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【腐女子カプ厨】巨雑6441【なんでもあり】 [無断転載禁止]©2ch.net (1002レス)
【腐女子カプ厨】巨雑6441【なんでもあり】 [無断転載禁止]©2ch.net http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1460031797/
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155: 名無し草 (スプッ Sdb8-xmDs) [] 2016/04/08(金) 05:53:10.48 d もう初めての感覚に惑わされるのも、下手に理性が残っているせいで恥ずかしい思いをするのもたくさんだ。 早く乱れて滅茶苦茶になってしまいたかった。その方が、ずっと楽なのだと思えてならなかったのだ。 「いてて、んな急ぐなよ。ちゃんと、優しくやってやるからな」 「え」 「俺もうほんと、二度とお前にひでぇことしねぇよ。大事にする。優しくする。だから、」 「お、おい待てよろず、」 「だから、めいっぱい気持ちよくなってね、土方くん」 「あっ、ちょ、まっ、――!!あ、あああ、やっ、これやっ、ああ、ひっ、ああああっ」 万事屋は――やっぱり宣言通り、本当にどこまでも『優しく』俺を抱いた。 挿れた時と同じくらいゆっくりと性器を引き抜いて、そしてまた挿れて、を繰り返し、身悶える俺を見て満足そうに笑うのである。 「うっ、ぁあ……ぁ、ひ……も、や……だめ、だめ……」 「……なにがだめなの」 「ば、ばかに……ばかに、なるぅ……も、おれ……んっ……てめーのこと、しか……かんがえ、られな……」 「だ、だめじゃない!それ全然だめじゃねぇよ、土方っ」 「あ、あ、ばか、でかくすんなばか、っ、ばか、ぁ……!」 「俺が馬鹿になってんのはおめーのせいだよ、ばか、このばかっ!お前どんだけ可愛いけりゃ気ぃ済むの!ばか!」 「も、だめっ……!よろずやぁ、だめ、だめ、もうっ……ひっ、あ、あっ、イく、イっちまっ、ああっ……!」 「……ひ、ひじかた……銀時って……銀時って、呼んで……」 「は、ぇ、え……?」 「俺の名前呼びながら、イって……!」 それまで俺はあいつの名前を呼んだことがなかったし、呼ぼうと思ったこともなかった。 俺にとってのあいつは『万事屋』という名前の生き物で、もう長いことそう呼んできたものだから、今更坂田銀時なんて名前で呼んでやる必要を感じなかったのだ。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1460031797/155
156: 名無し草 (スプッ Sdb8-xmDs) [] 2016/04/08(金) 05:53:53.64 d 素面の時であったなら、多分呼んでやらなかったのだろう。今更そんな改まって、照れくさい、なんて気持ちもあったからだ。 だがあの時の俺はあいつのことで頭がいっぱいな馬鹿だった。 だから泣きそうな顔でそんないじらしいことを乞うてきたあいつを、愛しいなんて思ってしまって、名前くらいどれだけでも呼んでやろう、なんてことも思ってしまって―― 「っ、ぎ……ぎん、とき……」 「!!土方……!」 「あっ、い、いく、いかせて、銀時っ、ぎんときっ、ぁ、ぎんっ……ぎんとき……!」 「ああ、もう、おまえ、おまえ……!」 「だめ、もうっ、ぎんとき、だめ、ぇ……」 実際自分でも引いちまうような甘える声であいつの名前を連呼しながら、絶頂に達したのだった。 こんなに気持ちのいい思いは、もう二度とできないのではないかと思った。 過ぎた快感に頭も身体も支配されて、もう俺はこんなセックスを知る前の俺に戻れないのではないかと思った。 こんな恐ろしいセックスはもう二度とごめんだとも、思っていた。 ぐちゃぐちゃとまとまらない感情たちは涙となって、目の端からとめどなく流れていった。 「っ、ごめん、ひじかた……中で、出すからな」 「ん、ぁ……あ……はぁ、ぁ、ん……あ……」 糸が切れたように弛緩した俺の身体を抱き締めた万事屋は、少しスピードを上げて、自分がイくための動きをした。 もう身体のどこにも力が入らなくて、指の一本も動かすことができなかった。 なのにあいつを咥えこんだ場所だけは、あいつの性器をあやそうとでもするかのようにきつく窄まったままだったのが、おかしかった。 「ぁ、っ、ふ……ひじかたっ、ん……ひじかた……!」 「は……よろず……ぎん、とき……」 中にあいつの精液が注がれる感覚に、背筋が震えた。ちょっとの嫌悪感と、多大なる愛おしさ。 眉をしかめ目を細め、俺には散々口を噛むなと言っておきながら自分は唇を噛みしめて、そうやって快感を堪えてでもいるかのような面をしているくせに、結局は俺の中に欲をぶちまけることを我慢できないこの男が愛おしかった。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1460031797/156
