[過去ログ] 【脅迫・荒らし・ステマ】電撃文庫総合305 【角川AMW】 [無断転載禁止]©2ch.net (1002レス)
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944: @無断転載は禁止 (ワッチョイ d299-IQNu) 2017/01/18(水)23:22 ID:DkDIa0rD0(1) AAS
5つ星のうち 5.0 バグ持ち少年・少女によるちょっとエッチな助け合いのドタバタ劇、ないしはスティグマを刻まれたアイデンティティを受容する過程を描いたゴッフマン的ライトノベル, 2017/1/18
Aazon.co.jp: ぼくらはみんなアブノーマル (電撃文庫)の ヤボ夫さんのレビュー
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945: @無断転載は禁止 (ワッチョイ 5299-7oRP) 2017/01/18(水)23:23 ID:WYw9PMJ+0(1/3) AAS
作者の佐々山プラスさんの著作は不勉強にして今回が初めて。
…ただ、イラストが何故か曲者揃いの作品ばかりを担当する事で有名な霜月えいとさんという事で
いかなる変化球が飛んでくるのか、ちょっと怖いもの見たさも混ざりながら拝読。
946: @無断転載は禁止 (KR 0H8b-Rz12) 2017/01/18(水)23:24 ID:FirHu5iBH(1/2) AAS
物語の舞台は「この世界が外的存在により意図的に構成されたシミュレーション・プログラムである」という
トンデモ理論が五年前に提唱され、それが「真実」として受容された社会。
その受容の切っ掛けとなったのが複雑性の限界に達した世界に次々と現れた「バグ持ち」人間の存在。
947: @無断転載は禁止 (ワッチョイ f254-XYC0) 2017/01/18(水)23:25 ID:Wfe4WJIo0(1) AAS
本作の主人公・蜂賀直哉もそんな「バグ持ち」の一人。
「頭を使い過ぎるとフリーズする」という機能異常を抱えてしまった直哉はテストで問題を解こうとする度に
目の前に広がる真っ青な世界に飲み込まれ、試験官に声を掛けられるまで一問も答えないまま固まる始末。
当然の事ながら小学生時代は医学部を目指せた筈の成績はガタガタ、
ならばと中学時代に学業の代わりに打ち込み特待生として私立高校に入学するに至った剣道も
相手の出方を読もうとした瞬間にフリーズするためあっさりと退部。
948: @無断転載は禁止 (ワッチョイ 3eb9-wDf/) 2017/01/18(水)23:27 ID:Y2FNha1K0(1) AAS
人生がドン詰まりになった直哉はこのままでは退学するしかないと脅す担任の西崎先生に
「何とかならないんですか」と泣きついた結果、二週間以内に委員会活動でも社会奉仕活動でも良いので
「俺はこれを成し遂げた」と言い切れる実績を出すよう求められる。
泣きボクロの様に頬の頂点に浮かんだ「バグ持ち」の証である「×」マークを恨みながら直哉は電車内で
今後の身の振り方を考えた結果、当然の事ながら目の前がブルースクリーンに。
何時間経ったか分からない終点の駅でフリーズが解けた直哉は「最悪の世界だ」と呟いた瞬間、
自分が誰かに膝枕されている事に気付く。
949: @無断転載は禁止 (DE 0Ha7-vtTm) 2017/01/18(水)23:27 ID:lGraA3f3H(1/2) AAS
「何がそんなに『最悪』なのかな?」と直哉に話しかけたのは高等部の制服を着た小学生にしか見えない少女。
放っておいてもついてくる事が分かっている彼女と共に下宿のアパートに戻った直哉はその少女、
直哉にまとわりつき、一ヶ月で十五回も「私が率いる『FBI(福祉美化委員会)』に入りたまえ」と訴えてきた袖森今に
一ヶ月持ち掛けられ続けた「FBIに入って同じ『バグ持ち』で困っている生徒を助けよう」と提案される。
950: @無断転載は禁止 (HK 0Hca-KtPK) 2017/01/18(水)23:29 ID:/+UtuXf2H(1/2) AAS
