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608: 12/06(金)19:59 ID:6mX6vsLP(4/15) AAS
大学・傑作選です。
ある日、私の親友である大学生のユウジが、ふとした会話の中で「実はゴキブリが好きなんだ」と告白してきた。その言葉を聞いた瞬間、背筋が凍りついた。冗談だと思いたかったが、彼の目は真剣だった。

ユウジは、ゴキブリの生命力や適応力に感心していると言う。彼は自分の部屋で飼育している数匹のゴキブリについて話し始め、名前までつけているらしい。「この子たち、すごくかわいいんだ。じっと見てると、彼らの魅力がわかるよ。」そんなことを言いながら、スマホに保存しているゴキブリの写真まで見せてきた。私は思わず顔をしかめてしまい、画面をそっと避けた。

その日から、ユウジとの関係は徐々に変わっていった。彼はゴキブリの話をするたびに、私は無意識に距離を置くようになってしまった。彼と一緒にいる時間が以前のように楽しく感じられなくなり、どこか居心地の悪さを覚えるようになったのだ。

ユウジは私に何度も「ゴキブリを見においでよ」と誘ってきたが、そのたびに私は断った。彼の部屋に行くのが怖くなったのだ。彼の家に行けば、どこかにその「ペット」がいるかもしれないと思うと、もう耐えられなかった。

そしてある日、私たちは決定的な瞬間を迎えた。ユウジが私を家に誘った時、私はついに正直に「どうしてもゴキブリが苦手なんだ」と言ってしまった。彼は一瞬驚いた顔をしたが、その後、寂しそうな表情を浮かべた。「そうか……理解してくれると思ってたんだけどな」と、彼は静かに言った。

その日を境に、私たちは次第に疎遠になっていった。ユウジは私と話す機会が減り、私も彼の話題を避けるようになっていた。彼のSNSにはゴキブリを飼育する喜びや、彼らとの日常が投稿されるようになり、私はそれを見るたびに胸が苦しくなった。

そして、最後の決定打となったのは、ユウジが私に一匹のゴキブリをプレゼントしようとした時だった。「これ、君も好きになれるかもしれないよ」と無邪気に差し出された小さな箱。その瞬間、私の中で何かが完全に壊れた。「ごめん、無理だ」と言い残してその場を去り、それ以来、彼と連絡を取ることはなかった。

友情はゴキブリによって終わりを迎えた。彼の趣味を尊重することができなかった自分を責める一方で、どうしても耐えられなかった恐怖心が残り続けた。
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