157: 名無し草 (スプッ Sdb8-xmDs) [] 2016/04/08(金) 05:56:11.59 d 馬鹿なやつ。とてもかわいい。 この瞬間だけは、あいつに抱かれているのか俺が抱いてやっているのかが、分からなくなってしまう。 「あー……だめ…すげぇ、よかった……」 「んっ…」 最後の一滴まで注ぐように腰を振ってから、万事屋の性器はずるりと俺の中から出ていった。 あいつの形に広がったままなのだろう後ろから、出されたものが溢れてゆく。 肩で息をする万事屋が一旦俺から身体を離し、シーツの上に座り込んだので、俺も痺れる身体をなんとか叱咤して起き上がった。 そして胡坐をかくあいつの股間へ、顔を埋めた。 出すものを出したばかりのあいつの性器を、舐めて綺麗にしてやるためだ。 しかし俺の舌先は、目的の場所まで届かなかった。 やけに慌てた様子のあいつが俺の身体を抱き締めて、己の膝の上に引っ張り上げたせいである。 「だ、だから!お前はもう、そういうことしなくていいから!!」 「だって、前に万事屋が……抜いたばっかのちんこは綺麗にしてやらなきゃならねぇから、舐めろって…だからいつもしてやってたんだろうが…」 「嘘!それ嘘だから!銀さん嘘ついた、ごめんなさい!」 「ほぉ、俺に嘘ついたのかてめぇ…腹切れやカス…」 「腹切って許して貰えるならどんだけでも切ってやるから、お前もう、そういうことほんと……しなくてもいいんだからな……」 俺にお掃除フェラなんてろくでもねぇこと仕込みやがったのは、てめぇじゃねぇか。 どんどん重くなってゆく口の内側でそんな文句を呟きながら、俺は万事屋の腕の中で意識を失った。 黒く塗りつぶされてゆく視界の中心で、万事屋の顔がいよいよ本格的に泣きそうに歪んでいたが、俺にはその理由が本当に分からなかった。 「おはよ、土方。身体、大丈夫?」 「……ん……」 目を覚ました時には、俺の身体はすっかり綺麗になっていた。腹にぶちまけた自分の精液も、中にぶちまけられたあいつの精液も、何事もなかったかのようにさっぱり痕跡を消してしまっている。 万事屋は自分が一服する手間も惜しんで、後始末をしてくれたのだろう。珍しいこともあるものだ。思わず俺は、吹き出した。 「どうした?」 「なんでもねぇよ」 「そお?」 万事屋はあまり深く追求せずに、俺を後ろから抱き締めてシーツの上に転がった。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1460031797/157
158: 名無し草 (スプッ Sdb8-xmDs) [] 2016/04/08(金) 05:56:38.25 d 「まだ時間あるから、もうちょっとだらだらしてようぜ」 「ん」 「……とろっとろ泣いてる土方くん、可愛かったなぁ……」 「……泣いてねぇ」 「いや泣いてたよ。いつになく泣いてたよ」 「目から水が垂れただけだ。泣いてねぇ」 「それを泣いてるっつーんだよ、ばか」 「んむっ」 万事屋の太い親指が、俺の唇をむにむにと揉むようにいじくった。 そうやって俺の口を塞いだまま、 「……なんで最初から、こうしてやらなかったんだろうなぁ……」 か細い声で、呟いた。 「いてっ」 何をどう答えてやればいいのか分からなかったので、俺はあいつの親指に噛みついた。 今日の万事屋はおかしいと、はっきりと思ったのはその瞬間のことだった。 それまでは今までになかった『優しい』抱き方も、気まぐれでそういうプレイをしてみただけなんじゃないかと思っていたのだ。 だが頭の後ろで零された万事屋の声はあまりにも切実で、死ぬほど悔やんででももいるかのようで、俺は「次もああやって抱かれるのだろうか」なんて恐怖に駆られてしまったのだった。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1460031797/158
159: 名無し草 (スプッ Sdb8-xmDs) [] 2016/04/08(金) 05:56:54.42 d 実際それは当たりだった。次も、その次も、そのまた次も、万事屋は酷く優しく俺を抱いた。 それは優しかったが優しくなかった。 少なくともそれまでの半分暴力みたいな激しい抱き方が俺に筈っと優しくて、まるで処女でも抱いているかのような優しい抱き方の方が俺にはよっぽど酷かった。 ゆっくりじっくり時間をかけて身体と理性を溶かされて、自分が何者でもなくなったような気分にさせられて――そうしてわけも分からず泣くしかできなくなってしまう俺の頭や頬撫でながら、万事屋は本当に嬉しそうに笑うのだ。 「土方、お前はなにもしなくていーからね、全部俺がやってやるから、気持ちよくなってるだけでいいんだぜ、な、土方、お前のこと大事にさせて――」 一方的に与えられるだけのセックスなんて、恐怖以外の何ものでもない。 優しいあいつは俺のケツをぶっ叩くことが好きだったあいつよりも、ずっと恐ろしいサド野郎だ。 結局俺が、 「……なぁ、そろそろこういうのにも飽きただろ?たまには前みてぇにやらねぇか?」 と持ち掛けることができたのは、そうして抱かれるようになって1ヵ月もの時が経ってからのことだった。 つい昨日の話である。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1460031797/159