「考える能力がない俺に何が出来る」と断る直哉だったが、「私にも二週間しか残されていないんだ」と返し
FBIの解散が目の前に迫っている事を明かした袖森は手段を択ばないとスカートを脱ぎ捨てスマホを取り出し
「入ってくれなきゃ警察呼ぶぞ」と小学生サイズのボディを示す。
進退窮まり「どうするか」と悩んでしまい再びフリーズした直哉は翌朝「沈黙は肯定と見做す」と袖森が残したメールに気付く。
951: @無断転載は禁止 (ワッチョイ 3271-G+Bs) 2017/01/18(水)23:29 ID:4XAKaQIJ0(1) AAS
その日、学校で直哉の前に「迎えに来たよ」と姿を現したのは二十代半ばの女性の姿をした袖森。
直哉より一つ年上の筈の袖森は毎日肉体の年齢が実年齢プラスマイナス10歳の幅で変化するバグの持ち主だったのだ。
袖森は助けるべき「バグ持ち」の生徒に引き合わせると直哉を美術部室へと連れていくが…
952: @無断転載は禁止 (US 0H2e-Dika) 2017/01/18(水)23:30 ID:L4cS8XZ6H(1) AAS
あっはっは、これは楽しい。
誰かが組んだ「シミュレーション・プログラム」と断定された世界で「バグ持ち」と呼ばれる機能異常を抱えた
少年少女が同じ「バグ持ち」に悩む生徒を助けようとドタバタ騒ぎを繰り広げ、
しかも何故かトラブルを解決しようとするとちょっとエッチな読者サービスが付いてくるのだから堪らない。
953: @無断転載は禁止 (ワッチョイ 7794-8mky) 2017/01/18(水)23:31 ID:5NMp2Vpu0(1) AAS
しかも単なるドタバタ騒ぎに終始せず、しっかりと王道のボーイ・ミーツ・ガールとしてラブコメしているのが素晴らしい。
構成の方は短編連作に近い四章で、各章ごとに「バグ持ち」のヒロインをFBI(福祉美化委員会)の委員長、
幼稚園児と変わらない姿から二十代半ばの大人の女性の姿まで毎日変化し続けるのに胸だけは小さいままの袖森と
半ば袖森に脅されるようにして手伝う羽目になった主人公の直哉が助けるというある種の「謎部活もの」に近い。
954: @無断転載は禁止 (ワッチョイ 52a8-mca7) 2017/01/18(水)23:39 ID:Uv2meTql0(1) AAS
袖森と直哉が助けて回る「バグ持ち」のヒロインたちは当然の事ながら個性派揃い。
海外からも注目される才能を持った美術部員ながら髪に「触覚」を持つ為、八年間伸ばし続けた髪を床に垂らす百々瑠珈。
名家のお嬢様ながら何故か直哉の昼飯仲間で、他人の体を透過する(ただし体温は感じる)肉体の持ち主・日出宮美月。
誰にでも分け隔てなく明るい笑顔を振りまくクラスの中心人物だが、全ての摩擦を失い、不登校に陥っている羽住陽代。
彼女たちが陥っている袋小路から直哉と涼森が何とか助け出そうとするのが各話に共通する展開。
…なんだけど、何故か必ずエッチな騒動になるのはちょっと嬉しいお約束。
955: @無断転載は禁止 (DE 0H22-mca7) 2017/01/18(水)23:40 ID:/ijjfb/0H(1) AAS
百々の伸びすぎた髪を何とか処理しようとすれば敏感過ぎる触覚を刺激しまくって喘ぎ声を上げまくっちゃうし、
家出してきた日出宮を追手から救おうと満員電車に乗り込めば体が重なって互いの体内の温度を感じ合うし、
摩擦を失った羽住に至ってはただでさえロープで縛った体にボンテージを着せて女王様スタイルに変える始末。
…うん、困っている女の子を助けようとした結果だし、「けしからん」と言わず読者サービスとして楽しみましょう。
助けられたヒロインたちも次第に直哉に心惹かれていくし、基本はエロコメに近いラブコメとして読めるかと。
956: @無断転載は禁止 (SG 0Hd2-NYeA) 2017/01/18(水)23:41 ID:b/KcOH+mH(1) AAS
ただし、ここからちょっと真面目な話。
エロコメないしはラブコメとして巧い事コーティングされているけど、本作は「スティグマとその受容」をテーマとしている。
