[過去ログ] 【伝奇】東京ブリーチャーズ【TRPG】 [無断転載禁止]©2ch.net (285レス)
上下前次1-新
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
次スレ検索 歴削→次スレ 栞削→次スレ 過去ログメニュー
41: 那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI 2016/12/07(水)19:03 ID:zmPg+UGd(2/3) AAS
――ぽ……ぽっ、ぽ、ぽぽぽ……
どこからか声が聞こえる。
それは、泡の弾けるような。口笛のような。ごくごく淡い声。
しかし確かに、祈の待っていたモノの来訪を告げる声。
――ぽ、ぽぽ、ぽ……ぽぽぽ……
見れば、誰もいなかったはずの路地にいつの間にかひとつの影が現れている。
真っ白い鍔広の帽子を目深にかぶり、師走だというのにノースリーブの白いワンピースを着た、妙齢の女性。
一見して寒そうな外見以外は普通と言ってもよかったが、しかしその身長が常軌を逸している。
近くにあるコンクリートブロックの壁よりも、頭ひとつ以上大きい。
少なく見積もっても、その身長は240センチ以上はあろう。
240センチ、つまり――八尺。
帽子の鍔のお陰で、祈からその表情までは見えない。
が。
祈にはハッキリと感じられただろう。
その白いワンピース姿の女が、確実に祈を見ていることを。そして――
祈に対して、うっすらと笑みを浮かべたことも。
――ぽぽ……ぽ、ぽぽ……ぽ、ぽ……
声が近くなる。
気付けば、50メートルほど離れていたはずの女性――八尺様が、10メートル程まで距離を詰めている。
瞬きするほどの、ほんの一瞬の出来事だ。瞬間転移の妖術だろう。
八尺様が祈へと右手を伸ばす。
祈が駆け出すと、みるみるうちに八尺様との距離が開いてゆく。
あれほど巨大に見えた八尺様が、あっという間に米粒ほどの大きさにまで遠ざかってゆく。
……しかし。
祈が瞬きをするたび、その前方に八尺様が現れる。ふと目を離すと、その視界の及ばない角度からぬっと手が伸びてくる。
そして。
祈がどれだけ走ろうとも、それが絶え間なく繰り返される。
『もう、とっくに300メートル走りきっているというのに』。
本当なら既に公園まで到達していなければおかしい距離を、祈は走っている。
だというのに、一向に公園に辿り着く気配がない。
思えば、同じ路地をグルグルと回っているような気さえする。これが八尺様の縄張り――結界、ということなのだろうか?
橘音は最初に八尺様を結界内におびき寄せ、暴れるだけ暴れさせて疲弊させ、その後対話することを目論んでいた。
しかし、もし、『八尺様も橘音と同じことを考えていたとしたら』?
結界内に入ってきた獲物を好きなだけ逃げさせ、疲れさせてから、ゆっくりと捕食する――。
となれば。
ここは、祈の独力で八尺様の結界から脱出する以外にない。
――ぽ、ぽぽっ、ぽっぽっ……
八尺様の声が、祈の耳のすぐ傍から聞こえてくる。
声のみならず、今にも吐息さえ感じられそうなほどの距離に、八尺様がいる。
祈をあどけない少年だと思い込んで、その手を伸ばしてくる。
八尺様の巣と言ってもいい縄張り、その中にいるのは、祈ひとりだけ。
助けは、ない。
上下前次1-新書関写板覧索設栞歴
あと 244 レスあります
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル
ぬこの手 ぬこTOP 0.007s