160: 名無し草 (スプッ Sdb8-xmDs) [] 2016/04/08(金) 05:57:51.30 d 1ヵ月。俺はそれまでと変わらず暇ができればあいつと会い、ホテルになだれ込んではあいつと『優しい』セックスをした。本当はすぐにでも言ってしまいたかったし、言うべきだった。 こういうのはあまり好きではないから、前と同じようにやって欲しいのだと。 だがそうやって寝るようになってからのあいつはあまりにも幸せそう過ぎて、俺には中々切り出すことができなかったのだ。 最近のあいつは昼間往来で俺と出くわした時にさえ、とろりと相好を崩すのである。 ヤってる最中にするような顔すんな馬鹿、と罵ってやりたくとも、誰が何を聞いているかも分からない場所でそんなことを言えたわけもない。 「よう税金泥棒、奇遇だなぁ。ちょっと銀さんに奢ってみない、米俵とか米とか米とか」 絡んでくる時の台詞だっていつも通り色気もクソもないものである筈なのに、肝心のそれを言う声がふわふわと浮ついてしまってた。 まるで睦言を囁く声だった。俺みたいないい年こいた男を捕まえてかわいい、かわいい、と頭がいかれたような文句を繰り返す声と、おんなじだ。 「また米も食えねぇような生活送ってやがるのかよ、ダメ人間」 俺の声も、つられて上擦ってしまってはいないだろうか。ベッドの上であいつに甘える時のような声になってしまってはいないだろうか。 この顔は――さも幸せだと言わんばかりに、緩んでしまってはいないだろうか。 こんなはずではなかったのに。 「えっ」 前みたいにして欲しい、という旨を切り出すと、万事屋は頓狂な声を漏らし目を瞠った。 口は半開きである。俺の言っていることを理解できていなさそうな表情であった。 なので俺はもう一度、 「だから、また前みたいなのヤろうぜ、っつってんだけど。なんか、その、ほら……は、恥ずかしかったり……痛かったりするやつ。てめーが好きだったやつ」 と言い募り、あいつの目を見上げたのだった。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1460031797/160
161: 名無し草 (スプッ Sdb8-xmDs) [] 2016/04/08(金) 05:58:23.49 d 見上げた、というのは俺がベッドの上に仰向けで寝転がっていて、あいつがその上に覆い被さっていたからだ。 いつものホテルのいつものベッドの上で、行為の真っ最中だったのである。 例によってあいつが満足するまで必要以上に解された穴に、あいつの性器の先っぽが押し付けられた瞬間のことであった。 言うなら言うでこんな土壇場ではなく、もっと早く言うべきだったのではないか。 そう思わないでもなかったが、待ち合わせ場所で合流した時やホテルへ向かう道中、部屋に入ってからあれやこれやしている時に、とあいつともっとゆっくり話が出来そうなタイミングはことごとく逃してしまっていたのだから仕方がない。 挿れられてしまったらどうせ俺はろくな言葉を喋れなくなってしまうのだし、この挿入直前こそが最後のチャンスだと思うとどうしても言わずにはいられなかったのだ。 「……確かにそういうの好きだったけど。え、なに……なに土方くん、お前までああいうの好きになっちゃった?自分からヤろうって言うほど?」 「別に……ああいうのが特別好きってこっちゃあ、ないんだが」 嘘だ。正直好きだ。 他の奴とだなんて死んでもごめんだが、万事屋とするああいうのは普通に好きだ。 気持ちが良くて、楽しい。あらゆる手段を用いて俺を辱めようとしてくる万事屋が、いじらしくて滑稽でかわいらしい。 「じゃあ何で。そんなに優しいの、嫌だった?」 「そう、だな。嫌だ」 「何で。おめー毎度毎度死ぬほど気持ちよさそうにしてただろ」 「そりゃ別に……気持ちよくねぇことは、なかったが」 「なら今のまんまでもよくね?」 もしかして俺が間違えたのは切り出すタイミングなどではなく、切り出してしまったこと自体だったのかもしれない。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1460031797/161
162: 名無し草 (スプッ Sdb8-xmDs) [] 2016/04/08(金) 05:59:07.16 d そんな不安を覚えてしまうほどに、俺を見下ろす万事屋の両目は必死だった。 セックスの最中に見慣れた必死さではない。 小さな子供が愛情を乞うてくるような、どこか痛々しい必死さだったのである。 「……、」 そうだな、確かになんも問題ねぇな、今のまんまでいい、今日もせいぜい『優しく』俺を抱けばいい、好きにしろよ、万事屋――なんてことを一瞬、本当に言ってしまいそうになったのだが、すんでのところで飲み込んだ。 やっぱり俺には怖かったのだ。 一方的に俺だけが溶かされてゆくようなセックスも、あいつとの距離感がおかしなことになってゆくことも。 「だってお前……こういうのはなんか、違うだろ」 これ以上変にあいつにのめり込んでしまいそうになることが、俺にはどうしても怖かったのだ。 「は?」 「俺ァ女じゃねぇんだから、あんな大事に大事にされなくても構わねぇし……されても困るっつーか。それに近頃は昼間に会った時も、なんか妙な雰囲気になっちまうだろ。ああいうのも、なんかくすぐったくて、あんまり……俺は、好きじゃない」 言っている途中で万事屋の目を見ていられなくなってしまったので、俺はそれとなくあいつの顔から目を逸らし、あいつの頭の向こうで安っぽく輝く室内灯をじっと見つめた。 きっと俺は俺を守らんとするために、万事屋の心を酷く傷つけていたに違いなかった。 見開かれた目で俺を見下ろすあいつの顔を見てしまえば、そんなことは分かってしまった。 それでも一旦この口から滑り出した言葉たちを、飲み込むことはできなかった。 俺だって、限界だった。限界だったのだ。 「じゃ、なに。やっぱり結局土方くんは、ケツぶっ叩かれたり外で脱がされたり洗ってねぇちんこしゃぶったりするのが大好きになっちゃって、そういうのしたいから俺に付き合ってくれてたって、そういうこと?」 「はぁ!?馬鹿お前、なに言って」 「っ、だぁから!こういうことされたくてたまんなかったのかよ、って聞いてんだよ、変態野郎!」 「あっ、え……!?」 万事屋が乱暴に、俺の片足を肩の上に担ぎ上げた。抵抗する間もなかった。気付いた時には性器のみならず緩んで収縮する後孔までもが、あいつの眼前に曝け出されてしまっていた。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1460031797/162
