[過去ログ] 【俺の妹】伏見つかさエロパロ19【十三番目のねこシス】 (1001レス)
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566: 風(後編) 9a/63 2011/06/18(土)13:41 ID:ND8G9piy(26/52) AAS
それでも俺は、ささやかなるレジスタンスを試みた。
「でも、三時ですか……」
「高坂さんもわたくしも、午前中は外せない講義がありますから、ちょっと大変でしょうね。その点は申し
訳なく思います」
畜生、憂いを帯びた眼差しでそんなことを言われるなんて、反則だ。
俺は、時間を逆算してみた。午後二時半までに保科さん宅へ到着するとして、午後二時には身支度して
下宿を出なければならない。あやせの身支度にどれだけ掛かるか知れないが、一時間は見ておかないときつ
いだろう。そして、新幹線の中央駅から下宿までが四十分、大学から中央駅までが二十分。
講義が終わったら、速攻で中央駅に向かい、あやせをピックアップして下宿に行き、あやせは和服の着付
け、俺はスーツに着替える。それだけで、十分ほどのビハインドだ。だが、下宿からタクシーを使えば、間
省3
567: 風(後編) 9b/63 2011/06/18(土)13:43 ID:ND8G9piy(27/52) AAS
「何なら、高坂さんのご自宅へお迎えの車を手配致しますが……」
「あ、い、いえっ! それには及びません。妹と二人でタクシーにでも乗って、お伺い致します」
そこまでしてもらえるなんて心苦しいし、万が一だが、あやせが着付けに手間取って、それが終わらない
うちに迎えの車が来たりしたら赤っ恥だからな。ここは、時間に遅れないようにしながらも、マイペースを
キープしたい。
「分かりました。では、当日は宜しくお願い致します」
そう言い残して、保科さんは、すぅ〜と、舞うような優雅な足取りできびすを返し、俺たちの前から立ち
去った。
彼女の残り香なんだろうか。花の香りとも果実の香りとも違う、独特の匂いが辺りに漂っていた。
省1
568: 風(後編) 9c/63 2011/06/18(土)13:45 ID:ND8G9piy(28/52) AAS
「お、おいっ! 高坂! い、今の人は何者なんだ?! その招待状は何なんだよ?!」
陶山の素っ頓狂な声で現実に引き戻された。
多分、普段は沈着冷静な陶山が、目を剥いて俺に詰め寄ろうとしている。
一方で、陶山の相方である川原さんは、目が点で、口をぽかんと開けたまま呆然としている。突然現れた
保科さんに毒気を抜かれたのか、それとも俺の変わり身の早さに呆れているのかも知れない。
「あ、ああ……、さっきの人は、保科隆子さんっていって、法学部の同級生だ。と言っても、先日妹と一緒
に大学の近くの禅寺で出くわした程度の仲でしかないんだがな……」
「ほ、保科さんって……。まさか……」
陶山と川原さんが目を丸くして、互いに顔を見合わせている。どうやら、ジモティにとって、“保科“の
省5
569: 風(後編) 10a/63 2011/06/18(土)13:48 ID:ND8G9piy(29/52) AAS
「由緒正しき家柄ってわけか……」
「でもね、この辺のお寺や神社に顔が利くらしいことは有名なんだけど、正直、何が生業なのか、あたし
たち地元の人間もよくは知らないのよ」
「何だか、ミステリアスなんだな」
「うん……。伝説の域を出ないんだけど、そんな話もなくはないんだよね……」
川原さんは、ちょっと目をつぶって、頭を左右に軽く振った。それは、あたかも貧血か何かでふらふら
しているような感じだ。
省4
570: 風(後編) 10b/63 2011/06/18(土)13:50 ID:ND8G9piy(30/52) AAS
「何だよ、さっきの人は、にこやかに笑っていただけだってのに……」
「でも、なんつぅか……。高坂くんの前で申し訳ないんだけどさ、目に見えない圧迫感みたいなもんを感じ
たんだよね。何でだろう……。でも、彼女って、すごくいい笑顔なんだよ。あたしが変なのかな……」
「疲れているのさ。昨日、また夜更かしでもしたんだろ。きっとそのせいだ」
「う……ん」
さっきまで元気いっぱいの川原さんが、塩をまぶされた青菜のように生気を失っている。
どういうことなんだろうね。
そういや、あやせの奴も笑顔の保科さんのことを、『嫌な感じ』とか言っていたな。あの時は、あやせの
嫉妬なんだろうが、川原さんの場合はそれじゃ説明がつかない。
省2
571: 風(後編) 10c/63 2011/06/18(土)13:52 ID:ND8G9piy(31/52) AAS
陶山が頷いたのを認めて、俺は料理を受け取る配膳口のすぐ脇にある給水器に急ぎ、そこで冷たい水を
コップに注いで取って返すと、コップを川原さんに手渡した。
「あ、ありがとう、高坂くん……」
川原さんは、俺が差し出したコップを受け取ると、一口か二口、口に水を含んだ。
「ふぅ……。少し落ち着いたみたい……」
川原さんが、ようやく微笑した。川原さんもなかなかの美人だから、笑顔になると一段と魅力的だ。
しかし、彼女は気になることを言いかけていたよな。
省4
572: 風(後編) 11a/63 2011/06/18(土)13:54 ID:ND8G9piy(32/52) AAS
陶山が川原さんをたしなめるように言っているところを見ると、あまりよい話じゃなさそうだ。なにせ、
鬼女がらみだからな。
「う……ん、はっきり言って荒唐無稽なおとぎ話だよね……」
そこまで言いかけて、川原さんは、許可を求めるかのように、陶山と俺の顔を交互に窺った。
陶山は、口をへの字に曲げている。だが、俺は、
「どんな話なのか、俺は聞きたい。川原さんさえよかったら、ちょっと聞かせてくれ」
「いいけど……。真に受けないで欲しいわね」
省4
573: 風(後編) 11b/63 2011/06/18(土)13:56 ID:ND8G9piy(33/52) AAS
「でね、調伏された鬼女は一族共々改心して、この地方を守護する存在になり、いつしか里の者からも崇め
られるようになった。さらには鬼女の一族の一人は妖力で人化、つまりは人になって、里の者と融合したっ
て話……」
「オチが俺にも読めてきたんだが、その人化した鬼女一族の末裔が、保科家とかってんだろ?」
「そういうこと……。でも、根拠のない与太話でしょうね。保科さんの家はこの地方の主な寺社に顔が利く
ようだけど、遠い祖先が今は祭神となった鬼女の一族だってことにして、自ら神格化を図ったような感じが
するのよ」
「一種の箔付けみたいなもんか?」
だとしたら、安っぽい話だな。実際、鬼とか鬼女とかが実在するわけがねぇもの。
省2
574: 風(後編) 11c/63 2011/06/18(土)13:58 ID:ND8G9piy(34/52) AAS
なるほどね……。傍系とはいえ祭神とつながりがあることにすれば、寺や神社から税金みたいなもんを
徴収する際のステータスにはなるだろうな。
そして、保科家と寺社との関係は今も続いているんだろう。俺は、禅寺で出会った保科さんが、『和尚様
にお届け物』と言っていたことを思い出した。
「でもさぁ、亮一も知らないかも知れない、もっと変な話があるんだけどぉ……。あ、二人とも頭をもう
ちょっとこっちに……」
川原さんの声をひそめた前置きで、俺と陶山は、心持ち川原さんに顔を近づけた。
「何だよ、勿体つけやがって……」
「いや、あんまりおおっぴらに話せる内容じゃないのよ。で、本題だけど……」
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