読んでいて二十年前に齧ったゴッフマンの著書を思い出す、そんな負の烙印をアイデンティティに刻み込まれた
「脛に傷持つ存在」がその傷つけられた自己イメージを受容し、乗り越えていくかという問題を
ライトノベルの文法に巧く落とし込みながら、かなりストレートに取り上げた作品となっている事に驚かされた。
957: @無断転載は禁止 (DE 0Ha7-fB/0) 2017/01/18(水)23:42 ID:lGraA3f3H(2/2) AAS
直哉や袖森、ないしは二人に助けられる少女たちは望んでもいない「バグ持ち」というレッテルを貼られ
それまで安穏と暮らしていた「普通の人間の日常」から「普通じゃない連中」としての人生を送らざるを得なくなっている。
ただのレッテルというだけでなく、不可逆的な身体の変容を押し付けられた状態で日常を送らねばならない、
という点においては現実世界における「障碍者」とあまり変わる所がない。
958: @無断転載は禁止 (ワッチョイ 5299-DrFi) 2017/01/18(水)23:48 ID:WYw9PMJ+0(2/3) AAS
当然の事ながら自分自身の体の状態も、そんな状態に陥った自分に向けられる他者の視線も受容する事は容易ではなく、
「なんで自分がこんな目に」、「世界は理不尽だ」、「他人は無理解だ」と自分自身に起きた不可逆的変化を
アイデンティティとして受け入れる事が出来ない状態に陥っているのである。
実際に名家の出身である日出宮は「家族が自分を恥ずべき存在として家に閉じ込めようとしている」と家出するし、
クラスの中心人物であった羽住は「こんな惨めな状態になった自分を衆目に晒したくない」と引き籠っているのである。
959: @無断転載は禁止 (KR 0H8b-q6DM) 2017/01/18(水)23:49 ID:FirHu5iBH(2/2) AAS
直哉と袖森の活動はそんな受け入れがたいレッテルに悩む少女たちを再び日常へと戻れるよう、
不可逆的変化を受容して「自分の人生」を歩めるように手助けする事を目的としているのだが、
最終章で明かされる、FBIの委員長である袖森自身がこの活動を始めた理由が明かされる段になって思わされたのは
一人でスティグマを受容し、新たなアイデンティティを築くのはなんと険しい道である事か、という事である。
960: @無断転載は禁止 (ワッチョイ 5299-GgLy) 2017/01/18(水)23:52 ID:WYw9PMJ+0(3/3) AAS
「傷付いた自分」を抱えた仲間を助ける活動を始めた袖森すらも立ち尽くす最終章の状況を前に
そんな難しい問題を乗り越える切っ掛けを作り出したのが「クヨクヨと考える事」ができなくなった直哉だったのは
ある意味必然的な流れであったのかもしれない。
どこかで吹っ切れる以外に無いスティグマの受容という問題を乗り越える様をここまで爽やかに描けるのは
作者の確かな力量あってこそかと。
961: @無断転載は禁止 (HK 0Hca-qHrz) 2017/01/18(水)23:54 ID:/+UtuXf2H(2/2) AAS
エロコメにしてラブコメという間違いなくライトノベルの文脈で描かれた物語でありながら、
スティグマ、ないしは傷付いた自己イメージをどう受容するのかという命題をしっかりと掘り下げた
骨太なストーリーを決して説教臭さを感じさせない様、実にテンポよく軽やかに展開して見せたかなりの良作。
受け入れがたい自分自身の状態や世間のレッテル張りを乗り越える物語という意味では
森橋ビンゴの「この恋と、その未来」に通じる物を持った、作者の今後が楽しみになる一冊であった。
962: @無断転載は禁止 (ワッチョイ 7b60-+bhn) 2017/01/18(水)23:56 ID:SpgcDHBQ0(1) AAS
5つ星のうち 5.0 バグ持ち少年・少女によるちょっとエッチな助け合いのドタバタ劇、ないしはスティグマを刻まれたアイデンティティを受容する過程を描いたゴッフマン的ライトノベル, 2017/1/18
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