[過去ログ] 【俺の妹】伏見つかさエロパロ20【十三番目のねこシス】 (807レス)
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589: 風(後編) 34/63 2011/07/18(月)10:26 ID:8mgfk2k0(18/48) AAS
「高坂さん、よくご存知ですね」

「いえ、たまたま知っていただけですよ」

 あやせが「へぇ〜」と応答する前に、間髪いれず保科さんが突っ込んできた。麻奈実の実家でも作って
いたから知っていただけなんだよな。これで、保科さんの俺への心証はア〜ップ! 保科さんは俺とは住む
世界が全く違う人だが、それでも心証は悪くなるよりよくなった方がいいからな。

 しかし、出鼻をくじかれたあやせは、これで保科さんへの敵意を一段と増したに違いない。恐る恐る横目
で伺うと、眉をひそめて俺を睨んでいやがった!
 どうやら、保科さんとは正面切って戦うことはできそうもないから、腹いせも兼ねて、まずは俺を叩こう
ということか。

「先生のお点前を見てください」

 あやせの怒気にビビリ気味だった俺は、保科さんに言われて、視線を上席の方に向けた。
 野点とはいえ、茶事に出られるのは、俺の人生でこれが最初で最後かも知れねぇからな。所作とか作法
とかは皆目分からないが、どういうものだったかを後々まで思い出にできるようにしておきたい。

 釜の前では、茶の湯の先生が、茶碗の中で茶筅を振るっていた。
 上体がぶれず、あたかも茶筅だけが動いているような安定感が、無知な俺にも分かった。
 シンプルな動作だが、こうした域に達するのは、相当な修練を積まねばならないのだろう。

 茶事の客は、俺とあやせと保科さんを含めて八人だったから、茶碗もかなり大ぶりな感じだ。その茶碗が
一番目の客、つまりは一番の上席に座っている客に手渡された。
 その客は、彫りの深い品格ある面立ちの初老の男性だが、どっかで見たような感じがした。

『大学の学長じゃねぇし……、教授でもねぇし……。誰だったかな?』

 俺がこの街で見かけた品格がありそうな初老の男性っていうと、大学の先生ぐらいしかねぇからなぁ。
 しかし、そうじゃないとなると、誰なんだ。

「今、茶碗を受け取られたのは、この街の市長さんですよ」

 俺の気持ちを見透かしたかのように、保科さんがそっと教えてくれた。
 そうだよな、保科家が、この地方屈指の名家であることを忘れてたぜ。
 それに、当意即妙な保科さんにも驚きだ。ド天然かと思っていたが、あやせ同様に無駄に勘が鋭いみたい
だな。
 そう思った瞬間、あやせが、じろりと睨んできた。

「……お兄さん。なにげに失礼なことを考えていませんでしたか?」

「気のせいだ……。それよりも、この茶事の進行をしっかり見ておいた方がよくないか?」

 これだからな。勘の鋭い奴ってのは油断できねぇ。
 時折、あやせの奴は、テレパシーか何かで俺の心を読んでいるんじゃねぇかって思いたくなる。
 こいつの前での下手な企みごとは、墓穴を掘るだけだな。
 
「お二人とも、お客様からお客様への茶碗の受け渡しをよく見ておいてください」

 茶道の心得が皆無の俺とあやせは、他の招待客の所作を真似るのが手っ取り早い。
 俺は、この街の市長であるという初老の男性の振る舞いに注目した。
 その初老の男性は既に茶を飲んだ後で、茶碗に口をつけた部分を懐紙で拭い、茶碗を掌の上でちょっと
だけ回した。次の客に自分の口が触れた場所をあてがわないためのものらしい。
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