[過去ログ] スクールランブルIF16【脳内補完】 (756レス)
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15: 通りすがった麻生サラ好き 04/10/30 18:46 ID:ZpiKchH6(1/30) AAS
はい、前スレ733です。実は前々スレで『雨、ふたり』とかいう
ネーミングセンスのなさを露呈しまくった作品書いたのと同一人物だったりします。
ようやくSSが完成いたしました。
で、第2弾SSということでコテでも付けようかと……まあ、なんともアレなコテですが
シンプルイズザベストとか言うやつで……。
例によって麻生とサラです。タイトルは『日常』です。
では、どうぞ。
16(1): 日常 04/10/30 18:48 ID:ZpiKchH6(2/30) AAS
「……頭いてぇ……」
教室の中、自分の席に突っ伏しつつ、俺は思わずうめく。
昨日の帰宅途中、傘も持たない哀れな俺の頭上を雨がパラパラと降り立ってきた。
軽く舌打ちをしつつも『まあ、この程度ならどってことないか……』
なんて思いながら歩を速めた俺をあざ笑うかのように、突然の集中豪雨。
天に恨みを買った覚えなどなかったが、加害者と被害者の関係はいつも
忘れやすい方と忘れにくい方に分かれるものである。
ひょっとしたら、俺が何かしたと言う事を忘れているだけかもしれないし、
気づかないうちに……という事もありうる可能性のひとつだ。
……まあ、だったら俺なんかよりももっと晴らすべき恨みを持っている人間も居るはずな
省9
17: 日常 04/10/30 18:49 ID:ZpiKchH6(3/30) AAS
普段から割りと健康体である俺は久々の倦怠感を満喫中だ。嬉しくて涙が滂沱(ぼうだ)
の如く溢れそうである……って、また俺らしからぬ思考が駆け巡っているぞオイ。
……それとも、案外こっちが素だったりするのだろうか……だとしたら嫌な新発見だ。
チラッと時計を窺うとまだ一時限目の休み時間…………表に出尽くしていると
思っていた疲労はどうにもまだまだ内に堪っていたらしく、時計を見た途端
ドッと溢れ出てきた。今なら疲労のみで死ねる気がする……もちろん、
気のせい以外の何者でもないんだが。
「おーい、アソー? まだ生きてるかー?」
俺を呼んでいるらしい声に目いっぱいの精神力で顔を向ける。
省5
18: 日常 04/10/30 18:49 ID:ZpiKchH6(4/30) AAS
「……マジでピンチらしいな。しょーがね、保健室連れてってやるよ。
ありがたく思え」
……なんて親切ぶっているが、どうせコイツの事だ。美人ということで有名な
姉ヶ崎とかいう保険医が本命に違いない。割合的に、保険医8:俺2って所か
……まあ、保健室に行く事自体は全然吝(やぶさ)かではないのだが。
「……ワリ、頼むわ……」
菅に体重を預けるような形で肩を貸してもらう。
なんだか、何もかもにやる気が湧かない。歩くのですら面倒くさいと思うほどだ。
今なら惰気(だき)の塊であろう今鳥にも負けない気がする。ダメな方面で――
省1
19: 日常 04/10/30 18:50 ID:ZpiKchH6(5/30) AAS
ガラガラ
「すいませーん。急患をひとりお連れしましたーっ」
「……ウルセェ」
菅のやかましさに対し今にも消え入りそうな声を漏らす。普段ならこの程度の声量どうって
事もないのだろうが、今現在の俺にはそれだけで極上の厄災だ。
「はいはーい、どうしたのかな?」
「いやー、どうにもこいつ風邪引いちまったらしくて……ベッドで寝かせてやれますか?
