【勇者放浪記】トリックスターファンタジーTRPGスレ [無断転載禁止]©2ch.net (184レス)
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94: ◆zTA3Hlbo9w 2016/07/22(金)11:45 ID:LVatemQN(2/5) AAS
「今回の任務、聞いてる?」ルイセが問いかける。
トリスタンはそれを聞いているかいないかのような感じでチビチビと飲みながら、催し物に興じていた。
ステージには子供そのものともいえる女の子が、可憐な踊りを披露していた。
それはそこらの子供ではなく、良く見ると魔力の波動が感じられる。とがった耳。恐らく妖精系の亜人の一種だろう。
フェアリーより大きくエルフより小さい、といったところだ。
そちらに見とれていると、テーブルの向かいのルイセがバンと音を立てる。わざと胸の谷間を強調する格好だ。
「ちょっとー、このルイセ様のボディを前に、あんな子供なんか見てるの?やらしー」
トリスタンもようやく口を開く。
「あぁ、今回も東側の攻撃の掃討作戦らしいな。控え以下のゴミ拾いってとこか…退屈で嫌だな。
カネにはなるとはいえ、死体を見るのは嫌なもんだ」
周囲を見回す。今回のメンバーと思われる数人の男たちが他のテーブルに座っていた。
そこには大柄な…よく見ると女のようだった。肌の色が若干違うあたりは亜人種の血が混じっているのだろうか?
トリスタンよりも二周りも大きな体。そして傍には巨大な斧が置いてある。
「ハーグ付近の最前線だと聞いてるが…今回は…安心だな」

そう呟いた矢先のことである。
「その依頼、ウチも参加させてもらいますわ、よろしくなー! 
一度しか言わんから耳かっぽじってよう聞けや、ウチはピュエラ・エテルヌス。この冒険者ギルドの看板アイドルや!」
突然目の前にさっきまで踊っていた少女が現れていた。妖精特有のものか、妙な訛り。そして素早い身のこなしだ。

「お、おう。前から名前は知ってたが、ピュエラ?今回の作戦は簡単だが、ガキには危ないぞ。
最前線だし、どっから矢が飛び出してくるか分からん。ちなみに俺は、トリスタン…世界一の、冒険屋さ」
ルイセが、「まーた出た」とばかりにトリスタンの自己紹介に呆れる。

マスターがまるで保護者のように、後ろに現れ、口を塞ぐ。
どうやらピュエラの能力はマスターのお墨付きのようだ。
「あぁ、分かった。こいつはルイセ、俺の今の相棒だ。好きにすればいいが、
危なくなったら俺の後ろに下がってろ。一応、盾ぐらいにはなるぜ。今回はどうやら他も選りすぐりみたいだが」
自分の鍛え上げられた筋肉を見せつつ、周囲を鼻で指す。特に大女の方に。
「んん? あんちゃん飲んだくれみたいな振りしてよく見るとかっこええんとちゃう?
英雄伝承歌で言うところのトリックスターの香りがするで!」

「トリック・スター…?」
自分の指をさしてピュエラとルイセ、マスターの顔を見る。
「アカンわあ、罪な男や! ……むぐ! むぐぐぐ何すんねん」

「はぁ、俺が何か罪でもやったか?まぁ、人や魔物は大勢殺してるかもしれないけどな…
その分多くの命を救ってきたつもりだよ。これでも」
皮肉を利かせるように、肩をすくめながら周囲に弁解した。

今回もきっと大丈夫、と思いながら、先ほどピュエラに言われたことが引っかかっていた。
「アカンわあ、罪な男や!」言われてみれば、イリシアが子を宿してから王国は内紛が続き、多くの血が流れている。
ナタリア関係も一緒だ。大量殺戮兵器のようなものを余計に増やしてしまったようなものだ。
トリスタンはティーリの街にある自宅で、天井を見上げながら横になって考えていた。
ここにはあちこちに武器が置いてあり、食料品や衣類を入れる道具、そして暖炉も用意されており、
部屋には男女の衣類がぶら下がっている。今は女物はルイセのだ。
「あれー?いつもとちょと違うじゃーん?もしかしてあの娘に興味でも持っちゃった?」
ルイセが隣で服を脱ぎだす。小柄で細身なのとは裏腹に、月明かりに照らされた胸は性的だ。それに引かれたのもあり、こうして一緒にいる。
トリスタンと一緒の毛布に入り、体を密着させる。
「明日は早いぞ…今日はダメだ」
そう言われると残念そうに、トリスタンの岩のように硬い肌を撫でた。
「ま、いいけど… それより明日はちゃんと守ってよね。わたし、トリスタンの赤ちゃんがいるかもしれないから」
その言葉もトリスタンには深くは届かなかった。トリスタンは手の、指輪の欠けた部分が妙に冷たいのを恐ろしく感じた。
それ故に、ルイセの肌の温もりはありがたいものだった。やがて、そのまま眠りについた。
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