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【腐女子カプ厨】巨雑6439【なんでもあり】 [無断転載禁止]©2ch.net (505レス)
【腐女子カプ厨】巨雑6439【なんでもあり】 [無断転載禁止]©2ch.net http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/
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391: 名無し草 (ワッチョイ 9fd9-G+K4) [sage] 2016/04/06(水) 21:13:32.90 0 >>380 順一と純一どっちやねん http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/391
392: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:13:50.47 d 小さい頃に父親グリシャの部屋にあった写真集。 今はもう実家のどこにあるかもわからない。 空、街中、植物、動物…同じカメラマンの写真集がワンセットで置いてあった。 医者であったグリシャの部屋は医学書ばかりが並び、海外の言葉で書かれた本も多く、どれを見ても当時のエレンには理解ができなかった。 当時の、とは言っても今読んだところで、医学を専攻しているわけでもなければ、外国の言葉に強いわけでもない大学生のエレンには到底理解ができる内容でもない。 読んでみたいともあまり思わないのが正直なところだ。 そんな中で写真集は異彩を放っていた。並んだ背表紙からも小難しい医学書ではないことが簡単に見てとれる。 グリシャの趣味とも思えないが、確かにそれはそこにあり、エレンはグリシャの不在時に父親の部屋に忍び込んではパラパラとページをめくって楽しんでいた。 それは母親のカルラが病気で亡くなるまで続きカルラが亡くなった後は掃除や整理をする人間がいなくなったことで、いつのまにかその写真集は医学書の中に埋もれて見つけられなくなってしまった。 この季節、時折吹く風はまだ冷たい。しかし日に日に気温はどんどん暖かくなって春の訪れを告げていた。 もう少し経てばコートも要らなくなるだろう。 アパレルショップはもう春の新作がショーウィンドウに並んでおり、春らしいパステルカラーが駅前の通りを彩っていた。 ショップの奥では一部の冬物衣類のセールをやっている店もある。 何か掘り出し物がないか立ち寄りたくなって、しかしそこで提出期限はまだ先とは言え、課題のレポートがまだ完成していないことを思い出せば、自然と足が帰宅を急いだ。 大学の講義も昼過ぎに終わり、アルバイトもない。早くレポートを仕上げてしまおう。 前方から携帯電話を見ながらふらふらと人が歩いてきたので、そっとよけて人とすれ違えるだけのスペースを空ける。 人通りが多い。 都会の人は歩くスピードが早いというのは本当だった。 またせかせかと歩く小柄な男性が前方から歩いてくる。 ぶつかりそうな距離ではなかったのでエレンは今度はよけるような動作はせずにそのまま歩き続けた。 「!」 男性とすれ違った時だった。ぐいっと腕を掴まれてエレンの体は後方へと引かれ、驚いて振り返れば、そのまま男と目が合う。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/392
393: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:13:54.57 d 思い出せたところで、モデルになるつもりがないエレンは今度はこの場をどうやって切り抜けよう考え出す。 「あー……じゃあ、考えます。考えるので、とりあえず離してもらえないですか?」 試しに名刺を受け取って曖昧な返答をしてみせてみた。 すると、思いの外すんなりと腕は解放されて自由になる。返事が決まったら連絡してほしいと告げられ、また曖昧に言葉を濁す。 「いい返事を期待している。返事が決まっていなくとも質問があれば何でも答えるから連絡してほしい」 「わかりました。ちょっと急ぐので今日はこれで、」 名刺を鞄にしまい込んで頭を下げる。律儀にもリヴァイもまた頭を下げてくれた。 終わってみれば因縁をつけられたわけでもなんでもない。 キャバクラのキャッチに声をかけられたようなものだと頭を切り替えて、逃げるようにしてその場を離れた。 万が一にでも後をつけられていたら困るので、時々振り返って後方を確認したがリヴァイの姿は遠くなる一方でそんな様子はない。