[過去ログ] (井の中の蛙・V30)法務局58匹目(人工知能・AI) (895レス)
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676: 2021/12/19(日)19:12 AAS
に,A4の前任であったA6から,懸案事項として,同月にA5がB2の本人申 請という形で行ったL’番M’の土地の地積更正登記申請についての引継ぎを受 けた。
その際,A6からは,「申請の内容は,筆界を何の根拠もなく勝手に移動 させ,同土地を根抵当権が設定されている隣接地上にまで拡大させるものである。 また,同土地は以前の分筆時に地積測量図が作成されており,筆界は確定してい る。このようなことなどから,申請は,許されない内容であるので,A5が取り 下げなければ却下していただきたい。」旨の説明を受けた。同申請の内容は,実 地調査をするまでもなく,土地の実態に反した虚偽のものであることは明らかで あったので,
私は,A5が同申請を取り下げない場合は,これを厳に却下すべき であると考えたし,私以外の登記官もそのように考えたはずである。そして,同 年4月中旬から下旬ころ,A5は,L’番M’の土地について同年3月の申請と ほぼ同内容の新たな申請をしようとした。私は,被告人A2らと共にA5に直接 対応し,A5に,同年3月の申請を取り下げるなどするよう求めたが,A5から, 「おかしいけど,地図も街もきれいになるんや。測量図も合わせる。縄延びがあ るから仕方がない。」と言われた。
しかし,私は,このA5の発言内容から,同 人が内容虚偽であることを分かった上で申請をしようとしていることは間違いな いと思い,「あんたがおかしいゆうとるもん,こっちで処理できないでしょ。」な どと言ったが,逆に,「却下できるもんなら却下してみい。お前らより勉強しと るんや。」などと言われた。その後,同年5月上旬ころ,A5は,L’番M’の 土地の地積更正登記の件について,A7を帯同して岐阜地方法務局を訪れた。私 や被告人A2を含めた登記官らがこれに対応し,「結局は,筆界が動きますやん。 それだけはできません。」「前の地積測量図を否定することになりますから無理で すよ。」などと言うと,A5は,「分筆する前の土地の面積を測り間違えたんだ。 だから,こうやって縄延びができるんだ。」「土地の所有者がいいと言えばそれで いいだろ。」などと述べ,論理的に立場が悪くなると声の大きさや態度で跳ね返 すなどしていた。
A3ら上司は,このようなA5の案件に関し,自らは決して矢
677: 2021/12/19(日)19:13 AAS
面に立とうとせず,私と被告人A2に対応を任せるばかりで,問題を先送りにし たままであった。私は,このような上司の態度に対する憤りや,被告人A2と共 に応対する都度A5から浴びせられる言われなき罵声に精神的に疲れ切ってしま った。
このようなことから,私は,今回に限り,A5が申請しようとしている地 積更正登記の内容が虚偽であっても,あえて目をつぶることを考えるようになっ た。虚偽であっても,形式的な書類が整っていて,うやむやのまま発覚しなけれ ば,特に問題になることはないであろうし,
万が一,この件が発覚しても,処理 を誤ったとして言い訳をすれば,事なきを得るのではないかとも思ったからであ る。 しかし,私一人でこれを行えば,この件が露呈した場合,最終的に全ての責 任が私に集中することから,首席登記官など幹部登記官に当該申請の内容が虚偽 であるものの, 
これを分かりつつ登記を完了したい旨申出をして,その了承を得 ることにした。そこで,首席登記官のA3以下の登記官に集まってもらい,A5 の申請内容を説明した後,「あかんもんですけど,仕方ないと思います。」などと 言って,A5の上記申請の内容は虚偽であるものの,登記せざるを得ない旨述べ たところ,A3から了承を得た。この申請内容に基づく登記を完了させる際,私 は,被告人A2に,「本当にやっていいのやなあ。」などと,内容虚偽の登記を完 了しても本当によいのかという趣旨のことを言ったが,
