[過去ログ] 【コスパ】DALI OBERON/ZENSORシリーズ 13【未知】 (1002レス)
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823: 2019/10/24(木)17:17 ID:IRQyFeX2(4/8) AAS
「今度はどんな特殊プレイしに来やがった! 他所でやれ、他所で!」
「ひぇーー!」
犬になりたい願望の特殊性壁野郎が、水柱を上げて現れた俺に腰を抜かす。
「違うんですよ、今度は違うんですー! お願いですから呪わないでくださーい!」
両手を胸の前で組んで懇願する犬野郎の後ろには、剣の柄に手をかけた武装集団がいた。
824: 2019/10/24(木)17:19 ID:IRQyFeX2(5/8) AAS
あまり手練れはいないな。田舎の小役人が率いる程度の兵だ。
比較的ましな足運びで、髭を整えた偉そうな兵が寄って来る。が、王宮にいる兵とは雲泥の差だ。
「貴様が村長子息の言う、この泉に巣食う精霊か?」
「俺はお前たちの暮らしに関知しない。好きに呼べ。だが、敵すると言うなら相応の覚悟を持つがいい」
水を波立たせて威嚇すると、髭の兵士は咳払いをする。その足元で、ドクダミを横目に見る犬野郎。お前、村長の息子かよ、この不倫男が。
825: 2019/10/24(木)17:20 ID:IRQyFeX2(6/8) AAS
「ごほん、我々は隣国からの要請で、こちらに逃げ込んだと思しき罪人二名を探している。一月ほど前、子供が二人、この辺りにやっては来なかったか?」
「対価も提示せずに物を聞くとは、答えた後でその心臓を寄越せと請求されても文句は言えないぞ? 話をしたければ、相応の礼儀を弁えた魔法使いでも連れて来い」
俺の脅しに怯んだ髭の兵士は、泉の中に戻る俺を引き留めようか逡巡して、やめた。
826: 2019/10/24(木)17:20 ID:IRQyFeX2(7/8) AAS
結界に戻らず水面近くに潜んでいると、どうやら上からの命令で適当に足を運んだだけらしい。一カ月も前に逃げ込んだ子供など、すでに死んでいるだろう、と。
ついでに、犬野郎が泉の精の機嫌を損ねて、嫌な呪いをかけられたという話をその場で吹聴したため、兵士たちは足元のドクダミを警戒しつつ、足早に去って行った。
今回だけは褒めてやる、犬野郎。
827: 2019/10/24(木)17:22 ID:IRQyFeX2(8/8) AAS
伍章
日々の予定が決まっていると、一日一日が早く感じる。
ヘンゼルとグレーテルを拾って、もう三年の時が経っていた。
「町まで足を延ばして正解だったな。いい買い物ができた」
買った物品を腕に抱え、俺は一般人風な恰好で森を歩いていた。
828: 2019/10/24(木)17:24 ID:xQl3O6fk(1/8) AAS
適当に髪括って出かけようとしたら、グレーテルに止められ、髪を梳かれてお手製の服を着せられたんだ。
この三年でグレーテルの家事能力は上がり、魔法との併用も慣れて俺のほうが手伝いに回ることが多くなっていた。
829: 2019/10/24(木)17:25 ID:xQl3O6fk(2/8) AAS
「あら、そこの方、こんな所で迷ったの…………え? 泉の方?」
「誰だ? こんな所に赤子連れでって…………あ!」
泉を前に声をかけられたと思ったら、お前、犬野郎と不倫してた偽清楚娘!
おいおい、いつの間に母親になってんだ? それ、犬野郎の子供じゃないだろうな?
830: 2019/10/24(木)17:26 ID:xQl3O6fk(3/8) AAS
「こほん、ご心配のところ申し訳ないですけど、この子は私と夫の子ですから」
「おう、そうか。あの犬野郎とは別れたんだな?」
「えぇ、趣味は合ったんですが、既婚者でしたし。あの時、あなたに自分に正直に生きろと背を押してもらえて、手を切る決心がついて」
三年の間にいい人見つけて、無事出産したらしい。
赤子を見下ろして優しく笑ってる顔見ると、ちょっといいことした気になるな。
犬野郎を甚振ってた時より、ずっといい笑顔だと思うぞ。
831: 2019/10/24(木)17:27 ID:xQl3O6fk(4/8) AAS
「それで、わざわざ報告に来てくれたのか」
「はい、お礼を言いたくて。本当にありがとうございました」
「礼を言われるようなことはしてない。何言っても聞かない奴はいるし、忠告しても実行できない奴もいる。そうして幸せを手にできたのは、お前自身がそうなるよう努力した結果だ」
まぁ、あの特殊プレイするような性格で、村一番の清楚を押し通した豪胆さなら、別方向に努力すれば、全うな幸せ手にできて当たり前だろうけど。
832: 2019/10/24(木)17:29 ID:xQl3O6fk(5/8) AAS
なんて思って赤子から顔を上げると、偽清楚はすごく驚いた顔していた。
「なんだ?」
「いえ、なんだか、普通の人みたいで…………」
いや、うん。
普通に俺、人間だけどね。
お前らが勝手に泉の精とか言ってただけだからね。
「ずるずるの髪とか、陰気なローブがないと、なんて言うか、儚い感じのいい男だったんですね」
「お前、それ罵ってるのとあんまり変わらないからな? これは、町に行くために装っただけだ」
「買い物ですか? 何をお求めに?」
「酒」
省1
833: 2019/10/24(木)17:30 ID:xQl3O6fk(6/8) AAS
「別に普段から飲んでるわけじゃないからな。ちょっとした祝いがあるだけだ」
「まぁ、だったら良かった」
良かった? 祝いにお前関係ないだろ。
「お礼と、一つお願いがあって来たんです。どうか、お祝いのお裾分けをくれませんか?」
「その妙に物怖じしないところは変わってないな。願いを聞くかどうかは内容次第だ」
「ふふ、簡単なことです。どうか、この子に名前を付けていただけませんか? 泉の精であるあなたのお導きで生まれた子です」
834: 2019/10/24(木)17:30 ID:xQl3O6fk(7/8) AAS
う、そういう言い方されると、無碍にできないじゃないか。
偽清楚はしたり顔で笑ってる。こいつ、断りづらいことわかってて言ったな?