良かった、助かった。 ほっと息を吐いて、帰路を急ぐ。住んでいるマンションまでここから歩いて十五分。 そんな出逢いとも言えない出逢いからひと月ほど経った頃だった。 ひと月も経てば、リヴァイのことは変な勧誘を受けただけ。飲み会の話のネタにもならない出来事になっていた。 もらった名刺は鞄に入れたままなのでぐしゃぐしゃになっているだろう。 そういえばこの間、傘を持ってもいないのに雨に降られたから濡れて文字すら読めないかもしれない。 早めに処分しておいたほうが良さそうだ。 あの時やろうと思っていた課題のレポートも早めに終わらせることができて、もう提出済み。大学生活は順調だった。 来週くらいにはまた新しい課題が出されるかもしれない。 金銭面の面倒をみてくれているグリシャのためにも、エレンは勉強しなければならなかった。 『……続いて、特集コーナーです。今日は写真家のリヴァイ・アッカーマンさんについて! 知る人ぞ知る写真家ですが、』 突然、夕方のニュースを流していたテレビから聞き覚えのある名前が聞こえてきた。 「え?」 思わずエレンがテレビを見ればそこには先日見た顔の写真が画面の半分を占領し、リヴァイ・アッカーマンと紹介されている。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/393
394: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:14:20.45 d 混乱するエレンを置いて、リヴァイの顔写真が映っていた画面は次に彼の撮った過去の写真や写真集をスライドで流し出す。 見たことのある写真だった。 一部、エレンの知らない写真もあったが、出てくる写真のどれもがエレンの記憶にあるものばかりだ。 忘れもしないし、間違えようもない。それはグリシャの部屋にあった写真集の写真だった。 (だからなんとなく聞き覚えがあったのか?) リヴァイについて調べもしなかったエレンはその事実に愕然とする。信じられない真実に頭がくらくらした。 リヴァイは、怪しくないどころか好きだとも言える人物らしいことが分かる。 ああ、でもこれで名前が分かったから写真集が買える。 違う、自分はなんて失礼なことをしたんだ。でもあの場では仕方がない。 いきなり写真を撮らせてくれなんて言われて警戒しないはずがない。あの写真集のカメラマンだなんて誰が思うか。 『アッカーマンさんはまだ発売日は未定ですがまた写真集を出すそうです。今度は自身初の人物写真がメインで、それに合わせて個展も予定しているだとか……これは楽しみですね!』 テレビのアナウンサーは既に纏めに入っている。特集と言えどもコーナー自体の時間は三分程度の短いものだ。 その三分間でこんなにも混乱したのは世界広しと言えどもエレンだけではないだろうか。 久々に見た思い出の写真はやはりどれも綺麗だった。 思い出補正などは決してなく、どれもが記憶以上のもので、改めて好きだと思った。 特集コーナーが終わるとニュースは一旦コマーシャルへ移る。 新商品のお菓子のコマーシャルで独特の歌が流れていた。 頭に残ってたまに鼻歌で歌ってしまうけれど、今はそんなものは一切頭に入ってこない。 エレンは慌てて、鞄を置いてある部屋の隅まで走り、中を乱暴に探り出した。 あの名刺はどこへいった? 鞄のどこかにあるはずだ。 「あーもう!」 探してもなかなか目当てのものが見つからない。苛立って鞄の口を逆さまにひっくり返して中身を床にぶち撒けた。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/394
395: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:14:24.71 d 物をひとつずつよけて探すとやがて角が折れてボロボロになり、雨水で茶色くシミができてしまったいるそれが見つかる。幸いにもまだ字は読める状態だった。 「良かった! あった!」 両手でそれを取り上げて、指先で折れてしまった場所を伸ばす。そんなことしたって元の状態には戻らないことはわかっていても、そうせずにはいられなかった。 ひと文字ずつ指でなぞる。 自分がリヴァイの世界の中に入れるとは考えもしたことがなかった。 似合うとも思えない。あれからもうひと月も経っているし、待っていると言われたのにエレンはリヴァイに連絡のひとつだってしなかった。 考えるとごまかして、しっかりとした断りだってしなかったのに、好きな写真家だったというミーハーな理由で話を蒸し返されても困らせるだけだろう。 