163: 名無し草 (スプッ Sdb8-xmDs) [] 2016/04/08(金) 06:00:08.29 d そしてあいつは、俺が恥ずかしいと思う間もなく、 「〜〜っ!?」 腰から下を中途半端に浮かされた身体を斜め上から串刺しにするように、猛った性器を一息に根元まで突き入れてきたのだった。 「あ、ゃ、あ゛……あ゛、ぁ……!」 それはこの1ヵ月間、優しくあやされるように抱かれ続けてきた俺には過ぎた刺激であった。 信じられないことに、挿れられただけでイってしまったのである。 胸にぶちまけてしまった精液を塗りこめるように俺の乳首を弄りながら、万事屋は皮肉気に口の端を釣り上げた。 「そんなによかった?」 「は……ぇ……?」 「お前、すげぇ気持ち良くてたまりません、って顔してる。みっともねぇよ」 「あ、まっ、まてよろずや、ま、っや、あ゛っ!あ゛っ!や、ぁっ……!」 絶頂の余韻に痺れるこの身体を、万事屋は間髪入れずに突き上げた。 額に玉の汗を浮かべ、口角の上がった唇を噛み締めながら、何度も何度もひたすらに。 ちょっとでいいから休ませて欲しかった。いい加減股関節が痛いしあらぬところが丸見えで恥ずかしいので、足を閉じさせて欲しかった。 そんなことを心の片隅で思いながらも、身体はどうしようもなく気持ちが良かった。 やっぱり俺はああやって、あいつに我を忘れたように激しく求められるのが好きだったのだ。 「土方ァ、っ、前こうやってしてやった、時にはよォ、よっぽどよかったのかお前、しまいにゃ漏らしちまったよなぁ!?」 「っ……!っ、し、しらねっ、ひぐっ、しっ、しら、ねぇっ」 「嘘つけ、よっ!」 「あ゛っ、ぅあっ、あ゛ー!」 信じられないくらい奥まで入ってきた万事屋で、腹の中がぱんぱんになっていた。 嵩の張った亀頭でごりごりと腸壁を刺激されてしまうと、もう下半身が馬鹿になってしまったように吐精感が止まらなくて、でもそんなにすぐに何発も出せないから、結局中だけがイきまくり、狂ったようにあいつの性器を締め付ける羽目になってしまう。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1460031797/163
164: 名無し草 (スプッ Sdb8-xmDs) [] 2016/04/08(金) 06:00:59.58 d するとあいつは恐らく無意識に、それから逃れようとでもするかのようにちょっとだけ、腰を引くのだ。 そしてまた、引いた分だけずん、と小刻みに奥を突いてくる。 そんなことを何度も繰り返されてしまえばたまらない。 口からは濁点交じりの聞き苦しい嬌声が漏れて止まらず、馬鹿になってゆく体ははしたなく大股に足を開いたまま、ただ甘く痺れていた。 勃起した性器が先走りを垂らしながらみっともなく揺れる様を、見せつけようとでもするように。 我がことながら大した淫売だ。そんな俺を、あいつはどんな顔で見ていたのだろうか。 1ヵ月より前のあいつだったなら、満足げに口の端を釣り上げていたに違いない。 でもあの時のあいつはきっと、そんな顔をしちゃいなかった。 両目に張られた厚い涙の膜のせいですっかり視界が滲んでしまい、あいつの表情を確認することはできなかったが――だが、 「馬っ鹿……おめー、ほんと馬鹿っ……こんな、やらしく、なっちまって……!」 耳に突き刺さるあいつの声は酷く悲しげで、今にも泣きそうであったので、顔もそんな感じの表情に歪んでしまっていたのではないかと、思うのだ。 「お、おれをっ、こんなにしたのはぁ、っ、ぁ、て、てめーじゃ、ねぇかっ……!」 責めようと思ってそんなことを言ったのではない。それはただの事実であり、俺にはそれが嬉しかった。 それをあいつに伝えてやるために、俺は震える腕をどうにかして突っ張って、あいつの頬に掌を添えた。 そして、ほんのりと赤く上気した目尻を撫でてやった。 あいつが今にも泣きだしてしまいそうな死ぬほど情けない面になったのは、その瞬間のことだった。 「えっ」 「そ、そうなんだよ。お、おめーがそんなになっちまったのは、お、俺のせいなんだよぅぅぅぅぅ」 「はぁ?え?万事屋?」 思わず俺は素に戻り、首を傾げた。つい一瞬前までのドSぶった雰囲気はどこへやら、あいつは俺をきつく抱きしめて、えぐえぐと胸元に顔を埋めてきたのである。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1460031797/164
