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【ファンタジー】ドラゴンズリング2【TRPG】 [無断転載禁止]©2ch.net (368レス)
【ファンタジー】ドラゴンズリング2【TRPG】 [無断転載禁止]©2ch.net http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/
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30: ミライユ ◆6Nqsyb3PfY [sage] 2017/01/09(月) 02:57:07.56 ID:TGmddEgC 「あぁー、重い重い! こうやって武装を取るとスッキリしますね!」 チラリ、とジャンの方を見て、目を合わせる。折角の機会なのだ。さらにティターニアの方を見て、 右隣のラテにも見せびらかす。スタイルなら勝ってはいるだろう。スタイルなら。 >「我の専門は考古学でな、と一言でいってもまあ節操のないもので世界の謎を解き明かす学問、とでも言おうかな。 この世界と魔力や魔術は切り離せぬものであるゆえ魔術学園でも研究対象となっておるわけだ」 ティターニアが眠るにはまだ早いとばかりに薀蓄を垂れ流しはじめる。 ミライユはそれを聞き流しつつ、下着の上から直接スカートを履き、ローブを着る。こうなると今までのミライユとは印象もだいぶ違う。 外に出ればあっという間に男達に襲われるだろう。 >「我々の業界で今アツい話題と言ったら当然古竜の復活―― そなた達は竜の『指環』、というのを聞いたことがあるか? 古竜を倒せるとも伝説によっては自在に操ることが出来るとも言われておる。 まあおとぎ話のようなものだ。冒険者の中にはそれを……」 (『指環』――!) 思わぬキーワードにグキリ、とローブを着込む体勢で驚いたので、腰を捻ってしまう。 ローブに手をかけたまま、ベッドに倒れこみ、ジタバタするミライユ。 「痛たた、何でもありません、何でもありませんったらー!!」 ジャラジャラジャラ……。 ミライユのローブの懐から、五枚ほどの銀色のプレートが音をたてて宿の床に落ちる。 No.547、No.780、No.1012、No.1017、No.1102 それは男女五枚の名前の刻まれたギルドの正会員証だった。 「うう〜、痛かったぁ……はッ!」 ようやく着替え終わったミライユは、ようやく大事なものを落としたことに気付いた。 他の三人にそれらを見る時間を充分に与えてしまう。恐らく名前も一部見られてしまっただろう。 「あぁ、うっかり落としちゃいました…… これ、ラテさんと同じでまだ正式にお渡ししていない会員証なんです。 あ〜 危ない危ない……これ失くしたら、マスターに怒られちゃいますね」 (……な訳ないでしょう! 余計なもの見られちゃったかなぁ?) それは今回ソルタレクを出立する際、ついでにマスターに課せられた任務。 ――「偽の任務で特に素行の悪い会員五名を"始末"してこい」との内容。 相手は男三人、女二人。ミライユは前もって六人パーティーを組み、その中でも男二人とは特に親しくして、 金を払って自分の傘下に引き込んだ。 そして目標のポイント。ミライユたちはキャンプと偽ってまずは男二人と組んで残りの男を抹殺し、女二人を攻撃した。 ミライユからは「好きにして良い」と言われていた男たちは、それなりの反撃を受けながらも女たちに重傷を負わせ、慰み者にした。 男とミライユが女たちを殺すと、次は男たち二人をミライユは脅した。最初男たちは抵抗したが、ミライユの強さを前に屈し、最後は「殺し合って生き残った方を助ける」 というミライユの提案に乗り、殺し合いが始まった。それをミライユは唇を吊り上げながら観察し、最後に生き残った男も命乞いをさせた上で殺した――。 以上が事の顛末だった。 一瞬だけ当時の光景が思い起こされたが、五枚の会員証をさっさと懐に回収すると、既に頭の中は指環のことで一杯だった。 「弱いのが悪い」それがミライユの考え方。マスター以外は転がっている石くれに過ぎない。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/30