なんだこいつは、と嫌な印象を与えてしまうかもしれない。返事もしていない時点でもう充分嫌な奴だが。 「はぁ……、」 大きなため息がエレンから漏れる。落胆していた。 (もったいなさすぎる、) あの後になんでリヴァイのことを調べなかったのか。 レポートの提出日はまだ先だったのだから少しでももらった名刺に書かれた名前をインターネットで検索をかけてみれば良かったのだ。 たったの一分、時間を使っていればきっと今と違う結果になっていた。 一気に後悔が押し寄せてきて、エレンの気持ちはどんどん下降する。 もう夕食を作るのも面倒だった。そう思いつつも、腹は空腹を主張してぎゅるるるると鳴いていた。 「気晴らしに外で食べるか……」 なにか美味しいものでも食べて気持ちを落ち着かせよう。 エレンは財布と携帯だけをジーンズのポケットに突っ込むと、ついたままだったテレビの電源と部屋の照明を落として駅前へ向かった。 歩きながら店を決める。 最近できた個人経営の洋食屋にしようか。とても美味しかった。今度ディナーでも利用したいと思っていた店だ。 とぼとぼと歩いていると、もうその店は目の前だった。開店したばかりでまだ客は少ない。 真新らしいドアに手をかけると、ドアの内側にかけられたベルが来店を知らせてチリンチリンと鳴った。 落ち着いた照明の中に客はひと組。奥のテーブルに座って何やら歓談中のようだ。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/395
396: 名無し草 (ワッチョイ f395-imw8) [sage] 2016/04/06(水) 21:14:32.43 0 >>391 石田の方やで http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/396
397: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:14:51.82 d 店主とウェイター、それぞれからいらっしゃいませと声をかけられたので会釈して、カウンター席へと座る。 奥の客がどんな料理を頼んでいるのか気になって、メニューを開く前に横目で盗み見た。 「あっ!」 しかしエレンの視界に飛び込んできたのはテーブルの上の料理ではなく客の顔だ。忘れもしない。 あの顔、あの髪型。そこにはリヴァイが女性と対面して座っていた。 声を出した時、リヴァイと目が合った気がする。 通りすがりのようなものだったし、もしかしたらリヴァイはエレンのことを忘れているかもしれない。 でも覚えていたら気まずいことこの上ない。 急いでメニューを開いて、その中の文字列を追った。 カタカナばかりの料理名でちっとも頭に入ってこない。流し見るようにしてページを次々とめくっているとあっという間に最後のページまできてしまった。もう一度最初のページに戻る。 奥の席が気になって仕方がない。何かぼそぼそと話している。 「……ほら、行ってきなよ。アンタなら大丈夫だって。わたしもう帰るからさ」 何かエレンにとって不穏な内容な気がする。 (行ってきなって、もしかしなくてもオレのところにか? いや、お姉さん帰らなくていいですよ。助けてください。あっ、ちょ、立った。こっち来る。やばいやばいやばい……) 顔面蒼白。なんだか急に体調が悪くなってきた。呼吸が苦しいし、鼓動も尋常じゃないくらい早い。 変な汗も出てきたし、顔も熱い。熱でもあるんじゃないのか。帰ったほうがいいんじゃないか。 カルパッチョってなんだっけ。サルシッチャってなんだっけ。あれ? アヒージョって踊り食いのこと? コンフィって猫の種類じゃなかったか? まさにエレンの頭はパニックだった。 数歩の距離なのにリヴァイがこちらに来るまでがひどく長く感じた。 そうだ、きっとトイレがこっちにあるんだ。そうに違いない。 以前トイレを借りた時に奥に行った記憶を打ち消してそんな現実逃避まで始めるも、リヴァイはエレンの背後でその足を止めた。 「…………」 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/397
