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興行収入を見守るスレ5656 (1002レス)
興行収入を見守るスレ5656 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/
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745: 浜崎順平(福岡県) (ワッチョイ 9917-yILz [124.159.140.223]) [sage] 2022/09/10(土) 02:00:27.19 ID:XEi7410U0 よ、よし、気を取り直していくぞ。オレは胸を撫で下ろして深呼吸する。 今度は顔を片手で覆い、指の間から片目を開け、ミサの腰のホルスターに挿しているリボルバー型フックショットに手を伸ばす。 ミサが起きやしないかと変に気になりながらも、オレはなんとかリボルバー型フックショットを抜き取った。 調子に乗ったオレはリボルバー型フックショットの引き金に人差指を通してリボルバー型フックショットを回し、鼻頭を人差指で得意げに擦る。 なにやってんだろ、オレは。こうしている間にも、ミサがあぶねぇってのに。 急に虚しくなってどっと疲れが出て、オレはがっくりと肩を落とす。 オレは顔を上げて額を手の甲で拭い、深く息を吐いて落ち着かせた。こりゃ寿命が縮んだな。 何故か嫌な汗を掻いているような気がしたが、川の水と変な汗が混じっているのかわからなかった。 オレは腰に手を当てて、銀色のフックショットをまじまじと見つめた。 頼むぜ。オレは片目を瞑り、銀色のフックショットを片手で構え、川岸に生えている樹の太い幹に狙いを定める。 引き金を引くと、勢いよく銃口からワイヤーが飛び出し、狙い通り樹の太い幹に刺さった。 ワイヤーを思いっきり引っ張ってみる。大丈夫そうだ。一発でうまく幹に刺さってくれた。 オレはミサの脇腹に腕を通して、ホバーボードを掴む。 幹を睨んで、またフックショットの引き金を引き、ワイヤーをゆっくりと巻き取ってゆく。 ゆっくりとワイヤーが銃身に巻き取られてゆく中、川の流れが早くなり、オレは川に流されてゆく。 ワイヤーが伸びきってぎりぎりと嫌な音がする。不味いぞ、上手くワイヤーが刺さってなかったのか? その時、ワイヤーは川の流れに耐えられなくなり、呆気なくワイヤーの先端が幹から抜ける。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/745
746: 浜崎順平(福岡県) (ワッチョイ 9917-yILz [124.159.140.223]) [sage] 2022/09/10(土) 02:00:38.79 ID:XEi7410U0 引っ張られるようにオレは川に流される。 「うわっ!」 オレの叫びも虚しく、オレは川の流れに身を任せるしかなかった。 くそっ。フックショットはダメだったか。オレは引き金を引いて、ワイヤーを巻き取る。 ぜってぇ、お前を助けるからな。オレはミサに振り向いて、ミサの脇腹を通してホバーボードを掴む手に力を入れる。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/746
747: 浜崎順平(福岡県) (ワッチョイ 9917-yILz [124.159.140.223]) [sage] 2022/09/10(土) 02:00:57.60 ID:XEi7410U0 禁断の森の奥 白色のドラゴン その時、ワイヤーは川の流れに耐えられなくなり、呆気なくワイヤーの先端が幹から抜ける。 引っ張られるようにオレは川に流される。 「うわあああああ!」 叫んで口を開けた時に川の水を飲んでしまい、オレは盛大に咳き込む。 オレの叫びも虚しく、オレは川の流れに身を任せるしかなかった。 くそっ。フックショットはダメだったか。オレは引き金を引いて、ワイヤーを巻き取る。 