[過去ログ]
【ファンタジー】ドラゴンズリング2【TRPG】 [無断転載禁止]©2ch.net (368レス)
【ファンタジー】ドラゴンズリング2【TRPG】 [無断転載禁止]©2ch.net http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/
上
下
前
次
1-
新
通常表示
512バイト分割
レス栞
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
次スレ検索
歴削→次スレ
栞削→次スレ
過去ログメニュー
268: ティターニア ◆KxUvKv40Yc [sage] 2017/02/02(木) 23:52:41.07 ID:DPQixAXK 【ようこそ、歓迎するぞ! では折角なので前章の順番を元にラテ殿→ジャン殿→我→パトリエーゼ殿という感じで開始しよう! ノーキン殿は遭遇した時点で上のローテーションのどこかに入る感じで!】 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/268
269: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/02/03(金) 23:47:53.81 ID:idk0E4bQ 「十二、十三、十四……」 あの古代都市への短い冒険が終わって数日。 私はこないだ放火騒ぎを起こし……放火騒ぎが起きてた宿屋の屋上にいた。 いや違います。放火魔が現場に戻ってきた訳じゃないです。 トレーニングをしにきたんですぅー。 今はティターニアさんの計らいでユグドラシアに泊めてもらっているけど、 走り込みとかはあそこじゃちょっとやりにくいんだよね。 で、今は逆立ち腕立て二十回セットの五回目なんだけど……。 「十八、十九……二十」 ……出来ちゃったよ。しかもまだまだ余裕がある。 これは……と、私は振り返って、通りを挟んで向こう側の建物を見た。 高さは、少し向こうが低いけど、大体同じくらい。 この辺は安い宿や食堂が建ち並ぶ通りで、道は狭め……だけどそれでも馬二等分くらいの道幅はある。 私は今いる屋上の、真ん中に立った。 そして……向かいの建物めがけて走り出す。 何の為って?そりゃ、飛ぶ為に。 床を一蹴りする度に、体がぐんと加速する。 だけどまだまだだ。もっと速く走れる。もっと、もっと、もっと速く! 「っ、ふっ……!」 そして屋上の縁を思いっきり蹴っ飛ばして、私は跳んだ。 落ちれば大怪我間違いなし……極限の緊張感が、私の時間感覚を少しだけゆっくりにする。 通りで朝の掃除をしている宿屋のおじさんと、目が合った。 っと、いけない。よそ見をしてる場合じゃない。 私はめいっぱいに腕を伸ばし……うん、届く。 屋上の縁に、指を引っ掛ける。 体が壁にびたーんって叩き付けられるけど、こういう時の受け身の取り方は訓練済み。 足の裏でしっかり衝撃を受け止め、全身の関節を使ってそれを緩和。 そのまま壁を蹴りつつ体を引っぱり上げて、屋上に登りきった。 「……届いちゃったかぁ、この距離」 さっきまでいた屋上を振り返って、呟く。 熟練のレンジャーならわりとぴょーんと渡っちゃう距離なんだけどね。 少なくともちょっと前までの私なら、背伸びしても届かなかった距離。 それが届いちゃったのは、きっと、日頃の訓練の成果……だけじゃない。 ミライユさんとの戦いで使った、私の奥の手。 あれのせいでまた少し、私の体は魔物に近づいちゃったんだと思う。 「……やっぱり、使い続けたらとんでもない事になるよなぁ、アレ」 具体的には顔だけネズミの怪人ネズミ女になっちゃいかねない。絶対嫌だ。 でも使わざるを得なかったんだよなぁ。 だって私みたいな村娘Aがいきなり伝説の指環を巡る戦いに放り込まれたんだよ!? 普通に戦ってたら間違いなく死んでたんだもん! http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/269
270: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/02/03(金) 23:49:09.64 ID:idk0E4bQ え?余計な事に首を突っ込むな?はい、ごもっともです……。 けどもう手遅れ……ではないんだけど。 正直、今からでもジャンさん達に人間やめるの怖いし降ります、って言う事は出来る。 出来るんだけど……あれ、出来ちゃうじゃん。 ……私がジャンさん達に近づいたのは、元はと言えばミライユさんが原因だ。 放っておけば、二人がミライユさんに殺されちゃうのではと思って、私は声をかけた。 でもその脅威はもう去ったし……お二人は、私よりずっと強かった。 ……あれ?私、なんでジャンさんティターニアさんに付いていこうと思ったんだろ。 ミライユさんや、あの古代都市で出会った皆の事を忘れない為? いや、指環を巡る旅に同行しなくたって忘れない事は出来る。 トレジャーハンターとして、指環のロマンには逆らえない? うーん……確かにすっごい魅力的だし心惹かれるけど……。 人間やめて、命投げ打って……そんなリスクを冒す事ばかりが冒険じゃない。 いやね、私の冒険の書をちょっと読み返してもらえば分かると思う。 基本的に旅先で見た魔法やアイテム、魔物やダンジョンについて雑学や雑感を述べてるだけでしょ。 ここ数日で、ミライユさんと事を構えるまで、倒した魔物なんて多少強くなってたとは言えオオネズミだけ。 いざまともな戦闘が始まったら 「絶対見切られたりしないっ!」 って言った直後にミライユさんに【ファントム】を見切られて反撃をもらう始末。 そう!そもそも私は切った張ったとは遠い位置にいる冒険者だったの! 散々書き散らかしてる余白の雑感コーナーとか、正直入れ替えたいもん。戦闘とかなんやかんやと。 余白で戦って後はひたすら解説でもしていたい……。 でも……今までもダンジョン内の魔物や罠が原因で死ぬかと思う事はあったよなぁ。 あの奥の手も、別に使ったのは初めてじゃない。 旅に同行しなくても皆を忘れない事は出来るけど、逆に付いていったら忘れちゃうって訳でもない。 