398: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:14:55.83 d 「よう、覚えているか?」 「…………」 「チッ、」 緊張でなにも言えない。後ろを振り返ることすらできない。 背中を丸めるとメニューにどんどん顔が近づいていき、もうすぐメニューとキスしてしまうそうだ。 そんなエレンの気を知ってか知らずか、リヴァイはエレンの隣の椅子を引いてそこに腰かけた。 体は完全にエレンの方を向いている。頬杖をついて、メニューとキスする五秒前のエレンをじっとりと眺めていた。 怖い。最初に腕を掴まれた時の恐怖が蘇る。いや、今日はエレンに後ろめたいことがある分、初対面の時よりももっと怖い。 こんなに怖い人があんな綺麗な写真を撮ってるだなんて詐欺だ。 「このひと月、ずっと連絡を待っていたんだがそろそろ待ちくたびれたな」 わざとらしいため息。視線が痛い。リヴァイは目から針でも出てきて自分をチクチクと刺しているのではないか。 「……あの、それ……オレに言ってます……、よね……」 「あ? 忘れたのか?」 この期に及んで、もしかしたら人違いかもしれないという可能性にかけて確認してみると、針がナイフに変わった。ようするにさらに鋭い目つきで睨まれた。 「すみません! よくある勧誘だと思って無視していました! でも本当に写真家さんで、しかも昔よく見た写真集の人で、まさか道ばたでいきなり腕をすげえ力で掴んできて自分を撮りたいと言った人がその写真家さんだなんて思わなくて、……ごめんなさい!」 勢いよく頭を下げると、ゴツン! といい音がした。メニューとのキスは避けられたが、テーブルとは額でキスをしてしまう。 どうにでもなれとばかりに正直に話して謝罪する。まだ心臓はドキドキとうるさい。 「……まあいい、」 「…………」 ふっとリヴァイを纏う空気が変わった。針もナイフも感じない。おそるおそる顔を上げてリヴァイを見ると無表情に近いが笑っているような顔をしていた。 (怒ってない……?) 「飯食いにきたんだろ。何にするんだ? ここは何でも美味いが、メニューになくても食べたいものがあれば言え。店主が知り合いだから作らせる」 その言葉にこの店がリヴァイのテリトリーだったことを知る。また腹の虫が空腹を訴えて鳴き出して、エレンは羞恥で赤くなった顔をメニューで隠した。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/398
399: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:15:24.97 d 小声で伝えると、リヴァイは知り合いだと言う店主にハンバーグのチーズ焼きとサラダ、ライス大と辛口のジンジャーエールを注文した。 次いで、会計はリヴァイ持ちでいいと言い、自分用にグラスシャンパンを頼んでいる。 奢ってもらう理由がないと慌てたエレンは会計は別にしてほしいと頼んだが、あえなく却下されてしまった。 曰く、何の欲目もなしに奢るわけがない。下心があるに決まっているとのことだった。 「まだモデルは決まっていない。撮らせてくれ。その目が欲しい」 睨むでもなく、ただ真剣に目と目を合わせてそんなことを言われると、口説かれているような気分になる。 男同士なのに妙な気分になってしまいそうだ。 改めて見るとリヴァイは整った顔立ちをしていた。 背こそ低いが、欠点はそれくらいに思える。 リヴァイと一緒にいた女性はエレンがメニューに沈んでいる間に本人の宣言通りに帰ってしまっていたようだ。 エレンがようやくまともな思考で話せるようになったと判断したのか、リヴァイはテーブル席に置いていた荷物を取りに一旦席を立ち、またすぐに戻ってきて先ほどと同じようにエレンの隣に座った。 「さっき、テレビでアッカーマンさんの写真を見ました。特集コーナーで、」 「リヴァイでいい」 「……リヴァイ、さん…………昔、父親の部屋にリヴァイさんの写真集があったんです。でもどこかにいってしまって、誰の写真集かも分からなかったそれっきりだったんですけど、やっと分かったので今度買おうと思います」 リヴァイが切り取った世界はどれも美しい。ずっと好きだった。 新しい写真集も発行されているのなら調べてそれも買いたい。 彼が話したいこととは違うことは分かりつつ、好きだと訴えることをやめることはできなかった。 本当なら今ここで携帯電話を使ってネットショッピングでもしてポチっと購入してしまいたいくらいだ。 「そんなことを言うといい返事だと期待するが?」 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/399
