[過去ログ] 【WHITE ALBUM2】冬馬かずさスレ 砂糖58杯目 [転載禁止]©bbspink.com (366レス)
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29: 2015/10/23(金)13:47 ID:+a0bZo3T0(21/43) AAS
食事の間かずさが聞いていたのは打ち合わせの内容ではなく、レストランの外の喧噪の声であった。
 パリのカフェと同じようにポットで出されたコーヒーを砂糖で流し込み終わるころには外の喧噪も打ち合わせも止み、かずさは本日最後の仕事を実行すことるにした
「熱心なのは結構だけど、あまり入れ込みすぎるんじゃないわよ」
 曜子はそう言って練習スタジオから出て行った。

 残されたかずさの口から嘆息とともに男の名が漏れる。
 春希ぃ…
 5年間付き合ってきた慕情を振り切ろうと決意したのが2ヶ月前。
 しかし、心身の隅々まで根を張った感情から容易く免れることなどできるはずもなかっ
30: 2015/10/23(金)13:53 ID:+a0bZo3T0(22/43) AAS
「なあ、春希」
「ん?」

いつもと変わらない朝食。

「今日はプリンはないのか?」
「だからどうして朝からデザートを食いたがるんだ、お前は」

でもいつもとは少しだけ違う、特別な朝。
31: 2015/10/23(金)14:00 ID:+a0bZo3T0(23/43) AAS
「え……?」
「いい?分かった?」
「ちょ、ちょっと待て。そんな急な」
「相手にとって申し分はないでしょう?あなた、本当に受け答え下手なんだから」
「でも何で、よりにもよってそんな……」
「……今はいいの。いい返事を期待してるからね」
32: 2015/10/23(金)14:06 ID:+a0bZo3T0(24/43) AAS
しかし、せっかく俺が纏った仮面も編集部の空気を切り裂く澄んだ声によって台無しにされてしまった。
開桜グラフの面々が声の主を振り返り見る。いや、それどころかこのフロアにいる全員が仕事の手を止めて一点に集中していた。

「なあ、答えてくれよ春希? 元彼じゃなかったら何なんだ? どうでも良い他人か? ただの元同級生? 同じ部活のバンド仲間? それとも…それとも今も…」
ハスキーな声が段々不穏当なことを言い出したがその内容すら気にならない。何故なら…
「…ねえ、見知らぬ人」
「…なんで、こんなとこに、きたのかな」

…その人は、背中を見せたままで。

わたしが気づかないとでも思った?
こんなに近くにいて、わたしが気づかないなんて。
そんなこと、できるはずないのに。
省2
33: 2015/10/23(金)14:15 ID:+a0bZo3T0(25/43) AAS
体から力が抜けて音を立てて、地面に膝がついた。

 俺は、俺には、かずさとの愛さえ貫けては、いけないというのかっ!

「あ゛ぁ”あ゛あああああああああああ—————————————————」

 雪は降り続けている。
 辛い事、哀しい事。そして、見たくもない真実を覆い隠してくれようとしている。

 ただ白く、綺麗なだけの世界を目の前に広げ、俺達をそこに置き去りにしようとしている。
省6
34: 2015/10/23(金)14:22 ID:+a0bZo3T0(26/43) AAS
AA省
35: 2015/10/23(金)14:31 ID:+a0bZo3T0(27/43) AAS
>荒らしもこうあからさまだと逆効果な気がする
>10レス未満のペースが個人的には一番キツいぞ?
>で結局長文マンは何が嫌いなの

そうだねでもやる、aaずれちゃった
テヘ
ナプキンじゃないよaa

春希  「…ちょっと、落ち着いたみたいだ」
かずさ 「…飛行機が、か?おまえが、か?」
春希  「…両方」
36: 2015/10/23(金)14:36 ID:+a0bZo3T0(28/43) AAS
希  「なんだか喉が渇いたな。サービス、もうすぐだっけ」
かずさ 「もうお前のとこには来ないんじゃないか。離陸前にシートベルト確認しにきてたけど、結構引いてたぞ。ありゃもう、確実に乗務員のサカナになってるな」
春希  「やめてくれよ…。なんで客の立場でいじられなきゃいけないんだよ」
かずさ 「いじられるような真似してたからだろ?」
春希  「そりゃそうだけど、さ」
かずさ 「いいよ。あたしの分わけてやるから」
春希  「もらえないのはもう決定かよ…」

