[過去ログ] 【ドラマ】綾辻行人『十角館の殺人』映像化不可能と言われた傑作ミステリー実写化、日テレで地上波初放送決定 TVerで見逃し配信も [muffin★] (781レス)
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290: 11/22(金)03:39 ID:t2aDQCSA0(1) AAS
「推理小説年鑑」の読者から、電話で質問があった。
これに納められている、加納一朗の「猫ババ野郎」が、アンフェアではないのか、という質問だった。
「確かにそうですね。つい、作者の筆が滑ったのでしょうが……」
私は、そう答えた。そのアンフェアというのは

『いつものように店を出していた上沢は、一通の封筒が、掲示板に貼られたグラフとベニヤ板の隙間にはさみこまれているのを発見した。
七、八人客が寄ってきて、声を嗄らす前にはなかったはずだから、客のなかの誰かが置いていったのかも知れない。
上沢は封筒を眺めた。ありふれたうす茶の、どこの文具屋でも売っているようなものだ。
表裏とも何も書いてない。上沢は中の便箋を引き出して文面を読み下すと、顔色を変え、駈け出した』

これは三人称で書いてあるが、決して、客観描写ではない。上沢に視点を置いた文章である。
だからこそ、『客のなかの誰かが置いていったのかも知れない』という形の文がでて来るのであろう。
(もっとも、上沢に視点を置いたものと考えると、『顔色を変え』というのがおかしい。
顔色が変ったかどうかは、本人にはわからないことなのだ。
しかし、この程度の「視点の混乱」は、他の作家にも、見られることである)

ところで、その便箋に書かれたものは、脅迫状であった。
だが、やがて、読者は、つぎのような文章にぶつかる。

『上沢はポケットから取り出した脅迫状を破り棄てると、傍のゴミ箱に投げこんだ。
《馬鹿な奴だ》と、思う。こんな簡単な方法で二人から金を捲き上げられたのは、一にも二にも奴等が馬鹿だからだ……』

つまり、脅迫状は上沢自身が書いたものだったのだ。
こうなると、前の描写は、嘘が書かれている、と言わざるを得ない。

加納は前にも、ある長編で、これと同種の誤りを犯したことがあった。
加納がこれを一つのテクニック――読者をミスリードするための技術として、意識的に使ったものなら、問題である。

一方、これと同種のアンフェアを犯しているように見えながら、実は、それが考え抜かれた技巧であるという場合もある。
夏樹静子『誰知らぬ殺意』などもその一つである。
作品について説明しよう。
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