【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 5冊目 (775レス)
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736: [sage saga] 2016/12/01(木)01:14 ID:qO1WsCuS(21/43) AAS
「だが、な...真九郎。今から聞く質問には真剣に答えてくれ」
「お前と出会ってからの数ヶ月、大変な事が沢山あった」
「竜士兄様のこと、理津のこと、切彦のこと、そして夕乃とのこと」
「その度に私もお前も窮地に陥りながら、なんとか切り抜けてこられた」
「真九郎の言葉とその想いに私は何度も救われた」
省7
737: [sage saga] 2016/12/01(木)01:15 ID:qO1WsCuS(22/43) AAS
午後九時
「こんばんは。紫ちゃん」
「こんばんはだな。夕乃」
静かに扉を開け、真九郎と紫の部屋に入ってきた夕乃は真九郎を
一瞥することなく、ただ紫だけを見つめていた。
「真九郎さん。私は今から紫ちゃんとお話しをします」
省6
738: [sage saga] 2016/12/01(木)01:15 ID:qO1WsCuS(23/43) AAS
「ねぇねぇ真九郎君。紫ちゃん一人にして大丈夫なの?」
「夕乃ちゃん。今までに無いくらいヤバい感じで極まっちゃってるよ?」
「分かってます。でも、俺は夕乃さんのこと信じてますから」
「まぁ、真九郎君がそういうならいいんだけどさ〜」
廊下で事の顛末を見守る環と二、三言葉を交わした真九郎は、二人の
省6
739: [sage saga] 2016/12/01(木)01:15 ID:qO1WsCuS(24/43) AAS
「夕乃よ。真九郎とのことを話す前に一つ聞かせて欲しいことがある」
「なんですか?」
「夕乃は私のことをどう思っているのだ」
「どう思ってるって、それは...」
「恋敵か?それとも表と裏の因縁ある家系の子供か?」
省6
740: [sage saga] 2016/12/01(木)01:16 ID:qO1WsCuS(25/43) AAS
「真九郎さんを手に入れた後、貴女のことを伝えられました」
「貴女を手に入れる為に、私に自分と名字を一緒にしろと」
「私の懇願を最後まで撥ねつけた上で、貴女を捨てられないから、と」
「最後まで貴女の未来に対して責任があると、貴女を案じていました」
紫の質問に淡々と答えながら、夕乃は真九郎が自分に言い放った
省7
741: [sage saga] 2016/12/01(木)01:16 ID:qO1WsCuS(26/43) AAS
「そうか...。夕乃よ、だとすれば私は貴女に謝らなければならないな」
「すまぬ。私のせいで夕乃の心を深く傷つけてしまった」
紫は真九郎の本心が本当だった事に安堵しながらも、同時に自分の
せいで夕乃の恋が成就とはほど遠いものになったことを薄々感づいていた。
自分が他人の人生の足を引っ張ったことに対する責任の取り方を
省14
742: [sage saga] 2016/12/01(木)01:16 ID:qO1WsCuS(27/43) AAS
「もっと簡単にいきましょうか。私は、貴女のことが憎いです」
「好きか嫌いか、と聞かれれば...そうですね、やっぱり嫌いです」
曖昧に濁された質問の答えを、あえてはっきりと断言した夕乃の瞳には
情の一欠片も残されていなかった。
人間味を一切廃しながらも、半端でない程の強烈な怨みの感情が
省11
743: [sage saga] 2016/12/01(木)01:17 ID:qO1WsCuS(28/43) AAS
「嫌いな理由というのは、これは私の個人的な感情ですけど...」
「同族嫌悪的な感情を私は貴女に感じています」
「同族、嫌悪?」
「私は、あまり自分を夕乃と似ていると感じたことはないが?」
やっとのことで絞り出したその声は夕乃の耳に届くことはない。
省12
744: [sage saga] 2016/12/01(木)01:17 ID:qO1WsCuS(29/43) AAS
「でも、一番は、私よりも先に真九郎さんの心を手に入れたから」
「これが私が貴女を嫌う理由ですね」
「そうか...」
そう、夕乃に言われなくても全部理解しているのだ。
自分が奥ノ院の宿命から逃げたせいで夕乃は苦しんでいる。
省14
745: [sage saga] 2016/12/01(木)01:18 ID:qO1WsCuS(30/43) AAS
例え、紫の心が砕けようと夕乃が止まることはない。
何故なら今の夕乃は恋に狂ってまともな精神状態ではないのだから。
「貴女が真九郎さんと添い遂げようとすると、また軋轢が生じます」
