[過去ログ] 【世界大戦】自由民主党の派閥22【河破朋充】 (609レス)
1-

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
次スレ検索 歴削→次スレ 栞削→次スレ 過去ログメニュー
185: (ワッチョイ 0f33-1/1y) 2022/10/21(金)22:59 ID:1bLgX53Z0(3/3) AAS
玄関には、既に我々二人の客を待って二足のスリッパが置かれていた。
玄関脇のテーブルを据えた六畳間に通されると、
どこからかひょろひょろとくたくたの和服に寝巻風の帯を結んだ先生が廊下に現れて、テーブルの前にストンと座られた。
挨拶をするとすぐに、『今日はどう云う御用件でおいでになりましたか。』と僕に向かって尋ねられた。
僕は、今度黒田さんとイタリアへ行くことになりました。
私も数学をやっているので、心構えを伺いに参りました、とお答えした。
しかし、この時、それまでは何となく黒田さんの陰で話を聞こうと云う、野次馬的な心の置きどころから、
一転して先生と一対一で話さねばならんのだなと云う一種のオソロシイ想念が走った。
それでは、あなたはイタリアへどう云う数学の勉強に行かれるのですかと尋ねられた。
僕は、E.E.Leviと云う人の数学が好きです。
出来れば、そう云う数学を自分もしたいと思っています。
どうしたらそれが出来るか、イタリアで向こうの数学を見て勉強してこようと思います。と答えた。
すぐ次に、それではあなたは自然数とは何かお分りですか?と尋ねられた。
背筋に冷たいものが伝わった。頭を垂れ、やばいと思いつつ、分りませんと答えた。
『たわけ者!』途端に一喝が飛んだ。
『思い上がった奴だ。自分の分を知るんだな。』僕は、おろおろして、ああこいつは駄目だと思った。
イタリアだフランスだと、西洋を真似ていればそれで良いと思っている。とんでもないことだ。と云われる。
僕は、これはもう追い返されるかも知れんなあと思いつつ、
申し訳ありません、僕はまだほんの駆け出しで、どうやって数学をやったら良いのか分りません。
どうかその第一歩の所を教えて下さい。と謝りつつ食い下がった。
どうやらその場は矛を収められ、
『日本は高い、西洋は低い。』と強く一喝され、暫らく間を置いて、
『この世界に物質と云うものは存在しません。』と仰られた。
先生は和服を骨ばかりの体に着て、長く伸びた爪が湾曲して伸びて、
半円を描いて指の腹に達する程になっているその指に紙巻き煙草を弄ばれてお話をされていた。
煙草の葉が膝の上にこぼれてゆくのを僕は眺めていた。
庭先にはチューリップが咲き、縁先の藤棚には藤の房が垂れていた。
1-
あと 424 レスあります
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル

ぬこの手 ぬこTOP 0.007s