[過去ログ] 【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 3冊目 (1001レス)
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12: 伊南屋 ◆WsILX6i4pM 2008/04/12(土)18:14 ID:GEMnWOlU(1/11) AAS
最終回スペシャル
――開始。
13: 伊南屋 ◆WsILX6i4pM 2008/04/12(土)18:15 ID:GEMnWOlU(2/11) AAS
『彼と彼女の非日常』
Z.
「……ここか」
はぁ、と溜め息を吐く。
ここが、あの揉め事処理屋・柔沢紅香の家だとは俄かには信じがたかった。
普通――全くの普通だ。
強固なセキュリティも、頑強なガードマンもない。
暫く観察した限り、特異な住人が居るわけでもない。
不戦の協定は流石に分からないが――本当に普通のアパートだった。
「しかしまぁ……だからこそって事なのかな?」
省39
14: 伊南屋 ◆WsILX6i4pM 2008/04/12(土)18:16 ID:GEMnWOlU(3/11) AAS
子供について決して多くは語らない紅香。そんな彼女が何度か自分の子供を評した言葉。
『弱い奴だよ。いつまでも泣き虫で、餓鬼のままだ』
――弱い、弱い人間であると紅香は言っていた。
そのイメージからは、かけ離れていた。と言うことは紅香の子供ではないのだろうか?
或いは紅香の子供の友人というラインも考えられるが――。
「――考えても仕方ない……か」
兎に角、紫本人から聞かなくては。真意を――本心を。
「ごめん下さい!」
再びチャイムを鳴らす。いくらか待って、扉が開いた。
再び金髪の少年が現れ、真九朗を睨み付ける。それに怯む事なく、真九朗は言った。
省32
15: 伊南屋 ◆WsILX6i4pM 2008/04/12(土)18:18 ID:GEMnWOlU(4/11) AAS
「なっ……おま……何してっ!?」
混乱する。今、目の前で何が起きた?
後頭からでは表情は窺えない。はたして、どんな表情で――どんな想いで少年の行いを受け入れているのか。
――後悔。
後悔、後悔、後悔。
少年の言う通りだった。胸に渦巻くのは激しい後悔。
こんなもの――見たくなかった!
頭に血が昇り何も考えられなくなる。
ただ、真九朗の心を内から染める感情は――怒り。
何故自分が怒っているのかも分からないままに、真九朗は激情のみを糧にジュウに殴りかかろうと――。
省34
16: 伊南屋 ◆WsILX6i4pM 2008/04/12(土)18:20 ID:GEMnWOlU(5/11) AAS
「紫……」
真九朗の胸に渦巻くのは、やはり後悔だった。紫との長い関係の中で与え続けてきた不安。
守れば良いと、そう思っていた。しかしそれは違うのだと気付かされた。
紫は望んでいるのだ。対等な関係を。守られてばかりではない、互いの関係を。
それと、不安。
想ってくれているのは知っていた。そして、それに甘えていた。
紫が嫉妬して、居なくなるなんて思いもせずに、周りの好意に甘えていた。
「ごめん……」
自然と漏れた謝罪の言葉だったが、紫が表情を和らげる事はなかった。
「……言葉よりも態度で、態度よりも行動で示せ」
省31
17: 伊南屋 ◆WsILX6i4pM 2008/04/12(土)18:21 ID:GEMnWOlU(6/11) AAS
その時はその時だ。思う存分ぶつかってやろう。
「ちゃんと、あの二人は仲直りできたんだよな?」
「はい」
「なら、良かった」
心からそう思える。
ぶつかり合う事で分かり合えるその証があの二人だ。だから、ちゃんと笑い合えるようになって貰わなくては困るのだ。
それから――部屋の中から笑い声が聞こえるまでは、そう長くなかった。
終
18: 伊南屋 ◆WsILX6i4pM 2008/04/12(土)18:22 ID:GEMnWOlU(7/11) AAS
『Radio head Reincarnation・Z』
――いつかの記憶。
「幸せ……かい? そうだね、一応は幸せだと思うよ?」
「え? 幸せになる方法? そうだな……努力して手に入れるしかないんじゃない?」
「……へぇ。そうか、君はそう思うんだね?」
――笑顔。
「じゃあ、僕が手伝って上げよう。なに、気にしなくて良い。これは僕にとっても利益のある事だ。だから――」
「頑張って、幸せを貯めるんだよ」
省29
19: 伊南屋 ◆WsILX6i4pM 2008/04/12(土)18:25 ID:GEMnWOlU(8/11) AAS
「お前がばらまいた不幸なんて塗り潰す位に私が幸せを振り撒くからだ。お前は指くわえて、お前以外の人間が幸せになるのを眺めてろ」
「……あなたも、私から幸せを奪うの」
「それは違うな。幸せの量なんて決まっちゃいない。いつか、世界が幸せで溢れる時だって来るかも知れない」
一子を真っ直ぐに見つめ、闇絵は強く言い放つ。
「絶望するのは早すぎる。いや、いつだって絶望なんて必要ないんだ」
希望に溢れた言葉が一子には届いたのか、それきり黙り込んだ彼女から、伺い知ることは出来なかった。
† † †
「以上が事の顛末。その報告だ」
「ご苦労様です」
闇絵から一部始終を聞き終えた可奈子は、事務的に答える。
省24
20: 伊南屋 ◆WsILX6i4pM 2008/04/12(土)18:28 ID:GEMnWOlU(9/11) AAS
「彼女を使って、国に混乱を起こそうとしたのではないかと、騎士団長は判じました」
優秀で、それでいて王に走狗のように付き従う騎士団長の判断を、可奈子は同意をもって受け入れていた。
如何に馬が合わなくとも、その能力は認めるに値すると可奈子はそう信じている。
だからこそ、危機感が募る。
「王族が、自ら暗躍する程に目の敵にされている。それ位に買った恨みは深い」
「運命の犠牲になって、尚、戦争の犠牲になったか――救えないな」
やれやれと溜め息を吐いて、闇絵はソファから立ち上がる。
「お帰りですか?」
「ああ。話すことは話したし、聞きたいことは聞いた。要件は全て済んだ」
「そうですか」
省31
21: 伊南屋 ◆WsILX6i4pM 2008/04/12(土)18:30 ID:GEMnWOlU(10/11) AAS
争いが近い。見えないけれど、目の前にそれはある。
確かめる事は出来ないけれど、確かにそれはある。
やがて、戦火に飲まれ、不幸が押し寄せるだろう。
それでも、絶望したくは無かった。
そのために、今は戦う術を練る。
それは偽善かもしれないけど、確かな、人間としてのの願い。
――いつか、もっと大きな幸せが溢れるという、優しい願い。
終
22: 伊南屋 ◆WsILX6i4pM 2008/04/12(土)18:35 ID:GEMnWOlU(11/11) AAS
はい毎度、伊南屋に御座います。
ようやく両編完結。お付き合い下さいました皆様、お疲れ様でした。そしてありがとうございます。
勢いで書き上げた感が強いので、読めるレベルであるかは自信がありません。
それでも楽しんで頂けたのならばそれに勝る幸せはありません。
次は夕乃さんをヒロインらしく掘り下げてみたいな、とか思ってます。
あまりにネタキャラ扱いされすぎて不憫なので。
と言っても未だ構想もクソもない状態。いつになるかは全く不明です。
そんな次回作の展望を交えながら、伊南屋でした。
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