[過去ログ] 戦隊シリーズ総合カップルスレ 3 (1001レス)
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946: 名もなき詩 2006/10/09(月)20:59 ID:Ze0ovNYc(2/7) AAS
 壁に反響する足音が、自分のものではないかのように、耳にこだまする。
定時後のミュージアム内を走り回って、オフィスエリアもプライベートエリアも
くまなく走り回って・・・わずかに入り口の隙間が開いた、格納庫にたどり着く。 
「菜月ちゃん・・・?」
 いた。誰もいない格納庫で、ゴーゴードリルを見上げている。どこかの不思議っ
子じゃあるまいし、機械と話ができるなんて知らなかったな。荒い息を整えて、
迷うことなく格納庫のドアを開ける。気配を消して、物音を立てずに近づくことも
できるんだけど、そんなことは、したくなかった。

僕を見て一瞬だけ顔を強張らせて、それでも唇の端を引き上げて笑おうとする
彼女が切ない。自分も笑えるか不安だったけど、それでもつとめて軽く声をかける。
「お迎えにあがりました、お姫様。」
 瞳が切なく揺れた。返事も聞かずにずかずかと近づいて、強引に抱き寄せる。
引き寄せられるがままの体がやるせなくて、でも愛しくて、思わず腕の中の存在を
確かめるように力をこめて抱きしめると、菜月ちゃんが微かにふ、と息をつくのが
わかった。
 「・・・真墨から、全部聞いた。」
 真墨の名前が出たとたん、腕の中の体がびくっと震える。声にならない声を上げ
て、反射的に僕から離れようとする体を、逃がすまいと抱きしめた。

・・・ごめん、菜月ちゃん。
心の中で、謝罪する。絶対離さないって言ったのに、結局僕は口先だけだった。
君にこんな思いをさせた。…僕に真墨を責める資格はないんだ。トリガーを引いた
のは、僕だったんだから。僕は馬鹿だ。自分勝手な独占欲で、首筋にこれみよがしな
痕なんか付けて。これがどんなに二人を苦しめるかなんて、考えてもいなかった。
何が「みんなを幸せにする冒険」だ。高き冒険者が、聞いて笑わせる。

・・・不意に腕の中のかたまりが身じろいだ。はっと気づくと、菜月ちゃんが
いつの間にか顔を上げて、僕の顔を静かに覗き込んでいる。
「・・・蒼太さん。泣きそうな顔してる」
・・・なぜ、君が微笑むの。どうしてそこで、君は笑うの。どうして、真墨や僕を
責めないの。ああ、君は誰よりも、心の強い冒険者だ。
思わずその頬に、許しを請うかのように、口付けた。
軽く、触れるだけのキス。

「体が冷え切ってる。帰ろう、菜月ちゃん。」
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