同人は,「あかんて言っ てないですもん。」などと述べた。A5が,N’番の土地の1度目の地積更正登 記申請の相談に来た際,私や被告人A2らで対応したが,同申請内容が筆界を根 拠なく移動させるものであることから,「無理ですよ。」などと述べた。 そして, 私と被告人A2が,この相談内容についてA3らに相談したところ,A3は,「困 ったですねえ。」,「形式的要件がそろっていたら仕方ないですね。」などと述べた。
私は,A3が暗に内容が虚偽であっても登記を完了せざるを得ないと言っている のだと分かったし,被告人A2も同様に理解したはずである。N’番の土地の2 度目の地積更正登記申請の相談にA5が来た際,私は,被告人A2と対応に当た った。A5が申請しようとする内容が筆界を根拠なく移動させる明らかに土地の
678: 2021/12/19(日)19:15 AAS
実態に反した虚偽のものであったので,私や被告人A2は,「筆界は変わりませ ん。無茶苦茶ですよ。」などとこれを認めることはできない旨述べた。その後, 私は,被告人A2に対し,「ここであかん言うても,これまでは,なんやったん や言うてくるわな。」などと,内容虚偽でも登記を完了するしかない旨言ったと ころ,
同人は,「そうですなあ。」などと言った。平成15年7月,A5が,私と 被告人A2らに,本件土地の1度目の地積更正登記申請をしたいと言ってきた際, 同申請が,何の根拠もなく筆界を移動させる内容であったことから,私は,「土 地の形が急に変わるのはおかしいですよ。」と言い,被告人A2は,「無理ですよ。 おかしいですよ。」などと言って,申請は受け付けられない旨述べた。
その後, A5が実際に申請をした際,被告人A2は,A5の意向をA3らに説明したが, 誰が聞いてもその内容が虚偽であることは明白であった。平成16年2月中旬こ ろ,A5が,私と被告人A2に,本件地積更正登記申請等をしたいと言ってきた 際,このときも,本件土地について,何の根拠もなく筆界を移動させて面積を拡 大させるなどの内容であったことから,被告人A2は,「絶対に無理です。」など と答えたが,A5からの内容虚偽の地積更正登記申請を却下した場合,これまで の内容虚偽の地積更正登記を完了した件については,後の審査請求の中でA5の 主張として出てきて露呈することは必至だった。
そこで,本件地積更正登記申請 への対応について,被告人A2を含む表示登記部門の全登記官の間で協議をした。 この協議において,私は,N’番の土地に処分禁止の仮処分命令が発せられたこ と,本件土地所有権は,もともとA5が実質的に経営するB2が有していたが, これが本件地積更正登記申請前に売買によりB3に移転されたこと,本件地積更 正登記及びそれに対応する地図訂正を行うと,無担保の本件土地が,根抵当権が 設定されている周囲の土地上に広がる結果となることなどを説明した。 もっとも, このころには,何度もA5の意に沿うままに内容虚偽の登記を完了させており, 協議をするといっても,最初から内容虚偽の登記を完了させることが登記官らの 前提で,私が,問題を提起しつつ,それをクリアする理論を募り,また,自ら説
679: 2021/12/19(日)19:17 AAS
明,報告するいわば出来レースの場に過ぎないものだった。とにかく,法務局側 としては,これまで内容虚偽の登記を繰り返していたので,この件が発覚して過 去の件も全て発覚すれば,その責任は,首席登記官のみならず,局長まで及ぶは ずであった。そのような事態だけは避けなければならないので,内々に内容虚偽 であると分かりつつ,当該申請を受理して,内容虚偽の地積更正登記を完了させ なければならなかった。そして,A3から了承が得られたので,私は,被告人A 2らと共に,形だけの実地調査を行った後,主に同人をして,本件登記手続を行 わせた。」
(2) 被告人A1の検察官調書における供述の信用性
ア 被告人A1の検察官調書における供述内容は,具体的であり,不自然・不合理