31: ミライユ ◆6Nqsyb3PfY [sage] 2017/01/09(月) 02:58:30.07 ID:TGmddEgC 「指環……ですか。フリーの頃に聞いたことがあります。ワクワクしますね。 お手伝いします! ご一緒に気合、入れて、探しましょう!」 勿論嘘だ。指環などを見つけたら…… (殺してでも、奪い取らなくてはなりませんね……!) ミライユの心は先ほどのミスと指環の話で少々、動揺していたが、 止めどなく続けられる薀蓄に、少しずつ心が安らいでいくのだった。 >「そうそう、古代都市といえば明日行くテッラ洞窟、地底都市への入り口があるとかいう都市伝説が学園生徒達の間でまことしやかに囁かれておるぞ。 といっても普段はしょっちゅう学園の生徒たちが探検にいっておるのだ、もしもそんなものがあったらとっくに見つかっておるだろうがな!」 「アハハっ! 確かにそうですね! 修学旅行気分で、探検、楽しみましょう! 私は、ティターニア様の面白いお話をお聞かせ願えれば充分ですから!」 >「学生というのはその手の噂話が好きでの、あの想像力には感心するわ。 例えばダーマの図書館が無限地下ダンジョンになっておるとかな」 「ダーマですか! 私、子供の頃はダーマのファンで、色んな伝説の本を読んでたんですよ! 今思うと、無限地下ダンジョンなんて、魔法の力でいくらでもできるじゃないですか。 しょぼーん。大人になるって、嫌ですね〜!」 気がつくと酒やツマミを片手にニコニコと笑顔を振りまきながらミライユは談笑していた。 ティターニアのベッドの周りにジャンやラテが集まり、ある種寝る前の怪談話のようになっている。 「それじゃ、ティターニア様の次はジャンさん、その次はラテさん、って感じで話していきませんか? 面白くなかったら、罰ゲームってことで!」 ミライユが勝手に提案し、話は勝手に盛り上がり、夜は更けていった。 自分の番になるとマスターの武勇伝や自分がやらかしたドジなどについて語り、場を適度に和ませる。 ティターニアの男性経験についてつついたり、ジャンに抱きついて仮会員証を無理やり懐に入れたり、 ラテをふざけて脱がせようとし、トランジスタグラマーの恐ろしさについて語ったりしながら、 やがてだらしなく自分のベッドで布団もかけずに眠りにつこうとするミライユ。 しかし、彼女の頭の中は、指環への野心とティターニアへの興味で一杯だった。 (ティターニア――この女ならきっと何かを知っています。 必ず、指環を見つけ出させ、マスターへのお土産にしてみせます。 たとえ、誰かに犠牲になってもらおうとも……!) http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/31
32: ミライユ ◆6Nqsyb3PfY [sage] 2017/01/09(月) 09:41:11.99 ID:TGmddEgC 【用語のミスがありましたので訂正を。】 >>28 上から目線も様になっている。→上目遣いも様になっている。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/32
33: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/01/10(火) 19:25:07.03 ID:sFDXsjz1 >「ティターニア、レンジャーってのは一人いるだけで安定するもんだ。 魔術に頼った偵察が罠を見抜けずに踏み抜いた、なんて例はたくさんあるんだぜ」 >「うむ、高度な魔術罠を見破れる魔術師が超単純な物理罠を見抜けるとは限らぬからな。 頼りにしておるぞ、ラテ殿」 「やった!ありがとうございます!まっかせといて下さい!」 やったー!自分の実力が認められるって嬉しいよね! いやー洞窟探索に向けて心強い仲間が出来たなぁ。 ……い、いや、この二人とミライユさんに近づいた理由も忘れてませんけどね? 別に嬉しくてつい素が出たとかじゃないし。これもヒュミントだし。 ティターニアさんの手を取ってぴょんぴょん飛び跳ねちゃったのもヒュミントの一環だし。 う、嘘じゃないし……。 と、不意にぐうぅ、と異音が聞こえた。 異音っていうか、腹の音だよねこれ。 聞こえたのは……ミライユさんの方からだ。 うわ、めっちゃ顔赤くしてる。かわいい。 本当に……さっき私に殺気を向けた人とは思えない。 これは……ヒュミントなんだろうか。それとも、これがこの人の「素」? >「では、早速ですが、腹ごしらえでもしながらゆっくり語らうとしましょう。 今晩に限り、ティターニア様たちの分は、私の方でお出ししますので、お気になさらず」 >「それは誠にかたじけない。ではお言葉に甘えてご馳走になるとしよう」 まぁそんなこんなで宿を取って夕飯を食べに行く事に。 ここアスガルドは大量のマジックアイテムが集まる性質上、冒険者達も集まりやすい。 