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【ファンタジー】ドラゴンズリング2【TRPG】 [無断転載禁止]©2ch.net (368レス)
【ファンタジー】ドラゴンズリング2【TRPG】 [無断転載禁止]©2ch.net http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/
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14: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/01/06(金) 19:37:57.48 ID:07vFe33q もう一つは……実力を知ってもらう為だ。 不意の突けないレンジャーとか、ねえ? その点ではさっきの私はかなり上手く出来た気がする! この人達もかなりの手練っぽいけど、最悪でもちょっとビクッとくらいは……したよね?ね? 私みたいな村娘Aはかなり背伸びしないと舐められがちなのです。 「あ、もしお宝があっても、それはそっちの取り分で構いません! 私一人じゃそもそも深い所まで行けないだろうし、 強くなった魔物の素材も結構な価値が出そうですしね」 これは特に嘘偽りなく本当。 そもそもこの都で上手い事マジックアイテム仕入れて、よそで捌くだけで収支的には問題ないくらい。 なんか冒険者が泊まるには無駄に高級な宿屋で無駄にお高そうな料理を食べたりしない限り、今回の冒険に赤字はないのだ! 【ラテさんがパーティ加入申請を飛ばしました】 あ、結構余白が出来ちゃったからてきとーに落書きしよっと。 ちなみに今回使ったレンジャースキルは実は【スニーク】だけじゃなかったりする。 さっきの私って実力を示しつつも、隙のないアサシンって感じは全然しなかったでしょ? アレは素が出ている訳ではなく、そういうスキルなのです。 レンジャー系でも特にシーフやエージェント、アサシンなんかが使うスキル【ヒュミント】だ。 意味は人的諜報。騙したり、籠絡したり、魅了したり、とにかく人の心情を利用して利益を得る為のスキルだ。 最近やっと一端の冒険者になれてやる気出してます!ふんす! って雰囲気は、きっとこの人達の心から庇護欲を引きずり出す!はず! 重ねて申し上げますが素が出てる訳じゃないんだからね! いやホント、馬鹿な事書いてんなーとか思ってるでしょ? 訓練させられるんですよ、ちゃんと。 先輩に「チワワだ!チワワの気持ちになれ!」って言われながら上目遣いの練習を一時間くらい。 どさくさに紛れて「体も使え!押し付けろ!」とか言われて流石にマスターにセクハラで訴えました。 いつもは物静かで優しいお爺ちゃんって感じのマスターなんだけど、 その時は私の訴えを聞くや否や、思わず震えるほど冷たい声で「けしからん」って言って立ち上がり…… そのまま先輩のもとへ向かうと 「チワワにだって牙はあるからこの子は精々ハムスターじゃろ。丸みもあるし」 とか厳重注意してくれました。ハムスターにだって前歯があるわい!噛み付いたるぞ! もうやだあのギルド……。 ちなみにこの【ヒュミント】。 達人が使えばお互い武器を構えて相対した状況でも、致命的な油断を誘えるとか。 まさに魔性って奴ですね。 また人によっては【テンプテーション】とか【ハニートラップ】みたいな呼び方もします。 私はそういう露骨な言い方はよくないと思います! ……え?さっきからシーフやらアサシンのスキルばっかだけど、トレジャーハンターのスキルはどうしたって? この街中で何をしろと。鍵開けか。 勇者じゃあるまいしそんな事したら犯罪ですよ犯罪。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/14
15: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/01/06(金) 19:38:52.57 ID:07vFe33q そんな感じでとりあえずパーティ申請送りました ふと気づいたけど私も結構怪しい奴だこれ! http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/15
16: ジャン ◆9FLiL83HWU [sage] 2017/01/07(土) 16:57:45.21 ID:AenxSHOl 名前:ジャン・ジャック・ジャンソン 年齢:27歳 性別:男 身長:198 体重:99 スリーサイズ:不明 種族:ハーフオーク 職業:冒険者 性格:陽気、もしくは陰気 能力:直感・悪食 武器:良質な量産品の手斧・ナイフ 防具:鉄の胸当て 所持品:ロープ・旅道具一式 容姿の特徴・風貌:薄緑の肌にごつい顔をしていて、口からは牙が小さく覗いている 笑うと顔が歪み、かなりの不細工に見えてしまう 簡単なキャラ解説: 暗黒大陸の小さな村で生まれ、その村に立ち寄った魔族の冒険者の 生き方に憧れ冒険者を目指し大陸を飛び出た。 それ以降、人間の異なる価値観に戸惑いつつも今ではそれなりに名が売れた冒険者として 日々、未知の風景を求めて探索している。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/16
