[過去ログ] 【コスパ】DALI OBERON/ZENSORシリーズ 13【未知】 (1002レス)
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781: 2019/10/24(木)13:09 ID:klH3i1Qp(3/5) AAS
「ふ…………馬鹿な子。犬のくせにまともに走れもしないなんて」
「いや、本当にプレイは他所でやってくれ」
「あ、つい」
ついってことは、今の素?
本当になんで村一番の清楚なんて無理なキャラ付けしたんだよ。
そんな二人は、結局泉の周りで三回こけて帰って行った。
なんでだよ! 他所でやってくれ!
「ふぅー…………。年に一回はあーいう変なの来るな」
食糧調達のため、ほどほどに人里に近い場所を選んだのがまずかったのか。
綺麗な水があるせいか、人目をはばかりたい奴らが引き寄せられてくる。
省11
782: 2019/10/24(木)13:17 ID:klH3i1Qp(4/5) AAS
生きた感情が、一番怖い。
俺はロッキングチェアに戻ると、目を閉じて嫌な記憶を奥底に沈める。
魔法を使うための初期技能、瞑想だ。
感情に左右されるようじゃ、魔術師としては三流。
だから俺も、あの冤罪劇では、見苦しく言い訳せず、速やかにあの国を後にした。
ま、冤罪着せて来たのが王子だったし、それが国の決定だったんだろ。
じくじくと胸の中に広がりそうになる感情を、瞑想で平らにならしていると、またも水を揺らす音がした。
「今度はなん…………?」
省8
783: 2019/10/24(木)13:18 ID:klH3i1Qp(5/5) AAS
「嘘だろ!?」
慌てて結界を開き、水と共に招き入れる。
下は砂とは言え、俺が踏み固めてしまっていた。
「やべ!」
自分の考えのなさに舌打ちしても遅い。
俺は慌てて子供二人の落下地点に飛び込んだ。
「ぐえ…………!」
「ぐっ!?」
「ぷは!」
省3
784: 2019/10/24(木)13:24 ID:PthJTN3Q(1/2) AAS
つまんねーよ
785: 2019/10/24(木)13:24 ID:PthJTN3Q(2/2) AAS
他でやればか
786: 2019/10/24(木)13:59 ID:XouMB5KW(1) AAS
異端魔術師、泉の精を詐称する
泉に降って来た子供二人を抱えて、俺は動けなくなっていた。
どっちも苦しげに身を丸めて咳き込んでる。
たぶん、俺を敷いてることに気づいてない。そして地味に肘が俺の腹に刺さっていることも。
こんな状態じゃ喋りかけても聞ける余裕ないだろうしな。
俺は泉の水面を見上げて、覗き込む者がいないことを確認した。
どうやら子供たちは二人だけで来て、二人して落ちたらしい。
未だに、硬くお互いの手を握り合ったままだ。
ずぶ濡れの二人は、同じ髪の色によく似た輪郭をしている。きっと兄妹なんだろう。
じっとりと俺に染み込んでくる水。同時に、確かな体温も服の上から染み込んで来ていた。
省8
787: 2019/10/24(木)14:07 ID:FiAs1wMo(1/10) AAS
兄は妹を守るように抱きかかえると、ようやく俺の上からどいてくれた。
妹も同じ青い目をしており、怯えも露わに俺を見ている。
そんな怖がるほど陰気かね?
王宮にいる間は身嗜みにも気を付けていたけど、今は一人だし、髪も服もずるずるじゃ、幼女からすれば不審者か。
「勝手に人の住まいに侵入しておいて、誰とはとんだ不遜さだな。躾のなっていない子供は嫌いだ」
ここは俺の家!
そこはしっかり主張させてもらうぞ。
と思ったら、兄のほうがすごい勢いで睨んで来た。
幼さの残る顔は十幾つかと言った年齢。
物事の分別がついていていい年齢だと思うが?