あ、俺、こいつの親友で菅って言います」
いらん自己紹介を兼ねつつも、俺の容態と処方を代弁してくれる辺り、
なんだかんだでこいつも良い奴ではある。
省5
20: 日常 04/10/30 18:51 ID:ZpiKchH6(6/30) AAS
キーンコーンカーンコーン…………
……チャイムの音で目を覚ます。どのくらい寝ていたのかと視線を時計に向けた。
まだ二時限目の授業が終わった所。およそ、一時間弱寝ていた事になる。
とっとと快復に向かう事を期待していたのだが、思ったほどの効果は得られていない
らしく、まだ身体が重い。それでも、多少は楽になったが。
今現在においてせめてもの救いは、セキやクシャミ、鼻水がない所くらいか。
そのままベッドの上でボーっと過ごす。耳を周囲に傾けると、机の上で何やら
姉ヶ崎保険医がペンを走らせているらしい音が聴こえてくる……まあ、俺には
良く分からないが、色々とやらなければならない事があるんだろう。
省9
21: 日常 04/10/30 18:59 ID:ZpiKchH6(7/30) AAS
「あっと、キミ……麻生君だよね? 先生、ちょっと用事が出来ちゃったから
少しの間ここ空けるけど、おとなしく寝てるんだゾ?」
なんて可愛らしく(俺がどう判断したかは別として)右手の人差し指を立てた後、
姉ヶ崎保険医はどこぞへと消えていった。
……まあ、誰も居ない方が返って気兼ねなく寝れるというものだ。
掛け布団を少し深めに被り、ようやく寝れる……と思った俺だったが、
どうも今日は睡魔にトコトン嫌われているらしい……まあ、一応誘惑に来たことから、
睡魔の邪魔をする何かしらの存在がいるという可能性も捨てきれないが、それはともかく。
ガラガラッ
省5
22: 日常 04/10/30 18:59 ID:ZpiKchH6(8/30) AAS
――言うまでもないと思うが、一応は言っておこう。
彼女の名は サラ・アディエマス 俺のバイト仲間にして一年後輩。
それ以外での交流は特にない。聞くところによれば男子女子、共に結構な人気がある
らしい……特に男子。……まあ、別段俺には関係ない。…………ないったらない。
「あの……大丈夫ですか?」
俺からの反応がないと見るや、彼女は心配そうに先ほどと同じ言葉を発し、覗き込むように
見つめてきた。――って、近い! 近いぞおい!!
「いや、心配すんな。ちょっと風邪引いて横になってるだけだから」
なんていう内心の焦りをおくびにも出さずスラスラと答える。
省5
23: 日常 04/10/30 19:00 ID:ZpiKchH6(9/30) AAS
「……まだ測ってなかった。悪い、体温計取ってくれるか?」
「はい、おまかせください」
おどけるようにかしこまって彼女が体温計の納まっている棚へ向かう。
ちなみに、どこに何がしまってあるのかは棚の引き出しごとに
大まかな表記があるから大体は把握できる。
「はい、どうぞ先輩」
「ああ、サンキュな」
短く答えて、ワイシャツの第二ボタンまでを外す。
……上手く体温計が入らないのでやっぱ第三ボタンまで外そう。
省7
24: 日常 04/10/30 19:01 ID:ZpiKchH6(10/30) AAS
「なあ」
「? なんでしょう」
軽くズレている様に思えた体温計の位置を軽く正す。
「なんでお前はここに居るんだ?」
「はえ?」
どうも言葉が足りなかったらしい。
「いや、だからどうして俺がここに居るって知ってたんだ?」
「あー、その事ですか」
省5
25: 日常 04/10/30 19:02 ID:ZpiKchH6(11/30) AAS
「まあ、先輩がどういう女性の趣味をしていようとも、私自身にはなんの関係も問題もないのですが、
日頃からお世話になっている先輩がピンチとなれば、純粋かつ真摯(しんし)な心で心配し
駆けつけもする程度には、私も義理人情というものをわきまえている……ということです」
……だから、なんだってお前はそう日本語に以下略。
「……ところで、ふと思ったんですけど、先輩と高野先輩ってどこか似てますよね」
俺と高野?
「…………そうか?」
「はい、それはもう」
省5
26: 日常 04/10/30 19:04 ID:ZpiKchH6(12/30) AAS
「高野は……なんていうか。あらゆる点で俺以上って感じがするけどな」
なんとなく。
「えーそうですかぁ? 先輩も負けてないと思いますけど……」
「いや、別に勝っても嬉しくないんだが」
そんなやり取りをピピピッピピピッなんていう電子音が、有無を言わさずに中断させた。
「お、どれどれ……」
省7
27: 日常 04/10/30 19:06 ID:ZpiKchH6(13/30) AAS
「先輩、寝なさい」
有無も否応もない言葉だった。
「こんなにヒドいなんて思いませんでした。早く寝ないともっと重い病気に発展しかねません。
ほら、早く横になって、布団をかぶって」
なんて、言葉と同じように有無も否応もない機敏な動作で動く彼女。