17: ジャン ◆9FLiL83HWU [sage] 2017/01/07(土) 16:58:58.01 ID:AenxSHOl >「ソルタレクの冒険者ギルド……か。まあ適当に話を合わせてくれ」 小声で返ってきた返答に、小さく頷いてティターニアの後ろへ一歩下がる。 二人は護衛対象と護衛という関係である以上、ジャンは必要以上に声を出す気にならなかった。 そうして二人の会話を眺めていると、どうやらこのミライユと名乗った女性もこちらに同行してくるようだ。 武器の腕前は問題なく、魔術の扱いにも慣れている。 >「ジャン殿もよいな? さっきの戦いぶりを見ておっただろう、きっと頼りになるぞ」 「ああ、俺としても歓迎だ。魔術も武器も使える奴ってのは貴重だからな」 ゆっくりと頷き、またティターニアの後ろに控える。 仮に指環を狙う刺客だったとしても、同じ冒険者である以上なんらかの取引に応じるだろうとジャンは考えていたのだ。 そして宿でも探そうかと後ろを振り向いた瞬間、目の前の空間からぬるりと少女が現れた。 >「どーもこんにちわ!お話中にすみませんが今、洞窟の話をしてましたよね!」 >「洞窟って、テッラ洞窟の事ですよね?実は私もあそこに目を付けてるんですよ! 魔物が急に強くなったって事は、きっと何かあるに違いないって!お二人もそうなんですよね? ……あ、すみません、私トレジャーハンターのラテって言います!」 >「でもちょっと当てが外れちゃいまして…… オオネズミですらあれだけ凶暴化してるとなると、 私だけじゃ大して潜れなさそうなんです」 何もないところから姿を現し、いきなりまくし立ててきたラテと名乗った少女。 見れば先ほどオオネズミを狩っていた冒険者のようだが、レンジャーの技である姿隠しを使いわざわざ背後から来たようだ。 こういった行為を行うレンジャーは少なくない。なぜかというとレンジャーを名乗りマジックアイテムの価値を偽って 仲間からだまし取る者、嘘の偵察で仲間をまとめて殺し、遺留品をかっぱらう者は後を絶たないからだ。 だからこそ、多くのレンジャーは他の冒険者と組むときには、自分がきちんとギルドで学んできたことを 証明するために自分の実力を示す行為を行う。 それは弓の技術や罠外し、簡易な鑑定などがあるが、やはり一番有名なのはこの姿隠しだろう。 ジャンも未熟な姿隠しならば背後に来る前から見抜けるが、ラテの姿隠しは分からなかった。 つまり、ギルドでしっかりと学んできたということだ。 「……見たところ、経験はあるみてえだな。その箱、ミミックだろう? 単独で狩ったなら大したもんだ」 ラテの装備を上から下まで点検する。動きやすい服装に、魔除けと思われる大量のアクセサリー。 ミミックの箱を担いでいる理由はよく分からないが、たぶん振り回して鈍器にでもするのだろう。 それから盾にできそうな石板に、なんと呼べばいいのか分からない武器のようなもの。これもきっと振り回すんだろうとジャンは思った。 >「なので……もし良ければ私もそちらのパーティに混ぜてもらえませんか?」 >「あ、もしお宝があっても、それはそっちの取り分で構いません! 私一人じゃそもそも深い所まで行けないだろうし、 強くなった魔物の素材も結構な価値が出そうですしね」 レンジャーにしてはいい条件……のような気がする。 実際レンジャーだけで魔物を倒せるかというと難しいだろうし、このまま断るのも……悪い気がする。 (なんだこの…この違和感。そういえばレンジャーはまだ何か対人の技があった気がするんだが…… まぁいいか) 持ち前の前向きな姿勢がヒュミントに大きく影響され、結局ジャンは了承した。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/17
18: ジャン ◆9FLiL83HWU [sage] 2017/01/07(土) 16:59:44.80 ID:AenxSHOl 「ティターニア、レンジャーってのは一人いるだけで安定するもんだ。 魔術に頼った偵察が罠を見抜けずに踏み抜いた、なんて例はたくさんあるんだぜ」 いかに職業としてのレンジャーが有用であるかをティターニアに語っていると、ふと腹の音が鳴った。 昼に屋台でイモガエルのもも肉串を食ったばかりのジャンではなく、ティターニアでもないようだ。 ラテでもなかった。では誰かというと…… >「……はッ!」 分かりやすく顔を赤く染めている。刺客とは思えないほど感情を表に出すミライユに、ジャンはもしかすれば 刺客ではないのでは、と思い始めていた。 >「では、早速ですが、腹ごしらえでもしながらゆっくり語らうとしましょう。 今晩に限り、ティターニア様たちの分は、私の方でお出ししますので、お気になさらず」 そして何事もなかったかのように宿へ案内してくれ、おまけに奢ってくれるという。 普段泊まることのないような高級さを醸し出す宿は明らかに冒険者向きではないようにジャンには思えたが、 きっと首府のギルドの人間はこういった宿に泊まるのが一般的なのだろうと考えることにした。 ジャンはテーブルに座り、持ち慣れない銀のフォークやナイフをどうにか不器用に使いながら運ばれてきた料理を食べる。 正面にラテ、右隣にミライユ、左隣にティターニアという形になったが、護衛としては悪くない位置だ。 ただ、料理はあまり美味しく感じられなかった。 (奢りなのは嬉しいけどよ……そこらへんの屋台で肉串とかミルクパンでも食ってた方が気楽だぜこりゃあ) 客が少ないとはいえ、見た目はオークであるジャンをじろじろと眺める視線を入ったときから感じているのだ。 旅の途中でもこういった視線を感じることはあったが、よりにもよって居住種族が最も多いであろうここでもそうなるとは! >「すっごい腕……よく鍛えられているし、大体の敵なら一薙ぎですね! ちなみにうちのマスターはここまで太くないですが、 力はもう、すっごいんです! この前の暴動のときもすごい活躍をして、五十人斬り?をやっても、全く動じてませんでした。その晩マスターは……」 居心地の悪さを感じ始めていた頃、ミライユが話しかけてきた。わざわざ右手を手に取って、分かりやすい世辞を飛ばしながら。 「お、おう……そうかい。ところでティターニア、結局洞窟に行くのは明日でいいのか?」 話をティターニアに振りつつ、早くこの料理が終わってくれと願いながらナイフで肉を切り分ける。 結局、ジャンはこの食事で腹が満たされることはなかった。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/18