ぜってえ、お前を助けるからな。 オレはミサに振り向いて、ミサの脇腹を通してホバーボードを掴む手に力を入れる。 オレは川の流れに揺られて酔って吐きそうになる。 川の水がつめてえ。傷が沁みやがる。 今日は災難だぜ。まさか、この先は滝じゃねえだろうな。 オレは嫌な予感がして、川の先を見つめる。 川の先は深い森が広がっている。 その時、両川岸にさっきの狼の様な魔物がオレを追いかけてくる。魔物は二匹。 メタリックの骨格の身体で眼が紅く、背中に装備した大きなマシンガン。 もう一匹の背中には大きなキャノン砲を装備している。 オレの傍でマシンガンの弾丸が川に落ち、すぐ傍でキャノン砲が川に落ちて爆発で川に穴が開く。 くそっ。諦めの悪い奴らだ。 オレは息を吸って、ミサを押さえたまま川に潜って顔を隠す。 水中でマシンガンの弾丸がオレの頬を掠めたのか、類に痛みが走りオレは顔をしかめる。 川の流れが速くて息が続かず、オレは川から顔を出して大きく口を開ける。 キャノン砲がホバーボードのすぐ上を掠める。 ホバーボードにマシンガンの弾丸が命中したのか火花が散っている。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/747
748: 浜崎順平(福岡県) (ワッチョイ 9917-yILz [124.159.140.223]) [sage] 2022/09/10(土) 02:01:18.15 ID:XEi7410U0 気のせいか少しずつ川の流れが早くなっている。 オレの流される速さに追いつけなくなった魔物は諦めて立ち止って首を振っているのが見えた。 魔物は踵を返して、樹の影に消える魔物の後ろ姿が小さくなる。 どんどん川に流され、川が曲がったりで気分が優れなくなる。やっぱり、滝があるのか? オレは吐きそうになり、口許を手で押さえる。 オレの嫌な予感が当たり、辺りに轟音が響く。目の前に大きな滝が口を開けて迫っていた。 おいおい、あんな滝に落ちたら、今度こそ助からないぞ。 成す術もなく、オレとミサは滝に吸い込まれて滝に落ちた。 宙に放り投げ出されたオレは逆さまになってミサに手を伸ばす。 「ミサあああああ!」 くそっ! ミサが死んじまう。どうにかなんねえのかよ! オレは悔しくて歯を食いしばる。 そうだ。さっきみたいに助けてくれよ! オレは小さくなってゆくミサに手を伸ばしたまま、胸のクリスタルを握り締める。 オレは、ミサを助けたいんだ! なんとかしやがれ! http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/748
749: 浜崎順平(福岡県) (ワッチョイ 9917-yILz [124.159.140.223]) [sage] 2022/09/10(土) 02:01:34.06 ID:XEi7410U0 その時、胸のクリスタルが眩く青白く光る。オレは青白い光が眩しくて、顔の前を手で遮る。 顔の前を手で遮る指の間からホバーボードが縦になってマフラーから火を噴き、真っ直ぐにミサ の元に飛んでゆくのが見える。さっきの魔物の攻撃でホバーボードが損傷して火花を散らしながら。 ミサに追いついたホバーボードはミサの身体の下に潜り込み、ホバーボードの上にミサの身体がうつ伏せに乗っかり、ゆっくりとホバーボードは下がってゆく。 オレはミサに親指を突き出す。頼むぜ、ネロ。 ミサを守ってくれ。 なんとかなるだろ。オレは安心してため息を零し、水飛沫を手で遮りながら辺りを見回す。 どっかにフックショットを引っかけられれば助かるかもしれねえ。 オレはフックショットを握り締める。 滝の裏の岩壁にフックショットを引っかけるのもいいが、滝の流れが早い。 他にフックショットを引っかけられるような岩や木がない。 やっぱ、近くに引っかけられるようなもんはねえか。そんな甘くねえよな。 オレは瞼を閉じて首を横に振る。 