【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 5冊目 (774レス)
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594: 2015/05/10(日)01:27 ID:XOCQ2ktg(3/4) AAS
騎馬はいなかった。
五月雨荘の前の通りには野良猫が一匹座っているだけ。
部屋に戻り電話をかけるがつながらない。
「紫、泊まって…いくか?」
幸い今日は土曜日、翌日に学校はない。
紫は黙って小さくうなずいた。

来客用の布団を自分の布団の隣に敷きながら真九郎は初めて
紫の左手の薬指にはまった指輪に気が付いた。
紫色の小さなガラス玉でかたどられた花の飾られた指輪。
真九郎の小指にさえはまらないような小さな指輪。
真九郎の視線に気が付いた紫は慌てて指輪をはずそうとするが、
指が滑るらしくなかなか抜けないらしい。
焦って、涙目になって指輪を引っ張る紫を真九郎は思わず抱きしめた。
「ごめんな、紫。ごめんな」
「違う。真九郎は悪くない。私が勘違いをして勝手に浮かれていたのだ」
「ごめん」
「私が悪いのだ」
「…俺は紫が大事だ」
「うん」
「紫が必要だ」
「うん。それだけでいい。私も真九郎が大事で、真九郎が必要だぞ」
涙目の少女は微笑んで言った。
真九郎の頭は真っ白になる。
大きく息を吸い込む。
状況に流されてはいないか、冷静でないのではないか。
しかし、真九郎の中に昂った熱が退くことはない。
冷静でないからなんだというんだ。
分かっていたはずだ。
自分にとって誰より何より大切なのはずっと一人だった。
真九郎には世界が滅ぶとしても優先しなくてはならない存在がいた。
分かっていたはずだ。
相手は小学生で大財閥の令嬢で誰からも愛される美少女。
かたや自分は未熟な甲斐性なし。
彼女の未来を潰していいはずがないのに。
それでも真九郎の欲望は止まらない。
生きるために紫を求める。
「紫、その指輪外さないでいてくれるか」
紫は潤んだ瞳を見開く。
「うんっ」
真九郎は紫をかき抱き、二人は唇を重ねた。
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