省13
788: 2019/10/24(木)14:14 ID:FiAs1wMo(2/10) AAS
なんて考えたら、兄妹から削ぎ落されたように表情が消えた。
あ…………これは、やばい。
「死のうとしたのに、なんでお前みたいなのがいるんだよ」
あー! 自殺志願だったよ!
若すぎる身空で何やってんだ!
おい、本当にこいつらの親何処だよ!?
「馬鹿なことを言うな。俺が何処を住処にしようと関係ないだろう。その時の勢いで死ぬにしても場所選びが最悪だ。そんな奴はどうせ死ねない。さっさと家に帰って寝ろ」
親元に帰れと言ったら、妹のほうの顔が無表情な中に悲壮感漂う空気を醸し出した。
そんな妹を腕に抱いて、兄のほうは俺に敵意に満ちた目を向けてくる。
省10
789: 2019/10/24(木)14:16 ID:FiAs1wMo(3/10) AAS
狩られるのは市井にいる権力者に与しない魔法使いたち。つまりは、権力者による魔法の囲い込みの一種だ。
もちろん、魔法使いも馬鹿じゃない。俺みたいに隠棲する奴もいる。追っ手をかけられても逃げ切る奴もいる。
ただ、この兄妹の母親は、子供二人を連れて逃げ切れなかったんだろう。
そして残された魔女の子供二人。
世を儚む理由、ばっちり揃ってんじゃねぇか。
「こんな世界、生きるなんて願い下げだ。魔女の子なんて言われて、見世物みたいに殺されるくらいなら、俺は、自分の死にざまくらい、自分で…………」
「無理だな」
「なんだと!? あんな残虐な人間たちの中でなんか!」
「少なくともお前らの母親は本物の魔女だ」
「お母さんは、いつも優しい普通のお母さんだったよ!」
省11
790: 2019/10/24(木)14:18 ID:FiAs1wMo(4/10) AAS
そんなことを考えながら、俺は指を一つ鳴らして魔法を使った。
兄妹を受け止めた時に濡れたローブが不快で、乾かしただけ。ついでに濡れ鼠二人も乾かした。手間は変わんねぇからな。
「ふ、服が…………? 今の、魔法か?」
「他に何があるんだ?」
兄のほうが自分の体をまさぐると、妹は転がり落ちるように兄の腕から出て来た。
「どうして? 杖は、呪文は?」
「俺には必要ない」
他の魔法使いならそういう触媒が必要になるけど、俺は天才だからな。
昔からそういうのがいらない。頭の中で思い浮かべるだけでいい。
妖精や精霊なんかの魔法の使い方だ。俺は自然と身に着けたけど、他の魔法使いたちはやろうとしたら何十年か研鑽を積まなきゃいけないらしかった。
省11
791: 2019/10/24(木)14:19 ID:FiAs1wMo(5/10) AAS
「泉の精…………? 水に関係する精霊は、女のはずだろ」
「お前、妙なこと知ってるな。だが、それは水から生まれた人型の精霊に限定だ。別に生まれた後、泉に住みついたなら女じゃなくてもいるぞ」
大抵が女だけどな。昔関わった水の精は、人間の男に惚れられるほどの美貌を持っていた。本当ならそのまま男を水の中に攫う習性の精霊だったけど、まぁ、男のほうもイケメンだったんだよ。
殺さずに男を帰したら、男のほうが水の精に猛アタックかけてた。
恋は盲目と言うが、あのイケメン人の話聞かないくらい猛進してたから、何度か魔法で爆破したな。あれも今じゃいい思い出だ。
「本当に、泉の精さん?」
「おい、こんな陰気で胡散臭い奴の言うこと信じるな」
「でも、触った時の冷たさ、人間じゃないよ」
悪かったな、人外疑うほど冷たくて!
昔から体温低いんだよ! その上今じゃ水中暮らしだから、体温も上がらないんだよ!
