[過去ログ] 戦隊シリーズ総合カップルスレ 3 (1001レス)
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206: 2006/05/06(土)01:11 ID:/CLi1cPG(1/16) AAS
151です。
冒険赤桃の続編を投下します。
他カップリングをお待ちの方はスルーして下さい。
今回は前半が桃視点、後半が赤視点です。
207: ことのは、ひとつ 1 2006/05/06(土)01:12 ID:/CLi1cPG(2/16) AAS
――さくら――
夜になって降り出した雨が次第に激しさを増していく。その音を聞きながら、
さくらは暁の部屋の前に立っていた。
サージェスの寮の廊下は人の行き来を感知して灯りがつく。誰かがやって来れば
すぐに判るのだが、あと三十分もすれば日付が変わる今頃になって部屋の外を
歩く者などいなかった。さくらと暁の部屋は廊下の突き当たりに向かい合わせで
位置している為、他人に見咎められずに出入りしやすい。それら全てがさくらを
躊躇わせていた。
暁が無事に帰ってきた今、改めて何か言う必要があるだろうか。彼が生きてそこにいる、
それだけでいい筈だ。殴りつけて気も晴れた。自らにそう言い聞かせる一方で、
省6
208: ことのは、ひとつ 2 2006/05/06(土)01:12 ID:/CLi1cPG(3/16) AAS
意を決して顔を上げ、さくらはインターホンを押す。程なく暁が「はい」と応じた。
「…さくらです」
声が上ずるのが自分でも判る。唇を引き結んだその時ドアが開き、目の前に
暁の姿が現れた。洗い髪からシャンプーの、肌からボディソープの香りが
仄かに漂ってくる。さくらを促すと暁は踵を返し、その背中を見つめながら
さくらは室内へ足を踏み入れた。
「何か飲むか?」
ペットボトルを手にして暁が尋ねてくる。さくらは「いいえ」とかぶりを振った。
「お疲れのところ、お邪魔して申し訳ないです。すぐにお暇しますから」
暁を見つめてそう言うと、「そうか」と頷いた彼はペットボトルをくいと煽った。床に
省2
209: ことのは、ひとつ 3 2006/05/06(土)01:13 ID:/CLi1cPG(4/16) AAS
半年の間に何度も入ったこの部屋は、そこかしこに暁の気配が潜んでいる。此処で
暁の腕に包まれながら、漂うその気配を感じるのがさくらは好きだった。
だが、それも恐らく今日で最後だ。想いを隠したまま、これ以上体だけの関係を
続けることはできそうにない。だからと言ってもしさくらが暁への想いを伝えたら、
きっと彼は戸惑うに違いないのだ。
暁の傍らにいられるのなら、どんな形でもよかった。だがこの関係を断ち切ったあと、
何事もなかったかのような顔をして共に働くことはきっとできない。自分が
不器用な性格だという自覚は充分にあったし、何より――
そうするには、あまりに暁への想いが深くなりすぎていた。
「さくら」
省5
210: ことのは、ひとつ 4 2006/05/06(土)01:14 ID:/CLi1cPG(5/16) AAS
「お前に、言わなければならないことがある」
「…はい」
暁が何を言おうとしているのか、その様子から窺い知ることはできない。頷きながら
さくらは彼を見つめた。その視線を正面から受け止め、同じ声音で暁は続ける。
「今回のミッションは、賭だった。失敗したら生きて帰れないかもしれなかったからだ。
俺の命令一つでお前達を連れていくわけにはいかなかった。…一番の理由は、
さっき話した通りだけどな」
それはよく判る。そして、それでも共に行きたかったという思いが自分の我儘だということも
さくらは理解していた。だが、理解と納得は別者だ。そう思いながらさくらは口を開こうとしたが、
暁の方が一足早かった。
省5
211: ことのは、ひとつ 5 2006/05/06(土)01:14 ID:/CLi1cPG(6/16) AAS
「もしあのまま死んだら、後悔すると思ったことが一つだけある」
そう言った暁の視線が僅かに変わった気がしたが、その変化が意味するものを
さくらが推察するより早く、暁が思いがけないことばを発した。
「…お前のことだ。さくら」
「…私の、こと…?」
喉の奥が熱くなる。こみ上げそうになる涙をさくらは必死にこらえた。さくらの様子には
気づかないまま暁は続ける。
「この半年間、俺はお前をずっと苦しめてきた。お前の優しさに甘えて縋って、
どうしてもこの手が放せなかった。今更何を言うんだとお前は思うだろうが…」
視線を落とした右の掌をぐっと握りしめ、暁は口を噤む。そこにはまだ微かな迷いが
省3
212: ことのは、ひとつ 6 2006/05/06(土)01:15 ID:/CLi1cPG(7/16) AAS
「――好きだ、さくら」
(…え?)
