[過去ログ] 興行収入を見守るスレ5656 (1002レス)
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962: 初芝清(福岡県) (ワッチョイ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:51 ID:FD7/bjso0(127/164) AAS
「勘兵衛はあたしの客でね。一緒に暮らすようになってから、すぐに神楽が産まれたんだ」

 八重が頬杖をついたまま、寂しそうに窓の外の景色を見つめている。

「八重さん。遊女の時は、綺麗だったんだよ?」

 梓が、オラの肩に手を置く。

 話に夢中で、梓の気配に気づかんかった。
省5
963: 中嶋聡(福岡県) (ワッチョイ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:52 ID:FD7/bjso0(128/164) AAS
 梓の顔を見ると、表情が曇っていた。

 この女も、辛い過去があるんじゃろな。

「ああ。今、極秘で新しい武器を研究してるらしいからね。勘兵衛のやつ」

 八重がお茶を飲んで、一息つく。

「勘兵衛、龍之介を産んだ妻を平気で殺めたんだ。銃の試し撃ちとかで。それも、龍之介の目の前で」
省6
964: 藤本博史(福岡県) (ワッチョイ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:53 ID:FD7/bjso0(129/164) AAS
「……栞ちゃんの前で、こげな話するもんやない。この子の将来のためにもな」

 八重が栞の眠り顔を見て、栞に微笑む。

 八重が優しく栞の頭を撫でた。

「ごめんね、栞ちゃん。こんな話して」

 梓が、反省して栞を抱きしめた。
省8
965: 辻発彦(福岡県) (ワッチョイ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:54 ID:FD7/bjso0(130/164) AAS
「あたしゃ、栞を寝かせてくるけえ」

 八重が栞をおんぶして、暖簾の奥に消えて行った。

 しばらく、オラと梓の間に無言が続いた。

 重い空気が流れている。

「……飯の支度はできたんか?」
省8
966: 青柳晃洋(福岡県) (ワッチョイ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:55 ID:FD7/bjso0(131/164) AAS
「ああ、確かに。神楽は、あたいの幼馴染さ。まあ、あたいは神楽みたいに胸がないんだけどね」

 梓が、鯛の鱗を包丁で取っている。

「そうなんか。なあ、梓。勘兵衛を恨んでるんか?」

 オラは頭の後ろで手を組んで、台所で鯛を捌いている梓に訊く。

「……あたいの両親は勘兵衛に殺された。行き場のないあたいを、八重さんが拾ってくれたんだ。今は、この店に住み込んで働いてる。仲間も勘兵衛に殺されたよ」
省1
967: 青柳晃洋(福岡県) (ワッチョイ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:56 ID:FD7/bjso0(132/164) AAS
 梓の包丁のスピードが明らかに落ちた。

 梓の包丁の音が不快に聞こえる。

 そんな気がする。

「勘兵衛を殺して、仲間と両親の仇を取るんか?」

 オラは梓を鋭く見つめた。
省5
968: 塩見泰隆(福岡県) (ワッチョイ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:56 ID:FD7/bjso0(133/164) AAS
「オラは、勘兵衛の話を聞いた限りじゃ、勘兵衛はそげな悪い男に見えんがの」

 オラは鼻で笑って、肩を竦めた。

 梓の包丁の音が止まった。

「どれだけ、血が流れたと思ってる!?」

 梓の声が強張る。
省6
969: 大山悠輔(福岡県) (ワッチョイ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:57 ID:FD7/bjso0(134/164) AAS
「子供にそげな物騒なもん向けるんか!? 結局お前も、やってることは勘兵衛と同じじゃろが!」

 オラはテーブルを強く叩いて、椅子から勢いよく立ち上がる。

「ど、どういうことよ!? 教えてよ……教えなさいよ!」

 梓が動揺している。

 梓が首を横に振りながら。答えを求めるように、オラに歩み寄る。
省3
970: 西勇輝(福岡県) (ワッチョイ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:58 ID:FD7/bjso0(135/164) AAS
「!? あ、あたいは、勘兵衛と同じことしようとしてた……!?」

 梓が立ち止る。

「違う。……そんなんじゃない」と言って、梓は否定するように首を横に振っている。

「勘兵衛を殺したとこで、お前の両親は天国で喜ばん! 死んだ仲間も浮かばれんのじゃ! 目を覚まさんか!」

 梓を落ち着かせるように、オラは梓に歩み寄って、梓の腕を掴む。
省4
971: 佐藤輝明(福岡県) (ワッチョイ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:58 ID:FD7/bjso0(136/164) AAS
「えっ?」

 梓は放心状態だった。

「これから、考えればええんじゃ。みんなが幸せになる方法をな」

 オラは梓の背中を優しく擦った。

「!? あ、あたいのしてきたことは、間違ってたんだ……」
省3
972: ボビー・バレンタイン(福岡県) (ワッチョイ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)05:59 ID:FD7/bjso0(137/164) AAS
「饅頭でも食うて、落ち着け」

