[過去ログ] 怪盗が捕まってあんな事こんな事・・・第6夜 (965レス)
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289: 怪盗アクアメロディ 〜インビシブル・ストーカー〜 2017/11/17(金)14:06 ID:bNl/EUSR(3/5) AAS
「くそっ、まさか俺のところにアクアメロディから予告状から届くとは……!」
広い敷地内の中、まるで迷路のように―――否、意図的に迷路状に作られた竹林の中央。
背の高い竹の葉で隠れるように佇む屋敷の主、佐竹緑郎は二階の自室内を落ち着きなく動き回っていた。
彼は金貸しを営んでおり、一代で身代を大きくした銭の傑物なのだが、今の彼には見る影もない。
「絶対にこの『皇竹』は渡さんぞ……! それに……」
とある没落富豪から借金のカタに取り上げ、竹の形状に加工したエメラルドを手に握りしめながら
初老の男は目立たないように部屋の奥に設置されている扉をチラリと見やる。
扉の奥は警備はおろか、信頼する腹心すら入れたことのない秘密の部屋になっており
そこにはここまでの財産を築く上で犯してきた犯罪の証拠が、そして個人的な趣味の記録が保管されている。
前者は勿論だが、後者が人目に公開されれば自分はあらゆる意味で破滅すると佐竹は理解していた。
何故ならば、彼の個人的な趣味とは「幼女にSMで責められることを悦ぶ」というものだったのだから。
「最近のアクアメロディは宝石だけではなく、予告状を出した相手の悪事も盗んでいる。
ということは、お、俺も今までの奴らと同じように……! そうはいかん、いかんぞぉ!」
一人咆哮する金融王に、しかし返事をする者はいなかった。
秘密部屋の存在を知られないよう警備は室外に配置しているし、警官は二階にすらあげていない。
今、室内には彼一人。そろそろ予告の時間だが、侵入者が現れたという知らせもない。
落ち着け、と自分を戒める佐竹だったが、そんな彼の身体がギクリと跳ねた。
ギイ、と扉が開く音がしたのだ。
それも聞こえてきた咆哮は廊下側ではない、自分しか出入りしないはずの秘密部屋の扉のほうからだ。
「まっ、まさかぁ……っ!」
慌てて音源へと首を捻った佐竹の視界に入ったのは、開け放たれた秘密部屋の扉。
そしてそこから招かれざる客として現れた、シティで一番有名な怪盗少女の姿だった。
「あ、ああ……」
何故アクアメロディが秘密部屋から現れたのか? 警備や警察は何をやっている?
脳裏に浮かぶ疑問や不満があったが、それよりも佐竹には重要なことがあった。
あの部屋には悪事の証拠と共に、自身の変態行為の記録が大量に保管されている。
それを見られてしまったのか、データとして盗まれてしまったのか。
しかし彼には絶望的なことに、すぐに答えは判明した。
アクアメロディの素顔を隠すマスクの上からでもわかる、軽蔑と呆れの混じったような視線。
瞬間、全てを悟った男は、命の次に大事にしていた『皇竹』をあっさりと放り出し
そして秘密を知った者をこの世から排除するべくがむしゃらに突進を開始した。
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