オレは緊張で生唾を飲み込んで喉を鳴らし、滝の端の突き出た岩壁に向かってフックショットを構えて、フックショットの引き金を引く。 ワイヤー足りるか? けっこう岩壁まで距離あるな。オレは額に手を当てて、岩壁までの距離を確かめる。 銃口から勢いよくワイヤーが飛び出し、岩壁に突き刺さったフックショットにオレは引っ張られる。 「岩壁に叩きつけられる! そこまで考えてなかったあああああ!」 オレは舌打ちして、フックショットを両手で構えて引き金を引く。 岩壁に突き刺さったワイヤーが抜けてワイヤーが巻き取られ、オレの身体が逆さまに滝壺に吸い寄せられてゆく。 オレは大きく息を吸って吐いた。 最後にこいつを頼ることになりそうだ。不思議と死ぬ気がしねえ。 「なんとかしやがれ! ただの飾りじゃねえだろうが!」 オレは瞼を閉じ、胸のクリスタルを片手で握り締めた。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/749
750: 浜崎順平(福岡県) (ワッチョイ 9917-yILz [124.159.140.223]) [sage] 2022/09/10(土) 02:01:51.40 ID:XEi7410U0 その時、滝の向こうから大きな翼が羽ばたく音が聞こえる。 なんだ? オレは思わず験を開けて、音の方を見た。 クリスタルの青白い光がオレを包み込む。 オレの視界に白色の大きなドラゴンが羽ばたきながら、口から炎を吐き、物凄い速さでオレに近づいてくるのが映る。 白色ドラゴンの瞳は吸いこまれそうな透き通る 大きなサファイアブルーだった。まるで大きなサファイアブルーの宝石の様な瞳だ。 白色のドラゴンが火を噴いた熱気がオレを襲い 、オレは顔の前を手で遮る。 物凄い熱気でむわっとする。冷たかったオレの身体が温められる。 な、なんだよ、あいつ。魔物か? オレを捕まえる気なのか? それとも腹が減ってオレを食う気か? 「ワハハハハッ! 感じる、感じるぞ! 久しいオーヴの力だ! ワタシは長い眠りから覚めたぞ!」 人語を操るよく通る声が近づいてきたと思ったら、白色ドラゴンがオレを一瞥して、白色ドラゴンの大きな影がオレの下を通り過ぎる。 次の瞬間、ばさっと翼を広げるような大きな音がして、オレの背中がごつごつと硬い物に触れた 見上げると、白色の大きなドラゴンが仰向けになって両手でオレを抱いていた。 白色ドラゴンの指の鋭い爪が視界に入り、オレはぞくりと寒気がしてぷるっと震える。 「うわっ! お、下ろせ! 魔物が!」 オレは白色ドラゴンの腕の中で手足をバタバタさせて暴れた。 まだクリスタルが青白く輝いているので、オレはクリスタルをそっと握り締めた。 不思議と安心して落ち着き、大丈夫だと教えてくれている様な気がした。 白色のドラゴンが身体をよじって、呆れたように大きな首を横に振る。 「やれやれ。無暗にオーヴを使い過ぎだ、マスターよ。お前は疲労の限界がきているはずだ、少し 眠るがいい」 気持ち良さそうに両翼を羽ばたかせて、大きな滝から離れ、白色ドラゴンは川沿いをゆっくりと 飛んでゆく。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/750
751: 浜崎順平(福岡県) (ワッチョイ 9917-yILz [124.159.140.223]) [sage] 2022/09/10(土) 02:02:21.40 ID:XEi7410U0 その時、オレの眼下に川岸に寄せられてうつ伏せに倒れているミサが目に入る。 ミサの傍にはホバーボードが裏返って火花が散っている。 川岸の樹の影から現れた一人の黒装束が肩に掛けたマシンガンを構えてミサにゆっくりと近づいてゆく。 オレの鼓動が高まり、急な眠気から一気に覚める。 「お、おい! 下ろしてくれ! ミサを助けないと!」 オレは白色のドラゴンの硬い皮膚を肘で小突いた。 肘が痺れてびりびりして、オレは痛みで肘を押さえて呻いた。 