[過去ログ] スクールランブルIF16【脳内補完】 (756レス)
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612: Will be there 04/11/27 23:08 ID:hnaniC1.(7/9) AAS
「なに、やってんだよ……」
 知らずもれた声は自分でも驚くほどに弱々しく、自分はいったいなんのためにここまで来て、何をするつもりだったのかと
自分自身に面食らう美琴。
 一方の播磨は、ことここに至ってようやく美琴の存在に気がついたというように、胡乱なその視線を動かして、正面に立つ
彼女にゆっくりと視線を合わせる。
 すれ違う二人の視線。その瞬間、唐突に美琴はそのことに気がついた。
 どうしてこれほどまでに播磨のことが心に引っ掛かりを残していたのか、その理由に。
 何故なら。

 ――これは私だ。

 失恋がどう、ということではない。
 誰にも知られることなく、自分の中だけで始まって終わった想い。それをたたえた、サングラスの向こうの見えるはずもない
瞳がかつての自分とまったく同じものだ、と。
 そのことに気づいた瞬間、わずかばかり彼女の中に残っていた考えも真っ白になり、どうしていいのか分からない、そんな
戸惑いだけがぽつんと残る。
「……おい」
「え? あ……」
 美琴が自身の思考に翻弄されている間に、いつのまにかその目の前には播磨が立っていた。なんの言い訳をするわけでもなく、
何を訊くわけでもなく、帰るぞ、とただそれだけを口にする。
「そう、だな――っ!?」
 動転したまま踏み出した、美琴のその一歩目が濡れた地面の上を滑る。視界がくるりと回転し、次の瞬間にはやってくるだろう
痛みに彼女が身構えたとき。
「あ――」
 柔らかくその身体が抱き留められる。大丈夫か、と重ねるようにしてかけられる播磨の声に、ぶんぶんと首を振りながら、
大丈夫、と答える美琴。それを聞いて、そうか、とだけ答えた播磨はゆっくりと歩き出し、今度は慎重に美琴もそれを追う。
「……」
「……」
 そして、無言のまま歩き続ける二人。元より話すつもりのほとんどなさそうな播磨に加え、思いの外動揺している美琴もまた、
口を開かない。そのまま黙って校門まで辿り着き、校外に降り立ったその後で、ようやく出がけにコートのポケットに突っ込んだ
折り畳み傘の存在を思い出す美琴。
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