[過去ログ] デスピサロは同情の余地なき悪党 第四十五章 (1001レス)
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862: 2013/05/03(金)21:23 ID:fSZxS0OR0(1) AAS
デスピサロは、「人間を滅ぼす」、しかも「今すぐ無条件で滅ぼす」ことにこだわり過ぎていたのではないかと思う。実は、それは、彼にとって得策ではなかったのだ。
なぜならば、それゆえに、彼は人間にとって「絶対的な悪」としかなりえないからである。実は、デスピサロは、絶対的な悪ではない。
デスピサロが人間を滅ぼそうと思った真の動機は、自らの愛する女性ロザリーを虐待した人間への復讐である。
この件に関しては、間違いなく、人間側に(そして、そう仕向けた者に)責任がある。俺はそう思うし、ドラクエの世界にも、この事を知れば、「人間にも責任があるのだなぁ」と考える人が少なくないであろう。
そして、そこにこそ、デスピサロの付け入る隙がある。デスピサロは、この事を‥‥いかにロザリーが人間からひどい目に遭わされていたかを、世界中に公表すべきだったのだ。
そして、世論を味方に付けるべきだったのだ。彼は訴えるべきだったのだ。魔族は絶対的な悪ではないと。人間にも非道はあると。
その点において、魔族と人間は等価であると。たとえ、それが己の身内の陰謀であろうとも、デスピサロは、それは人間にこそ罪があると、訴えるべきだったのだ。
それを恥じ入り、態度を軟化させる人間が出てくるだろう。そういう考えが、一般の市民に、そして、王族など支配階層の人々の間に広まっていけば、しめたものである。その世論を背景に、彼は、次の行動を取ることができる。
取るべき最も効果的な行動‥‥それは、人間代表との、対等な立場での交渉だ。魔族が自ら治める領土、それを持つ事を認めさせることが、その目指す第一の目標となるだろう。
デスパレス周辺、できればリバーサイドを含むあの大陸を支配下に置きたいところである。さらにできれば、ロザリーヒル、そしてエルフの住む世界樹の周辺も領土に加えられれば言うことはない。
一定の土地に定住し、おとなしくなった魔族。表向きは平和的な解決‥‥しかし、長い年月の間に、人間は油断する。そして、その日のために、魔族は密かに牙を研ぎ澄ますのだ。
そう、その日‥‥魔族、またロザリーヒルのホビット、世界樹のエルフといった、日ごろ人間という種を快く思わぬ亜人間(デミヒューマン)諸族を糾合し、圧倒的大兵力で蜂起するその日‥‥。
果たして、油断し、堕落した人類に、打つ手は残っているのか?人間の非道を糾弾し、一度偽りの和睦を結ぶ。時間を稼ぎ、力を蓄えた後に、一気に蜂起する。
民衆を束ねるシステムを破壊し、唯一の脅威となりうる「勇者」の力の源である「天空の武具」を葬れば、もはや、魔族の進軍を阻む物は何もない。人間は滅び、魔族の世がやってくる。
恐らく、それこそが、デスピサロが現在取りうる、最も有効な「人間を滅ぼす方法」だと思うのである。だが‥‥デスピサロは、そうしなかった。恐らく、その「偽りの和睦」をも拒むほど、人間という種に対するデスピサロの憎しみは、激しいものであったのだろう。
一刻も早く、人間をこの世から抹殺する事、それだけを考え続け、行動してきたのだろう。彼にとって人間とは、話し合える相手などではない。ただ、憎悪の対象でしかないのだ。
だからこそ、デスピサロは、「偽りの和睦」を結んで時間を稼ぐ事もせず、世論を味方に付ける事もせず、ただひたすら純粋に、人間を滅ぼす事だけを追求してきたのだ。
だが、逆にそれ故、彼は、地上全ての人間を敵に回して戦わざるをえなくなってしまったのだ。
彼自身の力の源であった人間への憎悪。それ自体が逆に、彼を追い詰めたのである。まさに、皮肉というしかない。
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