165: 名無し草 (スプッ Sdb8-xmDs) [] 2016/04/08(金) 06:01:40.04 d 「あ」 そしてぎんっぎんに勃起していた筈のあいつの性器は急にしゅんと縮こまり、ずるりと俺の中から出ていってしまったのだった。 たまらず俺は、声を荒げた。 「馬鹿てめー俺ァまだイき足りてねぇぞ!なに萎えさせてんだ馬鹿!」 「ば、馬鹿お前、ダメ!そういう慎みのないこと言っちゃダメです!!」 「いい年こいた男に慎みもクソもあるか!」 「そりゃそうだけど、そうなんだけどぉぉぉぉ」 そうして益々ぐりぐりと頭を振る万事屋はとくれば、まるきり聞き分けのない駄々っ子なのである。 いい年こいてるのはてめーも同じだろうが、何してんだてめーはよ。 そう声にして呟くのも億劫だったので、代わりに俺はさっきからこっしょこしょと人の胸をくすぐってくる無作法な天パを雑に撫でてやった。 「なに。お前結局なんなの。俺をどうしてーんだよ、わけ分かんねぇ」 もしかすると溜め息交じりにぽろりとこの口から漏れたその疑問こそが、前みたいにしよう、と提案する前にあいつに聞いてやるべきことだったのかもしれない。 万事屋は少しだけ顔を傾け、俺の胸の上から上目にこちらを見つめてきた。 腫れぼったくなってしまった両目は拗ねたように細まってしまっていて、やっぱりどうしようもなく駄々っ子であった。 「……最初はよぉ。いっつもつんけんしてて、エロいことなんか興味ありません、したこともありません、みたいな澄ました顔してるおめーが、俺の下でひんひん泣いてエロみっともねぇ面見せてくれるのが嬉しかったんだよ」 エロみっともねぇってなんだ、みっともねぇって。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1460031797/165
166: 名無し草 (スプッ Sdb8-xmDs) [] 2016/04/08(金) 06:02:21.67 d 「なんか俺に……なんていうの、人にあんま見せるようなもんじゃないとこ?弱みになっちまうようなもん?見せてくれたみたいで。 それにお前、俺がどんなことしてもほぼほぼ全部受け入れてくれたじゃねぇか。口では文句ばっか垂れてたけど。そういのも、俺ァ、嬉しかったなぁ……」 ぼそぼそと呟きながら万事屋は目を逸らし、しまいにはまた俺の胸に顔を埋めて隠してしまう。そのまま殆ど聞こえないような声で 「まあ俺も性癖が性癖だから、そういうの関係なしに楽しんでたところもあったんだけど」 と呟いていたような気もしたが、聞かなかったことにしてやった。 あいつの頭を撫でてやる手が余計に乱暴になってしまうのを止めることはできなかったが。 残念な天パはもはや爆発したようになっている。 「なのに……なのになんで今更、おめーのこと大事にしてやりたくてたまらなくなっちまったかなぁ」 「万事屋……?」 「……こんなに好きになるなんて、思ってなかったんだよなぁ」 「……!」 顔を伏せったままの万事屋が吐息のようなか細さで漏らした声に、頭を殴りつけられたような気分にさせられた。 喉の奥で息がつまり、心臓は今にも爆発せんがばかりにどくどくと跳ねる。 耳鳴りまでもを催して、なんだか今にも、頭のてっぺんからこの身体が壊れていってしまいそうだった。 だって俺は、それまで万事屋に好きだなんて言われたことがなかったのだ。 言って欲しいと思ったこともない。俺にしたってそんなこと、一度たりとも言ったことがない。 俺たちは互いにいい年をこいた男であり、身体から始まった関係をずるずると続けているろくでもない男でもあった。 好き、だなんてそんな可愛らしい言葉を振りかざすには、どうにも爛れていたのである。 だが実際あいつの声で俺に向かって放たれたその言葉に、どうしたことかこの俺は、どうしようもなく感じ入ってしまっていたようなのだ。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1460031797/166
167: 名無し草 (スプッ Sdb8-xmDs) [] 2016/04/08(金) 06:03:02.60 d 嬉しいだなんてことを、思ってしまっていた、ようなのだ。 「……万事屋……」 どうしよう。 どうしよう。 どう、しよう。 「お前に散々っぱら変態行為働いてきたこと、すげぇ後悔しちまってるし、お前にろくでもねぇことばっか仕込んで……お前を風呂屋の姉ちゃん顔負けのとんでもねぇ淫乱にしちまったのが俺なんだと思うと、なんかちょっと死にてぇって思う。 やり直せるなら最初からやり直してぇよ。最初からお前のこと、もっと大事に大事に抱いてやりたかった。他人にこんな、ここまでずっぷりはまっちまうほど惚れたことなんて、ねぇから俺は…… やり方が、よく分かってなかった。いい年こいてこれだぜ、笑えてくるわ。いや笑えねーか、笑えねーな」 のそりと起き上った万事屋は、万事屋らしからぬ弱々しい声で万事屋らしからぬことを呟きながら、そっと俺の頭を撫でてくる。 その手はあまりにも、ぎこちない。俺にふり払われることを恐れてでもいたかのようだ。 そんなあいつの顔にはこの1ヵ月で見慣れてしまった、優しい大人の男の表情が張り付いていたのだが、それが今にも泣きだしてしまいそうな頼りない面に見えたのは、決して気のせいではなかった筈だ。 もしかすると俺が気付いていなかっただけで、この1ヵ月あいつはずっと、そんな顔をしていたのかもしれない。 そう思うとたまらなかった。たまらなく、心臓が痛かった。 「そんでこのひと月ほど、俺なりにおめーのこと大事にしてみたつもりだったんだけど。おめーも満更じゃないように見えたから、俺ァもう幸せで幸せでたまらなかったわけなんだけれども。でも、おめーはそうじゃなかったんだな」 「……へ?あ、いや……万事屋、俺は……」 「わ、分かってる。分かってるから、皆まで言うな!」 「むぐっ」 咄嗟になにか、この口先からあいつへ向かって飛び出してゆこうとした言葉があった。 しかしそれは俺の口をすっぽりと覆ってしまったあいつの大きな掌に、封じ込められてしまった。 「俺おめーに酷いことばっかしてきたもんな、今更好きになって貰えるとか都合の良いこと思ってねぇよ……いや、実はちょっと思ってるけど。あわよくばって思ってるけど!でも俺お前が今まで通り身体だけの関係でも続けてくれるってんなら、ほんと、それでも構わねぇし http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1460031797/167
