[過去ﾛｸﾞ] 興行収入を見守るスレ5656 (1002ﾚｽ)
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943: 大瀬良大地(福岡県) (ﾜｯﾁｮｲ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:26 ID:FD7/bjso0(108/164) AAS
「なんじゃ。こんなとこじゃ、落ち着かんわい」
オラは大股で、着物の袖をまくって、引き戸に向かった。
「兄ちゃん。お腹空いた」
栞が、オラの着物の袖を引っ張る。
そう言われてみれば。
省6
944: 大瀬良大地(福岡県) (ﾜｯﾁｮｲ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:27 ID:FD7/bjso0(109/164) AAS
「饅頭は、年寄りが食うものじゃぞ？」
オラはため息を零して、栞に呆れる。
「饅頭、美味しいもん」
栞が立ち止って、頬を膨らませ、身体をくねくねさせる。
涙目になって、今にも泣きそうだ。
省4
945: 村田兆治(福岡県) (ﾜｯﾁｮｲ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:28 ID:FD7/bjso0(110/164) AAS
目覚めた力
第一話：勘兵衛の過去
神楽に教えてもらった引き戸を開くと、そこは台所だった。
オラに向かって、左隣のかまどの上にはお釜が載っていて、お釜の蓋から湯気が出ている。
かまどの奥には、床に樽が幾つか置いてあった。
たぶん樽の中身は、漬物樽と酒が入った樽じゃろう
省7
946: 小早川毅彦(福岡県) (ﾜｯﾁｮｲ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:29 ID:FD7/bjso0(111/164) AAS
「そろそろ、飯が炊けたかねぇ」
台所の奥から女の声がした。
台所の奥にある大きな暖簾から現れたのは、着物の上に白いエプロンを着た女だった。
エプロンで手を吹いて、床に置いてある下駄を履く。
「おや？ あんたたちが、光秀と栞ちゃんかい？」
省3
947: 大野豊(福岡県) (ﾜｯﾁｮｲ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:31 ID:FD7/bjso0(112/164) AAS
「そ、そうじゃ。お、お前が、神楽の母ちゃんかの？」
オラは恥ずかしくて女を一瞥する。
人差指で頬を掻いて、女から顔を背ける。
「ああ、そうだよ。あたしは、八重ってんだ」
八重は、釜の蓋を開けながら答える。
省6
948: 大野豊(福岡県) (ﾜｯﾁｮｲ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:32 ID:FD7/bjso0(113/164) AAS
「突っ立ってないで、座りなよ。引き戸は閉めておくれよ？」
八重が台所に移動して、台所からまな板と包丁を取り出す。
「わ、悪かったの。じゃ、入るけえ」
オラは振り返って、引き戸をゆっくり閉める。
キョロキョロしながら、オラたちはテーブルの椅子に座り込む。
省4
949: 長谷川勇也(福岡県) (ﾜｯﾁｮｲ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:34 ID:FD7/bjso0(114/164) AAS
ちょっと待ってね。今、ご飯の支度してるんだ」
八重が台所でせわしなく作業しながら言う。
「兄ちゃん。お腹空いた」
栞が足をバタバタさせて、オラの着物の袖を引っ張る。
「兄ちゃんも、お腹空いたわい」
省4
950(1): 杉谷拳士(福岡県) (ﾜｯﾁｮｲ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:35 ID:FD7/bjso0(115/164) AAS
「饅頭欲しい！」
栞が元気な声を出して、嬉しそうに鼻歌を歌う。
足をバタバタさせている。
「栞ちゃん、可愛いねぇ。ちょっと持ってくるからねぇ」
八重は栞に微笑んで、暖簾の奥に消えて行った。
省8
951: 菅野智之(福岡県) (ﾜｯﾁｮｲ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:38 ID:FD7/bjso0(116/164) AAS
「だ、誰じゃ！？ お前は！？」
オラは驚いて身構える。
女が何者かわからぬ不安と、高鳴る鼓動。
こいつ何もんじゃ。忍装束に身を包んで。
「わっ」
省9
952: 西川遥輝(福岡県) (ﾜｯﾁｮｲ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:39 ID:FD7/bjso0(117/164) AAS
「ちっが～うっ。あたいはね、ここで料理のお手伝いしてんの！」
忍装束に身を包んだ女が、腰に両手を当てている。
「わっはははっ～」と、急に女は、腰に両手を当てたまま高笑いする。
「なにわらっとんじゃ！ お手伝いがそげな恰好するんか！？」
オラは訳もわからず頭にきて、栞から手を離す。
省5
953: 西川遥輝(福岡県) (ﾜｯﾁｮｲ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:40 ID:FD7/bjso0(118/164) AAS
