠で部活も休んだ(というか顧問に止められた)。
 家に帰った後もさっさと布団に入り、なんとも実りのない一日を送る事となった……。

「……もうそろそろ夕飯か」

 布団に入ったまま、部屋の時計を見てひとりつぶやく。
 俺の脳裏によぎるのは、発した言葉とはなんの関係もない、保健室での彼女の事。
 ……もし、あの時……俺が右手を間に挟まなかったら……どうなっていたんだろうか?
41: 日常 04/10/30 19:20 ID:ZpiKchH6(27/30) AAS
 まあ、彼女がそうかどうかは知らないが、もしファーストキスだった場合、やはり
傷ついたり、涙を見せたりするんだろうか……。
 男よりも、女の方がそういった『初物』に対する感動は深いと、良く目にする。

 もしあの時、そうなってしまっていたら……彼女は、俺をどういう目で見るのだろう。

 俺は、彼女を、どう見れば良いのだろう?

「兄ちゃーん。ご飯できたってー」

 弟の声で、俺は自分だけの内面世界から、この世界へ帰還を果たす。それは、俺だけじゃない、
色々な人間が住まう所で『日常』という限りなく続く物によって構成される。そんな場所。
 でも、多分……きっと、明日から歩む日常は、今まで違う。
省3
42: 日常 04/10/30 19:21 ID:ZpiKchH6(28/30) AAS
「はぁ……」

 屋根裏の自室。その中にあるベッドに顔をうずめながら、私はため息を漏らす。
 今日の私……いつもとどこか違っていたと、きっと先輩も分かってる。
 明日から……今もさほど太くない接点を、もっと細くされてしまうかもしれない……
そう思うと、ほんの少し、自責と後悔の念が湧き上がってくる。

 それでも、私は動いてしまったのだ。
 今のままで、嫌だった訳じゃない。でも、それ以上を求めてしまった……。
 それだけの事。それゆえの事。

「……先輩……」
省5
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(1): 通りすがった麻生サラ好き 04/10/30 19:23 ID:ZpiKchH6(29/30) AAS
以上です。
最近、ようやくプライベートファイルを手に入れました。
で、麻生の方はどうやらそこまで意識していないとの事で……と言うわけで、
サラにがんばって貰いました。

もし、作品の中盤で彼女のキャラに違和感を感じていただけたら幸いだと思ったり……w

では、失礼いたしました。

ってか、最近、風邪ネタ多い(つД`)
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