19: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/01/07(土) 19:43:40.32 ID:sAdh7jqa (この人用途が分からない他人の装備は全部鈍器扱いしてる・・・?) http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/19
20: 創る名無しに見る名無し [sage] 2017/01/07(土) 22:44:34.47 ID:rCRuv5O1 >>19 黙ってろ http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/20
21: ティターニア ◆KxUvKv40Yc [sage] 2017/01/08(日) 21:27:49.06 ID:+bm/sbWr >「いえいえ、こちら側が勝手に視察を行っただけですから、私についてはお構いなく。 ギルドでは有名ですよっ! 特にマスターの部屋なんかにはティターニア様の……あっ」 世の中には部屋中に好きな吟遊詩人の肖像画を貼る人種も存在するがその類だろうか、と思うティターニア。 少し気にはなるも、うっかり口を滑らせたようだったので詮索はしないことにした。 >「ああ、俺としても歓迎だ。魔術も武器も使える奴ってのは貴重だからな」 おおかた意図は伝わったようで、ジャンもミライユの同行を承諾した、その時だった。 >「どーもこんにちわ!お話中にすみませんが今、洞窟の話をしてましたよね!」 「なぬ!?」 突然、目の前に先ほどのリスかハムスターのような雰囲気の少女が現れた。 隠密の魔術でも使ったのか?と一瞬思うが、魔術師といった出で立ちでもない。 ジャンが少女の素性を見極めようとするように、その全身を検める。 >「……見たところ、経験はあるみてえだな。その箱、ミミックだろう? 単独で狩ったなら大したもんだ」 「すまぬな。別に変な意味で見ているわけではない。見慣れぬアイテムに興味津々といったところだ。 そなた、面白そうなものを色々持っておるではないか」 小柄ながらなかなかに健康的な肢体の少女である。 要らぬ誤解を招かぬように一言言い添えながら自分も改めて少女の出で立ちを見てみれば、 鞄代わりのミミックをはじめとして、全身を大量のマジックアイテムらしき装備品で固めている。 おそらくトレジャーハンターの類、ということは先程突然現れたように思えたのはレンジャーの姿隠しだろう。 その原理は、魔術師のやり方と発動の過程こそ違えど、魔力を纏っているというものらしい。 ティターニアは以前、盗賊少女を魔術師の素質ありとしてスカウトしたことがあるが この世界における魔術師とシーフ・レンジャー系技能というのは実は素質に共通する部分があるのかもしれない。 実際冒険者にはその二つを兼ね備えた怪盗のようなクラスもあるし 和国のニンジャというのもレンジャー系技能と忍術という独特の術を併せ持つ、それに近いもののようだ。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/21
22: ティターニア ◆KxUvKv40Yc [sage] 2017/01/08(日) 21:31:12.26 ID:+bm/sbWr 閑話休題――ラテと名乗った少女は、自分の目的地もテッラ洞窟だと言って、同行を申し出てきた。 只でさえかなり怪しい人物の同行を承諾した直後であり、ついでではないが心理的ハードルが下がっている。 その上密やかに行使されたヒュミントの効果もあり、ジャンがかなり承諾の方向に傾いている。 増してや――本人に自覚は無いが端から見ていればもうお気づきであろう。 ティターニアは可哀そうな子どもや危なっかしいドジっ娘や健気に頑張る若者には滅法弱い。 「我はティターニア。以後よろしく頼む」 ティターニアはラテの作戦の前にあっさり陥落した。効果はてきめんだ。 >「ティターニア、レンジャーってのは一人いるだけで安定するもんだ。 魔術に頼った偵察が罠を見抜けずに踏み抜いた、なんて例はたくさんあるんだぜ」 「うむ、高度な魔術罠を見破れる魔術師が超単純な物理罠を見抜けるとは限らぬからな。 頼りにしておるぞ、ラテ殿」 そんなことを話していると――誰かの腹の虫が鳴った。 >「……はッ!」 ミライユが分かりやすく顔を染めている。 涼しい顔をしていれば分からないのに分かりやす過ぎィ!と内心思うティターニア。 先程のマスターの部屋の内情をうっかり言いかけた時の様子といい、自分達が疑い深くなっているだけで 単なる根っから明るいドジっ娘なのだろうか?との考えが鎌首をもたげてくる。 実際にはドジっ娘属性の有無と良からぬことを企んでいるか否かは何の関連性もないのだが、人間(エルフ)心理としてどうしてもイメージに流されてしまうものである。 >「では、早速ですが、腹ごしらえでもしながらゆっくり語らうとしましょう。 今晩に限り、ティターニア様たちの分は、私の方でお出ししますので、お気になさらず」 「それは誠にかたじけない。ではお言葉に甘えてご馳走になるとしよう」 ミライユに導かれるままに高級な宿付きレストランに入っていく一行。 オークはやはり暗黒大陸に多い種族であり、中央大陸程ではないといえこの西方大陸にもそれ程多くは無い。 外見がほぼオークのジャンは多種族が行き交うこの街でも高級宿となると目立つようで、視線を向けられ心なしか居心地が悪そうだ。 ジャンが人間――特に若い女性から見れば親しみやすい外見ではない事実を改めて思い出したティターニアは、二人にそれとなく怖がる必要はない事を伝える。 「このジャン殿は気は優しくて力持ちを地で行くとてもいい奴でな―― 我は一応研究費を貰える身ゆえジャン殿には臨時助手ということで護衛をしてもらっておる。 ……といっても上司部下といった堅苦しい関係ではない」 そこで少し視線を外し、半分噛みしめるように、半分冗談めかして言う。 「そうだな、英雄譚風に言うなら”仲間”――とでもいうのかな」 >「すっごい腕……よく鍛えられているし、大体の敵なら一薙ぎですね!」 「……」 視線を戻してみると、ミライユが積極的にジャンの腕を取って話しかけていた。 心配は杞憂だったようだ。それを見たティターニアはニヤリと笑ってからかうように言う。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/22