「わかりやすく言うと、九鳳院の九割が今度は真九郎さんの敵になります」
「崩月を預かる身としては、これ以上の厄介は抱え込みたくありませんが」
省11
746: [sage saga] 2016/12/01(木)01:18 ID:qO1WsCuS(31/43) AAS
「いいえ。今度ばかりはそうなります」
「だって、貴女が人質に取られれば真九郎さんは何も出来なくなるからです」
「そうなる前に、貴女は現実を知るべきでは?」
「くっ...だが、そ、そうなるとはまだ決まったわけでは...」
「なら、今度は自分から進んで九鳳院の役目を果すと?」
省11
747: [sage saga] 2016/12/01(木)01:19 ID:qO1WsCuS(32/43) AAS
「夕乃は、卑怯だ!」
「私だって本当は九鳳院みたいな所に生まれたくなかった!」
「普通の家庭に生まれて、普通の家族と普通に過ごしたかった!」
「友達を作って!好きな人に恋をして!楽しいこと一杯やって!」
「家族が一人も欠ける事無く、全員で仲良くしたかった!」
省12
748: [sage saga] 2016/12/01(木)01:19 ID:qO1WsCuS(33/43) AAS
「貴女は九鳳院で私は崩月の一人娘」
「そして真九郎さんは私達崩月が育て上げた戦鬼」
「いずれ、あの人は近いうちに望もうと望むまいと人を殺める筈です」
「どこかの財閥と関わったばかりに...なんてことでしょう」
「夕乃...お前....!!」
省5
749: [sage saga] 2016/12/01(木)01:24 ID:qO1WsCuS(34/43) AAS
夕乃が真九郎を信じるように紫もまた真九郎のことを信じている。
優柔不断ですぐに泣くが、本当は誰よりも弱さに逃げずに立ち向かう
勇気を持つ男。紫にとって真九郎はそんな男だった。
だから、迷うことなく自信を持って答えを出せる。
自分は真九郎を信じるという、たった一つの真実を。
省8
750: [sage saga] 2016/12/01(木)01:25 ID:qO1WsCuS(35/43) AAS
完敗だった。
ここまで堂々と高潔に、純粋に真九郎への想いを叫ばれては、もう
これ以上、夕乃が紫を否定することは出来なくなってしまった。
紫は目をそらさない。
この会話が始まってからずっと、ずっと現実から目をそらさずにいる。
省17
751: [sage saga] 2016/12/01(木)01:25 ID:qO1WsCuS(36/43) AAS
「夕乃!私は九鳳院だ。それは変えようがない!」
「だが、九鳳院以上に真九郎が大事なのが私の本心だ!」
「真九郎がいれば、私は何でも出来る。不可能だって可能にしてみせる」
「いや、それ以前に私は、私の力で真九郎の力になってやりたい!」
真九郎が自分を未来へと導いてくれた。
省5
752: [sage saga] 2016/12/01(木)01:25 ID:qO1WsCuS(37/43) AAS
「夕乃。私を真九郎の側にいさせてくれ!」
「どんな形でも良い!私は真九郎の側にいるのが一番の幸せなんだ」
そうだ。私は今までなにを遠回りしていたんだろう。
たとえ真九郎と結ばれなくても、ずっと、どんな形であっても
愛する人を支えたい。そう思っていたはずだったのに.....。
省8
753: [sage saga] 2016/12/01(木)01:26 ID:qO1WsCuS(38/43) AAS
畳に手をつき、頭をつけた土下座をする紫を起こしながら、夕乃は
僅かに残った涙をぬぐい、最後に残った心の闇を綺麗に清算した。
真九郎は結局自分だけを見てくれなかった。
けれど...
「...完敗ですよ。はーぁ、本当に負けました」
省12
754: [sage saga] 2016/12/01(木)01:26 ID:qO1WsCuS(39/43) AAS
夕乃の豹変に戸惑いながらも、紫は自分が認められた嬉しさを
隠すことなく夕乃へとぶつけた。
夕乃も紫に対して抱いていた心の闇がなくなった今、目の前の
少女に対して、かつて真九郎に対して抱いていた庇護欲のような
感情がわき上がってくることを自覚した。
省12
755: [sage saga] 2016/12/01(木)01:27 ID:qO1WsCuS(40/43) AAS
「さて、そうと決まれば騎馬に連絡せねば」
「何を連絡するんですか?」
床に散らばる携帯電話の残骸を見遣りながら、紫に何気なく尋ねる。
これから私も真九郎さんのように、紫ちゃんに振り回される毎日を
送るんだろうなぁ。としみじみと思いながら物思いに耽る夕乃が
省11
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