買い手として、或いは売り手として。 だから懐に優しい感じの宿を探して回る必要もないんだよね。 ほら、ミライユさんも迷いない足取りで『フェンリル』へ……ってちょっと待ったぁー! ここ超お高い感じなところじゃん! フェンリルって言ったら「名前の由来は生半可な輩が足を踏み入れると財布の中身を食い尽くされるから」 なんて噂される、清々しいほどお金持ちをターゲットにした高級ホテルですよ! いやまぁ、ソルタレクのギルドマネージャーともなればお金には困ってないんでしょう。 それにジャンさんとティターニアさんに取材してる立場なんだっけ? だったらそれなりの宿やご飯を用意しなきゃいけないのも分かる。 しかしこの出費は私に痛恨の一撃! さっき報酬として収穫の四分の一はもらえるって話になったけど、だからって出費が大きくていい訳じゃないんだよぉ。 なんて私が頭を悩ませてたら、ミライユさんがさらっと四人分の宿代を払ってた。 あれ?もしかして私も「ティターニア様たちの分」に含まれてたり? ……こ、ここは素直に感謝しておこうかな! >「すっごい腕……よく鍛えられているし、大体の敵なら一薙ぎですね!」 こうしてる分には、感じの良い女の人なのになぁ。 この底抜けの明るさが、かえってあの乾き切った殺気を私の記憶の中で際立てている。 私は冒険者同士で争うのとか、あんま好きじゃないし、出来ればミライユさんとも仲良くしたい。 とは思うんだけど、感覚だけで生きていけるほど私は強くないからなぁ。 ミライユさんは、なんで私を殺そうと思ったんだろう。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/33
34: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/01/10(火) 19:25:38.66 ID:sFDXsjz1 ……あ、この猛火牛のフィレ肉のグリルめちゃくちゃおいしい! 猛火牛ってのはその名の通り、とんでもない勢いの炎を吐いたり、炎を纏っての突進をかましてくるモンスター。 その火力の秘密は体中に溜め込んだ燃料……つまり脂なのだ。 だから猛火牛のお肉ってすんごいおいしいの。 口の中でとろけるって表現はこの牛の為にあると言ってもいい。 仕留めた剣を思わず舐めたくなるなんて噂まで聞くけど、これは確かに舐めちゃうかもしれない! でも猛火牛は戦闘態勢に入ると体内の脂を放火用の臓器や角などに移動させちゃう。 そうなるともうお肉もパサパサ。 まぁそれはそれで戦士系の人達が肉体作りに重宝してるんだけど。 とにかく、猛火牛をおいしいままで仕留めるには熟練の技が必要なのです。 それに加えて調理も単純だけど難しい。 その素晴らしい脂が落ちないよう、それでいて生焼けに感じさせない絶妙な火力と時間感覚が求められるからだ。 っとと、そんな職人芸の結晶を冷ましちゃ罰が当たっちゃう。 ので二口目を……お、おいひい! >「ほほう、ミライユ殿はたくましい男性が好みか。 ああ、念のため申し添えると我とジャン殿は別に恋人関係というわけではないゆえ遠慮しなくても良いぞ」 >「勿論、たくましい男性が好みです! ただ、私は、先約がありますので、別にお付き合いしたいとかでは…… お二人ともやっぱり付き合うならたくましい男性が良いですよね、ね!?」 私が目の前の皿に心を奪われてると、ミライユさんが話を振ってきた。 この人、めいっぱいジャンさんをからかうなぁ……。 「まぁ、弱いよりは強い方がいいですよね。こんな稼業ですし」 まぁ私も乗るけどね!見るからに困っててちょっと面白いし。 「それにジャンさんは心根も優しそうです。強さよりも、私はそっちのが好印象だし大事かなぁ。 どんなに強くたって、性根がねじ曲がってたらただの超嫌なヤツですもん。 ……パーティ、入れて下さって本当にありがとうございます。私、明日はばっちし頑張りますから!」 おーっと、ここでラテちゃんのレンジャーズギルドお墨付きスマイルが炸裂ぅー! そう言えば、よく作り物めいた笑いを指して「目が笑ってない」って表現するよね。 あれってなんでそうなっちゃうか知ってる? 普通、自分が今から騙そうと思ってる相手からは目を離したくないよね。 だから笑ってるのに目だけぱっちりになっちゃうんだってさ。 つまりどういう事かって、私のこのスマイルは完璧って事。 だって騙すつもりなんて別にないんだもん。 なんて話をしてたら、いつの間にかテーブルの上の料理はあらかた無くなっていた。 大皿料理は殆どミライユさんがたいらげてたような……あの細い体のどこにそんな質量を。 >「では、お会計は私のほうで、皆さん、宿が取れていますので、お部屋までどうぞ!」 しかしここの料理のレベルはめちゃくちゃ高かった。 多分お値段もめちゃくちゃ高かったんだろう。 これはお部屋のグレードにもかなり期待が高まっちゃいますよ。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/34