――何を言われたのか、判らなかった。
「お前を初めて抱いたあの夜、どうしてもその一言が言えなかった。許されるとは思っていない。
好きなら何をしてもいいとも思っていない。だが、今俺がしなければならないのは、
本当の気持ちをお前に言って、一生かけて償い続けることだと思ったんだ。だから」
暁の声が途切れる。「さくら」と呼ぶ声に戸惑いが混ざるのを感じ、さくらは目の前にいる
彼の姿がぼやけているのに気づいた。頬が熱くなり、ぱた、とスカートが音を立てる。俯いたさくらは
手で口許を覆って嗚咽をこらえようとしたが、唇から零れる声を抑えることはできなかった。
「すまない、さくら。謝って済むことじゃないが、俺は」
省6
213: ことのは、ひとつ 7 2006/05/06(土)01:15 ID:/CLi1cPG(8/16) AAS
暁の姿がまたぼやけていく。しゃくり上げるさくらを暁が見つめているのは判るが、はっきりと
表情を見ることはもうできなかった。再び俯いてさくらは目を閉じる。溢れる涙を
出るに任せていた時、肩に置かれた暁の手に力が籠ったのをぼんやりと彼女は感じた。そのまま
強く抱きしめられる。さくらは暁の背中にしがみついた。
さくらの嗚咽だけが室内に響いている。髪を撫でてくれる暁の手から優しい温もりが
伝わってきた。本当にこれは現実なのだろうかと心の何処かで感じ、だがいっそのこと
夢でもいいとさえ思う。
抱きしめてくれる暁の腕が、確かに此処にあったから。
「…いいのか、さくら」
耳元で声が響く。腕の中から見上げると、思い詰めた瞳で暁が見つめてきていた。声を出せずに
省7
214: ことのは、ひとつ 8 2006/05/06(土)01:16 ID:/CLi1cPG(9/16) AAS
――暁――
闇から生まれるものなどないと思っていた。ただ虚しさだけが募っていくのだと、
さくらを抱くようになって暁は感じていた。だが今、二人を包む闇は仄かにあたたかく、
優しささえその内に秘めているように思える。想いが通じ合ったことがこれほどまでに
心持ちを変えてしまうとは、我ながら不思議な気分だった。
この腕の中に、さくらがいる。
まだ濡れている長い髪からは、風呂場にさくらが持ち込んだシャンプーやトリートメントの香りが
仄かに漂ってくる。だが次第に熱くなっていく肌からは、暁と同じボディソープの香りがした。
首筋、耳朶、鎖骨と少しずつ唇を押し当てる。何だかさくらの反応がいつもより敏感な気がして、
暁はさくらをじっと見つめた。
215: ことのは、ひとつ 9 2006/05/06(土)01:18 ID:/CLi1cPG(10/16) AAS
「チーフ…」
さくらは目を閉じたまましがみついてくる。華奢な彼女にしては意外に力が強かった。唇から
洩れる声もいつもより艶めいているように思える。暁はさくらの下肢へと手をやって
思わず息を飲んだ。
「や…チーフ…」
体をびくっと震わせ、さくらが弱々しくかぶりを振る。だが彼女の口調がいつもと異なることにも
構えないほど、暁自身が混乱していた。普段ならもう少し唇や指でさくらの体に触れるのだが、
既にその必要がないほど濡れていたのだ。さくらを抱くようになって半年が経ったが、
こんなことは初めてだった。
間違いなく、いつもよりさくらは感じている。その事実が暁をも昂らせた。初めてさくらから
省2
216: ことのは、ひとつ 10 2006/05/06(土)01:18 ID:/CLi1cPG(11/16) AAS
さくらがまた指を噛もうとしている。それに気づいた暁は彼女の手をそっと握った。うっすらと
目を開けたさくらに微笑みかけて暁は囁く。
「大丈夫だ。少しくらいなら聞こえないから」
さくらは「でも、チーフ…」とかぶりを振る。暁はさくらの頬に触れながら答えた。
「お前の声を、聞かせてくれ」
それでもさくらの躊躇いが消える様子はない。暁はさくらをじっと見つめ、その艶やかな黒髪を撫でた。
「お前がそこまで堪えようとするのは、俺のせいだな」