「倒れているあの子かい? ちょっと様子を見ようじゃないか」 白色のドラゴンがミサの上空を旋回し始めた。 黒装束の男がミサを肩に担ぎ、ホバーボードを脇に挟んで、黒装束は旋回している白色のドラゴンを仰ぐ。 黒装束は顔が黒いフードで覆われ、口許も黒い布で覆っているため、性別がわからず、表情も見えない。 やがて黒装束はミサを肩に担ぎ直して歩き出し 、奥の樹の影に消えた。 白色のドラゴンが旋回をやめて羽ばたき、森の奥を見つめている。 「ふむ。近くに野営地があるみたいだね、テントが幾つか張ってある。そこの連中みたいだ、あの子を攫った奴は。どうするんだい?」 白色のドラゴンが欠伸をして火を噴いた後、オレに訊いてきた。 オレは白色のドラゴンの視線を眼で追った。 白色のドラゴンの視線の先に野営地があり、テントが幾つか張ってあった。 野営地から白煙が昇って、風に乗っていい匂いがオレの鼻腔をくすぐる。 匂いに反応するように、オレの腹の虫が鳴った そういえば、腹が減ったな。ミサが持ってきた菓子、全部食ったしな。 ミサの奴、本当はネロとのデートで食うつもりだったんだろうけど。 オレはお腹を擦るが、腹の虫は食いものをよこせと鳴き続ける。 オレは額に手を当てて、よく野営地を見ようとする。 あいつら、ラウル古代遺跡を調査しにきた探検隊か? それにしても、こんなところに開けた場所があるなんて。 そうだ。あいつらに訊いてみよう、ラウル古代遺跡のこと。何か知ってるはずだ。 その前に、オレはミサを助ける。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/751
752: 浜崎順平(福岡県) (ワッチョイ 9917-yILz [124.159.140.223]) [sage] 2022/09/10(土) 02:02:34.26 ID:XEi7410U0 オレは野営地を睨み据え、拳を握り締めた。 「ミサを助けに行く! 野営地に行ってくれ!」 オレは白色のドラゴンの腕の中でじたばたと暴れた。 白色のドラゴンはオレを摘まんで、顔の前までオレを持ってくる。 「ワタシは反対だね。マスターの疲労が酷い。今野営地に行ったって死ぬだけさ。ワタシとお前で攻めるつもりかい? 冗談じゃないよ。敵の数が多い。よく考えな」 白色ドラゴンは眉根を寄せて口を結び、白色ドラゴンの鼻息がオレに飛んでくる。 白色ドラゴンの声が子守唄の様に、波の様に揺らいで聞こえる。 な、なんだ。急に眠気が襲ってきやがった。 「ミサがミサを助けなくちゃ....」 オレは目がうとうとして船を漕ぎ始める。 白色ドラゴンは馬鹿にするように鼻で笑う。 「オーヴを使ったにしちゃ、よく身体が持ったほうだ。大したもんだよ」 オレはそこで気絶した。 目の前が真っ暗になる。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/752
753: 浜崎順平(福岡県) (ワッチョイ 9917-yILz [124.159.140.223]) [sage] 2022/09/10(土) 02:03:13.38 ID:XEi7410U0 ☆オーヴの力☆ 白色ドラゴンは馬鹿にするように鼻と喉を鳴らして笑う。 「オーヴを使ったにしちゃ、よく身体が持ったほうだ。大したもんだよ」 オレはそこで気絶した。 目の前が真っ暗になる。 突然、オレの頭に映像が流れる。 どこか大きなテントの中で、頑丈な檻の中に閉じ込められているのか画面が左右に揺れる。 テントの入り口からちらっと外が見えて、黒装束がライフルを肩に担いで通り過ぎる。 『ねぇ、ネロ。カイトが助けに来てくれるよね?』 ミ、ミサか? なにやってんだよ? これはミサが見ている映像か? わけわかんねぇ。 なんでオレが夢見ているんだよ。 映像がネロに固定される。 ネロは檻を背に片足の膝を曲げて檻に凭れて座り込み、片足の膝を曲げた膝の上に腕を載せている。 ネロは黒縁メガネの奥で遠くを見つめている。 やがて黒縁メガネをゆっくり外して、ジャケットの内ポケットから取り出した布でメガネのレンズを拭いている。 ネロはジャケットの内ポケットに布を突っ込み、黒縁メガネを片手で掛ける。 『ボクとしたことが油断した。ミサの魔法が消えて、敵の野営地に落ちるとは。カイト、お前が頼りだ』 ネロは顔を上げて後ろ頭を檻に凭れ、物思いに耽って何故か鼻で笑った。 映像は雑音とともにそこで途切れた。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/753