35: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/01/10(火) 19:26:35.20 ID:sFDXsjz1 そんな訳でお部屋へ。なんかもうドアの時点でそこらの安宿とは違う。 蹴れば破れるような薄板じゃなくて、重厚そうな……これはフェアリーズベッドかな。 めちゃくちゃ硬い上に強靭、しかも磨くとすごくきれいな艶が出る木なんだけど、 妖精の寝床って呼ばれるだけあってあんまり背が大きくならないんだよね。 木一本からこのドア一枚削り出してるレベルなんじゃないかな。 このドアのお値段だけで、私が普段泊まるような宿屋なら二週間くらい泊まれちゃうかも。 そんな事を考えてると、ドアの解錠音が聞こえた。 ジャンさんの小脇ごしに、部屋の中を覗き見た感想は…… ……めちゃくちゃ広い!それに綺麗だ!いい匂いもする! 照明も天井に散りばめた魔導クリスタルを介した光魔法で目に優しい明るさ! 備え付けのお菓子やお酒もさり気なく高級品だ!これは部屋代とんでもなさそう! はい、ここまで僅か一秒弱。これがトレジャーハンターのスキル【目利き】です。 洞窟内で披露するタイミングがなかった時の為に使っておきました。 >「では、男性のジャンさんが一番窓側で、その隣にティターニア様。これならお互い慣れてるし、何も起きません……よね? その隣に私、そしてその隣のドア側にラテさん、でいかがでしょう?」 「え?あぁ、私は別にどこでもいいですよー」 ……っと、なんか素で答えちゃったけど、わざわざ指定してきたって事は何か意味があったのかな。 でもどういう配置になっても、結局事が起こる時は起こるだろうし、逆も然り。 運否天賦でしかない状況で大事なのは、現状のデメリットを理解しつつ、前向きである事なのです。 例えばミライユさんの言った並び順なら、少なくとも私に危険は無さそう。 だって自分からジャンさん達に声をかけていってこの状況を作ったのに、それをぶち壊す意味がないし。 いや、初対面で殺気を向けてくる人に「意味がないから殺されない」はちょっと怖いけど。 >「綺麗な部屋で良かった〜! これで、安心して、寝れそうです!」 まぁ、この並び順にして何か突発的なメリットが生まれればそれでよし、くらいの感覚なのかな。 だからミライユさんもこうして呑気に振る舞ってるんだろう。 ……って、うわっ!早速脱いでるしこの人! 一応ジャンさんがいるんだし、一言断った方が良かったんじゃ。 この人の中の公私はどういう形で分離してるのか、私にはよく分かんない……。 >「あぁー、重い重い! こうやって武装を取るとスッキリしますね!」 ていうかこれ見よがしに見せびらかしてるし、これさっきの続きのつもりなのかな? うーん流石にちょっと趣味が悪い気もする。 けど、細いなぁこの人。 さっきの強さを見てなかったらちょっと健康を心配するレベルで細い。 しかしあれだけ食べてこの細さ……うーん、世の女性は羨んでやまないだろうなぁ。 私?私は食べたら食べただけ太るけど、ちゃんと運動してますから。 ダンジョンでモンスターから逃げたり、断崖絶壁から向こう岸にジャンプしたり、徐々に降りてくる岩の扉の下に滑り込んだり。 ヘマをやらかさなくなったら、今よりもうちょっと太るかもなぁ……。 >「我の専門は考古学でな、と一言でいってもまあ節操のないもので世界の謎を解き明かす学問、とでも言おうかな。 この世界と魔力や魔術は切り離せぬものであるゆえ魔術学園でも研究対象となっておるわけだ」 まぁそんなこんなで荷物の整理とかお風呂とかを終えた後、 ティターニアさんがインタビューへの応対をしようかと切り出した。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/35