な点はない上,前記2の事実等や関係者の供述ともよく整合している。また,被 告人A1は,平成16年2月に行われた登記官らの協議の内容等を記載した書面 を作成している(乙14)ところ,上記書面には,「仮処分が入っている土地に ついて地積更正出来るか」「現地実調して関係者の供述を得て判断する,すべて 整っていれば処理せざるを得ないであろう。」「B2が増歩ならわかるがB3ので はおかしいから」などの記載があり,被告人A1の前記供述内容は,この書面の 記載内容とも符合している。以上によれば,同供述の信用性は十分に高いという ことができる。
イ 弁護人の主張 被告人両名の各弁護人は,以下の点などを理由に,被告人A1の検察官調書に
おける供述には信用性がない旨主張するので,この点につき検討する。 (ア) 動機について
被告人両名の各弁護人は,被告人A1に内容虚偽の登記を完了するというよう な職務犯罪をする動機があるとしたら,A5からの利益供与を受けることしかあ り得ないところ,被告人A1の検察官調書の供述における,平成15年にL’番 M’の土地の内容虚偽の地積更正登記をした動機は,利益供与を動機としていな
680: 2021/12/19(日)19:23 AAS
いから,不自然である旨主張する。しかしながら,被告人A1は,前記のとおり, A5に対する対応等に疲れ切って,内容虚偽の登記をすることを考えるようにな った旨述べており,この点はそれ自体理解可能なものである上,同被告人は,そ の際,内容虚偽の登記をしたとしても,うやむやのまま発覚しなければ,特に問 題になることはないであろうし,万が一,発覚しても,処理を誤ったとして言い 訳すれば事なきを得るのではないかと思った旨も述べているのである。
このよう な点も併せ考えれば,各弁護人主張の点をもって被告人A1の検察官調書中の動 機に関する供述が不自然とはいえない。
また,被告人両名の各弁護人は,被告人A1が検察官調書において,本件土地 等の内容虚偽の各地積更正登記をした動機として,要旨,「申請を受理すれば, これまでの不正が露見しない。」旨述べている部分について,申請の受理と不正 の露見との因果関係が不明確である,登記は一般に公開されているのであるから, 虚偽の登記がなされた時点で不正は露見されるのであり,申請を受理することで 不正が露見しないことは論理的にあり得ないなどとして,かかる動機の供述部分 も不自然である旨主張する。
しかしながら,被告人A1は,この点について,申 請を却下した場合には,それまで内容虚偽の地積更正登記を完了した件について, 後の審査請求の中でA5の主張として出てきて露呈することは必至であった旨述 べているのであり,この点は,申請却下に対する審査請求の在り方等を前提とし て十分理解可能である。 
そして,受理すれば少なくとも上記のような事態を避け られることは明らかである。また,確かに,登記は一般に公開されるものではあ るが,地積更正の登記を閲覧するだけで閲覧者に直ちに虚偽であることが判明す ることにはならない。したがって,各弁護人の前記主張を踏まえても,被告人A 1の検察官調書における供述の信用性が揺らぐことにはならない。
(イ) 不動産表示登記実務の実情との関係について 両被告人の各弁護人は,要旨,地積更正登記手続においては真実の筆界は移動
しないという筆界論を,本件のような事案の認定に硬直的に用いるのは相当でな
681: 2021/12/19(日)19:24 AAS
いのであって,不動産表示登記実務上は,隣地所有者の承諾書等を有力な資料に して筆界の是正をすることができるのであり,また,地積更正登記の申請におい て,土地家屋調査士が申請代理人となっている場合は,申請内容自体の信頼も高 いとされており,申請に際し,土地家屋調査士が作成した土地調書が添付されて いることも有力な資料になるところ,本件の地積更正登記申請も,上記のような 資料等が備わっていた,このようなことからして,被告人A1は本件の申請内容 が虚偽であることを容易に看破することはできなかったはずである,したがって, 虚偽性を認識していたとする同被告人の検察官調書の供述は不自然であって信用 できない旨主張する。
