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269: 2021/08/27(金)21:42 ID:EHP10aGe(3/5) AAS
これお願い

373 :俺より強い名無しに会いにいく@無断転載は禁止 [sage] :2017/04/01(土) 15:40:32.17 ID:6GBBjZr+0
 悔しくて目が覚めた・・・そんな夜・・・横になったまま体を反らして、枕元の時計を確認すると、針は三時半を指していた。
再び眠りに入るには妙に頭が冴えてしまっているし、かといって、起き上がってステーキ弁当を食べる気力も湧かない。
そうして半端な状態でいるうち、さきほど目覚めたときに感じた悔しさが、じわじわと胸に込み上げてきた。

 私は、ビルに住み、毎日が寿司と焼き肉、そしてパチスロで満たされた何不自由のない暮らしを送っている。
これまで生活において困ったことなどは一度もなく、そして、これからもないのであろう。
だが、この満たされた人生には何かが欠けていて、その何かが、私の胸中に悔しさとなって現れるのである。

 思えば、少年時代の私には“才”があった。
当時の私はその才を、無限に湧き続けるものと疑いもなく認識していた。
この根拠の無い不遜さが、私から努力や忍耐といった物を根こそぎ奪ってしまったのだ。
もし才がなければ、それを補うべく懸命に励むのだろう。そういった者が見せる鬼気迫るかのような必死さを、私は未だ持てずにいる。
才のないものが生み出した努力と忍耐が、才を作り出し、その才をも努力と忍耐を持って磨いていくのに対し、私は才を生まれ持ったが故に、それを磨く術を知らず、とうとう才は消え、不遜だけが残ってしまった。

 それから私は、更にたちの悪いことに、自らの才が最早過去の遺物であったことを認めず、そのことを隠す方法を見つけてしまったのだ。
それは、何もしないことである。自分はやればできる人間ではあるが、何か気分が乗らないとか楽しくないといった理由の為に、本気で取り組んでいない。こういった姿勢でいることで、私は自らの才を保とうとしているのだ。
怖かったのだ。これまで才のある人間を演じ続けてきた自分が、今更なりふり構わずなにかに打ち込み、それで結果が得られなかったらと思うと、恐ろしかったのだ。
それよりも私は、私の過去を知る人物たちから、あいつはやればできる人間だ、とか、もしあいつが本気になったらその分野は終わる、などと言われているほうが心地よかった。
この悪癖は、とうとうプロゲーマーになってからも直ることがなかった。

 また、私は人の話を聞くことができない。これも先程の話と同様に、才と不遜のせいである。
才と不遜に満ちあふれた人間が、対等な人間関係を築けるわけがなく、才が消えた後も、私はその不遜を持って他人に接してきた。
故に私は、常に誰かの最終人物ではあったのかもしれないが、同時に、私の最終人物となってくれる人間は一人もいないのである。
人に社会経験の不足を指摘できる人間でもなければ、聞き分けの良い年下の人間を周りに集めたところで、親友リーチが限界なのだ。
ここまで超スーパー認識しているにも関わらず、私はいざ誰かと接しようとすると、私の中の帝聖が現れ、例の不遜を振りまいてしまう。

 ・・・・・・夜中三時半にそんなことを思案しているうち、私は無性に寂しくなって、肛門に自らの手首を差し込んだ。
思わず「んっ」と吐息の入り交じった声を挙げてしまうが、これは嘘だ。自分を騙す演技だ。本当は喘いでるんじゃない。
私は孤独のあまり、こうして毎日のように肛門をトロかしているが、それと同時に、そのことを心底から馬鹿馬鹿しく思っている。
だが、それでもやめることはできない・・・・・・私は欲望に逆らえないのだ。焼き肉を食らい、遊戯に勤しみ、肛門を慰める。これだけが私の人生なのだ。

 いっそ、例の物語のように侍が現れて、私をココタへと堕としてくれれば、どんなによいことか。だが、それをいくら願ったところで、所詮は幻想だ。
不遜な私に唯一心の言葉をかけてくれた侍を、私は拒絶した。もう口も聞いていないのだ。思えば、あれが私にとっての最後の人だったのかもしれない。

 そう思うと、私の心は、悔しさと寂しさを通り越して、遂に真っ暗闇となった。
それは、夜中三時半の浅草を覆う闇のように、終わりが見えず、どこまでも続いていくようだった・・・・・・。
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