[過去ログ] 【ファンタジー】ドラゴンズリング2【TRPG】 [無断転載禁止]©2ch.net (368レス)
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289: ノーキン&ケイジィ ◆AOGu5v68Us 2017/02/05(日)14:42 ID:NJZYvVHR(2/14) AAS
「然り。それが何か?」

「何かってあんた……」

閉口してしまった解体屋の代わりに抗議の声は別の場所から上がった。

「然り。じゃ……ないでしょーっ!」

大男が胸を叩いたポーズのままガクっと膝から崩れ落ちた。
解体屋が目を合わせたままの視線を反射的に下げると、大男の足元で彼の膝に蹴りを入れた人影を発見した。
男の巨躯と存在感のせいで気付かなかったが、傍にもう一人いたのだ。

「一人じゃないじゃん!ケイジィも一緒に戦ったじゃん!なんで分けわかんない見栄張るの!」

男の腰ほども背丈のない小柄な少女が仮借ない蹴りを入れ続けながら憤っていた。
陶磁器のように白い肌、それに劣らぬ白さの瀟洒な衣服。霞の中にいれば見失ってしまうであろう銀の髪。
半裸の大男の隣に立つには水と油のような取り合わせだ。

「おおケイジィ、そこにいたのか。吾輩こんなマスク付けてるから下方向の視界が狭くてな!うっかり踏み潰すところであった!」

「外せばいいじゃん!その変なマスク!そのマジで変なマスク!形から入りすぎでしょ!見栄っ張りさんだなもー!」

「見栄ではないとも、吾輩は一人でこの首級を挙げた。貴様は人ではないからな。吾輩の用いる道具に過ぎぬ!」

二人のやりとりを黙って見ていた解体屋は、不穏な言葉にケイジィと自分を呼ぶ少女を眺めた。

「人じゃないってこの子、もしかして魔導人形か?」

「そだよ。肌とか触ってみる?すごいかたいよ」

「はー、うちでも魔導人形の扱いはあるけどここまで精巧なものは初めて見たな。ほとんど人じゃないか」

解体屋が鼻を鳴らして感嘆する通り、ケイジィは完璧に近い精度で人間を模していた。
露出した肌や眼球にこそ生物本来の瑞々しさはないが、髪などは一般的な人形のような合成繊維ではなく艶やかな人髪だ。
ハイランドの技術水準が大陸諸国家に劣るわけではないが、それでもこの国で可能な人造品の限界を遠く超えている。
自律意志を持つ魔導人形は数多く存在するものの、今ケイジィがしているような『誇らしげ』という複雑な表情までは再現不可能だ。

「とーぜんっ!なんてったってケイジィは人間から造られぎゃんっ!!」

調子よく喋っていた魔導人形の頭上に大男の手刀が落とされ、『舌を噛んだ』彼女は目を瞑って黙った。

「如何に精巧であろうとも所詮は人に似せただけの模造品よ。技術の誇示の為だけに造られた哀しき器物である」

「うう……まぁその通りだけどさぁ!デリカシーがないよねノーキンは!あと足も臭いよね!本当に!」

「そうか……あんたも事情があるんだろう。詮索はしないでおくよ」

見たところ中年に差し掛かったこのノーキンという男が少女の人形を持ち歩く『事情』に思い当たるフシがないわけでもないが、
なんというか精神の闇のようなものに触れそうだったので解体屋は生温かくこれをスルーすることに決めた。
後に残ったのは人形とお話する半裸のおっさんという心の歪みの塊みたいな印象だけでありやはり闇だ。

「仕事の話に戻ろう。このオリハロドンはうちで解体して見積り出すよ。あんたのギルドは?」

竜種のような高価かつ希少な魔物の素材にはそれを仕留めた冒険者のギルドを刻印するのが通例だ。
これは品質の保証も兼ねる。錬金術を使ってそれっぽい死体をでっち上げる詐欺師が横行したころの名残だ。
『どこそこのギルドが討伐した』という情報はそのまま素材に対する信用になる。
しかしノーキンとケイジィは二人で顔を見合わせるばかりで何も答えない。

「おいおい、手形とか印章とか、なんかあるだろう。竜種の討伐なら狩猟権を持ってるギルドの依頼だろ?」
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