【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 5冊目 (775レス)
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抽出解除 必死チェッカー(本家) (べ) レス栞 あぼーん

385: 2012/12/23(日)21:59 ID:31WpRaUZ(1/10) AAS
>381を読んでピピっと来たので書いてみました。
何だかここ暫く連投気味で何なのですが、楽しんで頂ければ幸いです。
386: 2012/12/23(日)22:00 ID:31WpRaUZ(2/10) AAS
 □カルテット□

 小学校低学年と思しき年代の男の子を囲み、三人の少女達は小首を傾げていた。

 皆、状況が掴めないまま無言でいたが・・・沈黙に耐えかねたのか、長髪を白いリボンで束ねた少女が口火
を切る。

 「えーっと。これって、どういう状況かな?」

 勝気を装う大きな瞳。泥塗れの靴。どうやら少年は子供の間でありがちな、激しく辛い交流を強いられた
様だった。冷たい視線で値踏みする様に彼を見つめていた、短髪の少女が呟く様に言う。
省14
387: 2012/12/23(日)22:01 ID:31WpRaUZ(3/10) AAS
 小柄な体つきとは言え、10歳程も年上の女性から妙な申し出を受けた上に名前まで口にされて戸惑ったのか、
幼いジュウは沈黙した。だが数瞬後、再び彼は言い放つ。精一杯胸を張り、拳を握って。

 「変な同情で訳の分らないこというな。俺は平気だ!」

 見知らぬ人間の安っぽい同情など要らない。それを哀しいとも思うまい。そう。自分の両親は近所の無責任
な大人達が言う様な、子供に辛い思いをさせて放っておく様な人間なんかじゃない。小さな男の子は独り戦っ
ているのだ。彼自身の誇りと、大切な両親のために。

 雨の頬が真っ赤に染まり、唇が何かを言いたげにわなないた。雪姫の潤んだ瞳が爛々と輝きを増し、その
手は幼子相手に何をする積もりなのか、ぐーぱーを繰り返している。

 「ジュウ様・・・そんな痛ましくも雄々しいお言葉を、こんな幼少の頃から・・・」
省14
388: 2012/12/23(日)22:02 ID:31WpRaUZ(4/10) AAS
 雨たちから奪う様に彼を攫ったのは、ある女子中学生だ。彼女は目を瞑り、強い何かを秘めた表情でもがく
男の子の両肩を抱きすくめると、その柔らかい黒髪に唇を埋めて呟いた。

 「あんた、ずっとそうやってきたんだ・・・あのマンションで、たった一人で」

 雨の日。自棄になった自分を正気付かせてくれた、あいつの部屋。不思議に生活感や人の気配が希薄なあの
空間の静けさに、思わず光は訊ねてしまったのだ。多分にプライバシーに関るであろう事柄について。

 『ろくでなしの母親がいる。滅多に帰ってこないけどな』

 あの時の、あいつの顔。何てことない。そういう表情をしていた。でもその奥には、こんな・・・こんなに小さな
頃からの―――
省13
389: 2012/12/23(日)22:03 ID:31WpRaUZ(5/10) AAS
 「光ちゃん、ジュウ様をこちらに」

 「光、ちび柔沢を返すんだ」

 光は妙に厳しい表情を浮かべた姉と、何時の間にかカッターを手にしていた雪姫を見返す。

 「駄目だよ。この子は渡せない。大体・・・」

 柔沢少年を肩で守る様に抱き寄せると、光は主張する。姉にだって、そうそう何時も負けてはいられないのだ。
省16
390: 2012/12/23(日)22:03 ID:31WpRaUZ(6/10) AAS
 数分後。連絡を終えたらしい円が振り返り、その場の全員に告げた。

 「一先ず現在の柔沢家の状況をネグレクトと判断するわ。彼の身柄は然るべき手続きを施した後、公的な処遇
 が定まるまで円藤家が保護します」

 三組の微妙な視線が円堂家の子女に集中する。全員が同じ疑念を抱いているのだ。有体に言えば処遇とやらの
内容と期間についての疑念。確かに円堂家は公的機関に影響力の強い家柄で、円の主張は血縁でない人間が採る
処置としては常識的なものに聞こえる。当人も如何にも手早く状況を整理しているだけ、という表情だ。

 しかし、それもこれも中身こそが問題。一口に公的な処遇と言っても児童保護施設に預ける方法もあれば、血縁
関係の捜索、里親や後見人を見繕う事も含まれる。つまり当の円堂家が小さなジュウを養子に迎えたり・・・極端な
話、入り婿候補として後見を買って出る事も公的な処遇に含まれる。そんな風に考え出すと、疑念は深まる一方
だった。
省16
391: 2012/12/23(日)22:04 ID:31WpRaUZ(7/10) AAS
 「・・・本気なのですね、円」

 慎重に、抑えた声で確認する雨。その言葉は圧倒的なエンジン音に霞んだが、親友には伝わっている筈。しかし
当の短髪少女は何も応えず、静かに微笑むばかりだ。

 油断無く周囲を見渡した雪姫の視線が、数百メートル離れたビルの屋上に一瞬閃いた何者かの視線を捉えた。
おやおや狙撃手まで配置済みとは。斬島の血が戦場の匂いにざわめき始める。視界の端には堕花光が抱くトロ
フィー・・・否、可愛いあの子の姿。クク、勝った者の総取りという訳だ。上等じゃないか。

 遅れて到着する警察庁の大型車両。降りて素早く展開したのは屈強な体を防護服とポリカーボネート製の盾で
鎧った、機動隊員達だ。パトライトの光が周囲を照らしては遠ざかり、一瞬、渦中の人間達を血の様に紅く染め
上げる。

 緊張が一気に飽和状態となる中、開幕のベルが鳴り響いた。
省14
392: 2012/12/23(日)22:06 ID:31WpRaUZ(8/10) AAS
 □おまけ□

 「あんた、小っさくなりなさいよ!!」

 「何言ってんだ、お前?!」

 「うるさい!あの子返せーっ!この金髪外道魔人!!」
393: 2012/12/23(日)22:09 ID:31WpRaUZ(9/10) AAS
 以上です。どもでした。
395: 2012/12/23(日)23:03 ID:31WpRaUZ(10/10) AAS
ども(^^)、受けた様なら幸いです。
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