23: ティターニア ◆KxUvKv40Yc [sage] 2017/01/08(日) 21:36:10.12 ID:+bm/sbWr 「ほほう、ミライユ殿はたくましい男性が好みか。 ああ、念のため申し添えると我とジャン殿は別に恋人関係というわけではないゆえ遠慮しなくても良いぞ」 学園のある種のサークルが作る自主制作の薄めの冊子の中ではそのようなジャンルも確立されているが 実際にはそのようなカップルが成立するのは非常に稀と思われる。 ただでさえエルフが他の種族とカップルになるのは珍しいというのもあるが、それに加えて。 これまで旅をしてきてなんとなく分かったのだが、どうやらエルフとオークでは美的感覚が決定的に違うようだ。 エルフが一般的に美しいとされるのは人間から見た時の話であり、そういう美的感覚を持つ人間が比較的多いからに過ぎない。 >「ちなみにうちのマスターはここまで太くないですが、 力はもう、すっごいんです! この前の暴動のときもすごい活躍をして、五十人斬り?をやっても、全く動じてませんでした。その晩マスターは……」 話を聞いていると、どうやらミライユは冒険者ギルドのマスターなる人物に心酔していることが分かってきた。 「ふむ、凄いものだな……一度お目にかかってみたいものだ。 ところで……そろそろ腕を離してやってはくれぬか、そのままでは食べられぬ」 ティターニアはそれなりに様になった手つきで料理を食べながら、ミライユにジャンを解放するようにそれとなく伝える。 ジャンもそろそろ困惑しているようで、ティターニアの方に話を振ってきた。 >「お、おう……そうかい。ところでティターニア、結局洞窟に行くのは明日でいいのか?」 「そうだな、下手に夜に動いても危険であろう。今日はここに泊まって明朝に出発するとしよう」 こうしてなんとも微妙な空気の晩餐会は過ぎてゆく―― *☆*゚・*:.。. .。.:*・*☆*゚・*:.。. .。.:*・*☆*゚・*:.。. .。.:*・*☆* http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/23
24: ティターニア ◆KxUvKv40Yc [sage] 2017/01/08(日) 21:42:52.54 ID:+bm/sbWr さて、取ってある部屋は4人部屋であった。 特にミライユには警戒は必要になるが、いい方向に考えれば話すことで人となりを見極める良い機会でもある。 本当なら学園に寄って挨拶がてら報告もしたいところだが、後をつけられでもして今の時点で核心に気付かれてもよろしくない。 いつのも伝書フクロウ便でまあいいか――ということで、そのまま泊まることにした。 とはいえ、寝るにはまだ早い。 皆がひと段落ついた頃、ティターニアは自分のベッドのふちに腰かけ、学者の間で一般的に知られている知識の範囲で話し始めた。 一応ミライユからインタビューを受けるという名目になっているのと、こちらもミライユ達の反応を見るのも兼ねて、だ。 「我の専門は考古学でな、と一言でいってもまあ節操のないもので世界の謎を解き明かす学問、とでも言おうかな。 この世界と魔力や魔術は切り離せぬものであるゆえ魔術学園でも研究対象となっておるわけだ」 「我々の業界で今アツい話題と言ったら当然古竜の復活―― そなた達は竜の指環、というのを聞いたことがあるか? 古竜を倒せるとも伝説によっては自在に操ることが出来るとも言われておる。 まあおとぎ話のようなものだ。冒険者の中にはそれを真に受けて本気で探しておる大馬鹿者もおるらしいが……」 このご時世で竜の指環の話題を避けるのは逆に変であるため、敢えて当たり触りのない範囲で話題に出す。 ティターニアが言う大馬鹿者、というのはもちろん褒め言葉である。 「そういえば……最近中央大陸の沖合で突然島が浮上したらしいな。 あの辺りに沈んだ古代都市があったという伝説はあるのだが果たして関係あるのか無いのか」 「そうそう、古代都市といえば明日行くテッラ洞窟、地底都市への入り口があるとかいう都市伝説が学園生徒達の間でまことしやかに囁かれておるぞ。 といっても普段はしょっちゅう学園の生徒たちが探検にいっておるのだ、もしもそんなものがあったらとっくに見つかっておるだろうがな!」 「学生というのはその手の噂話が好きでの、あの想像力には感心するわ。 例えばダーマの図書館が無限地下ダンジョンになっておるとかな」 「古竜には四星竜という手下がおってそれらを全て倒さぬと親玉にたどり着けぬ、とかな。 自主制作の冊子で”奴は我ら四星竜の中では最弱……!”とか言わせてみたりの」 表向き友好的に腹の内を探り合う緊迫した心理戦でもあるのだが、どこか楽しんでいるようにも見えるティターニア。 一見とりとめのない話に見せかけてかなりギリギリの線を攻めてみたりしつつ、夜は更けていくのであった。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/24