かずさ 「…なんなら、あたしが、さ、口移し、で…

乗務員 「ドリンクのサービスはいかがですか?」
かずさ 「!ひゃい!は、はい、いた、いただきます…」
省1
37: 2015/10/23(金)14:44 ID:+a0bZo3T0(29/43) AAS
かずさ 「…なんだ、春希、眠いのか?」
春希  「…ああ、少し」
かずさ 「…心配すんな。またうなされてたら、あたしがなぐさめてやる。お前の苦しみを、あたしが舐めとってやる。
     …で、またお前が雪菜の名前を口に出したら、思い切り、噛み付いてやるから」
春希  「…最後のは、勘弁してくれないかな」
かずさ 「…馬鹿いうな。それで許してやるなんて、こんな心の広い女、世界であたしくらいだぞ?」
春希  「…そうかもな。…ごめんな」
かずさ 「…あやまるな。…ばか」

ウィーンは、もう、あと少し。かずさの国まで、あと、少し。

春希  「…なあ、かずさ」
省12
38: 2015/10/23(金)14:52 ID:+a0bZo3T0(30/43) AAS
かずさ 「…へ?!は?!え?」
春希  「…だめか?」
かずさ 「え、いや、お、お前、な、なにいって」
春希  「…だめ、か?」
かずさ 「だ!だめ、とかそういうことじゃなくて、だな、お、お前、そんな」
春希  「…だめ、か…」
かずさ 「!だめなわけないだろ、ばか!…う、いや、その…」
春希  「…いいのか?」
かずさ 「…な、んで、あたしが、断るんだよ。あたし、だって、あたしだって、ずっと、ずっと…」
春希  「…お前のせい、なんだからな?」
省11
39: 2015/10/23(金)14:59 ID:+a0bZo3T0(31/43) AAS
・到着ロビー

かずさ「うわああああん。春希のバカあああ!」
春希「帰りの日にちは伝えただろ! なんで空港で一週間も待つんだ!」
かずさ「春希、日本に帰るなんて言わなかった! ウィーンに帰る日にち書いたメモ紙無くした! クラクフの人に聞いたらあの中年男が春希を日本に連れてったほか、ショパン空港に戻ることしかわからないって言われて…もう、春希は戻って来ないかもって思って…ぐすん」
春希「わかった。わかったから泣くな」
記者「ハチコのご主人さん。取材よろしいですか?」
春希「あの? 心なしかマスコミ関係者が多いんじゃ? テレビカメラまで」
記者「すいません。ハチコさんこと冬馬かずささんの日本のオフィスに問い合わせたところ、ハチコさんに秘密にする事を条件にあなたの来る便名を教えてくれまして」
春希「(曜子さん…楽しんでませんか?)」
40: 2015/10/23(金)15:06 ID:+a0bZo3T0(32/43) AAS
AA省
41: 2015/10/23(金)15:12 ID:+a0bZo3T0(33/43) AAS
上陸支援の艦砲射撃は50レスくらいかな?

時間があれば射撃は続けるけど
42: 2015/10/23(金)15:18 ID:+a0bZo3T0(34/43) AAS
「まぁ、それはともかくだな。場所は地中海クルーズの豪華客船の中での演奏だ。10日間で3回。仕事が終わったら、二人でバカンスを過ごそう?」
俺だって、せっかくのバカンスの時期に仕事「だけ」を考えているわけじゃない。狙える時は一石で二鳥も三鳥も取ってやる。
ああ、バイト先の出版社で みっちり仕込まれたんだもんな・・・NYに居る麻理師匠は元気でやっているだろうか。
「船の上ぇ〜!?」
かずさにしては珍しく 素っ頓狂な声を上げたので、ちょっとずっこけた。
「やっ、やだよ、船の上なんて。ピアノだってロクなものが置いてあるわけないだろ?
よっ、よくも そんなピアノをあたしに弾かせようとするな。おまえにとって、あたしのピアノはそんなものだったのか…?」
「どうした?そんなに興奮しなくても・・・」
事務所に送られてきた、この仕事の企画書に添付されていた 船の設備やらを思い出しながら話をする。
「ピアノは悪くないんじゃないかな?何かベーゼルなんとかっていうメーカーのピアノがあるって言ってる。ちゃんと調律師も同乗してるし、エアコン付のピアノ保管庫もあるって話だぞ?」
省12
43: 2015/10/23(金)15:28 ID:+a0bZo3T0(35/43) AAS
本当にCCアニメ化しないかなー