400: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:15:29.39 d 頼んだグラスシャンパンが出される。合わせて、ジンジャーエールもエレンの前に置かれた。軽く乾杯をしてからひと口飲む。シュワシュワした炭酸で頭が冴えてきた。 テレビを見た時はモデルを引き受ければ良かったと後悔したが、本当にエレンで良いのだろうか、と疑問がわく。 当たり前だがエレンは一般人だ。どこにだっている大学生で、リヴァイはやたらと目を褒めてくれるけれどそれだって人より少し大きな釣り目というだけだ。 目力が強いとはよく言われる。でも目が大きければそんなことは必然で、ほかにも似たような人はいるだろう。 それどころか、もっと良い人だってたくさんいるはずなのだ。 リヴァイがエレンを選ぶ理由がないように思えた。エレンでなければならない理由が、エレンには分からない。 素人を使うより、プロを使ったほうが撮影も楽に進む。 何より、自分がリヴァイの世界に紛れ込むことで、彼の世界が汚れてしまうんじゃないかと恐怖すら感じてしまった。 すっかり怖じ気づいたエレンはそれを素直にそのまま伝える。 「……お待たせさせてしまったのに申し訳ないです」 リヴァイの期待する返答ができない自分が悔しかった。もっとエレンに自信があれば、喜んでと言えたかもしれない。 「……言いたいことはそれだけか?」 そう尋ねたリヴァイどこか、覚悟を決めたような表情に見えた。 シャンパンを口に含んで、喉を鳴らして飲み込む。 「いいか、よく聞け…………俺は、お前に一目惚れした。だからお前が一番綺麗だと思っているし、一番綺麗に撮れる自信がある。好きだと思った奴を撮りたい。自分の世界に入れたい。そう思うことは自然だろう? 他の奴じゃ駄目だ」 「え、」 「惚れたと言っても付き合えとは言わない。好きだ。撮らせてほしい」 緊張しているのか、リヴァイの肩がわずかに震えていた。 突然の告白にパチパチと目を瞬かせる。 リヴァイに見えないようにカウンターテーブルの下で自分の手の甲を抓ってみると痛かった。夢じゃない。 口説かれているみたいだ、と思ったのは勘違いじゃなくて、真実だった? 「え、は……? はああああ? なん、どういう……っ!」 「一度しか言わねえよ。こっぱずかしい」 リヴァイもどこかぎこちない反応を大混乱中のエレンに返して暫く無言が続いた。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/400
401: 名無し草 (ワッチョイ 7326-Iq2g) [] 2016/04/06(水) 21:15:33.64 0 純愛の予感 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/401
402: 名無し草 (ワッチョイ 7326-Iq2g) [sage] 2016/04/06(水) 21:15:48.80 0 あかんageまくりや http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/402
403: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:15:55.29 d ピピピ! と調理場からタイマーが鳴っているのが聞こえる。 頼んだ料理がそろそろ出来上がるのかもしれない。こんな状態で食べて味がわかるか不安だ。 「引き受けてくれないか」 立ち上がって頭を下げるリヴァイにエレンはどうすれば良いのか真剣に考えた。 教えていないので、リヴァイはエレンの名前も知らない。 知り合ったばかりのおそらくかなり年下の男に告白をすることにどれだけ勇気と覚悟が必要だろうか。 不思議と嫌悪感はなかった。 エレンでなければならない理由もあった。 断ろうと思った理由は自信がなかっただけ。 嫌なことはハッキリと嫌だと言える人間だ。 実際今までそうして自分の意志を相手に伝えて生きてきた。 そのせいで衝突することも少なくなかったが、それがエレンだ。 ならばもう答えは出ている。 「次の写真集だけでいい。頼む」 リヴァイの頭は下げられたまま、今どんな表情をしているのかは分からない。 でもきっと真剣だろう。 真剣に自分を撮りたいと思ってくれている。 好きな写真家の作品になれる。 だからこそ緊張もするし、不安だって大きい。 (だけど、) こんなに光栄なことは他にあるだろうか。 「……分かりました」 「!」 言ってしまったからには取り返しはつかない。リヴァイの覚悟に、エレンも覚悟を決めた。 リヴァイがやっと頭を上げる。目を丸くして、驚きと喜びが混ざったような、そんな顔だった。 「いいのか?」 「本当に、オレでいいのなら」 こくりと頷いて見せる。とても小さな声でありがとう、と聞こえた気がした。 目尻を下げて微笑んだリヴァイにエレンの胸が高鳴る。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/403
