マルチジャンルバトルロワイアルpart20 (683レス)
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218: Sの選択/仲間はきっとそこに居る ◆Wott.eaRjU 2012/11/25(日)22:03 ID:IzQMJNzm(6/9) AAS
「でも、時々どうしても思いますの。
私にはクリスさんやグラハムさん、ライダーさんのような力はありません。
何も力がない私が、本当に誰かを守ることが出来るのかと……」

俯きながら沙都子が思い出していたのは先刻の出来事だ。
沙都子の傍にいたアルルゥがミュウツーによりさらわれてしまった。
ポケモンを駆使しても、ミュウツーを止めることは出来なかった。
『ねーねー!』と叫びながら連れ去られていったアルルゥの姿を思い浮かべる度に、沙都子は自らの非力さを呪っていた。

自分は只の小学生で、際立った力はないのだから仕方ない。
だが、沙都子はクリストファーに託され、アルルゥに誓ったのだ。
アルルゥのねーねーとして彼女を守ってみせると。
だから、自分の無力さはどうしても認めたくはなかった。
認めてしまえば、本当に自分に出来ることは無くなってしまう気がしてならなかった。
それでも、不安という風は常に消えることなく沙都子の胸の中に渦巻いていた。

そんな時、不意に鈍い音が軽い痛みと共に聞こえた。

「い、痛ぁ!」

突然の痛みは頭の辺りからやってきていた。
そして目の前にはグラハムが右腕を、沙都子の頭上に丁度突きつけるように振り下ろしていた。
グラハムに殴られたのだと沙都子は悟った。

「命の恩人Aは、俺の命の恩人の一人だ」

命の恩人Aとは誰だったかと一瞬、沙都子は考えるが直ぐにその顔が脳裏に浮かんだ。
彼女は可愛いものには目がなく、不思議な雰囲気を持っていた。
だけど、ここ一番の土壇場には誰よりも冷静で、皆を引っ張ってくれた。
彼女は沙都子にとって大事な、大事な仲間である――竜宮レナのことだ。
そしてグラハムにとっても、レナはただこの会場で知り合った仲ではない。

「川に流された俺を、命の恩人Aは拾ってくれたぞ。
命の恩人Aにだって、ラッドの兄貴や赤目野郎やおっさんのような力はない。
だが、それでも命の恩人Aは俺を救うことが出来た」

グラハムを表すには『不規則』という言葉がまさに相応しい。
躁と鬱をせわしなく繰り返す彼の行動を、正確に予測するのはきっと不可能だろう。
しかし、そんなグラハムにも常に変わらないことはある。
グラハム・スペクターは、一度受けた恩は忘れない。
そして恩人の友人は、グラハムにとって他人ではない。
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