 オラは梓を抱きしめて、梓の頭を優しく撫でた。

 赤ん坊をあやすように。

「うん……」

 梓が包丁を拾って、立ち上がる。
省7
973: 大野雄大(福岡県) (ワッチョイ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)06:01 ID:FD7/bjso0(138/164) AAS
「どっちが子供か、わからんの。これじゃ」

 オラは鼻で笑って、梓の背中を小突いた。

「あ、はははっ。みっともないとこ、見せちゃった。あたい、あんたより大人なのにね」

 梓が涙を手で拭う。

「オラは光秀。ちゃんと覚えるんじゃ、ええな?」
省11
974: 糸原健斗(福岡県) (ワッチョイ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)06:02 ID:FD7/bjso0(139/164) AAS
目覚めた力
第二話:呪われた神さま

「光秀。お前本気なのかい? 勘兵衛を救うだって?」

 八重が暖簾から顔を出した。

 八重が下駄を履く。腕を組んで、じっとオラの顔を見ている。

「や、八重さん!? 聞いてたんですか!?」
省6
975: 今永昇太(福岡県) (ワッチョイ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)06:03 ID:FD7/bjso0(140/164) AAS
「勘兵衛が人に戻れば、この町は平和になるはずじゃ」

 オラは椅子に座って、饅頭を口にほうばる。

「馬鹿言うんじゃないよ。子供のお前になにができるってんだい?」

 八重が腕を組んで、冷たい目でオラを鋭く睨み付ける。

「そうだよ? 銀二もいるんだよ?」
省7
976: 森下暢仁(福岡県) (ワッチョイ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)06:04 ID:FD7/bjso0(141/164) AAS
「うーん。なにかあったっけ?」

 梓は腕を組んで、頬杖をついている。

 真剣に考え込んでいる。

「あたしが聞いた話じゃ。勘兵衛に殺された子供の霊が、勘兵衛の呪いで神さまになって、神社に棲みついてるらしいじゃないか」

 八重が頬杖をついて、面白くもなさそうに話す。
省3
977: 細川亨(福岡県) (ワッチョイ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)06:04 ID:FD7/bjso0(142/164) AAS
「惨い話だよ。子供の両親は捜索願いを出したんだけど、数日後に子供の遺体が川岸に上がったんだ」

 八重が同情して、滲んだ涙を手で拭う。

「それで、その子の両親は勘兵衛が殺したとかで訴えちゃって、見せしめで民衆の前で晒し首にされたんですよね……」

 梓は俯いたまま。

「……ああ。勘兵衛は子供が死んで神になる呪いを、監禁した子供にかけて、呪いで神に転生した子供が勘兵衛に力を貸す。ってことだろうね」
省6
978: 吉村裕基(福岡県) (ワッチョイ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)06:05 ID:FD7/bjso0(143/164) AAS
「その神さまとやらに頼んでみるのかい? よしとくれよ」

 八重が頬杖をついて鼻で笑う。手をひらひらと振った。

「いやぁ。なんといいますかっ、もっとこう、楽しい話はないんですかねぇ。あっはははっ~」

 梓が顔を上げて、頭の後ろを掻きながら、苦笑している。

「つまらんわ。ああつまらん。勘兵衛の呪いで死んだ子供の霊が神さまになったじゃと? そげんなおとぎ話、誰が信じるんじゃ」
省4
979: 栗山巧(福岡県) (ワッチョイ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)06:06 ID:FD7/bjso0(144/164) AAS
「……梓、それ本当なんか!? なんで黙ってたんね!?」

 八重が思わず椅子から立ち上がり、初耳だという感じで目を見開いている。

「あっ。でも、けっこう前の話ですよ? あたい、八重さんに話そうと思って忘れてました」

 梓が思い出したように、指を顎に当てている。

 梓が「すみませんっ」と言って、八重に会釈する。
省2
980: 炭谷銀仁朗(福岡県) (ワッチョイ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)06:07 ID:FD7/bjso0(145/164) AAS
「勝手にしなよ。あたしゃ、神さまとか信じないんだ。あんたたちでやりな」

 八重が深くため息を零した。

 好きにしろというように、手をひらひらと振っている。

「栞ちゃんを見てくるけえ」

 八重が暖簾の奥に消えて行った。
省5
981: 多村仁志(福岡県) (ワッチョイ e917-yILz [116.94.119.125]) 2022/09/10(土)06:07 ID:FD7/bjso0(146/164) AAS
 梓、お前は喜怒哀楽が激しいの。

 でも、それくらいでないとの。

 この町は狂っとるけえ。

 オラと梓は、暖簾の奥に入る。

「奥はこないなっとるんか」
省7
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