168: 名無し草 (スプッ Sdb8-xmDs) [] 2016/04/08(金) 06:03:41.08 d ……いや、ほんとは構いまくりなんだけどね!そんなん死ぬほど悲しいけど、でもお前がもう会ってくれなくなるより全然マシっつーか……ほんとはやだけど……」 「む、むぐぅ、うぅー!」 しょんぼりと項垂れてしまった万事屋は、しかし俺の口を塞ぐ手の力を一切緩めようとしなかった。よっぽど俺から「別に俺はそこまでお前のこと好きじゃねーし」だとか「おうこれからもよろしく頼むわ肉ディルド」みたいな台詞を聞くのが怖かったのだろうと思う。 冗談じゃない。誰がそんなことを言うものか。 大体俺は、そりゃそこそこの距離を取っていたかったし、必要以上にのめり込むのもごめんではあったものの、身体だけの関係だなんて。 そんなこと、思ったことも、なかったのに。 「ごめん土方時間ちょうだい。お前とのことちょっと、自分ん中で折り合いつける時間が必要そうだ。しばらく距離置いてみようぜ、その間に俺またお前に喜んでもらえるようなプレイも考えておくから。 恥ずかしかったり痛かったりするやつがいいんだよな、お前?……ほんとはもう、そんなことしたくねーんだけどね!」 「ぷぁっ、お、おい、万事屋!」 ようやく俺の口を解放した万事屋は、慌ただしくベッドから滑り降りて下着を履いた。 そして脱ぎ散らかした服をかき集め、パンツ一枚のままバタバタと部屋の出入り口へ小走りに駆けて行った。 「……っ!」 ちょっと待て、待ってくれ、何を話せばいいのかも分からないが、とりあえず俺の話を聞いてくれ。 あいつを引き留めるために、俺も急いで起き上った。 しかしその瞬間無理に開かれていた股関節に鈍痛が走り、一拍動きが遅れてしまう。 それでも、とベッドの上から右腕を伸ばしてみるも、指先はあえなく空を切り、その勢いを殺せぬまま俺は前のめりに倒れこんでしまった。 視界の外から、がちゃり、とドアノブが捻られる音がした。 「――な、土方。気が向いたら、また俺とデートしてくれよ。1ヵ月くらい前にも、一回してくれただろ。お前はかったるかったかもしれねぇけど、俺は……その、割と、楽しかったから。……じゃーな、色々整理ついたらまた、電話するわ」 そしてぱたりと、ドアが閉じられる音が続いた。 「馬鹿かてめーは。俺も楽しかったわ。見てりゃ分かんだろ、そんくらい」 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1460031797/168
169: 名無し草 (スプッ Sdb8-xmDs) [] 2016/04/08(金) 06:04:12.44 d ベッドの上で思わず漏らしてしまった呟きは、誰に聞かれることもなく暖房の音に紛れて消えた。 「……、」 現状を維持したいなら俺はあいつを追うべきではなかったし、あいつの気持ちの整理が付くまでこちらから連絡を取るべきでもなかった。 そうすれば全てが丸く、俺が望む形に収まるのだ。適度な距離に適度な理解。 のめり込み過ぎてはいないものの、情が全くないわけでもない、今までそうであった筈の関係に。 だがそれは、俺ともっとどうにかなりたいのだと。 半分泣いてるような面で告白してきたあいつの気持ちを無碍にしてまで、維持しなければならないものであるのだろうか。 あいつにのめり込むのが怖いだなんて理由であいつを傷付けっぱなしにするくらいなら、ちょっとくらいのめり込んでしまってもよいのではないのか。 そんな理由のせいであいつを追うこともできないのなら、そんなものなど捨ててしまってもよいのではないか――そんなことを、どうやら俺はそれなりに、本気で思ってしまっていたらしかった。 怖いけれど。これ以上あいつとの距離が狭まり過ぎて、頭の中があいつでいっぱいになってしまうかもしれないってのは、とんでもなく恐ろしいことではあるけども。 でもあのちゃらんぽらんをあそこまで追いつめてしまったのは他ならぬ俺なのだ。 俺なのだ。 申し訳ないのだと思ったし、後悔をしてもいた。そんな感情を抱いてしまう程度には、俺だってあいつのことを―― 「……万事屋、……」 いい加減、腹を括る時がやってきたのかもしれない。 ここまでぐだぐだとあいつのことばかり考えちまってるんだ、こんなもんもうとっくに、のめり込んじまってるようなものだろうに。 俺はベッドに俯せに寝転がり、とりあえず一服、煙草を吹かした。 今からでもあいつを追ってみようかな、と思わないでもなかったのだが、そこは勇気の不足やらなんやらの問題で実行に移すことはできなかった。 あいつが俺とのことに折り合いをつける時間を欲しがったように、俺にだって心の準備をするための時間が必要だ。 そもそもその晩のうちにあいつを追うことができるような俺であったなら、端からこんなことになどなっていなかったに違いないのである。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1460031797/169