しかしながら,前記のとおり,登記官には,登記申請の内容についての実質的 審査権があるのであり,隣地所有者の承諾書と土地家屋調査士作成の土地調書は, それらが添付されていれば必ず申請が認容処理されるというような資料となるも のではない。しかも,本件地積更正登記申請に係る土地家屋調査士作成の土地調 書に記載されていた申請理由は,本件土地には合筆の経緯はないのに,「当該地 は分合筆をかさねた結果現在の形となってしまいましたが再調査の結果以前の境 界にもどすものです」というものになっているなど,ずさんなものであった(な お,「再調査」の内容についても具体的な記載がない。)。
このようなことからすると,各弁護人の前記主張を踏まえても,被告人A1の 検察官調書における供述の信用性が揺らぐことにはならない。
(3) 被告人A1の公判における供述 被告人A1は,公判において,「A5が関わっている本件地積更正登記申請に
ついて,内容虚偽であるという認識は一切なかったし,虚偽かもしれないという 認識も一切なかった。本件地積更正登記申請については,土地家屋調査士の調書 と隣地所有者の承諾書の内容を判断したり,A3以下の登記官らと協議を行うな どした結果,認容処理すべきと考え,申請を受理した。」旨供述している。
しかしながら,前記2のとおり,A5が関わった本件土地を含む一連の地積更
682: 2021/12/19(日)19:27 AAS
正登記申請は,比較的短期間のうちに,地積の増減の程度も大きいものを,同一 の土地に対して複数回繰り返しているといった特異なものであったのに,本件地 積更正登記申請の内容が虚偽かもしれないという認識が一切なかったと述べてい る点はいかにも不自然である。なお,被告人A1の弁護人は,この点に関し,こ れら一連の地積更正登記申請は,大規模な宅地開発が行われている地域内の土地 についての申請であるため,必ずしも不自然な内容ではない旨主張するが,大規 模な宅地開発がなされている地域内の土地であるからといって,個々の一筆の土 地における地積更正登記の際の地積の増減の程度が大きくなるなどとは直ちにい えない上,前記のような一連の地積更正登記申請の特異性なども踏まえると,上 記弁護人の主張は採用し難い。このようなことなどからして,被告人A1の公判 における供述はにわかに信用し難い。
(4) 小括 以上によれば,被告人A1の検察官調書における供述が十分信用できるという
べきである。
4 被告人A2の供述
(1) 検察官調書における供述
被告人A2は,検察官調書において,本件登記内容の虚偽性について確定的に 認識しており,そのような内容の登記をすることにつき,被告人A1及び判示記 載の共犯者らと共謀した旨供述しているところ,その供述内容は,前記2の事実 等及び前記信用できる被告人A1の検察官調書における供述等と整合し,不自然 ・不合理な点はなく,信用性は十分に高いということができる。
(2) 公判における供述 被告人A2は,公判では,「本件地積更正登記申請が内容虚偽であるという認
識はなかった。土地家屋調査士が代理人となって申請してきていることから信頼 を置いていたし,隣地所有者の承諾書が添付されていたことにより,隣地のトラ ブルがないと考えられたほか,上司と協議した結果,問題があると述べた者はい
683: 2021/12/19(日)19:30 AAS
なかったからである。」旨供述している。 しかしながら,前記のとおり,A5が関わった本件土地を含む一連の地積更正
登記申請は,その内容がかなり特異なものであったにもかかわらず,被告人A2 が本件地積更正登記申請の内容が虚偽かもしれないという認識はなかった旨述べ ている点は不自然である。なお,本件地積更正登記によって本件土地の地積が大 きく増加したことにつき,被告人A2は,「岐阜市D’内の開発地域は,全体と して縄延び部分が相当程度あった。同開発地域は北側から分筆・分譲されていっ たが,それらの部分についての縄延びは分筆において反映されておらず,分筆・ 分譲されていない本件土地に,同開発地域全体としての縄延びが集中するという 状態になった。このようなことから,本件土地の地積が大きく増加したとしても 不思議でないと考えた。」旨述べているが,他方で,「開発区域の土地の縄延びを ある1筆の土地に集中させるというやり方は,原則論としてはあり得ない。」旨 も述べているのであるから,前者の供述は説得力に欠ける。このようなことから して,被告人A2の公判での本件地積更正登記申請の内容の虚偽性の認識を否定 する供述内容はにわかに信用し難い。