うーん、うーん、と考え込んで……ふと、気が付いた。 私は、ジャンさん達に付いていく理由を探して悩んでるんじゃない。 ジャンさん達に付いていかない理由を探して、悩んでるんだ。 ついこないだまでの私なら、カッコよさとか、ロマンとか、 それだけで後は何も考えず、二人に付いていってたはずだ。 だけど……あの古代都市で、私は人を殺した。 ミライユさんを、殺したんだ。 人の死を見るのが初めてだった訳じゃない。 トレジャーハンターをしていれば、選択を誤った人達の亡骸は何度も目にする事になる。 時には、その瞬間だって。 だけど……自分の手で誰かの命を奪うのは、今まで見てきたそれらとは全然違った。 もっと、もっと、恐ろしいものだった。 指環を巡る冒険に乗れば……きっとまた、人を殺す時が来る。 私は……それが怖いんだ。 手が、震えてる。 「……今からやっぱり降りるって言ったら、怒られるかな」 気が付けば、私はそう呟いていた。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/270
271: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/02/03(金) 23:50:07.97 ID:idk0E4bQ ……それから私は、暗くぼんやりした気分で、ユグドラシアに帰ってきた。 ティターニアさん達は……この時間なら、研究室かな。 研究室を訪れると、ティターニアさんは何やら薄めの冊子を読んでいた。 「あ……あの、ティターニアさん」 >「ジャン殿ラテ殿も見てみるか? なかなか面白いぞ」 「え?あ、あぁ……絵物語ですか?じゃあ、お言葉に甘えて……」 ……出鼻を挫かれてしまった。 えっと、とりあえず受け取っちゃったからには読んでみよう……あ、これ面白い。 エルフの戦闘者って聞くと、大抵の人はまず魔法使いを連想すると思う。 そして次に弓使いや、流麗な技を扱う剣士とか、かな? でも彼らの適性はあくまでも魔法一辺倒。 全体的に器用ではあるけど、別に剣や弓をあえて使うほどの種族的素質はないんだよね。 ただ魔法ばかりに頼っていては、他種族との戦いで対策を取られた時、 それがそのまま絶滅の危機に繋がりかねない。 だからやむを得ず、剣や弓の技術も磨いてきたってだけ。 でも、やむを得ず使われてきたから優れていない……って訳じゃない。 むしろ逆。やむを得ず使わなきゃならないからこそ、その技は研鑽され続けてきた。 森に生きる彼らが特に得意とする風や水の魔法。 それらを用いた身体操作や技の数々は、冴え渡るという表現がまさしく相応しい。 私も一度エルフの剣士さんとご一緒した事があったんだけど、いやホント見事なもんだったよ。 水の力を身に宿して繰り出される流れるような動きは、剣技の「起こり」が感じ取れないの。 遠目から見てる私ですら、気が付いたら魔物が斬り伏せられていた、って感じだったもん。 ……でも、それらはあくまで魔法を剣技に流用しているからこその代物。 この絵物語の主人公であるエルフさんは違う。 「……面白かったです」 生まれながらにして一切の魔法が使えないエルフが、肉体を極限まで鍛え上げ、連邦の宮廷武官にまで上り詰める。 しかもそれが、実在した人物の話だって言うんだから……私みたいな小娘にはもう、感服するしかない。 もし、この人が今の私を見て、この心の内を明かしたのなら……なんて思うんだろう。 いや……詮無い事を考えるのはやめよう。 「ティターニアさん……あの、指環の勇者御一行の、話なんですけど」 >「ティターニア様、大変大変!」 ……うぅ、また何か邪魔が入ってしまった。 言い出すのが遅くなれば遅くなるほど気まずくなるし、困ったなぁ……。 >「魔術師ギルドから情報が入ったらしくて……主府の冒険者ギルドの一団がここを襲撃しに向かってるらしい!」 私は思わず、後ろを振り返った。 ホビットの助手さんは慌てて走ってきたのか息も絶え絶え。顔色は蒼白だ。 どう見たって嘘をついている様子じゃない。 ……ミライユさんの言葉は、嘘じゃなかったのか。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/271
272: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/02/03(金) 23:50:34.09 ID:idk0E4bQ 私はティターニアさんへは向き直らず、そのまま助手さんの更に奥を見た。 研究室の扉の外。私がさっき、ぼんやりと通ってきた道のり。 アスガルドの発展を導いてきた導師様方。 これから先を作り上げていく大勢の学生達。 彼らとすれ違った廊下を。 そして……アスガルドそのものと言ってもいい、この都市に住まう人達。 高度な魔法技術と、それが見せてくれる夢を求めて集まった商人や冒険者達。 彼らが築く、賑やかな街並みを。 ……指環を巡る戦いの中では、きっとまた、人を殺す時が来る。 それは、私じゃなくてもそう。 私じゃない誰かが、人を殺すんだ。 舞台から降りてしまえば、その時……私はそこに居合わせられない。 いや、違う。 >「仕方があるまい、ジャン殿、ラテ殿、付き合ってくれるか?」 冒険をやめてしまえば、今この瞬間、この場に居合わせる権利だってない。 今回は大勢死にそうだから手を貸して、後はさよならなんて……そんなのは傲慢で、無責任だ。カッコ悪過ぎる。 覚悟を決めろ、私。 そう自分に言い聞かせて……私は思いっきり、自分の両頬を引っ叩いた。 「……新生指環の勇者御一行の、初クエストって訳ですね。やってやりますよ」 私はティターニアさんへ向き直って、会心の笑みを見せつけた。 さて……じゃあ早速、情報を整理しよう。 向こうは首府から大軍を引き連れてアスガルドへ向かってきている。 となれば到着にはまだ数日かかるはず。守りを固める時間は十分。 その殆どはコモンクラス。率いているのはギルドメンバーですらないモグリ二人。 ティターニアさんがなんかすごい微妙そうな顔をしている……。 うん、正直私も気合入れて思っきしほっぺ叩いてちょっと後悔してる。 ……とは言え、相手を舐めていい事なんかない。仮にも相手はソルタレクの冒険者ギルドなんだ。 「……ミライユさんの言葉を全て信じるなら、ソルタレクの冒険者ギルドは」 >「ひっ! ソルタレク、ギルドぉ……」 ……なんかすごく情けない感じの声が聞こえた。 振り向いてみると、うわ、でっかい女の人。 ゆったりしたローブと、持ってる杖が物差し代わりになって、ものすごく大きく見える。 でもなんか、意識朦朧というか……ふらふらしてる。 その場から一歩も動いてないのにまっすぐ立ててないし。 学生さん?……じゃなさそうかな。ローブも結構汚れてるし、行き倒れ寸前の冒険者とか? この人こんな調子でここまで入ってきたの? いや、まぁ、これだけ大きい人が虚ろな感じで歩き回ってたら私もまず導師様を呼びに行くかも。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/272
273: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/02/03(金) 23:51:37.21 ID:idk0E4bQ >「あ、いやいや、怪しい者ではないんですぅ、その、食事を少々恵んでもらえれば うーん、残念ながらものすごく怪しいです。 ていうかこっそり逃げ出す準備をしている辺り、自覚があるんだろう。 ふらふらしてるのが演技とは思えないし食べ物をあげるのは構わないんだけど、変に疑られても面倒。 なので、 「お食事が欲しいなら、部屋から離れてどうするんです?」 はい、毎度おなじみの【スニーク】アンド【ファントム】で背後に回らせて頂きました。 そのままふらっふらの背中を押して、研究室の中へ。 「はいはい、とりあえず壁に体預けて、座って。ふらふらじゃないですか」 体格差はかなりあるけど、どうやらご飯が必要なのは本当のようで、簡単に座らせる事が出来た。 よし、それじゃあ腰の宝箱をがさごそ、と。 テッラ洞窟の探索用に買い込んで、結局食べずじまいの保存食が残ってるんだよね。 でも長い間ご飯を食べてないなら……あんまり硬い物はよくないよなぁ。 なら……うーん、これだ。 干しスライムのベーコンと野菜詰めコンソメ風味。 どういう料理かって言うと、名前のまんま。 瀕死にして消化能力を失ったスライムにベーコンと野菜と濃縮したコンソメを無理矢理詰め込んで、そのまま日光や火の魔法で乾燥させた物。 作り方はえげつないけど、これは保存食として優秀なんだよね。 宝箱から小さな鍋、それと低レアリティのファイアソードを取り出す。 この剣、戦闘に使うには火力が無さすぎるんだけど、鍋で料理を温めるくらいは出来る。 床に直置きする訳にもいかないから、今回は口を開けた宝箱の上で固定。零したら悲惨な事になる……。 鍋に入れて熱した事でスライムが溶けて、そのままスープ状になる。 スライムって生命を宿した液体じゃん。つまり栄養抜群なんだよね、彼ら。具材を変えれば飽きも来ない。 その上作るのも簡単で、ダンジョンに保存食として持ち込める温かいスープは、レンジャーの間では結構人気。 鍋のまま渡す訳にもいかないので、追加で取り出したマグカップに注いで……あとビスケットも付けちゃおう。 肉に野菜に穀物、水分……うん、栄養バランスは完璧! 「落ち着いて、ゆっくり食べて下さいね」 それで、えーと……何の話をしてたんだっけ。 ……あぁ、戦争が始まるんでしたね。またしばらく余白に落書きする暇も無くなりそう。いやだー。 「話を戻しますね。ミライユさんの言葉を信じるなら、ソルタレクの冒険者ギルドは、アサシンギルドを併合してます。 ……ま、どうせ少しばかしレンジャーの技術を齧っただけの、ちゃちな殺し屋集団でしょうけどね」 前にも書いた気がするけど、アサシンってのは元々は神に仕え平和の為に戦う戦士達だったんだ。 今じゃ金をもらって人を殺せばアサシンみたいな認識になってるけど、そんなんじゃあないんですよ! 私は常々思ってますよ。いつか冒険者として有名になって、何の信念もない人殺しはアサシンじゃありませんって世の人々に言ってやりたいと! http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/273
274: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/02/03(金) 23:53:31.43 ID:idk0E4bQ ……と、閑話休題。 「つまり……もしかしたら、既に刺客はアスガルドに到着して、潜んでいるのかも。 本隊が到着して都市を包囲したら、中で騒ぎを起こして、侵攻のきっかけを作る。 私が作戦を練るなら、そうします」 アスガルドは、ユグドラシアで扱われる魔法技術や知識の危険性から、結構強固な外壁がある。 だけどそれも、外壁の上に立って攻撃を行う者がいなければただの飾りだ。 意識が完全に外敵に向いていれば……例えユグドラシアの導師であろうと、暗殺は不可能じゃない。 他にも井戸に毒を入れたり、風説の流布を行ったり……。 「まぁ、刺客がいるかもしれないと思っていれば、ここの導師様方なら遅れは取らないでしょう。 ホロカちゃんが早速活躍出来るかもしれませんね。 疲れを知らない精霊達を刺客の警戒に当てれば、外への攻撃に集中出来る。そう、外への攻撃です」 ……ティターニアさんは、どういう反応をするだろうか。 外への攻撃……私は、した方がいいと思う。 正直アスガルドの防御と兵力を考えれば、籠城してるだけでも負けはないはず。 だけど…… 「……一発、大きなのをぶちかましてやった方がいいと私は思います。 何人か、為す術もなくやられれば、それが見せしめになる。 相手の士気が落ちて、さっさと退却してくれるかもしれない。そうなれば、ソルタレク冒険者ギルドの面子を潰せる」 面子が潰れれば、支配力が失われる。人が離れていく。 次は兵力を用意するのが難しくなる。 後々の事を考えれば、敵にはそれなりの被害を受けてもらった方がいい。 これは、命を天秤にかける行為だ。 アスガルドの人達をより確実に助ける為に、ソルタレクの冒険者達に、死ぬかもしれない攻撃を仕掛ける。 