しかし、俺自身はさっさと寝ようとしていたのに、その都度邪魔されて寝させてもらえなかった
というのが真実だったりするんだが……なんだか、非常に理不尽を感じる。
「先輩、何かして欲しい事はありますか? 水が飲みたいとか、氷枕が欲しいとか」
省6
28: 日常 04/10/30 19:07 ID:ZpiKchH6(14/30) AAS
その後も、彼女は休み時間のたびに俺の元へ通い、色々と世話をしてくれた。……別に
変な意味は全くない。
そして、一日に何回もある休み時間と違い、一日一回限定の昼休みがやってきた。
ちなみに、姉ヶ崎保険医は昼食を摂りに席を外している。
「さて先輩。お昼にしましょう」
「……いつからそこに居た」
「……ふふふ、秘密です」
口元に人差し指をあて、『シー』のポーズを取る彼女。他の人間がやったら怖気が走った
かもしれない動作(言葉込み)も、彼女がやると妙に絵になった。
省6
29: 日常 04/10/30 19:08 ID:ZpiKchH6(15/30) AAS
「けど、俺は昼飯を持ってないぞ」
「分かってますよ、ですからぁ――」
そして、取り出す弁当箱――――と、購買のパン2点。
「はい、先輩」
続いて差し出される彼女の右手。ちなみに、手のひらが上になっている。
「……ひょっとして、代金か?」
省10
30: 日常 04/10/30 19:09 ID:ZpiKchH6(16/30) AAS
「ごちそうさん」
「はい、お粗末さまでした」
昼休みをだいぶ残し、昼食を終えた。まあ元々、そんなに量のある弁当じゃない
上に、それをふたりで分けたのだから、それも当然と言った所か。……まあ、
美味い弁当に箸がどんどん進んだというのもあるが……。ちなみに、
俺の箸は食堂で借りてきた物らしい。
……しかし、保健室で飲み食いしても良かったのだろうか。
「先輩、食後のお茶どうぞ」
といった俺の懸念も、この一言に反応した瞬間霧散してしまった。まあ、人間の
省5
31: 日常 04/10/30 19:09 ID:ZpiKchH6(17/30) AAS
「……やっぱ美味いな」
別に俺は紅茶党という訳でも、グルメという訳でもない。精々、家に時々置いて
あるパックのやつか、コンビニで売っている『午○の紅茶』(ペットボトル)を飲む程度だ。
しかし、そんな心得のない俺でもこれは美味いと思えた。
「本当ですか? あはは、嬉しいです」
まあ、淹れ方が上手いのか、美味い茶葉を使っているのか、あるいはその両方
なのかは知らないが。……多分、一番最後なのだろうけど。
「あ、すいません。ちょっとゴミ捨ててきちゃいますね」
省4
32: 日常 04/10/30 19:10 ID:ZpiKchH6(18/30) AAS
「あはは、大丈夫で――」
俺の言葉に受け答えしながら、座っていた椅子から立ち上がろうとした彼女が、
その椅子の足に自身の足を引っ掛けられる……なんて表現は被害者の見方で
実際には彼女が足を引っ掛けたのだが、ともかく。
半ばお約束のように、バランスを崩した彼女はゆっくりと俺に向かって倒れてくる。
俺には、それがひどくスローモーションで映った。人間、何からしらの
危機的状況に追い詰められると、驚異的な集中力を発揮し、それが普段眠っている
7割だか、8割だかの力……いわゆる、火事場の馬鹿力を発現させるという……。
それはなんと、ただの主婦が赤ん坊を引きそうにあった車をひっくり返すだとか、
省5
33: 日常 04/10/30 19:11 ID:ZpiKchH6(19/30) AAS
人ひとり分の重さは結構なはずなのに、あまり重たいと感じない彼女の存在。
距離にして、およそ10cmも離れていない位置に彼女の瞳がある。目が合った。
驚きで見開かれている。布団越しに感じる柔らかさ。……あの雨の日と同じ。
その香りも、ぬくもりも、それは変わらずそこにあった。
――――そして、合わさった俺の唇と彼女の唇――――
の、間に挟まった俺の右手。
ま、間に合った……!
心の奥底で安堵の言葉を紡ぐ。
彼女が覆いかぶさってくる直前、その軌道を熱に犯されているにも関わらず、瞬時に
把握した俺は、半ば反射的に自分の唇に右手の甲を滑り込ませた。
34: 日常 04/10/30 19:12 ID:ZpiKchH6(20/30) AAS
この時、もし俺が口に手のひらを当てていたら、彼女は硬い手の甲
へ顔面を打ちつけ、今頃悶え苦しんでいただろう……。今は日頃の部活で
鍛えられた俺の観察力と判断力を素直に褒めてやりたい。
なんて、俺がほんの少しだけ自身の功績に浸ろうとしているというのに。
ズイ
という擬音と共に、彼女との距離が更に狭まる……いや、だから近い! すげー近いぞおい!!
およそ10cmほど距離のあった俺と彼女の瞳がだんだんと近づいていく……9,8,7,6,5……
「お、おいちょ、何を――」
省6
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