36: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/01/10(火) 19:26:49.93 ID:sFDXsjz1 >「古竜には四星竜という手下がおってそれらを全て倒さぬと親玉にたどり着けぬ、とかな。 自主制作の冊子で”奴は我ら四星竜の中では最弱……!”とか言わせてみたりの」 そうして語られた古竜と指環の伝説は、私も聞いた事がある。 普通に有名な話ってだけじゃなくて、トレジャーハンターは知っているのです。 それらは決して、根も葉もないおとぎ話なんかじゃないって。 何の理由もなく、きっかけもなく、伝説は生まれたりしない。 作り話だったとしても、何かしらの原型やモチーフが存在する筈。 だから私達はそのおとぎ話を調べて、調べて、調べ上げる。 例えそのおとぎ話が作り話だったとしても……その原点には、もしかしたらお宝が眠っているかもしれないからだ。 ……って感じの事を喋りたい! トレジャーハンターやってる身としてはその話すっごく乗っかりたい! けど邪魔しちゃ迷惑だろうから大人しくしてます。しょんぼり。 >「痛たた、何でもありません、何でもありませんったらー!!」 うわぁ!びっくりしたぁ! 驚いて振り返ると、ミライユさんがローブを着る途中でベッドに倒れ込み、藻掻いていた。 どうも腰を捻ったみたいなんだけど、自分から取材を申し込んだのにこの人ちょっと自由過ぎる……。 あ、なんかローブから零れた。 あれは……冒険者ギルドの会員証? >「うう〜、痛かったぁ……はッ!」 ようやく痛みが引いたらしくミライユさんはローブの襟ぐりに頭を通す。 そして……自分が落っことしたものに気づいた。 >「あぁ、うっかり落としちゃいました…… これ、ラテさんと同じでまだ正式にお渡ししていない会員証なんです。 あ〜 危ない危ない……これ失くしたら、マスターに怒られちゃいますね」 そそくさと会員証を拾い上げつつ、ミライユさんはそう言った。 まぁ……私はもう、今更だから特筆すべき事はない。 あえて言うなら、改めて嫌な現実を目の当たりにさせられて胸がモヤモヤしてます。 うーん……これでジャンさん達が彼女に不信感を抱いてくれればラッキーだけど。 >「指環……ですか。フリーの頃に聞いたことがあります。ワクワクしますね。 お手伝いします! ご一緒に気合、入れて、探しましょう!」 ミライユさんが話題を指環へと戻す。 ティターニアさんは見た目からは分からないけど、やっぱり人生経験が豊富なんだろう。 私がトレジャーハンターって事を除いても、聞き入りたくなるような話し方が上手い。 そこにミライユさんも加わって、時たま皆に話を振るもんだから、 いつの間にか取材と言うよりただの談話会みたいになっちゃった。 >「それじゃ、ティターニア様の次はジャンさん、その次はラテさん、って感じで話していきませんか? 面白くなかったら、罰ゲームってことで!」 あ、これまた気分だけで喋ってるやつだ。 私なんとなくだけどこの人の事が分かってきた気がする。 切り替えが早すぎるんだ。そう、色んな事に無頓着過ぎる。 今んとこ例外は、マスターの話をしている時くらい……と。 「えぇー……どんだけジャンさんを困らせたら満足するんですかこの人……。 まぁ、ご愁傷様です。私先にお話するんで、頑張ってネタ考えといて下さい」 こほん、と咳払いを一つ。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/36
37: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/01/10(火) 19:35:19.32 ID:sFDXsjz1 「……それじゃトレジャーハンターらしく、私も指環のお話を」 ちょっとさっき書いた事の焼き直しになっちゃうんだけどね!許してね! 「知ってましたか?古竜と指環の伝説って、地方によって少しずつ形が違うんですよ。 例えば帝国の方では、指環は最後火山に投げ入れられ、ベヒモスに委ねられておしまい。 って話が広く伝わってますが、実はそれ以外にも口承として色んな話が残ってるんです」 昔調べた事を振り返るように冒険の書をぱらぱら捲りつつ、私は喋り出す。 「指環は奪い合いの末、滅びた古代都市と共に海の底に沈んだとか。 指環を巡る争いに嘆いた大地の神が体を震わせ、それが大地震となって地面を割り、指環を手にした勝者をも飲み込んだとか。 指環の力は一つの都を滅ぼすどころか、灰燼に還してしまい、その跡地は今では大砂漠になっているとか。 指環は人の世には過ぎた力だと、時の聖女が神の落とした雷に指環を結んで、天に召し上げられた勇者へ返したとか…… 地獄の大穴に返された、なんてパターンもありますね」 節操ねーなー!って思うじゃん? でもこれって実は、ちゃんと元を辿っていけば納得のいく理由があるの。 