「……もし、ここの導師様方が難色を示したら。いえ、示さなくても……攻撃は私が……あるいは私も、やります。 私には手製の爆弾と、この【不銘】がある。尻尾巻いて逃げ出すまで、爆撃してやりますよ」 ……だけど、私はそれが傲慢な事とは思わないぞ。思ってやるもんか。 人の命を奪いに、平和を壊しに来ているなら、向こうにだってそれ相応の覚悟があるはず。 もし覚悟も思慮もなしに、やってきているなら……それこそ、最低だ。 「それでも万が一の時の為、住人の皆さんにはユグドラシアに避難してもらった方がいいかもですね。 可能なら土魔法が得意な魔術師を集めて、内壁を築いて街を幾つかの層に区切っておきたいですし。 やれる事は、全部やりましょう。何をしてでも、人命だけは絶対に守り抜かないと」 こんな、顔も名前も知らない誰かの私欲が引き起こした戦いで奪われていい命なんて、ここにはないんだ。 【警戒さえしとけば暗殺者なんか怖くないよね!外壁の上からちょっと爆撃すれば皆ビビって帰りますよ!】 うぅ、もうすぐまた余白に落書きする暇もなくなるのに、今回は余白が少ない……つらい……かなしい……。 えっと、それじゃ今回は【二つのレンジャー】についてでも。 今回、私は結構あれこれ喋ってたけど、レンジャーって実は戦術についても勉強させられるんだよね。 何故なら……レンジャーって二つの意味があるんだよ。 一つは『徘徊者』。 これはアサシンやシーフ、トレジャーハンターとか、それら全てを包括するベースクラスとしての『レンジャー』だね もう一つは……『猟兵』。戦場において遊撃や奇襲を任せられる、こっちは一つのクラスとしての『レンジャー』。 こっちは兵士としての性質が強い。つまり大抵の時勢、地域で仕事として機能するって事。 全ての『徘徊者』がまず『猟兵』の勉強をさせられるのは、それが一番食いっぱぐれな……あぁもう余白がない!くそう!ちくしょう! http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/274
275: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/02/03(金) 23:54:01.35 ID:idk0E4bQ 【パティさんよろしくお願いします! 私は「なんでもする?じゃあ戦力に追加な!」とかいうキャラじゃないので浅めに絡ませて頂きました。 なんかいい感じに恩に感じて下さい】 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/275
276: オークの集団 ◆ceap50eg.2 [sage] 2017/02/04(土) 08:28:19.50 ID:UPvCiZV/ それと時を同じくして、ユグドラシアにオークの集団現る!! 既にユグドラシア魔法学院内は「敵の斥候」の一人によって仕掛けが作られていた。 転送陣(いわゆるH×Hのノヴさんのアレみたいなやつ)が各地に張られ、「敵」は まず残虐で屈強な破壊者を送り込んできた。 ヒュン・・・・・ヒューイ! 妙な音とともに徐々に具現化されたのは、身の丈2m以上はあろうかというオークの集団だった。 肉体は鍛え上げられており、三人の戦士と一人の魔術師の計四名で構成されている。「敵」の斥候部隊だ。 ほぼ全裸で緑色の皮膚を持つ彼らは「ただただ破壊しつくし、略奪しつくし、逃げろ」という命令に従い、まずは 近くにいた研修生の少女二人を襲った。 「おっ、女だゼ」「女、女、女〜♪」「もしかして俺らに≪ヤられたいんじゃないの〜♪≫」 少女は魔法で抵抗するも、その攻撃は効かず、屈強な肉体で一撃、一撃を受けると、あっという間に少女は倒れた。 「なんかハラがバチバチすんなァ」「なんか股間がムラムラすんなァ」「ひっ!!」 あっという間に少女たちは怪我を負って倒れると丸裸にされ、オークたちに犯されていった。 薄着なのは戦闘で獲物をすぐに犯すためでもある。ものの2分か3分の間に少女たちは汚物塗れになり全裸で地面に放置された。 生死は定かではないが、助かったとしてもはやまともな精神状態には戻れまい。 「はい、次、次!」 次に目を付けたのは入り口に「ティターニア!」と書かれた部屋だった。 「ティターニア!これ女の名前じゃねェノ〜♪」「いちいち叫ぶなってのうるせェ、一応任務だ静かにやんゾ」 部屋から出てきたホビットはあっという間に巨大な棍棒の餌食になり、頭蓋骨をパックリ割られて無残な死骸となった。 オークたちがティターニア!部屋へと入っていく。 中にはエルフの女が一人、他に女が二人、オーク風の男が一人。 「女、女、女〜♪」「おゥ!強盗ダァ!お前ら女は武器を捨てて壁に手を付けェ!モノ盗だァ、殺しやシネェ」 「ティターニア!っテェのは「天国」ミテェな意味カァ?」 オークたちの装備はそれぞれ棍棒、剣、巨大なボウガン、杖だ。 「聞こえネェのカ?壁に手をついてケツこっち向ケロ、できればパンツも脱いどケ。あ、そこの男はこっち来ナ」 オークの中の棍棒を持った一人は早速勝った気分で宝箱を物色し始める。勿論棍棒を持つその肉体に隙はほとんどない。 頭は悪いが盛況な連中が選ばれているのがよく分かる。 剣のオークは早速女の品定めか股間を触りながら三人の女たち(ティターニア、ラテ、パトリエーゼ)の全身を嘗め回すように眺め、 ボウガンのオークは四人に対して順番にボウガンを構える。 杖を持ったオーク(オークシャーマンか!)は全員に強化魔法をかけて部屋の扉を閉めるか?!と思ったら違った。 剣のオークと同じように股間を触りながら女たちを眺め、そして雷の攻撃魔法を遠慮なく一発、男であるジャンに対して放った。 「ヒャッハー! 女と財宝ヨコセ。命だけは助けてやル」 言っていることとやっていることが猛烈に違う。 (斥候の雑魚が乱入。適当に倒しちゃって、どうぞ) http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/276