25: ◆KxUvKv40Yc [sage] 2017/01/08(日) 22:25:34.57 ID:+bm/sbWr 【一応テンプレ】 名前: ティターニア・グリム・ドリームフォレスト(普段は名字は非公開) 年齢: 少なくとも三ケタ突入 外見は若いが醸し出すオーラから年齢不詳な印象も受ける 性別: 女 身長: 170 体重: 52 スリーサイズ: 全体的に細身(エルフの標準的な体型) 種族: エルフ 職業: 考古学者/魔術師 性格: 学者らしく思慮深くもあるが本質的には大物か馬鹿か紙一重 変人でオタクだがなんだかんだで穏健派で情に流されやすい一面も 能力: 元素魔術(魔術師が使う魔術。魔術(狭義)といったらこれのこと) 武器: 聖杖”エーテルセプター” 魔術書(角で殴ると痛い) 防具: インテリメガネ 魔術師のローブ 魔術書(盾替わりにもなる) 所持品: ペンと紙 その他一般的な冒険者道具等 容姿の特徴・風貌: メガネエルフ。長い金髪とエメラルドグリーンの瞳。 エルフの標準体型だが人間から見れば長身痩躯。もしかしたら黙っていれば美人かもしれない。 簡単なキャラ解説: ハイランド連邦共和国の名門魔術学園「ユグドラシア」所属の導師で、実はエルフの長の娘。 研究旅行と称して放浪していたところ偶然にも古代の遺跡の発見の現場に立ち会ったことをきっかけに 学園から正式に指環の調査の命を受け、紆余曲折を経てジャンと共に竜の指環を集めるべく旅をしている。 聖杖『エーテルセプター』 エルフが成人(100歳)のときに贈られる、神樹ユグドラシルの枝で出来た杖。 各々の魔力の形質に合わせて作られており、魔術の強化の他 使用者の魔力を注ぎ込んで魔力の武器を形作る事もできる。 魔術書 本来の用途以外に護身用武器防具としての仕様も想定して作られており、紙には強化の付与魔術がかけられている。 持ち運びのために厚さ重さが可変になっており、最大にすると立方体の鈍器と化す。 最初に持っていたものはアルダガ戦にて大破したため、現在のものは最新版である。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/25
26: ◆KxUvKv40Yc [sage] 2017/01/08(日) 22:26:41.72 ID:+bm/sbWr 【ついでにラテ殿のも】 名前:ラテ・ハムステル 年齢:18 性別:女 身長:153cm 体重:54kg スリーサイズ:わりと健康的 種族:人間 職業:トレジャーハンター兼行商人 性格:リアリストになりたいなぁと常日頃から思ってるお人好し 能力:レンジャーの心得スニーク編&サバイバル編・アイテム作成&合成・数奇な運勢 武器:大量の低レア武器・お手製魔力爆弾・未鑑定投射武器【不銘】 防具:帷子・大量の低レア防具・大量の加護アクセサリー・呪われた予言の石版 所持品:冒険者セット・エルダーミミックの死骸・お手製ポーション各種・お手製ドーピング薬・お手製、濃縮!ドーピング薬 容姿の特徴・風貌:赤毛のポニーテール・完全武装した子リスのような少女 簡単なキャラ解説: 共和国のレンジャーズギルドに所属する冒険者です 冒険者ってなんかカッコいい!なりたい!なノリで家を飛び出して早三年 ろくに弓も引けなかった小娘でしたが、やる気だけはあったので去年ついにトレジャーハンターとしての活動を許可されました! でもお宝なんてそうそう見つからないので 副業として、数だけは集まる低レア武器や手作りアイテムを売り歩く行商人ごっこも最近始めました ダンジョン内でしんどそうな人を見つけたら色々ちょっとお高めに売りつけては後で心を痛めています 素質的には正直ただの村娘Aと言われへこんだ事もありましたが 幸運にも見つけた幾つかのレア装備やお手製アイテムなどでがんばります ちなみにトレジャーハンターって要はただの遺跡荒らし、盗掘家ですが 収穫物の何割かをギルドに献上する事でちゃんと社会に貢献しています シーフとかアサシンとか、レンジャーズギルドにはその手の人材が結構いるようで、私は一応それらの講習も受けています 私掠船みたいなもんですね。低レア武器は献上の対象外なのでちょっと助かっています テッラ洞窟には最近やたら強くなった魔物が出て来るって噂を聞いてやってきました ギルドからの依頼じゃないので何か見つけても献上しなくていい!がんばろう! http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/26
27: ◆KxUvKv40Yc [sage] 2017/01/08(日) 22:27:41.68 ID:+bm/sbWr 『未鑑定投射武器【不銘】』 町に持ち帰って色々調べても未鑑定なままの武器。弓のような銃のようなパチンコのような? 間近で見ても輪郭がはっきり捉えられない。少なくとも私にはわかんない でも未鑑定って事はつまり色んな可能性を秘めてるって事で、この武器はなんでも投射出来る ちょっとお高い鑑定士に頼めばハッキリしそうだけど、鑑定が難しいって事は最悪とんでもなく呪われてるって事 呪われてるかどうかも未確定のままにしときたいからこのままでいーや 『呪われた予言の石版』 宝箱に『此処に古の預言者ナビィの遺した滅びを封じる。無知である事は、未知である事。その未来決して知るべからず』 とか書かれてた。知るべからずなら残さなきゃいいじゃんと思ったんだけど、この石版割れないの。なんで知ってるって?落っことしたから ともあれこの石版は凄く頑丈なので、私は刻まれた文字に留め具を合成して盾にリメイクしました ちなみに枕詞の呪われた、は予言ではなく石版の方にかかってるみたいで、実際文字を目にすると胸がモヤモヤする 多分だけど読んだら死んじゃう呪いとか施されてる。知るべからずだし ちなみに私はなんて書いてあるか解読出来なかったから平気! トレジャーハンターとして古代言語の勉強もした私が読めないから、多分まだ未発見の文字とかじゃないのこれ 『エルダーミミックの死骸』 幾人もの冒険者を喰らったミミックの死骸。私が倒したんじゃなくて、見つけた時には既に死んでた すぐ近くに上半身のない骸骨があったから……うぅ、つまりそういう事だったんだろうなぁ なんとも言えないけど、あの人より先に私が見つけてたら100%死んでただろうから、せめて両手を合わせて、遺骨は持ち帰ってギルドに弔ってもらった ともあれこの宝箱、死してなお強い魔力を秘めている。具体的には中が超広い。詰め込んだ物の重さも感じない 低レア武器を沢山持ち帰って売るのって、人一人が持ち運べる重量を考えると効率悪いんだけど 私がそれで行商人の真似事が出来てるのはこの箱のおかげ。自分が箱の中に入るのはちょっと怖すぎてした事がない http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/27
