[過去ログ] 【Wizardry】ウィザードリィのエロパロ16【総合】 [無断転載禁止]©bbspink.com (320レス)
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300: 5 2021/05/05(水)00:21 ID:jBP8fKtB(5/17) AAS
グリューエラントはリルガミンの女王の臣下の身分でなく、家爵も領地もない曖昧な地位にあった。
当今、誰一人認めぬものはない高名な剣士でありながら、彼自身は城塞都市の騎士団の一員でさえなかった。
彼は「女王の友人」という奇妙な称号を持ち、時には女王から個人的に相談を受けることもあった。
宮廷に近く、政事にはまるで係わりのない彼を選んで、女王アイラスはたびたび、親密な悩みを打ち明けた。
親密に相談されるグリューエラントに言わせれば、
アイラス、あなたが美しくさえなければ……。そればかりが女王に対する思いだった。
「率直にいうと、女王陛下。あなたが美しいからいけないのだ」
「わたしが。なにが。どうして」
若い女王は困惑し、やや首を傾げるようにした。その何気ないしぐさにも魅力があった。
チャーミングというか、どこかしら彼の気を誘うふしがある。
女王陛下アイラスのその日もこぼす欲求不満、尽きぬ悩みは、どうして貴族達は飽きもせず、いがみ合うのか。
わたしは利益調整に奔走し、御璽御名、はんことサインに費す日々を送っているのはなぜ。女王のわたしが。
「それ、そのように。ご自分の影響力を自覚しておられぬ。それが困る。人を迷わせるから」
「わたしが今、なにかしましたか」
「天然自然の御方というのは、ほんとに罪だな。それが女王の天性であるから、お恨みもできぬ」
「わたくしがなにを? どうしろというのです」
女王はグリューエラントを責めるようににらんだ。この午後、お茶に来いと呼び付けたのは女王だった。
アイラス、あなたがそんなに美しくさえなければ……とグリューエラントは心中嘆いた。
愚痴をいうために自室に招き寄せて愚痴をいう、彼の立場で身勝手とは言えない。
女王になるまえ、幼い彼女の教育係であった賢人達もそんな彼女には手を焼いたに違いない。
手を焼き、そして愛したにちがいない。誰にも愛されるべく育つ王女を。
グリューエラントは成り行きで陥ってしまったわが身を呪い、こんな自分の居処を嘆いた。
「もう二、三年。せめて四、五年ばかり、齢を取られるといいんだ。お仕事に没頭なさってくれ」
「わたしにはまだ、貫禄が足りないというのね」
はあ……と溜息をつき、アイラスは小卓に肘を置いて、少女のように慎みなく唇を尖らせた。
「苦労ばかり続くこと。気の休まる日もないのだから」
「ほら、それ。その鬱憤を俺に言うのはいいが、人前で女王がそんな顔をしていいのか」
「今だけです。わたくしは人前で弱音を吐いたりはしません」
「美しいことをやめられなければ、女王をやめればいい」
肘をついた、しどけない姿勢のまま、アイラスは彼に冷たい目をくれた。その目線は凍りつくようだった。
見知らぬものを見るような、一切の親しみの失せたアイラスの冷視は恐ろしく、
その流し目は劇場の女優より凄絶で、淫蕩なまでに毒があった。
「あなたが女王でなければ、俺は忠誠ではなく、愛を誓っていたよ」
女王は無言で身を起こした。真面目な顔で、顔を近づけた。冒険者の瞳を瞳で覗き込んだ。
怒ったり、咎めてはいない。ただ彼の瞳をまっすぐに見つめる、彼女の瞳が大きくなって近づいた。
何を言おうとしているのか……何を告げるでもなく、
曖昧に問いかけた唇が開いて、吐息がもれる。
目をそらすことは許されない。
グリューエラントは近い距離で、一点瑕のないアイラスの美貌を隅々まで見つめなければならなかった。
ひとみも、睫毛も、鼻梁も、やや丸びてきた頬とあごの線も、
なだらかな、露わな肩に落ちる髪の先まで。視界がアイラスでいっぱいになり、
彼女の体臭や、髪の香りさえ感じられるようだった。
引き寄せられる、抗いがたい魅惑と戦いながら、
心臓は締めつけられ、鼓動をやめてしまい、この瞬間がこのまま続けば死んでしまうと彼は思った。
アイラスは悪戯っぽく微笑すると、
「冒険者グリューエラントは、女王では、愛してはくださらないのか」
「陛下の友人として、俺の誠意は変わらない。そのときには命を捨てよう」
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