754: 浜崎順平(福岡県) (ワッチョイ 9917-yILz [124.159.140.223]) [sage] 2022/09/10(土) 02:03:29.21 ID:XEi7410U0 どれくらい時間が経っただろう。 ふとオレの鼻腔をいい匂いがくすぐる。 なんだ? いい匂いがする。オレは匂いを嗅ぐ。 匂いに釣られて、オレは瞼をゆっくりと開ける。 オレの視界に女の顔が揺らいで映る。 辺りを見回すと森の開けた場所だった。 視界が揺らいで気持ち悪い。 オレは女に視線を戻す。 女は髪が雪の様に白いミディアムヘアで肩に髪がかかるくらい。 整った目鼻立ちで、瞳は吸い込まれそうなサファイアブルー。 耳に蒼い滴の形をした透明なクリスタルのピアスを付けて、風でピアスが小さく揺れている。 服は長袖の青コットンのロリータクラシックドレスで黒いショートブーツを履いている。 女の髪が風で優しく靡く。 女はオレの顔を不思議そうに覗き込み、両手を腰に当てて不気味に歯を見せて笑った。 「うわっ!」 オレは驚いて慌てて上半身を起こす。葉っぱデザインの薄い毛布がオレの上半身からずり落ちる。 どうやら、オレは大きな切り株の上で寝ていたらしい。木の香りがする。振り向くと木の枕がある。 なんだ、この枕。不思議に思い木の枕を人差指で触ってみると、意外にふわふわで柔らかい。 人差指を離すと風船の様にゆっくりと膨らんで面白い。 その時、頭痛がしてオレは顔をしかめて額を手で押さえる。 「うっ」 気分が悪くて吐きそうだ。 頭痛を訴えるようにオレは女を見上げて睨み据える。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/754
755: 浜崎順平(福岡県) (ワッチョイ 9917-yILz [124.159.140.223]) [sage] 2022/09/10(土) 02:04:28.88 ID:XEi7410U0 女は腕の前で両手を組み、勝ち誇ったように仁王立ちして喉の奥で笑っている。 「オーヴに選ばれし者にしては、まだまだ力の使い方がなっておらんの。お前はあれから二時間も気を失っておったんじゃ。無理もないわい」 女はやれやれと肩を竦める。 オレ額を手で押さえて顔をしかめながら女を睨み据える。 「あんた誰だよ?」 オレは頭痛で額に変な汗が滲む。 女は馬鹿にしたように胸の前で両手を組んだまま、鼻と喉を鳴らして笑う。 「お前を助けたじゃろ? 忘れたか? フフフフッ」 女は不気味に喉の奥で笑う。 オレは頭痛の痛みを紛らわすために額を掌で叩く。 「……白いドラゴンか? お前、人間に姿を変えたのか? 冗談だろ」 頭痛が治まり、オレは切り株の上に胡坐をかいて、太ももの上に肘を突いて頬杖を突き鼻で笑う。 額を掌で叩きながら。 女は両手を腰に当てて得意げに頷く。 「そうじゃ。それより、切り株ベッドの寝心地はどうじゃ? 木の枕も最高じゃろ?」 女は頭の後ろで手を組んで、木の枕に顎をしゃくる。 オレは腕が痒くなり、腕をぽりぽりと掻く。 ふと腕の掠り傷が治っていることに気付き、腕の掠り傷があったところをまじまじと見つめる。 傷が嘘の様にまるでない。 「あれ、傷が治ってる。どうなってんだ?」 首を傾げて毛布を捲ると、太ももの掠り傷も治っている。 唸りながらシャツを捲って脇腹を見ると、脇腹の傷も治っている。 これも、こいつの力なのか? オレは胸のクリスタルを掌に乗せて、そのままクリスタルを握り締める。 女が俯いて顎に手を当てて顎を擦っている。 「あの子たちのことじゃが……野営地で頑丈な檻に監禁されておる。警備も厳しい。迂闊には手を出せん」 気まずそうに女はオレから顔を背け、オレに横目で瞬きしながら人差指で頬を掻いている。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/755