277: ジャン ◆9FLiL83HWU [sage] 2017/02/04(土) 16:08:37.32 ID:5t5RArOu 地底都市での指環を巡る戦いから数日。 ジャンとラテはティターニアの紹介でユグドラシアに賓客として迎えられたが、 冒険者として長く過ごしてきたジャンにとっては、もてなされるという経験はどうにも慣れなかった。 せっかくなので、ジャンにもできるような頭を使わない仕事がないか探してみると この学園にある大図書館の蔵書点検手伝いという仕事があった。 地底都市で拾った装飾品や宝石を売った金で新しく防具を買い揃え、少々財布が軽くなっていた ジャンにとってこれはちょうどいい小銭稼ぎだ。 早速大図書館へと続く渡り廊下を渡っていると、ふと外の景色が目についた。 ユグドラシアを囲む街並みは活気に溢れ市場は人で賑わう中、何故かその上の風景に。 健全な発展と言える景色の中、ラテが建物の屋上で一人、トレーニングをしている。 飛び跳ねては建物の屋上から屋上に移り、空に浮くかのような軽やかな挙動はレンジャーというより軽業師のそれだ。 (あいつ、ここにいねえと思ったらあそこに……トレーニングにしちゃちょっと危ねえな) 迷いを振り切るようなその動きは、軽やかというより何かから逃げているような――そんな気がした。 そうしてそれぞれが己のやるべきことをやっていたある日、蔵書点検が終わって 暇になったジャンがティターニアの研究室で本を読んでいた。 「基本属性理論 第三章」と書かれたそれは新入生向けの入門書。指環を巡る戦いの中で 魔術を使う敵が多かったことを考えたジャンは、付け焼き刃とはいえ学ばないよりはマシだろうと思い 蔵書点検手伝いのついでに図書館で魔術の初歩的な勉強をしていた。 それがきっかけで一緒に点検をしていた学生とも知り合い、授業の課題で作ったというアミュレットをもらった。 特定の属性を吸収するというそのアミュレットは、ジャンの首にかけられ黄色の輝きを見せている。 (黄色なら雷の属性が引き寄せられ、吸収する。アミュレットの色が多ければ多いほど優秀な魔術師の証である……) http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/277
278: ジャン ◆9FLiL83HWU [sage] 2017/02/04(土) 16:08:57.86 ID:5t5RArOu そう書かれた一文を見て、ふとティターニアを見る。 ジャンはハイランドで使われている文字はある程度読めるが、すらすらと読むことは難しい。 そのためややこしい言い回しや面倒な文法をところどころ見つけては、ティターニアに教えてもらっていた。 >「ジャン殿ラテ殿も見てみるか? なかなか面白いぞ」 視線が合った瞬間、ティターニアから冊子を渡された。 魔術が生まれつき使えないエルフが肉体を徹底的に鍛え、その筋肉であらゆる敵をなぎ倒すというストーリーだ。 中盤で主人公が故郷に帰り、森にある木を片っ端から粉砕して修業しているところを読んでいたところで、 >「ティターニア様、大変大変!」 ジャンは、読書の時間は終わったと直感で理解した。 二人の話を聞きながら研究室に置いてあった鉄の篭手と鉄兜を装備して、ミスリル・ハンマーを腰のベルトに留め具で固定。 聖短剣サクラメントが同じく留め具でベルトに固定された鉄鞘にあるかどうか確認し、いつでも戦える態勢となった。 >「仕方があるまい、ジャン殿、ラテ殿、付き合ってくれるか?」 >「……新生指環の勇者御一行の、初クエストって訳ですね。やってやりますよ」 「ソルタレクの連中業を煮やしたみてえだな、一つ決戦といこうじゃねえか」 暗殺と指環の強奪が失敗したと見るや、即座に次の手を仕掛けてくる辺り ソルタレクの冒険者ギルドは失敗を前提に動いていたと見るのが正しいだろう。 つまり相手の準備が十分に整っているとみるべきだが、どうにも相手がおかしい。 率いている相手が臨時で雇われたモグリの冒険者二人組なのだ。 はて、これはどういうことだろうとジャンが考えていると、悲鳴にも似た声が聞こえた。 >「ひっ! ソルタレク、ギルドぉ……」 >「あっ、いやいや、怪しい者ではないんですぅ、その、食事を少々恵んでもらえれば。 いや本当に、お腹が空いて死にそうなんです。お金もないし。…何でもしますから! 名前はパト、パトリーヌ。とりあえず。ところで冒険者ギルドの人達ではないですよ…ね?」 手入れのしていない長い黒髪に、ジャンよりは低いが人間の女性にしては大きめな身長。 そしてそれを隠すような地味な服装。パッと見て学生か助手に見えたが、どうも様子がおかしい。 襲撃に巻き込まれて錯乱してしまったのだろうと思い、ラテに加えてジャンも食料を渡すことにした。 「ほれ、黒パンだ。さっき食堂からもらってきた」 といってもラテほど立派なものではないが、こういう時は食べることに集中させて落ち着かせた方がいい。 少々硬くなってはいるが、スープに浸せばまだ食べられるだろう。 >「話を戻しますね。ミライユさんの言葉を信じるなら、ソルタレクの冒険者ギルドは、アサシンギルドを併合してます。 ……ま、どうせ少しばかしレンジャーの技術を齧っただけの、ちゃちな殺し屋集団でしょうけどね」 「俺たちがにカルディアにいたときもそれっぽいのに襲われたな。もしかしたらあの時から狙われてたのか?」 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/278