28: ミライユ ◆6Nqsyb3PfY [sage] 2017/01/09(月) 01:52:25.13 ID:TGmddEgC (……ん? あれは……) 先ほど別れたはずの1188番のラテ・ハムステルの気配がミライユの横にスライドし、 一瞬でティターニアの正面へと移動する。 ミライユはそれを目線だけで追っていった。 (へぇ……あの女、なかなかの使い手じゃないですか) >「なので……もし良ければ私もそちらのパーティに混ぜてもらえませんか?」 「あ、もしお宝があっても、それはそっちの取り分で構いません! 私一人じゃそもそも深い所まで行けないだろうし、 強くなった魔物の素材も結構な価値が出そうですしね」 >「うむ、高度な魔術罠を見破れる魔術師が超単純な物理罠を見抜けるとは限らぬからな。 頼りにしておるぞ、ラテ殿」 上から目線も様になっている。あざといキャラだが、それは他人に言えたことではない。 しかし、ミライユはラテのその姿が気に食わず、思わず唇を軽く噛んでいた。 「あっ、そうだ」 ミライユはそういえば報酬などについてはまだ話していなかった。 天下のソルタレクの冒険者ギルドとて、ただ飯ただ宿を与えるだけの慈善事業ではない。 何よりマスターへの貢納という意味で収益がないのは色々とまずいのだ。 「では、私は報酬の4分の1を頂くということで結構です。お二人が半分で、 残りの4分の1はラテさんの取り分ということで、彼女にお任せします 財宝についてはティターニア様のものということで、邪魔をするつもりはございません! もっとも、ギルドにとって無関係のものであれば、ですが!」 4分の1とはいえ、時には桁違いの収穫があることを、ミライユは身をもって知っている。 かつてはただの一冒険者だった立場だけに、金銭感覚にはシビアなのだ。 笑顔を崩さないまま、報酬については先におことわりを入れておいた。 ―― 結局のところラテはティターニアらのパーティーに入ることになった。 いや、むしろミライユの管理するパーティーへの同行を許可された、という感覚なのが彼女の正直な気持ちだ。 ティターニアたちはカネで操っている一人に過ぎない。主導権はこちらにあるのだ。 ラテに至っては「たかがフリーでヒラの冒険者が直轄のマネージャーと同じ立場に立てると思ったつもりか」 とすらミライユは感じていた。 『フェンリル』でも食事代と宿代を払わなくてはならないのは癪だが、一日の辛抱だ。 心理的に緊迫したミライユだったが、美味しそうな名物料理や酒の数々を目にすると途端に表情が明るくなり、 満面の笑顔でそれらにかぶりついていた。フリー時代からミライユは食いしん坊キャラで知られていた。 円形にテーブルでは左側にジャン、正面にティターニア、右側にラテがいる。 これだけ密着していれば相手の様子を観察するのは容易だが、とりあえず絡んだジャンがいまひとつの反応をした。 >「お、おう……そうかい。ところでティターニア、結局洞窟に行くのは明日でいいのか?」 どうやらティターニアの支持待ちらしい。一方、ティターニアは。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/28
29: ミライユ ◆6Nqsyb3PfY [sage] 2017/01/09(月) 02:56:24.40 ID:TGmddEgC >「このジャン殿は気は優しくて力持ちを地で行くとてもいい奴でな―― 我は一応研究費を貰える身ゆえジャン殿には臨時助手ということで護衛をしてもらっておる。 ……といっても上司部下といった堅苦しい関係ではない」 「ほほう、ミライユ殿はたくましい男性が好みか。 ああ、念のため申し添えると我とジャン殿は別に恋人関係というわけではないゆえ遠慮しなくても良いぞ」 「勿論、たくましい男性が好みです! ただ、私は、先約がありますので、別にお付き合いしたいとかでは…… お二人ともやっぱり付き合うならたくましい男性が良いですよね、ね!?」 ティターニアとラテの両方の顔を見合わせながら、ジャンに笑顔を返す。 ジャンが食事をしにくそうにしているので、腕から手を離した。 (なるほど、良いことを聞きました。つまり、ティターニアの彼氏でもなければ、 どこかに所属している訳でもない…… ということは、こちら側に入れても問題ないですよね?) 「頼りになる方が助手で、ティターニア様もお喜びでしょう。ジャンさん、ところで、 冒険者ギルドには興味ありませんか? 今なら、私の権限で、仮会員証を発行できますが……! ギルド正会員になれば、安定した収入も、夢じゃないですよ!」 周囲の客が「うるさいなぁ」という感じの視線をこちらに送ってくる。ついでに言えば、どうやらジャンの緑色の皮膚が 忌み嫌われているらしい。 テーブルを見ると食事や酒が殆ど無くなっていた。 半分近くはミライユ自身が飲み食いしてしまっていた気がするが…… 「では、お会計は私のほうで、皆さん、宿が取れていますので、お部屋までどうぞ!」 ―― 宿は大部屋で、ベッドが横に一列に並んでいた。 配置が四角だったらどうしようと悩んでいたが、運に恵まれたらしい。 