静かにそう問いかける。さくらははっと息をのみ、「違います」とかぶりを振った。暁の
意図しているところを正確に汲み取っている辺りいかにもさくららしい。
「そうまでしてみんなに隠そうとするのは、はじまりがああだったからだろう?」
省4
217: ことのは、ひとつ 11 2006/05/06(土)01:19 ID:/CLi1cPG(12/16) AAS
「もう、我慢しなくていい。二度とお前にあんな思いはさせない。約束する」
「チーフ…」
さくらが目を合わせてくる。小刻みに震えている唇にそっと触れ、暁は小さく囁いた。
「一人で、泣くな」
さくらの顔がくしゃりと歪んだ。その双眸から大粒の涙が零れ落ちていく。一人で泣かせていたのは
自分自身なのにと自らを嘲りながら、暁はさくらの涙を指で拭った。さくらは尚も泣きながら
唇を動かすが声にならず、暁はそんな彼女をじっと見つめる。さくらはようやく「チーフ」と
声に出したが、それ以上ことばが続かなかった。
「無理しなくていいんだぞ?」
見かねて暁はそう言ったが、さくらはかぶりを振って暁を見つめる。必死に唇を動かし、
省6
218: ことのは、ひとつ 12 2006/05/06(土)01:20 ID:/CLi1cPG(13/16) AAS
目頭が熱くなるのを暁はこらえた。泣きながらでなければ言えないほどにさくらの気持ちを
昂らせてしまったことが悔やまれてならない。どれだけ一人で苦しみ、泣きながら堪えてきたのだろう。
暁はさくらの頬に口付けた。溢れ出る涙を唇で拭い、頬に当てた右手で耳から髪を撫でる。その感触に
落ち着きを取り戻したのか、さくらの呼吸が穏やかになってきた。やがて目を開けた
さくらを見つめ、暁は微笑んで言った。
「好きだ。さくら」
また泣くだろうかと思いながら、暁はさくらの髪を撫で続ける。だが、さくらはその大きな目で
じっと暁を見つめると。
涙に濡れた瞳のまま、柔らかく微笑んだ。
既に今年は盛りを過ぎた、彼女と同じ名を持つ花を思い起こさせる微笑み。それはさくらにしか
省2
219: ことのは、ひとつ 13 2006/05/06(土)01:20 ID:/CLi1cPG(14/16) AAS
そっと交わした筈のキスが、次第に貪る如き激しいものへと変わっていく。絡め合う舌に
互いの熱を感じながら、暁はさくらの中へと己を突き立てた。途端にさくらが声を上げて
体を震わせる。いつもなら彼女の緊張を解きほぐすべくゆっくりと行動に移すのだが、
さくらが気を失ったあの時と同様、暁自身にその余裕がなかった。さくらの華奢な体を
何度も突き上げる。その動きに合わせてさくらが短く悲鳴を上げた。
「チー、フ…や、あっ…」
「さくら…」
より強くしがみついてきたさくらの目にまた涙が浮かぶ。暁は動きを止め、その涙を指で拭った。
「すまない…歯止めが、利かないんだ…」
そう言った暁に、さくらは小さくかぶりを振った。苦しげな息の下から彼女は答える。
省10
220: ことのは、ひとつ 14 2006/05/06(土)01:21 ID:/CLi1cPG(15/16) AAS
気休めにしかならないだろうか。そう思いながら言ったことばはさくらに届いたようだった。心細げな
様子が薄れ、さくらは小さく頷いた。暁は再び、だが今度はゆっくりと動き始める。さくらの体から
力が徐々に抜けていき、やがて彼女は暁の動きに身を任せて声を上げ始めた。艶やかなその響きが
暁をも満たしていく。
「チーフ…チーフ…!」
「さくら…!」
互いに呼び合う声だけが耳に届く。胸の中のこの想いを、どうやっても伝えきれない。
きっとそれは、さくらも同じ。
貪るように口付けて、互いに全てを与え合う。心を通わせての秘め事が、暁とさくらを
静かに満たしていった。
省12
221: 2006/05/06(土)01:22 ID:/CLi1cPG(16/16) AAS
以上です。
お付き合い、有難うございました。
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