(3) 小括 以上によれば,被告人A2の検察官調書における供述が十分信用できるという
べきである。
5 各争点について (1) 争点1について
前記2(1)のとおり,本件土地の東西は,岐阜市の道路及び水路と隣接し,土 地の形状等が,真実の筆界を把握する基準となり得る状況にあったものであり, 平成8年の分筆の際には,岐阜市の職員も立ち会った上で,東西の隣接地との各 筆界が確認され,その基準となる地点に杭が設置されるなどしている。
また,本件土地の北側の筆界は平成8年に,南側の筆界は平成15年に,いず れも,分筆によって創設されたものであるから,その際の当事者の意思によって
684: 2021/12/19(日)19:34 AAS
筆界とされたところが正に真実の筆界となるのであり(なお,上記当事者の意思 に錯誤があった等の事情はうかがわれず,また,平成8年の分筆による筆界は, 翌年,宅地造成開発許可の関係で,許可区域の内と外を画する境界線にもなって いる。),現地にはその基準となる地点に杭が設置されている。そして,平成15 年の分筆時には,その際創設された筆界以外の筆界は,平成8年の分筆の際に確 認されていた筆界点として杭が設置された地点がそのまま基準にされている(平 成8年の分筆時に設置した杭の一部は,平成15年の分筆当時には滅失していた ものの,残った杭等から,平成8年の分筆時の筆界点が確認されている。)。
以上によれば,本件当時の本件土地の四囲の真実の筆界は,平成15年の分筆 の際に,現地で確認された筆界であったと認められる。そして,その筆界を基準 に,土地家屋調査士らが正確な測量をした結果と平成8年の分筆時の求積結果を 踏まえて求積したことが認められる約39平方メートルが本件土地の真実の面積 であると認められる。
(2) 争点2,3について 信用できる被告人両名の各検察官調書における供述及び前記認定事実等によれ
ば,被告人両名は,本件当時,本件土地の地積更正登記手続の申請内容が虚偽で あることを知っていた(したがって,「事務を誤らせる目的」もあった)こと(争 点2),被告人両名及び罪となるべき事実記載のその他の共犯者らが,本件につ いて共謀したこと(争点3)が認められる。
(法令の適用) 罰条
公電磁的記録不正作出の点
被告人両名につき,刑法60条,161条の2第2項,1

不正作出公電磁的記録供用の点
被告人両名につき,刑法60条,161条の2第3項,2
685: 2021/12/19(日)19:36 AAS
科刑上一罪の処理
刑種の選択
刑の執行猶予
訴訟費用の負担
項,1項 被告人両名につき,刑法54条1項,10条(公電磁的記 録不正作出と同供用との間には手段結果の関係があるの で,1罪として犯情の重い不正作出公電磁的記録供用罪の 刑で処断)
被告人両名につき,懲役刑を選択 被告人両名につき,刑法25条1項 被告人両名につき,刑事訴訟法181条1項本文,182 条
(量刑の理由) 本件は,法務局表示登記専門官として不動産の表示の登記に関する事務に従事し
ていた被告人A1,及び法務局総務登記官として同事務に従事していた被告人A2 が,他の登記官ら及び分譲宅地等造成事業等を行っていた判示A5と共謀の上,同 法務局の事務処理を誤らせる目的で,登記官の権限を濫用して,不動産登記ファイ ルに,真実の面積が約39平方メートルである本件土地の面積が5万9253平方 メートルである旨の虚偽登記事項を記録した上,同ファイルを備え付けたという事 案である。