170: 名無し草 (スプッ Sdb8-xmDs) [] 2016/04/08(金) 06:06:27.02 d そんなこんなで、現在である。 時刻は午後6時少しすぎ。こんな時に限って攘夷浪士どもは大人しく、接待の予定なぞも入っていない。 近藤さんまでもが「休める時に休んでおけよ」と変に気を回してきて、夜に片付けようと思っていた書類を取り上げていってしまう始末だ。今夜の俺は、もの凄く暇なのだった。図ったように、お誂え向きに。 「……」 今日一日、俺は何度かあいつに電話をしようと試みた。試みただけで、まだ実際に掛けられてはいなかった。 いくらディスプレイに表示された番号を睨み付けたところで勝手に電話は繋がってくれないし、都合よくあっちから掛かってくるということもない。 つまりあいつと話そうと思うなら、俺は俺の意志で通話ボタンを押さなければならないのだ。 しかしこれが中々勇気がいる。上手くあいつと話すことができるのだろうか。余計に話が拗れてしまうのではないだろうか。 胸の中を占める何とも言えない不安たちが、通話ボタンの上に乗っかった指先を鈍らせてしまっていた。 だがいつまでもこんなことをしていても仕方がない。時間が解決してくれるようなことでもないのだ、腹を括ると決めただろう、土方十四郎。 俺は目を瞑り、渾身の力で通話ボタンを押し込んだ。 「……、」 無機質な通話音に緊張を煽られながら、数度、生唾を飲み込んだ。早く出ろ、いい加減口から心臓が飛び出してしまいそうだから早く出ろ。 そう念じながら待って、待って、とにかく待って――何故だか正座をして数分間、待ち続けていたのだが、通話音が途切れることはなかった。結局あいつは出なかったのだ。 避けられているのだろうか。だがあの家の電話にはナンバーディスプレイなんて洒落たものは付いていなかった筈であるし、あいつが出なかったところでメガネなりチャイナなりが受話器を取るのだろう。 それもないということは、きっとあそこには今誰もいないのだ。珍しく、真面目に働いているのかもしれない。 それとも時間的にもう店を閉めて、飲みに出ていってしまったのだろうか。 「……っ」 電話が繋がらないというのなら、あとはもう―― http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1460031797/170
171: 名無し草 (スプッ Sdb8-xmDs) [] 2016/04/08(金) 06:07:11.60 d 「あれ、副長お出掛けですか?飲みにでも?いいなぁ、たまには俺も連れてってくださいね」 「ああ?あぁ……連れてって欲しけりゃちったぁ真面目に働けよ」 「俺はいつだって真面目ですよ。……ていうか副長、今から行くのって本当に飲み屋ですか?」 「は?」 「なんか、出入りの時みたいな顔してますけど」 「ああ……まぁ、似たようなもんだな」 「休みの時にまで無茶なことばっかせんでくださいよ」 「しねーようるせーよ」 「あいてっ」 会いに行くしか、ないではないか。 最近小言がうるさい山崎にチョップを食らわせてから、俺は屯所を飛び出した。 あいつが家にいる保障などなかったが、それでも大人しく何もせずにいるのは嫌だった。 昨日のあいつがみっともない顔でみっともない告白をしてきたように、今夜は俺が、みっともなくてもいいからあいつを求めたかったのだ。 よっぽど焦っていたのだろうか。なにやら今夜はいやに寒いな、あれ、そういえば俺襟巻巻いてないぞ――ということに気付いたのは、かぶき町のけばけばしいネオンが遠目に見える頃合いになってからのことだった。 「あ」 それからほんの数分後。 むき出しの首を庇うべく上着の衿を寄せ、背中を少々丸めながらかぶき町一番街の門を潜ったところで、俺は人混みの中でも一際目立つ銀色の頭を発見した。 いかにかぶき町であるとはいえ、あんなふざけた頭をしている輩はそうそういない。 もちろん、俺が今から会おうと思っていた万事屋である。 手にはぱんぱんに食料が詰まっているとおぼしきビニール袋を提げられていて、両隣りにはメガネとチャイナ。 いかにも買い物帰りといった風情であった。 珍しく小金が入ったのだろうか、いや、今はそんなことどうでもいい。 「あっ」 俺があいつを見つけたように、あいつも人混みの中から俺を見つけたようだった。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1460031797/171
172: 名無し草 (スプッ Sdb8-xmDs) [] 2016/04/08(金) 06:07:51.83 d 言い逃れがきかないくらいばっちりと、目が合った。その途端、反射のようにごくりと一度、喉が鳴る。 心臓の音もうるさくて、多分頬はそこそこ赤くなっている。顔が熱いから、鏡を見なくても分かる。 一度深く息を吸ってから、俺はあいつに向かって片手を挙げた。 そして万事屋、と、あいつを呼――ぼうと、したのだが。 「――!?」 「あ、ちょっと銀さん!どうしたんですか急に!」 「ほっとけヨ新八、どうせトイレアル」 あいつはひらりと身を翻し、そのまま目にも止まらぬ速さでどこぞへと走り去っていってしまったのだった。 あまりにも豪快に、傷付いただなんて思う暇もなく、俺は避けられてしまったのである。 「あれ、土方さん?珍しいですね、こんな時間に会うなんて」 「……速くね?人間ってあんな速く走れるもんなの?」 「へ?ああ……あの人はほら、身体しか資本がない人ですから。あれくらい動けてくれないと困るっていうか」 「ああ……」 去ってゆく背をなすすべなく見送ることしかできなかった。今からではもう、追っても追いつけないに違いない。 「……今から夕飯か?」 「はい、今日は鴨鍋です」 「肉か。珍しいな」 「はい肉です、うん週間ぶりのお肉です。久々に依頼が入って、さっきまで働いてたんですよ。で、その場で依頼料ももらえたので」 メガネは頬をほんのりと上気させ、ふへへと口元を緩ませた。 脳内ではもう既に、うん週間ぶりの肉にありついているのだろう。 奴らの極貧ぶりはとっくに知っていたことではあるのだが、目の前でこんな顔をされては改めて不憫にも思えてくる。たらふく食って大きくなれよ、メガネ小僧。 「オマエ、銀ちゃんに用があるんじゃないアルか」 「へ?」 「あ、ちょっと。神楽ちゃん」 小さな子供の甘ったるい声は、しかし妙にドスが聞いていて重々しい。 思わず声がした方を見てみれば、そこには掬い上げるようにじっと俺を見上げるチャイナがいた。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1460031797/172