756: 浜崎順平(福岡県) (ワッチョイ 9917-yILz [124.159.140.223]) [sage] 2022/09/10(土) 02:04:44.02 ID:XEi7410U0 ま、まさか、ミサとネロのことか? さっき夢で見た。 「な、なんだって!? どういうことだよ!?」 あんたは何もしないで戻って来たのかよ。 こうしている間にもミサとネロはなぁ! オレは怒りが込み上げ、拳を握り締める。 拳で切り株ベッドを叩き、オレは歯を食いしばって女を睨み据える。 女は頭の後ろで手を組み、木のテーブルの上に乗っている土鍋に顎をしゃくる。 「それより、腹が減っておるじゃろ? キノコカレー食うか? 美味いぞ?」 女は鼻歌を歌いながらオレの傍までやってきて、オレに微笑んで手を差し伸べる。 オレは女の手を払いのけて女の襟首を掴み、女に顔を近づけて女を睨み据える。 「なんでミサとネロを助けなかった!? お前なら助けられただろ!? ミサとネロはな、オレの大事な幼馴染なんだよ!」 その時、オレのお腹の虫が盛大に鳴り、オレは参ったとばかりに腹を手で押さえる。 女も負けじと胸の前で両手を組んでオレを睨み据え、馬鹿にしたように鼻と喉を鳴らして笑う。 「助けてやったのに、その態度はなかろう? それとも、あのままお前は滝に落ちていたらどうなっていた? 言っておくが、わらわはお前をオーヴの主に認めたわけではない。わらわは、お前がオーヴの持ち主に相応しいか試しておるんじゃ。わかるか? そのオーブは使い方を間違えれば世界が滅ぶ品じゃ」 女は挑発するように腕を組んだまま胸のクリスタルを指さす。 オレは乱暴に女の襟首を掴んだ手を離して、女から顔を背けて舌打ちする。 「腹が減った。キノコカレー食わせろ、美味いんだろ? 聞きたいことが山ほどあるんだ。食ったら聞かせてもらうぞ」 オレは切り株ベッドから立ち上がると、両手をポケットに突っこんで大股で木のテーブルに向かう。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/756
757: 浜崎順平(福岡県) (ワッチョイ 9917-yILz [124.159.140.223]) [sage] 2022/09/10(土) 02:04:57.13 ID:XEi7410U0 女はオレの背後で嬉しそうに咳払いをする。 「わかればよろしい。答えられる範囲で答えようぞ。ではでは、キノコカレー召し上がるとよい」 女は小走りでオレを追い越し、木のテーブルに置いてある土鍋の蓋を両手で取り、蓋を引っくり返して木のテーブルの上に置く。 土鍋の蓋が暑かったのか、「あちぃ!」と叫んで、手首を押さえて掌に息を何度も吹き、手首を振ったり手を必死に冷ましている。 土鍋の傍には木のコップと魔法瓶が置いてる。 土鍋のキノコカレーから湯気が盛大に上がって、美味しそうなキノコカレーの匂いが漂う。 オレは片手の掌を木のテーブルに突いて、キノコカレーの匂いを嗅ぐ。 「おっ、美味そうじゃん」 オレは股を広げて木の丸椅子にどかっと座る。 キノコカレーを見て生唾を飲み込んで喉を鳴らし、口許に垂れた涎を手で拭う。 キノコカレーはジャガイモ、ニンジン、タマネギ、一口サイズの肉? たぶん、これがキノコなんだろ。 さらに挽肉、ナス、トウモロコシ、ルーの上にちょこんと四角いバターが添えられている。 食欲をそそる野菜たっぷりのカレーだ。 「いただきます!」と、オレは手を合わせて、スプーン置きに置かれた木のスプーンを左手で握る。 