でもかずさは殆どからまないからそこがネックだよな

しかし俺も大アクアプラス祭行きたいなかずさファンと親交も深めたいし
44: 2015/10/23(金)15:36 ID:+a0bZo3T0(36/43) AAS
「あれ? 冬馬かずささんじゃないですか?」
 そう言ってスタッフ出入り口のドアを開けて出てきたのは、板倉記者の本日の取材のターゲット。
 劇団コーネックス二百三十度の新人女優、瀬ノ内晶、本名和泉千晶であった。
いつだったか・・・・・日本に居た頃、アイツが帰ってくる前に
部屋のドア前で座り込んだり、駅前まで行ってすれ違いになると嫌だなと思って戻ってを5回繰り返し、
ご主人を待つ犬の様な真似をしてしまった。
今はそんなことはしない、というか出来ない、だって帰ってくるのは空港からだし、タクシーを使うだろうから。
最速で確実にアイツに会えるのはこのマンションのエントランス、だからエントランス脇のラウンジで待つ。
45: 2015/10/23(金)15:46 ID:+a0bZo3T0(37/43) AAS
目まいのする身体を起こして寝室を出ると、ワインを飲みふけるかずさがいた。

「朝っぱらから飲むなよ」

「ティーポットも洗ってないというのに、あたしに不味い水でも飲めというのか?」

「酒まで飲まなくてもいいだろ」

「仕事でもあるというのか?」
省5
46: 2015/10/23(金)15:53 ID:+a0bZo3T0(38/43) AAS
・商談の後

中年男「ありがとう。お陰で商談もスムーズにいったよ」
春希「いえ、翻訳に拙いところあり、すいません」
中年男「いや、ああいう所は音楽家同士で通じるところだからいいんだ」
春希「どうも。この後は何かありますか?」
中年男「飛び込みで記者の取材が入ったから、手伝ってほしい。たしか、君も前職は有能な記者だったんだってね。曜子さんから聞いてる」
春希「そんな、有能なんて…」

雪菜「ここが音楽室だね。懐かしいな。中に2人いるんだよね。じゃ、入るよ」
 ガチャ
雪菜・武也・依緒「結婚おめでとう!」
省14
47: 2015/10/23(金)16:35 ID:+a0bZo3T0(39/43) AAS
『お前がこんなにも駄目な奴だから、どうしようもない奴だから……』

 ……そんなの、分かってる。
 誰に言われるでもなく。
 自分が一番分かってるよ。

『だから…………俺がなんとかするしかないだろ?』

 ……だから、分からなかったよ。
 お前がそんなこと言いだした時に。
 お前が何を考えてたかなんて。
孝弘「‥え〜と‥‥乾杯を」

小春「ちょっと小木曽、空気を読みなさいよ」
省12
48: 2015/10/23(金)16:41 ID:+a0bZo3T0(40/43) AAS
『多分、この先……お前も俺と同じでさ、どっちの道を進んでも後悔すると思うんだ』

 ……後悔、か。
 そんなの、五年前からしっぱなしだった。
 それこそ数えきれないほどに。気が遠くなるほど長い間。

『だからせめて……自分の選択で後悔するんだ。好きな人を裏切るなら、そのことを覚えておくんだ』

 ……お前は、もう決めたんだな。
 ……あいつを、傷つける選択を。
 ……あたしがお前をあいつから奪って、幸せを手にする道を。

—予定外のトラブルで、想定外に時間をとってしまっていた。
—とても重要な「約束」を、すっかり失念していた。
省7
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