宿代を出している以上、ミライユが配置については注文をつける。 「では、男性のジャンさんが一番窓側で、その隣にティターニア様。これならお互い慣れてるし、何も起きません……よね? その隣に私、そしてその隣のドア側にラテさん、でいかがでしょう?」 ジャンをギルドに勧誘するのは今である必要はない。最も情報を得なくてはならないティターニアをとりあえず、 ジャンの隣に置いて安心させ、話を聞き出す。そして、得体の知れないラテを孤立させ圧迫し観察する。完璧な配置だ。 「綺麗な部屋で良かった〜! これで、安心して、寝れそうです!」 ミライユはベッドに腰掛け、欠伸をすると、ローブと、続いてスカートを突然脱ぎだした。 その下はチェイン・メイルになっており、肩から腰にかけて防護しており、特に腹にはさらにチェインが巻かれている。 これは特に腹を意識して防護するものではなく、身体のラインを隠すのが主目的だ。少しでも注目されるのを避けるために。 そして腹のチェインと全身のメイルを脱ぐと、完全に下着姿になった。 胸は大きく、さらに目立つのは普段は見れないくびれた腰から尻への柔らかいラインだった。 細かい斬り傷や矢傷の痕が残っており、鍛えられた臍周りには痣のようなものも見られる。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/29
30: ミライユ ◆6Nqsyb3PfY [sage] 2017/01/09(月) 02:57:07.56 ID:TGmddEgC 「あぁー、重い重い! こうやって武装を取るとスッキリしますね!」 チラリ、とジャンの方を見て、目を合わせる。折角の機会なのだ。さらにティターニアの方を見て、 右隣のラテにも見せびらかす。スタイルなら勝ってはいるだろう。スタイルなら。 >「我の専門は考古学でな、と一言でいってもまあ節操のないもので世界の謎を解き明かす学問、とでも言おうかな。 この世界と魔力や魔術は切り離せぬものであるゆえ魔術学園でも研究対象となっておるわけだ」 ティターニアが眠るにはまだ早いとばかりに薀蓄を垂れ流しはじめる。 ミライユはそれを聞き流しつつ、下着の上から直接スカートを履き、ローブを着る。こうなると今までのミライユとは印象もだいぶ違う。 外に出ればあっという間に男達に襲われるだろう。 >「我々の業界で今アツい話題と言ったら当然古竜の復活―― そなた達は竜の『指環』、というのを聞いたことがあるか? 古竜を倒せるとも伝説によっては自在に操ることが出来るとも言われておる。 まあおとぎ話のようなものだ。冒険者の中にはそれを……」 (『指環』――!) 思わぬキーワードにグキリ、とローブを着込む体勢で驚いたので、腰を捻ってしまう。 ローブに手をかけたまま、ベッドに倒れこみ、ジタバタするミライユ。 「痛たた、何でもありません、何でもありませんったらー!!」 ジャラジャラジャラ……。 ミライユのローブの懐から、五枚ほどの銀色のプレートが音をたてて宿の床に落ちる。 No.547、No.780、No.1012、No.1017、No.1102 それは男女五枚の名前の刻まれたギルドの正会員証だった。 「うう〜、痛かったぁ……はッ!」 ようやく着替え終わったミライユは、ようやく大事なものを落としたことに気付いた。 他の三人にそれらを見る時間を充分に与えてしまう。恐らく名前も一部見られてしまっただろう。 「あぁ、うっかり落としちゃいました…… これ、ラテさんと同じでまだ正式にお渡ししていない会員証なんです。 あ〜 危ない危ない……これ失くしたら、マスターに怒られちゃいますね」 (……な訳ないでしょう! 余計なもの見られちゃったかなぁ?) それは今回ソルタレクを出立する際、ついでにマスターに課せられた任務。 ――「偽の任務で特に素行の悪い会員五名を"始末"してこい」との内容。 相手は男三人、女二人。ミライユは前もって六人パーティーを組み、その中でも男二人とは特に親しくして、 金を払って自分の傘下に引き込んだ。 そして目標のポイント。ミライユたちはキャンプと偽ってまずは男二人と組んで残りの男を抹殺し、女二人を攻撃した。 ミライユからは「好きにして良い」と言われていた男たちは、それなりの反撃を受けながらも女たちに重傷を負わせ、慰み者にした。 男とミライユが女たちを殺すと、次は男たち二人をミライユは脅した。最初男たちは抵抗したが、ミライユの強さを前に屈し、最後は「殺し合って生き残った方を助ける」 というミライユの提案に乗り、殺し合いが始まった。それをミライユは唇を吊り上げながら観察し、最後に生き残った男も命乞いをさせた上で殺した――。 以上が事の顛末だった。 一瞬だけ当時の光景が思い起こされたが、五枚の会員証をさっさと懐に回収すると、既に頭の中は指環のことで一杯だった。 「弱いのが悪い」それがミライユの考え方。マスター以外は転がっている石くれに過ぎない。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/30