まずは気になった一口サイズのキノコを木のスプーンに乗せて食べてみる。 キノコは肉厚で弾力があり、少し甘味がある不思議な味だった。肉の食感に似ている。 オレはキノコを飲み込んだ後、あまりの美味さに呻った。 「このキノコうめぇ!」 オレは木のスプーンを忙しなく動かして、キノコカレーを口に運ぶ。 勢いよくキノコカレーを食ったため、ルーを飲み込んだ後に喉を詰まらせ咽る。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/757
758: 名無シネマさん(熊本県) (ワッチョイ c153-bpth [114.157.64.55]) [] 2022/09/10(土) 02:06:45.96 ID:c0adAhQR0 名前欄変えるのめんどくさくなっちゃったんだなw http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/758
759: 名無シネマさん(大阪府) (ワッチョイ a996-hlGS [14.10.49.129]) [sage] 2022/09/10(土) 02:08:06.76 ID:o9W/ZTa10 NGNGっと 一人だから登録すると一瞬できえるね、ちょっと気持ちがいい http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/759
760: 名無シネマさん(奈良県) (ワッチョイ f93d-V+uT [118.237.219.248]) [] 2022/09/10(土) 02:09:50.70 ID:uNkepXuU0 >>>570 サーラが饅頭化したヒルダみたい。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/760
761: syamu(光) (アウアウウー Sa9d-yILz [106.128.150.137]) [sage] 2022/09/10(土) 02:10:37.63 ID:G3s/qiP7a 女がオレの背中を優しく擦る。 「なんじゃ。もっとゆっくり食べんか。ほれ、これを飲め」 女が魔法瓶を取って木のコップにオレンジ色の液体を注いで、オレにオレンジ色の液体が注がれた木のコップを差し出す。 オレは思わず木のコップの中身を見る。 オレンジ色の液体で、明らかに水じゃなかった。 訝しげに首を傾げるも、オレは眉根を寄せて匂いを嗅いでオレンジ色の液体を恐る恐る口に運ぶ。 喉を鳴らして一口飲む。ん? オレは首を傾げる。 あまりにも冷たくて美味くて、ごくごくと喉を鳴らして飲み干す。 オレは木のコップを勢いよく置く。 「ぷは~! なんだこれ、美味いじゃねぇか! ジュースか?」 オレは口許を手で拭いながら顔を上げて、隣で腰に手を当てて立つ女に訊く。 女が勝ち誇ったように、オレの肩に手を載せる。 「リップルの実の果汁ジュースじゃ。フルーティで甘味と少し酸味があって美味いじゃろ?」 女がポケットからなにやら取り出し、掌に乗った小さなみずみずしい桃色の実を自慢げにオレに見せる。 「これがリップルの実じゃ」と言って、小さな桃色の実をオレに突きつける。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/761
762: 名無シネマさん(東京都) (ワントンキン MMd3-uPBE [153.159.150.41]) [sage] 2022/09/10(土) 02:11:19.73 ID:hLTjNddMM スレ伸びてるから人いるのかと思ったら荒らし福岡と自分しかレスしてなかったw http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/762