404: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:15:59.20 d これはなんだ。 告白されたせいか、なんだか変に意識してしまっているのかもしれない。 いまだに立ったままのリヴァイに座るように促してから、自己紹介をした。 すると名前を褒められ、またドキドキしてしまう。 タイミング良く出てきた料理を食べることでなんとか平常心を保ちながらエレンはリヴァイと会話を続けた。 食べた料理はこの店のメニューをコンプリートしたくなるくらい美味しかったのでランチもディナーも外で食べる時は暫くこの店に来ることを決意した。 それをリヴァイには言う余裕はなかったけれど。 リヴァイは終始柔らかな雰囲気を出しており、エレンの返答にとても満足したことは確かだ。 連絡先を交換した時もエレンの電話番号を登録した後に大事そうに自分の携帯電話を見た後で、エレンには「絶対に削除するんじゃねえぞ」と凄んできた。 「本当に引き受けてくれて嬉しく思っている。短期アルバイトとして契約書を書いてもらいたいから後日、俺の事務所まで来てほしい」 聞けば、正式に書面で契約を交わすこと、撮影した日の分はしっかりと給料を出すと言われ、それならばと都合のつく日と時間帯をいくつか提示するとあっさりと来所する日取りが決まった。 写真集の為の撮影なんてもちろん初めてのエレンはどれくらいの時間が取られるかは想像もつかない。 今のアルバイトの合間にできるか心配になって尋ねるとできる限りエレンに合わせるが、リヴァイもスタッフも他の仕事もあるので多少は融通をきかせてほしいことを頼まれ、それには引き受けた手前、了承した。 そうしているとエレンが家を出てからもう四時間も経っていた。そろそろ帰る時間だと、トイレに立つ。 用を済ませて席へ戻ると支払いは終わってしまっていた。 「こういう時は収入の多い大人に任せるもんだ」 けろりと言い放つリヴァイが少しだけ憎くなった。確かに大学生と社会人では収入は大きく違うが、支出だって違うはずだ。 なんとなく腑に落ちない気持ちになって無言でリヴァイを睨むと頭をぐしゃぐしゃと撫でられた。完全に子ども扱いじゃないか。 「家まで送る。どっちだ」 「ち、近いのでそれはさすがに大丈夫です!」 今度はリヴァイが不服そうな顔をする。言いくるめるのにかかった時間は十五分。なかなか粘られたほうだろう。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/404
405: 名無し草 (ワッチョイ 0bc8-RFax) [sage] 2016/04/06(水) 21:16:04.00 0 >>396 そういえばゲームのDLCはジェルしか着れないのけあれ http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/405
406: 名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4) [sage] 2016/04/06(水) 21:16:13.84 a >>402 ぺちぺちぺち http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/406
407: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:16:24.87 d 数メートル進んでから振り返るとリヴァイはまだ店の前でエレンを見ていた。見えなくなるまで見送るつもりらしい。 お辞儀をすると手を振られ、エレンは携帯電話を取り出した。 メールを起動させて登録したばかりのリヴァイのアドレスを選択する。 『風邪引かないうちに帰ってくださいね。今日はごちそうさまでした。おやすみなさい』 本文を入力して送信ボタンを押す。メールに気づいたリヴァイがそれを読んでいる間に走って逃げるように帰った。 家を出た時と違って、とても気分が良い。今夜はぐっすり眠れそうだった。 2、 「おはようございまーす」 「今日はよろしくお願いします」 テレビでしか見たことのない機材を持つ人々が行き交っていた。 あれからエレンは約束通りにリヴァイの事務所でアルバイトの契約を交わし、元々働いていたアルバイト先に少しシフトを減らす交渉をした。 タイミング良く大学は春休みに入り、自由な時間が増えたこともあって、そこまでシフトを減らさずに撮影にも当たれそうだ。 リヴァイが春休みとゴールデンウィークに集中的に撮影を行う計画を立てて、今日はその初日の撮影の日だった。 