173: 名無し草 (スプッ Sdb8-xmDs) [] 2016/04/08(金) 06:08:35.00 d なにやら慌てた様子のメガネに一瞥をくれることもなく、チャイナはずい、と俺との距離を詰めてくる。 「昨日銀ちゃんと会ってたの、オマエなんだロ」 「え?あ、ああ、まぁ……うん……?……なに、あいつわざわざ俺と会うとか言って出掛けてんの?」 「んなもんわざわざ聞かなくても分かるアル。銀ちゃん、めっちゃうきうきしてたもん。オマエと会う時はいっつもそうヨ。ダダ漏れアル」 チャイナはやれやれと言わんばかりに肩を竦め、メガネは曖昧にははと笑った。 「いつもは帰ってきてからもふわっふわのうっきうきヨあの天パ。よっぽどオマエと会うのが楽しいんだロナ。でも昨日は死ぬほどしょんぼりして帰ってきて、今日も一日中へこんでたアル。 オマエ、とうとう銀ちゃんのことふったのか?新八もそうなんじゃないかって言ってたヨ」 「あ、い、いや土方さん、別に銀さんは何も言ってませんからね。誰が好きだとか誰と会ってるだとか、そういうの一言も言ったことないです。ダダ漏れのもろバレだから勝手にこっちが察しちゃっただけで」 「そ、そうか……そっちの方がなんかアレなようにも思うんだが……」 というかこんな子供たちにまで察せられてしまうほどあからさまだったあいつの好意に、どうして当の俺が気付くことができなかったのか。 もしかすると一番アレなのは俺か、俺なのか。 「どうせフォローしにきたんだロ」 チャイナの声はいやに断定的だ。俺がそうしに来たのだと疑っていないようで――反面、頼むからそうであってくれと懇願しているようでもある。 挑発的に俺を睨みつける双眸は、どことなく必死であった。 よくよく見てみれば、隣りのメガネも似たような目で俺を見ている気がしないでもない。 「そう、だな」 この子供たちはあいつをマダオダメ人間働けと日常的に罵る裏で、なんだかんだ心からあいつを慕っているし、調子を崩せば心配もする。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1460031797/173
174: 名無し草 (スプッ Sdb8-xmDs) [] 2016/04/08(金) 06:09:11.63 d あいつの傍にはそんな人間たちがちゃんといてくれるのだというその事実が、何故だか無性に嬉しかった。 この気持ちはどこから来るものなのだろう――そういうことに決着をつけるためにも、俺は、 「……会いに来た。あいつに」 俺がそう言うと、チャイナとメガネはあからさまではないものの、しかしほっと息を吐いた。 うっかり口の端が緩んでしまいそうになるのを、唇を噛んでやり過ごす。 「でもお前ら、今日は鍋なんだろ。楽しみにしてたんじゃねぇのか」 「鴨は逃げませんよ。明日まで持ちますし」 「デモナー、デモナー、わたし今日は鍋食べる気満々だったからナー。カモがダメなら代わりにカニでもいいから食べたいナー、チラッ、チラッ」 「たかり方まであいつに習ってんのかよ、てめーは。ほら」 「キャッホー!!」 「なんかすみません、たかっちゃったみたいで。ていうかたかっちゃって」 カニでも牛肉でも好きなものをたらふく食べさせてやれる程度の賄賂を渡すと、メガネは申し訳なさそうに頭を掻きながらもがっしりと札を掴み、チャイナは両手を挙げて飛び跳ねた。 「持つべきものは高給取りの知り合いネ!銀ちゃんとは大違いアル!この前トシの写真見ながら名前呼ぶ練習してるの見ちゃった時、銀ちゃんはたったのプリン3個でわたしを黙らせようと、」 「こ、こらァ神楽ちゃんんん!プリン貰っちゃったんでしょ!なにすべっと一番ばらしちゃいけない人にばらしてるの!それにあの甘党にとっちゃプリン3つは銀貨3枚分に相当するんだから、あんまりけなしちゃいけないよ」 「そっかー、それもそうアルな。ごめんネ銀ちゃん」 「えっ、え、なに?お前らの言ってること何一つ理解できないんだけど」 銀貨3枚分?日本円で換算してくれねぇといまいち価値が分からねぇよ?いや、いやいやそっちの方は心底どうでもよくて―― 「名前呼ぶ練習って、」 「ナニ?ナニソレ何の話?わたしそんなの知らないアルよ?それよりオマエはさっさと家に行くヨロシ。わたしたちはカニアル!行くヨ新八、ぷりっぷりのカニがわたしたちを待ってるゼ!」 「それじゃあ土方さん、銀さんのことよろしくお願いしますね。あの人、今日1日ずっと心ここにあらずって感じで……あの人があんなんじゃ、ぼくらも調子でませんから。カニ、御馳走様です」 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1460031797/174
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