279: ジャン ◆9FLiL83HWU [sage] 2017/02/04(土) 16:09:21.54 ID:5t5RArOu それからしばらくラテの話を聞き、強烈な一撃を見舞って退かせた方がいいという結論になった。 >「……もし、ここの導師様方が難色を示したら。いえ、示さなくても……攻撃は私が……あるいは私も、やります。 私には手製の爆弾と、この【不銘】がある。尻尾巻いて逃げ出すまで、爆撃してやりますよ」 「そう急ぐんじゃねえ。こういう時は大体勝つこと前提で動いてるもんだ、冒険者って奴はな。 斥候やら暗殺者のことも気になるが、指揮官を捕まえて城壁にでも吊るしてやれば逃げるだろうよ」 地底都市での戦いから、ラテが戦闘の話になるとどうも様子がおかしい。 殺人を割り切ることができたと思っていたのだが、悩んだ末にまずい方向に動いてしまったのかもしれない。 ラテも落ち着かせる必要があるのかとジャンが考えた矢先、研究室のドアが乱暴に開かれた。 >「聞こえネェのカ?壁に手をついてケツこっち向ケロ、できればパンツも脱いどケ。あ、そこの男はこっち来ナ」 いかにも世間の噂通りといった風情のオーク四人がこちらへ向かって露骨に脅してくる。 おそらく今起きている襲撃と関係がある連中だろう、好き勝手に暴れさせて注意をそらすための囮だ。 >「ヒャッハー! 女と財宝ヨコセ。命だけは助けてやル」 「――黙ってろッ!」 留め具を外して引き抜いたミスリル・ハンマーを棍棒を持ったオークに思い切り叩きつけ、防ごうとした棍棒ごと頭をかち割った。 おそらく戦士階級でない、ただ生まれ持った力を振るうだけの連中はオークの中でも唾棄すべき存在だ。 頭をかち割ったオークを蹴り飛ばし、残った三人のオークにぶつける。 反撃として飛んできた電撃は、首にかけていたアミュレットが吸収してくれた。 だが、使い捨てかもしくは質が悪かったのか、吸収しきったアミュレットはあっさりと砕け散ってしまう。 (これをくれたあいつ、巻き込まれてなきゃいいんだけどよ……!) 剣を構えたオークと派手に打ち合う中、散っていくアミュレットの破片を見てジャンは一人奥歯を噛みしめ、さらに腕に力を込めた。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/279
280: ティターニア ◆KxUvKv40Yc [sage] 2017/02/04(土) 21:11:27.29 ID:XGgG/LDW 学園での滞在中、ラテは街に出てはトレーニングに勤しみ、ジャンは図書館の手伝いをしたり研究室で勉強をしたりしていた。 ジャンにいつものように本の文章を教えていたところ、彼の首で光る物に気付く。 「おや、そのアミュレットは授業の課題のものではないか。貰ったのか、お主なかなか隅に置けぬな」 と軽口を叩いていると、ラテがどことなく思いつめたような様子で帰ってきた。 >「あ……あの、ティターニアさん」 ラテは地底都市での戦い以来、どこか様子がおかしい。 やはりミライユを救えなかったのが彼女の心に影を落としているのだろう、とティターニアは推察する。 ラテは元々トレジャーハンターで、人間相手にドンパチするような類の冒険者ではない。 自ら人を手にかけたのは初めてだったのだろう。 ミライユは本気でこちらを殺す気で向かってきていて、殺らなければ殺られていた。正当防衛だ。 そもそも、ラテはミライユがもう助からないと判断して介錯しただけで、 肉体的な大怪我を負わせたのはジャンで、精神的に引導を渡すことになったのはティターニアだ。 理論的にそなたは何も悪くないと根拠を述べて慰めることはいくらでもできる。 しかしそんなことはおそらくラテ自身も分かっている、それに感情が付いて来るかは別問題ということなのだろう。 故に、敢えて自分からは何も触れず、せめて気でも紛れれば、と一緒に絵物語を見ようと誘うティターニアであった。 >「ティターニアさん……あの、指環の勇者御一行の、話なんですけど」 ああ、やはり――と思う。 自分たちの旅に付いて来れば、また人を殺さなければならなくなる時がきっとある。 そこにまだ自分なりの落としどころを見つけられていないラテに、同行を無理強いは出来ない。 そう思いラテの次の言葉をじっと待っていたところに、襲撃の知らせが舞い込んできたのであった。 >「……新生指環の勇者御一行の、初クエストって訳ですね。やってやりますよ」 >「ソルタレクの連中業を煮やしたみてえだな、一つ決戦といこうじゃねえか」 おそらく指環の勇者一行を辞退しようとしていたラテは、しかしこの襲撃の知らせを前にして覚悟を決めたようで。 ティターニアはそんなラテを見て頼もしくも思い、反面無理をしているようで危うくも思うのだった。 >「……ミライユさんの言葉を全て信じるなら、ソルタレクの冒険者ギルドは」 ラテの言葉を遮るように、突然の闖入者が現れた。 >「ひっ! ソルタレク、ギルドぉ……」 >「あっ、いやいや、怪しい者ではないんですぅ、その、食事を少々恵んでもらえれば。 いや本当に、お腹が空いて死にそうなんです。お金もないし。…何でもしますから! 名前はパト、パトリーヌ。とりあえず。ところで冒険者ギルドの人達ではないですよ…ね?」 見たところ人間のようだが、純粋な人間だとしたたら男性でもかなりの長身の部類、増して女性なのだから猶更だ。 服装は魔術師風だが、学園の生徒にしては随分地味なローブを着ていて、なんだかフラフラしている。 怪しくはあるが、とりあえず危険性はなさそうだ。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/280
281: ティターニア ◆KxUvKv40Yc [sage] 2017/02/04(土) 21:15:10.87 ID:XGgG/LDW >「はいはい、とりあえず壁に体預けて、座って。ふらふらじゃないですか」 >「ほれ、黒パンだ。さっき食堂からもらってきた」 素早いラテがいち早く動いた。 ジャンもパンを差出し、一緒に食堂に来るか、と聞くまでも無くあれよあれよという間に食事が用意された。 「そなたもソルタレクのギルドのごたごたに巻き込まれたのか? 全く仕方のないギルドだ。 安心せい、ここはあの冒険者ギルドとは無縁……むしろどうやら今のところ敵対している組織だ」 >「落ち着いて、ゆっくり食べて下さいね」 パトリエーゼが食べている間、暫し元の話題に戻るティターニア達。 >「話を戻しますね。ミライユさんの言葉を信じるなら、ソルタレクの冒険者ギルドは、アサシンギルドを併合してます。 ……ま、どうせ少しばかしレンジャーの技術を齧っただけの、ちゃちな殺し屋集団でしょうけどね」 ラテは、刺客がすでに潜んでいる可能性を示唆し、防衛専念ではなく外への積極的な攻撃を提案するのだった。 >「……一発、大きなのをぶちかましてやった方がいいと私は思います。 何人か、為す術もなくやられれば、それが見せしめになる。 