「これらは多分、どれもベヒモスに委ねられたって所から始まってるんです。 ベヒモスは、神々の時代から今の世に至るまでに、色んな姿を想像され……与えられてきましたからね。 例えば大地を支える巨大魚バハムートは、元々はベヒモスの名を読み替えたものと言われてます」 つまり大地震がーって説はここから来てる可能性が高いって事。 火山の説はベヒモスが一千の山のある地に住むと言われていたから。 砂漠の説はベヒモスの背中には大きな砂漠があるって話だから。 海底の説はベヒモスが元々は海に住んでたとか、バハムートが魚の姿だから。 地獄の底にって話は……地方によってはベヒモスは悪魔として扱われてるからかな? 「勿論、中には本当にただの作り話もあるでしょうけどね。 でも……その中の幾つかは、元を辿っていくとたった一つの言葉に収束する。 そう考えると……古竜と指環の伝説、なんだか信憑性があるように思えてきませんか?」 いやね、実際あり得る話だと思うんですよ私。 「少なくともこの世界は、古い古い神様達が一週間で天と地と命を創り出したって奇跡の上に成り立ってる……なんて話もある訳で」 一週間って。絶対半分くらいノリで創ったでしょ世界。 なんか動物達にやった寿命いらんって返されたから全部エルフと人間にやるわの下りとか。 半々くらいにするつもりがエルフに多くやりすぎたけどめんどいしこれでいいわとか。 いや、大変ありがたいんですけどね。 長いようで、少し短い命を与えられたからこそ、人間は限られた生命の中を走る事が出来た。 だから色んな発見や成功を掴み取って、文明を築いてこれたのだ。 ちょっと話が逸れたけど要するに。 「その奇跡に比べれば、古竜や指環なんて全然あり得る話でしょ」 【ネタの種にでもなればいいなって感じで!】 ちょびっと余白があるし、また落書きしちゃおうっと。 そんなこんなで消灯したんだけど、その時に部屋のあちこちに魔力の糸を張ってたら変な目で見られちゃった。 トレジャーハンターってやっぱりお宝を持ってるってイメージが強いから、寝込みを襲われる事もあるみたいなんだよね。 だからレンジャーズギルドでは、寝る前に何かしらの夜襲対策を徹底するよう教育されるの。 ちなみに糸は切れても特に何も起こりません。 ただ私の指に繋がってるから、切れたら分かるし私が飛び起きるってだけ。 別にミライユさんを警戒してって訳じゃないんだけど、誤解されたらちょっとやだなぁ……すやぁ。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/37
38: ジャン ◆9FLiL83HWU [sage] 2017/01/11(水) 22:32:45.08 ID:HSn1eE9u ジャンにとって人生で最も気まずい晩餐が続く中、ティターニアがジャンのことを話題に出した。 早く食事を終わらせるために黙々とうつむいて食べていたジャンにとっては後ろから味方に斬られたようなもので、 冷や汗がじっとりと背中を伝うのをジャンは感じていた。 >「勿論、たくましい男性が好みです! ただ、私は、先約がありますので、別にお付き合いしたいとかでは…… お二人ともやっぱり付き合うならたくましい男性が良いですよね、ね!?」 >「まぁ、弱いよりは強い方がいいですよね。こんな稼業ですし」 >「それにジャンさんは心根も優しそうです。強さよりも、私はそっちのが好印象だし大事かなぁ。 どんなに強くたって、性根がねじ曲がってたらただの超嫌なヤツですもん。 ……パーティ、入れて下さって本当にありがとうございます。私、明日はばっちし頑張りますから!」 他の二人まで話題に乗ってきた。冒険者として10年ほど経験を積んでいるジャンは恋愛経験がないわけではなかったが、 それでも女性からこのような話題を振られるのは、はっきり言って経験がなくジャンは返答を考えるのにかなりの時間がかかる。 (いつも他の奴と組むときは男ばっかりだったからな……人間やエルフの女冒険者は見た目がオークってだけで嫌な目で見てくるしよ……) 雄のオークは性欲が強く、異種族を平気で襲うと他種族からは思われているが、実際は違う。 傭兵や船乗り、大工を営むことが多いオーク族は必然的に肉体労働をする者が多く、そういった仕事の近くには必ず需要に対する供給として 性関係の仕事が存在し、仕事帰りの雄のオークがよくそこに通っているというだけなのだ。 もちろん山賊や野盗に転落してしまったオーク族もいるが、犯罪に身をやつす者はどの種族にもいる。 「二人とも、お世辞だとしても嬉しいけどな。あんまり男を褒めるもんじゃねえぞ。