「なによ！ これでも、あたいはくノ一の隊長なんだからね！」
忍装束に身を包んだ女が、腰に手を当てて、オラの胸を小突く。
「お前は、下っ端でええじゃろが！」
オラは、忍装束に身を包んだ女に舌を出す。
「いっちょやったろうじゃないの！」
省5
954: 岡本和真(福岡県) (ﾜｯﾁｮｲ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:40 ID:FD7/bjso0(119/164) AAS
二人の視線が熱くぶつかりあい、火花が散っている。
「騒がしいから来てみたら、なにやってるんだい。梓」
八重が暖簾から現れた。
八重が持っているお盆の上には、饅頭が盛られた皿と、急須、熱いお茶が載っている。
八重は顔に手を当てて呆れ顔をして、お盆をテーブルの上に載せる。
省5
955: 吉川尚輝(福岡県) (ﾜｯﾁｮｲ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:42 ID:FD7/bjso0(120/164) AAS
「あ～！ あたいが食べたかった饅頭！」
梓が、お盆の上に載った饅頭が盛られた皿を指さす。
思わず涎が出て、「いけねっ」と言って、涎を手で拭った。
「残念じゃのう。これは、オラの饅頭じゃけえ」
オラは勝ち誇ったように、テーブルに歩み寄る。
省4
956: 中村剛也(福岡県) (ﾜｯﾁｮｲ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:42 ID:FD7/bjso0(121/164) AAS
「うわ～。ありがとうっ！」
梓が目を輝かせて、栞から饅頭を受け取る。
口にほうばって、饅頭を飲み込んだ後、栞に抱き付く。
咽ればよかったんじゃがのう。
この女め。
省7
957: 中村剛也(福岡県) (ﾜｯﾁｮｲ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:44 ID:FD7/bjso0(122/164) AAS
「もっちろ～んっ。あんたの名前は知らなくていいからね！」
梓が栞に抱き付き、オラに舌を出す。
「こげな女はほっといて、オラは腹ごしらえじゃ。饅頭が不味くなるけえの」
オラは、饅頭をやけ食いした。
やっぱりオラは、「ごほっ。ごほっ」と、咽た。
省7
958: 栗山英樹(福岡県) (ﾜｯﾁｮｲ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:44 ID:FD7/bjso0(123/164) AAS
「さて。あたしゃ、ご飯の支度でもしようかね」
オラたちのやり取りを見ていた八重が、栞に微笑んでから台所に向かう。
「八重さん。いいですよ、あたいがやりますから」
梓が立ち上がって、八重を制した。
「そうかい？ じゃ、頼むよ。あたしゃ、この子たちと話したかったんだ」
省6
959: 大田泰示(福岡県) (ﾜｯﾁｮｲ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:46 ID:FD7/bjso0(124/164) AAS
「ええ。なかなか、勘兵衛が尻尾を出さなくて。最近、勘兵衛の情報がないんですよ」
梓がガスコンロに移動して、鍋に火を点ける。
鍋の中に、桶に入っていた野菜を入れる。
「か、勘兵衛じゃと！？」
オラはテーブルを勢いよく叩いて、椅子から立ち上がった。
省4
960: 山﨑武司(福岡県) (ﾜｯﾁｮｲ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:48 ID:FD7/bjso0(125/164) AAS
「！？ ってことは、八重は龍之介の母ちゃんになるんか？」
八重から衝撃な話を聞かされ、オラは動揺していた。
変な汗を額に掻く。手にも汗を掻いている。
「そうなるね。あたしと別れた後、勘兵衛、また女を作ってね。龍之介は、その女の間に生まれた子さ」
八重が饅頭を口にほうばる。
省7
961: 小坂誠(福岡県) (ﾜｯﾁｮｲ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:49 ID:FD7/bjso0(126/164) AAS
「そうなるね。勘兵衛がおかしくなったのは、流行病で息子と妻を亡くしてからさ。あたしと出会う前の話になるね」
八重が肩を竦める。
八重が小さくため息を零す。
「あの勘兵衛に、そんなことがあったんか……」
オラは椅子に座り込んで、腕を組んで妙に感心した。
省4
962: 初芝清(福岡県) (ﾜｯﾁｮｲ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:51 ID:FD7/bjso0(127/164) AAS
「勘兵衛はあたしの客でね。一緒に暮らすようになってから、すぐに神楽が産まれたんだ」
八重が頬杖をついたまま、寂しそうに窓の外の景色を見つめている。
「八重さん。遊女の時は、綺麗だったんだよ？」
梓が、オラの肩に手を置く。
話に夢中で、梓の気配に気づかんかった。
省5
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