31: ミライユ ◆6Nqsyb3PfY [sage] 2017/01/09(月) 02:58:30.07 ID:TGmddEgC 「指環……ですか。フリーの頃に聞いたことがあります。ワクワクしますね。 お手伝いします! ご一緒に気合、入れて、探しましょう!」 勿論嘘だ。指環などを見つけたら…… (殺してでも、奪い取らなくてはなりませんね……!) ミライユの心は先ほどのミスと指環の話で少々、動揺していたが、 止めどなく続けられる薀蓄に、少しずつ心が安らいでいくのだった。 >「そうそう、古代都市といえば明日行くテッラ洞窟、地底都市への入り口があるとかいう都市伝説が学園生徒達の間でまことしやかに囁かれておるぞ。 といっても普段はしょっちゅう学園の生徒たちが探検にいっておるのだ、もしもそんなものがあったらとっくに見つかっておるだろうがな!」 「アハハっ! 確かにそうですね! 修学旅行気分で、探検、楽しみましょう! 私は、ティターニア様の面白いお話をお聞かせ願えれば充分ですから!」 >「学生というのはその手の噂話が好きでの、あの想像力には感心するわ。 例えばダーマの図書館が無限地下ダンジョンになっておるとかな」 「ダーマですか! 私、子供の頃はダーマのファンで、色んな伝説の本を読んでたんですよ! 今思うと、無限地下ダンジョンなんて、魔法の力でいくらでもできるじゃないですか。 しょぼーん。大人になるって、嫌ですね〜!」 気がつくと酒やツマミを片手にニコニコと笑顔を振りまきながらミライユは談笑していた。 ティターニアのベッドの周りにジャンやラテが集まり、ある種寝る前の怪談話のようになっている。 「それじゃ、ティターニア様の次はジャンさん、その次はラテさん、って感じで話していきませんか? 面白くなかったら、罰ゲームってことで!」 ミライユが勝手に提案し、話は勝手に盛り上がり、夜は更けていった。 自分の番になるとマスターの武勇伝や自分がやらかしたドジなどについて語り、場を適度に和ませる。 ティターニアの男性経験についてつついたり、ジャンに抱きついて仮会員証を無理やり懐に入れたり、 ラテをふざけて脱がせようとし、トランジスタグラマーの恐ろしさについて語ったりしながら、 やがてだらしなく自分のベッドで布団もかけずに眠りにつこうとするミライユ。 しかし、彼女の頭の中は、指環への野心とティターニアへの興味で一杯だった。 (ティターニア――この女ならきっと何かを知っています。 必ず、指環を見つけ出させ、マスターへのお土産にしてみせます。 たとえ、誰かに犠牲になってもらおうとも……!) http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/31
32: ミライユ ◆6Nqsyb3PfY [sage] 2017/01/09(月) 09:41:11.99 ID:TGmddEgC 【用語のミスがありましたので訂正を。】 >>28 上から目線も様になっている。→上目遣いも様になっている。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/32
33: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/01/10(火) 19:25:07.03 ID:sFDXsjz1 >「ティターニア、レンジャーってのは一人いるだけで安定するもんだ。 魔術に頼った偵察が罠を見抜けずに踏み抜いた、なんて例はたくさんあるんだぜ」 >「うむ、高度な魔術罠を見破れる魔術師が超単純な物理罠を見抜けるとは限らぬからな。 頼りにしておるぞ、ラテ殿」 「やった!ありがとうございます!まっかせといて下さい!」 やったー!自分の実力が認められるって嬉しいよね! いやー洞窟探索に向けて心強い仲間が出来たなぁ。 ……い、いや、この二人とミライユさんに近づいた理由も忘れてませんけどね? 別に嬉しくてつい素が出たとかじゃないし。これもヒュミントだし。 ティターニアさんの手を取ってぴょんぴょん飛び跳ねちゃったのもヒュミントの一環だし。 う、嘘じゃないし……。 と、不意にぐうぅ、と異音が聞こえた。 異音っていうか、腹の音だよねこれ。 聞こえたのは……ミライユさんの方からだ。 うわ、めっちゃ顔赤くしてる。かわいい。 本当に……さっき私に殺気を向けた人とは思えない。 これは……ヒュミントなんだろうか。それとも、これがこの人の「素」? >「では、早速ですが、腹ごしらえでもしながらゆっくり語らうとしましょう。 今晩に限り、ティターニア様たちの分は、私の方でお出ししますので、お気になさらず」 >「それは誠にかたじけない。ではお言葉に甘えてご馳走になるとしよう」 まぁそんなこんなで宿を取って夕飯を食べに行く事に。 ここアスガルドは大量のマジックアイテムが集まる性質上、冒険者達も集まりやすい。 買い手として、或いは売り手として。 だから懐に優しい感じの宿を探して回る必要もないんだよね。 ほら、ミライユさんも迷いない足取りで『フェンリル』へ……ってちょっと待ったぁー! ここ超お高い感じなところじゃん! フェンリルって言ったら「名前の由来は生半可な輩が足を踏み入れると財布の中身を食い尽くされるから」 なんて噂される、清々しいほどお金持ちをターゲットにした高級ホテルですよ! いやまぁ、ソルタレクのギルドマネージャーともなればお金には困ってないんでしょう。 それにジャンさんとティターニアさんに取材してる立場なんだっけ? だったらそれなりの宿やご飯を用意しなきゃいけないのも分かる。 しかしこの出費は私に痛恨の一撃! さっき報酬として収穫の四分の一はもらえるって話になったけど、だからって出費が大きくていい訳じゃないんだよぉ。 なんて私が頭を悩ませてたら、ミライユさんがさらっと四人分の宿代を払ってた。 あれ?もしかして私も「ティターニア様たちの分」に含まれてたり? ……こ、ここは素直に感謝しておこうかな! >「すっごい腕……よく鍛えられているし、大体の敵なら一薙ぎですね!」 こうしてる分には、感じの良い女の人なのになぁ。 この底抜けの明るさが、かえってあの乾き切った殺気を私の記憶の中で際立てている。 私は冒険者同士で争うのとか、あんま好きじゃないし、出来ればミライユさんとも仲良くしたい。 とは思うんだけど、感覚だけで生きていけるほど私は強くないからなぁ。 ミライユさんは、なんで私を殺そうと思ったんだろう。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/33
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