「変な名前でも文句言うなよ」
「いえ、響きが悪かったら言いますよ。あと、悪い意味でつけるとか、嫌がらせはやめてくださいね。私の子の一生に関わるんですから」
マジトーンで念押された。
835: 2019/10/24(木)17:31 ID:xQl3O6fk(8/8) AAS
「お、おう。俺も名付けなんて人間相手には初めてだからな。指摘があったら聞こう」
「人間相手には? では、人間以外に名付けたことがあるんですか?」
「あぁ。随分前になるが、人間と結婚するために名が欲しいと言った水の精がいてな」
そう言えば、この偽清楚と初めて会った日も、水の精のこと思い出したな。
836: 2019/10/24(木)17:32 ID:x62FH3Jl(1/7) AAS
「誘惑するはずの男に恋をして逃がしたら、逆に男のほうに押し切られて結婚することになってな。水の精からの求婚の試練なんかもあって、男に協力したら、水の精から人間としての名づけを頼まれた」
「あ、面倒見がいいのって、性分なんですね。その口の悪さと言葉のきつさをどうにかすれば、もっといい噂も流れるんじゃないですか?」
別になんと噂されようとどうでもいいって。
誰かに期待するなんて、後が怖いじゃねぇか。
837: 2019/10/24(木)17:33 ID:x62FH3Jl(2/7) AAS
「それで、なんと名付けたんです?」
「あまり捻りもないぞ? 水の精を表す古語から文字ってナイアとつけた」
「まぁ! でしたら、この子にもその名を授けてください。種を越えた運命の出会いができそう」
そう言えば性別聞いてなかったけど、反応からして女の子か?
てか、偽清楚。なんかロマンス的な話好きなのか? 趣味あれなのに?
838: 2019/10/24(木)17:34 ID:x62FH3Jl(3/7) AAS
「まぁ、待て。祝いのついでなんだ。どうせなら、この子だけのたった一つの名を贈ってやる。世界でたった一人の存在なんだからな」
「…………ありがとう、ございます。あの、一つ聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
そんな意外そうな顔して?
839: 2019/10/24(木)17:34 ID:x62FH3Jl(4/7) AAS
「どうして、こんな人の通わない場所に一人でいるんですか?」
「今は、一人じゃないさ」
「そう、ふふ、なるほど。そうですか」
すごく納得した顔で笑われたけど、お前と会った時はまだ一人だったんだぞ。
けど、今は一人じゃない。
偽清楚の娘に名づけをして、俺は泉の中へと帰った。
白い砂の上に足を降ろすと、手に斧を持ったヘンゼルが突っ立ってる。薪割り日課だし、別におかしなことではない。
840: 2019/10/24(木)17:35 ID:x62FH3Jl(5/7) AAS
ないけど、なんでそんな戸惑った顔してるんだ?
「どうした、ヘンゼル? あ、薪にする木の乾燥失敗でもしたのか?」
こいつは相変わらず火の魔法使おうとして小火を起こす。
木を乾燥させるには火の魔法より、水の魔法使えと言っていたのに。
身長は俺に追いついて来たし、筋肉のつきは正直こいつのほうがいい。けど、聞かん気の強い子供な部分は変わってないな。
841: 2019/10/24(木)17:35 ID:x62FH3Jl(6/7) AAS
「…………違う。さっきの、女のひと」
「あぁ、知らない奴がいて驚いたのか。安心しろ。別に危害を加えてくるような手合いじゃない」
三年前にヘンゼルとグレーテルを探しに兵がやって来た。
あの時の怯えようを思い出せば、ヘンゼルのぎこちなさもわかる。
842: 2019/10/24(木)17:36 ID:x62FH3Jl(7/7) AAS
「もし危害を加えに来ていたとしても、前に言ったとおり、俺が結界を解かない限りここには入れないんだ。怖がるな」
「べ、別に、怖がってるわけじゃ!」
「はいはい。この結界の強固さは、未だに結界壊せないお前が一番よくわかってるよな」
「はぁ!? 俺だって、魔法の腕は上がってるんだ! こんな結界くらい!」
言って、ヘンゼルは斧に魔力を流して自分の身長くらいの刃を生成する。
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