すぐに調子に乗るからな……」 喋り終えたときふと、ジャンは昼に冒険者ギルドで聞いた噂を思い出していた。 男女混合で活動していたパーティーが全滅、理由はおそらく恋愛関係。 (――いや、俺たちもそうなるか、なんて考えすぎだな。「あなたに惚れました!」なんて俺に言ってくる人間の女は みんな冒険者に見せかけた盗賊だった。やっぱり女はオークの女が一番だ) >「頼りになる方が助手で、ティターニア様もお喜びでしょう。ジャンさん、ところで、 冒険者ギルドには興味ありませんか? 今なら、私の権限で、仮会員証を発行できますが……! ギルド正会員になれば、安定した収入も、夢じゃないですよ!」 ジャンの腕から手を離し、ようやく食べることに集中できるとジャンが思った直後に またミライユが話しかけてきた。今度は冒険者ギルドへの勧誘らしい。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/38
39: ジャン ◆9FLiL83HWU [sage] 2017/01/11(水) 22:33:09.85 ID:HSn1eE9u 「……悪いけどよ、俺もう入ってるんだわ」 そう言って腰の布袋の紐をほどき、中から取り出した冒険者ギルドの会員証を見せる。 鉄で作られたそれには短い文章が刻まれていた。 『以下の者を冒険者として認める。ジャン・ジャック・ジャンソン』 『鋼鉄都市スクリロ支部 No.95 鶴嘴の月 銅の日』 ちなみに鋼鉄都市スクリロはハイランド連邦共和国の湾岸部にまたがる細長い都市の名であり、 地下に大量の鉱脈を持つ巨大鉱山でもある。 「だからよ、二重に入るってわけにもいかねえだろう。そこらへんの規則はよく知らないけどよ」 ミライユの勧誘を断っている間、気がつけば食事がようやく終わっていた。会計は言われた通りミライユに任せ、部屋へと向かう。 部屋は普段泊まっている安宿とは違い床はきしむ音がせず、ベッドは白さのあまり輝いて見える。 >「では、男性のジャンさんが一番窓側で、その隣にティターニア様。これならお互い慣れてるし、何も起きません……よね? その隣に私、そしてその隣のドア側にラテさん、でいかがでしょう?」 あまりの高級さに気後れしていると、ミライユがベッドの配置を指定してきた。食事代や部屋代を出されている以上文句は言えないが、 護衛主であるティターニアと離された位置に置かれるのであれば警戒する必要がある。 だがそうはしないところを見ると、どうやら監視以上の目的はないのかもしれない。 「ああ、それでいいぜ。俺もいざって時には助手としての役目を果たせるってもんだ」 そうしてベッドに腰かけたミライユは、いきなり防具どころか服を脱ぎ始めた。 唐突に起きた目の前の事態にジャンが呆然とベッドに座っているのを見ると、チラリと目線を合わせてくる。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/39
40: ジャン ◆9FLiL83HWU [sage] 2017/01/11(水) 22:33:33.66 ID:HSn1eE9u >「あぁー、重い重い! こうやって武装を取るとスッキリしますね!」 どうやらジャンに見せるつもりだったらしいが、ジャンとしては娼館でたまに見るストリップより色気が感じられなかった。 そういったやり取りを続けているうち、ティターニアがベッドに腰かけて例のミライユからの取材に答え始めた。 >「我の専門は考古学でな、と一言でいってもまあ節操のないもので世界の謎を解き明かす学問、とでも言おうかな。 この世界と魔力や魔術は切り離せぬものであるゆえ魔術学園でも研究対象となっておるわけだ」 >「我々の業界で今アツい話題と言ったら当然古竜の復活―― そなた達は竜の指環、というのを聞いたことがあるか? 古竜を倒せるとも伝説によっては自在に操ることが出来るとも言われておる。 まあおとぎ話のようなものだ。冒険者の中にはそれを真に受けて本気で探しておる大馬鹿者もおるらしいが……」 どうやら探りを入れてみるつもりのようだ。ジャンはこういう腹の探り合いが得意ではないし、好きではなかったので 黙ってベッドの隅に座り、三人の華やかな話し合いを聞いておくことにした。 話し合いの中、いきなり金属音が部屋に響いた。ミライユが何かを落としてしまったらしく、必死にかき集めている。 ジャンの視点から見えたのは冒険者ギルドの会員証、それも正会員証だ。 >「あぁ、うっかり落としちゃいました…… これ、ラテさんと同じでまだ正式にお渡ししていない会員証なんです。 