指示された時間に事務所へ行くと、控え室に連れて行かれて簡単に化粧をされた。ファンデーションで肌を整える程度だったが、生まれて初めての化粧だ。 顔にペタペタと塗られる感覚に息苦しさを感じた。 今日のところは髪はそのままでいいらしい。自然な感じがいいのだそうだ。 これから三ヶ月ほど撮影は続く。 まずは近場からと廃ビルでの野外撮影と、白ホリスタジオを利用しての室内撮影をする予定だ。 廃ビルでの撮影ではエレンがメインになるものもあれば、なんとなく誰かがいる程度にしか写っていないような写真も多く撮られた。 休憩中に撮った写真を見せてもらうとリヴァイの作品作りに参加ができていることを急激に実感してわくわくしてくる。 夢みたいな現実だ。 ビルの使用許可が取れているギリギリまで撮影をした後、次はスタジオへと車で移動する。 スタジオという場所へ行くのも初めてだ。 一体どんなところだろうか。ドラマや漫画で見るような場所だろうか。 気持ちが高揚して普段よりもテンションが高くなる。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/407
408: 名無し草 (ワッチョイ f395-imw8) [sage] 2016/04/06(水) 21:17:00.68 0 わいこの前はじめて日向夏買うたんやけど 同僚と話してたらわいだけイントネーション違ったは http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/408
409: 名無し草 (ワッチョイ 9fd9-G+K4) [sage] 2016/04/06(水) 21:17:05.63 0 >>396 d諏訪部やなかったか 二個目は質問はなんなん http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/409
410: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:17:17.85 d しかしそれもスタジオでの撮影が始まるまでだった。 失念していたが、白ホリということはここで撮る写真はエレンがメインのものばかりなのだ。 廃ビルとは違って、エレン以外には何もない真っ白な空間にわくわくが全て緊張へと差し替わる。 緊張は如実に撮影に影響し、ガチガチに固まってしまったエレンは自分でもこれではリヴァイが思うような写真が撮れないことが分かってしまう。 「エレン、」 見かねたリヴァイがエレンに声をかけて近づいてくる。 「上手くできなくてすみません…」 「そうじゃない。これを見ろ」 そうしてリヴァイの持っていたカメラの液晶画面を前に出された。表示されていたのは廃ビルで撮った写真で、さっき見せてもらったのとはまた別のもの。伏し目がちにどこか遠くを見るエレンがアップで写っていた。 「綺麗だろう。気張らなくても大丈夫だ。ポーズや視線はこっちで指示する。絶対に良く撮ってやるから自信を持て」 ぽんぽんと頭を撫でられるとそこからすっと緊張が解れていく。リヴァイに頭を撫でられるのは二回目だった。 エレンの目にやる気が満ちる。 「よし、いい目だ。それを撮らせてくれ」 リヴァイにずっと褒められていた目。両手で顔を隠して目だけ出したり、下から見上げる形でカメラを睨みつけるようなエレンの目力が強調される構図やポーズでの撮影が続いた。 同じ構図でも色々と角度やライティングを変えてリヴァイの満足するまでシャッターは切られる。 最後に目のアップを撮られて、撮影は終了した。 撮った写真を確認するリヴァイにしきりに綺麗だと褒められ、周りのスタッフもまた写真を見ると同様にエレンに賛辞を送ってくれた。 スタジオでの撮影中、リヴァイはよく喋った。 「いい」「そのまま」「もう少し腕を上げてくれ」「綺麗だ」「もっと睨めるか?」「今のは良かった」 リヴァイがいない時に教えてもらったが、こんなに喋るのは珍しいらしい。 もしかしたら緊張でガチガチになってしまったエレンを気遣ってくれていたのかもしれない。 「顔は怖いけど優しい人なんですよ」 教えてくれたスタッフはそう言って笑っていた。 この日の撮影の後は公園、車の中、プールなど色々なところに行った。 スタジオもまた使用しては色々な小道具に埋もれたり、家具を使用したりと多種多様だ。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/410
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