763: syamu(光) (アウアウウー Sa9d-yILz [106.128.150.137]) [sage] 2022/09/10(土) 02:11:25.56 ID:G3s/qiP7a オレは女の掌から乱暴に桃色の実を取って、茎を摘まんでまじまじと見つめる。 「こんなに小さいのか!? リップルの実ってのは」 オレはリップルの実を見ながら感心して頷き、顎に手を当てて擦りながら「なるほど」と呻る。 オレは横目で女を見る。 女は瞼を閉じて人差指を突き出し、人差指を小さく左右に振っている。 「この森は食材が豊富じゃからの。リップルの実は高い樹に実のるんじゃ。栄養もあるから、森の動物たちの好物になっておる」 瞼を開けて、両手を腰に当ててオレに歯を見せて笑う。 オレはリップルの実を木のテーブルの上にそっと置いた。 「なるほどな。それより、お前誰なんだよ? すげぇ今更だけど」 オレは片手で肩を竦めて頬杖を突き、隣の女を見上げながらキノコカレーを口に運ぶ。 咽ないようにゆっくり噛む。 喉が渇いて魔法瓶を取り、木のコップにリップルジュースを注ぎ、ごくごくとリップルジュース飲む。 女はオレを見下ろして胸を張り、片手を腰に当てて拳で胸を叩く。 「わらわはラウル古代遺跡の番人ディーネじゃ。魔力でドラゴンと人の姿に変えることができる。そのオーヴはかつてラウル帝国の古代王が身に着けていた物じゃ。わらわは古代王に仕えておった。この森は遥か昔、ラウル帝国じゃったんじゃ。今となっては呪いですっかり深い森になってしもうたのう」 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/763
764: syamu(光) (アウアウウー Sa9d-yILz [106.128.150.137]) [sage] 2022/09/10(土) 02:12:05.33 ID:G3s/qiP7a オレはキノコカレーを食べる手を休めて、木のテーブルに両肘を突いて胸のクリスタルを掌に乗せた。 「ふーん。古代王のオーヴにラウル帝国、おまけに呪いねぇ。なんでオレがオーブの持ち主になったんだよ? こいつは爺ちゃんがラウル古代遺跡で採取したんだぞ」 オレは掌のクリスタルを指さして、ディーネを横目に瞬きする。 ディーネは眉根を寄せて、訝しげに首を傾げて胸の前で腕を組んで唸っている。 「オーヴはラウル古代遺跡の最深部の台座に嵌めてあったはずじゃが……お前の爺さんが持ち去ったのかの。どうも、わらわは長い眠りから覚めたばかりで記憶が曖昧じゃ……それに、なんでわらわは封印されてたんじゃろ? ああもう、訳がわからんわい!」 ディーネはぽかぽかと両手で頭を叩いて、頭を両手でくしゃくしゃとかきむしっている。 もしかして、爺ちゃんは悪い奴らに脅されて、ラウル古代遺跡の最深部からオーブを持ち去ったのか? なんのために? わからない。ってことは、爺ちゃんはオーブを悪い連中から隠した? オレは瞼を閉じて首を横に振る。結局、爺ちゃんはオレに何も言わずに逝ってしまった。 オレにどうしろってんだよ。オレは掌のクリスタルを握り締めた。 その時、頭上で卵が割れる様な嫌な音がした。 オレは思わず顔を上げると、気付かなかったが青白いドームの障壁にひび割れが生じている。 結界が張ってあったのか? なんのために? もしかして、オレたちを襲った魔物から守るためか? どすんと重い地響きが響き、魔法瓶とコップと土鍋が踊った。遠くでキャノン砲を撃つ音が聞こえる。 青白いドームの障壁のひび割れが大きくなってゆく。結界が壊れるのも時間の問題だな。 のんびり飯食ってる場合じゃねぇ。 といいつつも、オレはキノコカレーを食いつつ、リップルジュースを飲みながら、のんびりと結界を見上げる。 http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/movie/1662721301/764
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