被告人両名を含む上記登記官らは,本件以前に,A5からの度重なる不正な意図 に基づく内容虚偽の登記申請を繰り返し受理してきたことから,本件登記申請を却 下した場合に,審査請求等により上記一連の不正な処理が発覚することを恐れるな どして,本件に及んだものである。このように,動機は自己保身等を目的とするも のであって,酌量の余地に乏しい。
土地の面積は,取引等における基本的かつ重要な要素であり,それが明らかにさ れている表示登記について,その申請を適正に処理すべきことは登記官にとって最 重要の職責といわなければならない。しかるに,本件は,登記官らが組織ぐるみで その職責に違背して敢行したものであり,職務犯罪として強い非難に値する。
686: 2021/12/19(日)19:38 AAS
また,本件は,土地の面積を実態の約1500倍のものとする登記内容にしたも のであり,虚偽の程度も甚だしい。
本件犯行は,社会全体の不動産登記制度に対する信頼を大きく損ねたものであり, 社会的影響も大きい。さらに,本件は,これと連動した地図訂正と相まって,隣接 地の担保権設定者などの関係者にも悪影響を及ぼしている。
本件犯行は,共犯者の中では身分なき共犯であるA5が,積極的に動いて,被告 人ら登記官に対し犯行を行わせたという側面もある。しかし,被告人両名ら登記官 の決断及び行為なしには本件犯行は不可能であったのであり,登記官側の責任は重 い。
被告人A1は,表示登記実務のトップである表示登記専門官として,表示登記申 請事件について適切な処理をすべき職責を負っていた上,本件を含むA5の一連の 地積更正登記申請についての直接の対応を任されていた。また,登記官側で最初に 本件につながるA5による内容虚偽の地積更正登記申請を受理しようと考え,他の 登記官に発案したのも被告人A1である。このように,被告人A1の共犯者中の立 場,果たした役割はいずれも重要である。また,被告人A1は,不合理な弁解に終 始しており,反省の情が十分にみられない。
被告人A2は,総務登記官として,上司である被告人A1の下,表示登記申請事 件について適切な処理をすべき職責を負っていたにとどまらず,本件を含むA5の 一連の地積更正登記申請についての対応に当たっていた。このように,被告人A2 の共犯者中の立場,果たした役割もいずれも相応に重要である。また,被告人A2 も不合理な弁解に終始しており,反省の情が十分にみられない。
以上によれば,被告人両名の刑事責任は,それぞれに重いというべきである。
しかしながら,他方,被告人A1には,本件で懲役刑の有罪判決を受ければ,司 法書士の資格が剥奪されること,退職手当を返納させられる可能性もあること,前 科前歴がないことなどの酌むべき事情が認められる。
また,被告人A2には,本件で懲役刑の有罪判決を受ければ,失職になり,退職
687: 2021/12/19(日)19:39 AAS
金も支払われなくなること,前科前歴がないことなどの酌むべき事情が認められる。 そこで,以上の情状を総合考慮し,被告人両名に各主文の刑を科し,今回につい
ては,いずれもその刑の執行を猶予するのが相当と判断した。 (検察官齋智人,被告人A1につき弁護人森川仁,同山本伊仁,被告人A2につき 弁護人渡辺伸二各出席)
(求刑 被告人A1につき懲役3年,同A2につき懲役2年)
平成21年9月8日
名古屋地方裁判所刑事第4部
裁判長裁判官 芦 澤 政 治
裁判官 寺 澤 真由美
裁判官 三 田 健太郎
688: 2021/12/19(日)19:40 AAS

689: 2021/12/19(日)19:40 AAS

690: 2021/12/19(日)19:41 AAS

691: 2021/12/19(日)19:41 AAS

692: 2021/12/19(日)19:41 AAS

693: 2021/12/19(日)19:42 AAS

694: 2021/12/19(日)19:42 AAS

695: 2021/12/19(日)19:43 AAS

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