[過去ログ] 【世界大戦】自由民主党の派閥22【河破朋充】 (609レス)
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184: (ワッチョイ 0f33-1/1y) 2022/10/21(金)22:51 ID:1bLgX53Z0(2/3) AAS
僕は不安だった。
これまでもしばしば耳にしているあの人の、すべてのことに対しての峻厳さ、そしてこの頃聴く、耄碌して言動が偏狭になっていると云う噂。
しかし、いつかは会わなければならない人だ。
そう心に決め、四月の早朝僕は黒田さんと東京駅で待ち合わせて、京都へ向かった。曇った日だった。
新幹線の先頭車輛の二人掛けの先頭の座席で、間近な小テーブルの上に足を乗せたりしながら、僕はこの二度目の対談の人と軽口を叩いていた。
京都駅日本食堂の狭いテーブルに着いて、昼食を摂った。
そして文明堂のカステラを買って近鉄奈良線に乗った。
電車の窓からは東寺の塔が薄く霞んでその輪郭だけが明るい灰色の空に切り絵染みてくっきりと見えていた。
窓近くに緑の見えるいくつかの小さな駅に停まりながら奈良に近づいていった。
奈良駅鉄道売店で二人はマムシドリンクを飲んだ。駅前の一本の柳が青々と糸を垂れて風に揺れていた。
タクシーで新薬師寺まで行くと、そこは桜井市へと続く、山辺の道(やまのべのみち)の起点であった。
画架を立てた男が一人、まだ褐色の小さな叢に立って、近くの山を描いていた。
この辺りの山も青垣山と云う呼称を持つのであろうか、緩い伸びやかな弧を描いた山である。
ほんの少し青空が見え、道端には、紫の小さな花が咲いていた。
白毫寺(びゃくごうじ)辺りへ向かう数人の女性に尋ねると、カラスノエンドウだと云う。
山辺の道は、右へ折れてからまっすぐに進む、それをすぐ左へ入った。鯉幟(こいのぼり)の立った竹垣の家であった。
黒田さんは空を見た。あっ鯉幟だと僕は話しかけたが返事は無かった。
ここで、彼は先生にお会いする心の準備をしたのであろう。僕にはそう云う、緊張感は無かった。
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