[過去ログ] 【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 2冊目 (889レス)
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888: 2008/04/06(日)07:04 ID:C7WXaiDh(1/2) AAS
んでは埋めに>827の続きでも。やっぱり青臭いジュウ雨。

 恣意的な解釈の入り混じって不安定な記憶を頼りにするならば、甘ったるい幻想に浸ったことなど
少なくとも中学以降は確実にないと思う。控え目に言っても高校以降。だと言うのに俺の寝覚めは
奇妙に安らいでいて、それは正しく甘ったるい眠気だった。起こした身体には寝汗もなく、ぼうっとする
頭も不快なほどのそれじゃない。十分な睡眠の後で自然と覚めた目、覚めた身体。どうしてこんなに
落ち着いているのか、どうにも理解が追い付かない。
 起き抜けは脳みそが情報をどこかに置き去りにしている、と俺はよく感じる。基本的な、刷り込まれた
ように染み付いたパーソナルデータこそ簡単に引き出せるが、それ以外となるとからきしだ。
具体的には、自分の名前は言えても、寝る直前の行動は思い出せない――とか。今日が何曜日
だったか。何時に寝たか。窓から入り込む日差しは明るく、太陽は中天に差し掛かっている。
省35
889: 2008/04/06(日)07:04 ID:C7WXaiDh(2/2) AAS
 むしろ脱がそうとしたのか。
 にやにやと笑うお袋を無視して部屋を見渡すと、なるほど机に向かう椅子の上に、綺麗に畳まれた
セーラー服が置いてあった。その上にはシンプルな下着がくるりと丸められている。思わず視線を
逸らして、俺は殴られた頬を押さえた。熱をじんじんと溜めて行く皮膚とは別に、頭は冷静になっていく。
そう、思い出してきた。朝に眼を覚まして、雨が来て、そして、一緒に。
 思い出してみれば何の疑問もない。隣に眠っていたから何事かと動揺しただけのことだ。ふうっと息を
吐いて、俺はお袋を見上げる。携帯用の灰皿をポケットから出す途中だったお袋は、俺の目に気付き、
一瞬逡巡してから――煙草を指に挟み、あろうことか煙を思いっきり吹き掛けてきた。

「ッ、何すんだ」
「可愛げがなかったんでついな」
省29
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