あ〜 危ない危ない……これ失くしたら、マスターに怒られちゃいますね」 (ギルドの会員証ってのは、ティターニアへの取材よりは優先度が低いみてえだな……やっぱり監視に来てるのか?) >「それじゃ、ティターニア様の次はジャンさん、その次はラテさん、って感じで話していきませんか? 面白くなかったら、罰ゲームってことで!」 話が進むにつれておかしなことになってきた。そろそろジャンが寝るかと毛布をかぶり始めた頃に いきなりミライユがまた話題を持ち掛けてきたのだ。 >「えぇー……どんだけジャンさんを困らせたら満足するんですかこの人……。 まぁ、ご愁傷様です。私先にお話するんで、頑張ってネタ考えといて下さい」 どうやらラテが考える時間をくれるようだ。ジャンはラテの話を聞いている間 何を話そうかとずっと考えていたが、やがて一つの話を思い出した。 「俺の番みてえだな、じゃあ……旅の途中に出会った、喋る竜の話でもするか」 「その竜はダーマ魔法王国のアールバト山脈に巣を構えていてな、通りがかる旅人に昔話を語るのが趣味だった。 昔話と言ってもそいつは長生きだったみたいでな、数千年前の話を平気でするんだ。まるで昨日の話みたいにな」 「その話の中で一番興味深かったのは、今思えば指環の話だな。なんでも竜の指環ができる瞬間に立ち会ったって言うんだ」 「古竜とその眷属たる全ての生き物が集まり、この世界を作る四つの力との契約が行われた指環。 力ある者が嵌めれば世界を理解し、世界の王どころか世界そのものになるであろう……なんて言ってたな」 やがて夜が深くなる頃、ジャンはベッドの中で今度は夢を見ることなく、ぐっすりと眠っていた。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/40
41: 創る名無しに見る名無し [age] 2017/01/12(木) 23:57:01.34 ID:ShCyPSR1 埋め http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/41
42: 創る名無しに見る名無し [age] 2017/01/13(金) 00:01:08.47 ID:7iGWlzhX 埋め http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/42
43: 創る名無しに見る名無し [age] 2017/01/13(金) 00:04:32.48 ID:c+0BFdAq 埋め http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/43
44: 創る名無しに見る名無し [age] 2017/01/13(金) 00:04:40.28 ID:3n5RSym4 埋め http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/44
45: 創る名無しに見る名無し [age] 2017/01/13(金) 00:05:10.92 ID:gBvj5XGK 鵜め http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/45
46: 創る名無しに見る名無し [age] 2017/01/13(金) 00:07:34.08 ID:8Mwwo+UY 埋め http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/46
47: 創る名無しに見る名無し [age] 2017/01/13(金) 00:07:59.89 ID:8Mwwo+UY 埋め http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/47
48: 創る名無しに見る名無し [age] 2017/01/13(金) 00:14:13.78 ID:tLUnpu+1 埋め http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/48
49: 創る名無しに見る名無し [age] 2017/01/13(金) 00:19:36.53 ID:3eTi1lch 梅 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/49
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