相手の士気が落ちて、さっさと退却してくれるかもしれない。そうなれば、ソルタレク冒険者ギルドの面子を潰せる」 >「……もし、ここの導師様方が難色を示したら。いえ、示さなくても……攻撃は私が……あるいは私も、やります。 私には手製の爆弾と、この【不銘】がある。尻尾巻いて逃げ出すまで、爆撃してやりますよ」 やはりラテは何かに追い立てられているような様子。その様子を察したジャンがそれとなく制する。 >「そう急ぐんじゃねえ。こういう時は大体勝つこと前提で動いてるもんだ、冒険者って奴はな。 斥候やら暗殺者のことも気になるが、指揮官を捕まえて城壁にでも吊るしてやれば逃げるだろうよ」 最初に人を殺したショックのあまり、人殺しなんて大した事ないと振り切れて、逆に必要性もなく人を殺すようになる者もいる。 まさかラテがそうなるとは思わないが、飽くまでも殺すのは他にどうしようもない時の最終手段で 殺す以外に方法があるならそちらを選ぶに越したことはない。 「ジャン殿の言うとおりだ。しかし一発ぶちかましてやるのはいい考えかもしれぬな。 安心せいラテ殿、目的が面子を潰すことなら――何も殺す必要はない」 一見矛盾しているようなことを言い出すティターニア。そして不敵な笑みを作ってこう続ける。 「忘れてはおらぬか、ここは紙一重の者達が集う魔境ぞ? そなたの爆弾を使わずとも魔法薬学研究室や魔法化学研究室がわんさか出してくれるわ。 殺さずに、しかも一発ぶちかまして面子を丸潰しに出来るような爆弾や魔法薬をな!」 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/281
282: ティターニア ◆KxUvKv40Yc [sage] 2017/02/04(土) 21:26:11.86 ID:XGgG/LDW 一説には共和国最強勢力とも噂されるユグドラシアだが 強さを敵を殲滅する殺傷力という尺度で測ると、もっと強い組織がたくさんある。 普通に考えれば、戦闘を本業とする組織に学者集団であるユグドラシアが敵うはずはないのだ。 むしろユグドラシアが得意とするのはその逆。 いかに相手を殺さずに、更には傷つけずに戦意喪失に持ち込むかとか 集団戦においてはいかに敵陣に大混乱を巻き起こして有耶無耶にして終わらせるか、等を日夜研究しているのだ。 ティターニアがいつぞやの宿屋の主人に使った黒板超音波の魔術などはその一例である。 また、その戦術も他の組織とは一線を画し、良く言えば特異、実も蓋も無く言えば非常識なものが頻繁に飛び出る。 魔術師ギルドですら冒険者に共通する戦闘のセオリーというのに則っていたりするものだが ユグドラシアはどこまでいっても本質は戦士ではなく学者集団、そんなものは知ったこっちゃないのだ。 ティターニアがいきなり魔術書をぶん回してみたり、紙で神を迎え撃ったりしたのにもその一端が現れていると言えるだろう。 >「それでも万が一の時の為、住人の皆さんにはユグドラシアに避難してもらった方がいいかもですね。 可能なら土魔法が得意な魔術師を集めて、内壁を築いて街を幾つかの層に区切っておきたいですし。 やれる事は、全部やりましょう。何をしてでも、人命だけは絶対に守り抜かないと」 「そうだな、人命だけは絶対に守り抜こう――言うまでも無くこちら側は全員。 敵も殺すのは出来る限り最小限に――面子を丸潰しにして将来に渡る被害も防いでみせようぞ」 これから先の旅では敵も殺さずなんて甘い事は言っていられないかもしれない。 しかしここユグドラシアの防衛戦なら、完璧に防衛した上で更にそれが出来る――と踏んだからこその言葉。 この戦いを通してラテが自分は自分のままでいい、お人よしのままでいいと 自信を取り戻してくれればいいのだが――とティターニアは密かに思っているのだ。 何はともあれ、“死んではいけない魔術学園防衛戦”の始まりである――! そう決意を固めた矢先、オークの一団が雪崩れ込んできた。 >「ティターニア!これ女の名前じゃねェノ〜♪」「いちいち叫ぶなってのうるせェ、一応任務だ静かにやんゾ」 真っ先に飛び出していったパックが殴られて無残な死骸になった。 人命を守り抜くと決意を固めた瞬間にあまりにあまりな展開だが、ティターニアは動じない。 実は死骸になったのはレンジャーの技能【ファントム】による幻影で、本物の彼は伝令のためにその横をすりぬけて部屋から飛び出していったのだ。 (死骸のリアルな表現には幻影の魔術等も併用しているのかもしれない) 見た目弱そうとはいえ腐ってもユグドラシアの助手、雑兵オークにやられるほど弱くは無かった。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/282
283: ノーキン&ケイジィ ◆AOGu5v68Us [sage] 2017/02/04(土) 21:27:07.67 ID:RTchBiuy 【この土日のうちに導入書き入れます。遅くなってすみません!】 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/283
284: ティターニア ◆KxUvKv40Yc [sage] 2017/02/04(土) 21:28:23.86 ID:XGgG/LDW >「聞こえネェのカ?壁に手をついてケツこっち向ケロ、できればパンツも脱いどケ。あ、そこの男はこっち来ナ」 ティターニアはドン引きと呆れと物珍しさが合わさったような複雑な表情で杖を取る。 「お主ら……我のような者でもいいとはオークとしては随分ゲテモノ趣味なのではないか?」 オーク女性に相手にされなくてこうなったのか、それとも元々特殊性癖なのか、疑問は尽きない。 ジャンを見ていれば分かるように、当然この世界のオークが一般的にこんな感じではないわけで…… “何故か広まってしまった間違ったオークのイメージ”の理想的なフォルムを体現し過ぎていて、逆にこんなの実在したのか、と思ってしまう。 >「ヒャッハー! 女と財宝ヨコセ。命だけは助けてやル」 >「――黙ってろッ!」 ジャンがまず棍棒を持ったオークを撃破し、他の三人にも攻撃を加える。 ジャンとしては、このようなオークの間違ったイメージを流布する元凶は営業妨害極まりないことだろう。 杖を持ったオークから放たれた電撃の魔術はアミュレットが防いでくれたようだ。 ジャンが剣のオークと打ち合い始める一方、ティターニアは魔術を使う敵を早く片付けておこうと、杖を持ったオークに魔術戦を挑む。 その最中、ボウガンのオークがパトリエーゼ(ティターニアの中ではパトリーヌ)にボウガンを向けて狙っている事に気付く。 しかし魔術オークの相手で手が離せず、思わず叫ぶしかなかった。 「パトリーヌ殿! 危ない!」 *☆*゚・*:.。. .。.:*・*☆*゚・*:.。. .。.:*・*☆*゚・*:.。. .。.:*・*☆* http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/284
