[過去ログ] 煩悩の十二国記*十四冊目 (1002レス)
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17: 浩瀚×祥瓊 雪 2011/02/03(木)07:31 ID:o+8sYHV7(7/14) AAS
人気が無い事を驚いたように回りを見回す。
「祥瓊を置いて行くから」
そのつもりで祥瓊と共にここに来ていた。陽子の言葉にほっとした顔をした祥瓊は、首を横に振った浩瀚を見て再び表情を曇らせた。
「女史の手間はいりません」
浩瀚が陽子に話す。
「先程、虎嘯が見舞いに来てくれました。桂桂をよこすよう頼んでます。…女史は主上のおそばに」
はっきりとした言葉にそうか…と頷くしかできなかった。なにか…違和感…陽子が眉を潜める。
祥瓊と共に建物を出て…気がついた。
浩瀚は一度も祥瓊を見なかった。
季節が変わる。浩瀚がたまに顔をしかめながらも朝議にでれるようになったのは、風が冷たくなるころだった。
冢宰襲撃はそれなりに全土に衝撃を走らせた。さらに、禁軍の青将軍が動いた。緊張させるのには充分で、つつがなく年貢は納められた。
怪我のなんたらだったなとからかわれ、浩瀚は苦笑いした。
何事もなかったかのようにまた日々が動き出す。浩瀚は自分の居るべき場所…そこに戻れた事をさすがに天に感謝した。
風が冷たくなった。窓が風で震える。浩瀚はゆっくりと窓に寄った。そして…木の影に立つ影を見つめる。
気がついたのは、何日か前だった。夜更けふと手洗いに起きた時、外にいるのに気がついた。
いつから立っていたのか…いつまで立っているのか…。
秋から冬に向かう樹々の間で、青い髪はとても寒々しく心細そうに見えた。
「戻りなさい」
扉からそう言った。ただ一言だけ告げて、部屋に戻った。建物に入れる気は無かった。しばらくうなだれて、樹々の間に消えていく。
それが、毎夜続いた。窓から祥瓊を見つめる。…蕾に戻るなら…戻ればいい…。そう思っていた。…なにも知らないことにはできないが…あの華なら、蕾に戻ってもまた、美しい華を咲かすだろう。自分の手じゃなくても。
そう思い、苦いものが上がる。あの華を手折ったのは自分で、しかもいまだ、ひどく魅かれていることを自覚しているのだ。
なにか話す事があったら来いと伝えた。でも、その夜来なかった。…避けられて…話す事もできず…そして離れた。
ふと…思った。もし、自分が死んでいたら…あの娘はどうしただろうか…。外に立つ事もせず…ただ蕾にもどったのだろうか…。そう考えて自虐的に笑った。悲しんだり泣いたりして欲しいのかと…ひどく自分が浅ましく感じられた。
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