[過去ログ] 【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 3冊目 (1001レス)
上下前次1-新
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
次スレ検索 歴削→次スレ 栞削→次スレ 過去ログメニュー
965: ai 2009/05/13(水)20:44 ID:NEVb1Pwq(3/11) AAS
端的に言うと、赤。
彼女の右太ももの辺りにまっすぐ一文字に切られた跡があり、そこから下が鮮血で染まっていた。白い靴下であえも半分ほど赤い。かなりの出血だ。
「……不覚です」
そういう切彦の顔は痛がってる風でもなく、ただ無表情を貫いていた。
とりあえず応急処置を……。
真九郎は急いで彼女を寝かし、立ち上がらせる前の状態に戻すと、ポケットからポケットティッシュをとりだすと、血をふき、さらにハンカチを引っ張り出してそれを巻きつける。
とりあえず医者に……、とケータイを取り出して山浦医院の番号を押そうした、そこで背後の気配に気がつく。
五人……いや六人か。
多勢に無勢である。しかも重症患者を守りながら、の。
切彦もそれに気がついたのか表情を変えた。もちろん、曇り。そして小さくつぶやく。
「……わたしはいいから……にげてください……」
その声は自分がきいた数少ない切彦の言葉の中でも、一番弱々しく、そして雨季の雲のように濁っていた。
「逃げれるわけ……」
真九郎がそういいかけたところで、背後の気配が強まり、言葉を止めた。やがて、革靴が地面を叩く音がした。そしてだんだん、複数の気配が接近し――
首筋に電流が走った。
真九郎が気がつくと、あたりは暗く、ただ一点、天井から吊るされた裸電球がまばゆく、はかなげに光っていた。
ゴウンゴウン、と壁の向こうで機械の唸る音がしていて、なんとなく過去のあの事件、真九郎と紅香を出会わせた、あの事件。アレを思い出させるような環境のなかに、真九郎はいた。
そこまでしてはっと気がついたのは、やはり睡眠不足のせいか。それともなにか睡眠薬でも飲まされたのか――あたりをキョロキョロと観察する。
いない。彼女が、いない。
あのときと同じなのだったら、ここにいそうなものだが。逆にいえば、いたら、そういうことなのかもしれない。
真九郎は縛られた手をなんとか挙げる。上手く動かない――おそらくそういうクスリだろうか――のに苦戦しつつも、裸電球を揺らして、サーチライトの如く光をちりばめた。
切り取られた地面が真九郎の眼にうつった。その片隅に、
――いた。
茶色い髪が見えた。それを束ねているリボンも、だ。
そこには、斬島切彦が横たわっていた。
上下前次1-新書関写板覧索設栞歴
あと 36 レスあります
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル
ぬこの手 ぬこTOP 0.151s*