285: ティターニア ◆KxUvKv40Yc [sage] 2017/02/04(土) 21:30:20.09 ID:XGgG/LDW 一方、オークに襲われて地面に放置された研修生らしき少女に追いすがり泣いている眼鏡の男がいた。 「うええええええええん! メアリーちゃぁああああああん! スーちゃぁあああああああん!!」 そこに同僚らしきやはり眼鏡の男が歩み寄り、そっと肩に手を置く。 「彼女たちは犠牲になったのだ、生徒を守るための尊い犠牲に、な……」 魔術工学研究室――ただでさえ紙一重な者が集うユグドラシアの中でも更に一際異彩を放つ、眼鏡率が異常に高い集団である。 彼らは飛空艇以外にも様々な物を同時並行して開発しており このメアリー&スーは彼らがあふれ出る煩悩を研究への熱意に変換して開発した美少女型ゴーレムのプロトタイプだった。 どうも研究室が男ばかりでむさくるしいということで、最近は研修生の中に紛れ込ませて楽しんでいたのだ。 転送陣が開く気配を、早速精霊を使っての警戒にあたっていたホロカが感知し、見張りとして配置していたのだが―― 見た目等に力を傾け過ぎ、戦闘力が疎かになっていたのが敗因であった。 ちなみに他の場所は美少女型ではなくもう少しまともなやつが配置されている事であろう。 「許さん! 総力を結集して殺す、じゃなくて生き恥を晒してやるわああああああああ!!」 眼鏡のオタク集団が本気になってしまった。このままではとんでもない兵器が世に放たれてしまうかもしれない。 一方――魔法薬学導師や魔法化学導師達は早速爆撃に使う物の算段をしているようだ。 「これなんかどうでしょう、爆発したら最後、笑いが止まらなくなって戦闘どころではなくなる笑い弾(しょういだん)」 「これを見てください! 毒性は無いがただひたすら強烈な悪臭にのた打ち回る恐怖のガス兵器、シュールストレミングガス」 こんな感じでユグドラシア導師総員、敵を迎え討つ気満々である―― http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/285
286: ティターニアin時空の狭間 ◆KxUvKv40Yc [sage] 2017/02/04(土) 21:52:49.55 ID:XGgG/LDW >283 実は1週間ルールなので気にする事はないぞ、よろしく頼む! 早速バトルが始まっておるがもしギルドの組織絡みが難しかったら個人的に指環奪いに来る感じでも何でも大丈夫! ギルドの側がその動きを感知して勝手にリーダーに仕立て上げている事にするとか割と色々できるので とりあえず気楽に登場してみてくれ! http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/286
287: オークの集団 ◆ceap50eg.2 [sage] 2017/02/05(日) 01:39:03.86 ID:Ks3d7Hrx ジャンがオークたちの方へと歩を進める。 「なんだァ? このオーク風、状況が分かってネェみてえだなア」「おう、こいつ殺すカ?」 「それよりこいつ雷が効かねェ! どうなってやがル!」 >「――黙ってろッ!」 「ブキャピ・・・」 そのミスリルハンマーの一撃を棍棒で受けるも、一気に食い込んで棍棒を破壊、 そのままオークの頭を勝ち割った。 拉げた音がして、オークの頭がハンマーに捥ぎ取られる。 首無しの死体が床へと落ちた。 「おォオ・・・」 残り二人の攻撃はジャンの方へと向かう。 しかし、 >「お主ら……我のような者でもいいとはオークとしては随分ゲテモノ趣味なのではないか?」 ティターニアが応戦し、オークのシャーマンは撃ち合いになる。 しかし、あっさりと片付いた。 「ギャァァァ!!!」 ティターニアの攻撃魔法で杖ごと焼け焦げてその場で死臭を放つオークシャーマン。 そして、その傍では剣を持っているオークもジャンによって オークの頭部のついたハンマーで剣ごと頭を潰されていた。 ジャンのハンマーには二つのオークの頭が首の皮をぶら下げ、目玉や脳漿を垂らしながら引っ付いていた。 「クソォ、せめてあの女だけでもォォ!!」 >「パトリーヌ殿! 危ない!」 パトリエーゼをボウガンで狙った最後の一人、ゴロドフは異変に気付いた。 「な、なんなンだ、これハ・・・」 頭をキィィンとした痛みが襲う。 何となくゴロドフは思い出した。「そういや俺らを雇った連中は、なんか強化魔術とか言って俺らに仕掛けをしてたなぁ」と。 ゴロドフはボウガンを置き、開き放たれている扉から勢いよく脱出する。 「あぁァ! 死にだくねエエエ!!!」 パァァァン!!! 爆発音とともに、オークの頭が破裂した。 同時に残りの三つのオークの頭に仕掛けられていた何かも爆発する。 魔法の爆薬だ。 何者かが遠隔操作で操っていたのだ。 これにて、ささやかな「斥候」によるユグドラシア襲撃は終わった。 (雑魚退場。ありがとナス) http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/287
上
下
前
次
1-
新
書
関
写
板
覧
索
設
栞
歴
あと 81 レスあります
スレ情報
赤レス抽出
画像レス抽出
歴の未読スレ
AAサムネイル
Google検索
Wikipedia
ぬこの手
ぬこTOP
0.009s