省13
792: 2019/10/24(木)14:20 ID:FiAs1wMo(6/10) AAS
「お、お兄ちゃん…………」
「だ、大丈夫だ。お前は、俺が守るから」
一緒に入水自殺しようとしといて何言ってんだよ。
その気概はもっと早く発揮しとけ。
「それで? 名を寄越すなら、俺の召使として生かし、働きによっては泉から出してやるが?」
「…………わかった。俺の名は…………ヘンゼル。こっちはグレーテ、ルだ」
はい、偽名いただきましたー。
魔法使い舐めんなよ。
793: 2019/10/24(木)14:21 ID:FiAs1wMo(7/10) AAS
3章(タイトルネタ切れ)
仮名、ヘンゼルとグレーテルを拾った俺は、さっそく二人をこき使うことに決めた。
ま、ご主人さまに偽名名乗るなんて舐めた真似したお仕置きだ。
俺が本物の精霊だったら、今頃問答無用で呪われてたぞ。
「寝る間も惜しんで俺のために働け! それがお前たちの役目だ!」
それっぽく手を広げて命じてみたら、兄ことヘンゼルに冷めた視線を返された。
妹ことグレーテルは、何度も瞬きをして首を傾げる。
「働くって、何をすればいいんだ? こんな水の中で、俺たちにできることがあるとは思えない」
「大抵のことは魔法でどうにでもなるがな。ちゃんとお前たちように仕事は考えてやる」
「今から考えるのか」
省2
794: 2019/10/24(木)14:21 ID:FiAs1wMo(8/10) AAS
というところで、ちょっと魔法を使う。これは俺が考えた魔法で、相手の基本的な情報を読み取れるというもの。
王宮で人の名前とか血縁関係とか覚えられなくて作った魔法なんだよな。
えーと、ヘンゼルの本名はヨハネス=ドルフ。グレーテルはマルガレーテ=ドルフ、ね。
ドルフってのは家名じゃなくて、村を表す名前だ。つまり村人っていう身分を表す。
が、気になる項目が魔法にある。血筋だ。
こいつら、水の精とのハーフだな。水の精が女って知ってたのは母親が水の精だったからか。けど兄妹の反応からして、正体は秘密にしてたんだろうな。
水の精は誘惑の性質があるから、たまに人間の男と結婚する奴いるんだよなぁ。
「いつまでも座り込んで怠惰に耽るな。立ってこっちにこい」
「なんだその言い方!」
「あの、泉の精さま!」
省9
795: 2019/10/24(木)14:22 ID:FiAs1wMo(9/10) AAS
「買い取ってって、金があるのか…………」
おっと、そこで俺への不信深めるのかよ。
「お兄ちゃん。こんな水の中におうち作れるなんて、すごい精霊さまだよ、きっと」
「魔法の腕は、確かみたいだけど…………」
うわー、背中に猜疑の視線が突き刺さるー。疑り深いな、ヘンゼル。
いや、こうしてなきゃここまで妹守ってこれなかったってことか?
で、行き場失くして、このままじゃ死ぬってわかったから、命の終わりは自分で始末つけようって? ふざけんな!
死んだら負けなんだよ。
国が相手で歯が立たなくて、強がってその場を去ることしかできなくてもな、自分を陥れた奴らの思うままに死んでやる必要なんかないんだ。
俺はちょっと、復讐とか見返しやるなんてやる気起きない年齢だけどさ。お前らはまだ子供なんだ。今から巻き返しの未来を見据えて生きていいはずだ。
省8
796: 2019/10/24(木)14:23 ID:FiAs1wMo(10/10) AAS
「そんなみすぼらしい体では、身体能力の伸びも見込めないだろう。少しは俺の役に立つように魔法でも覚えてみるか? まぁ、覚えられるだけの頭があったらの話だが」
「はぁ? 言ったなてめぇ…………」
いや、本当、ヘンゼルくん? なんでそんなに喧嘩っ早いの?
睨み殺しそうな顔するなよ。教える気が失せるから。
俺、小さい時から天才って持て囃されたから、肉体言語とか嫌いなんだよ。
「お兄ちゃん、泉の精さまにそんな口きくのは」
グレーテルはいい子だなー。
「やるなら魔法を覚えてからでいいでしょ?」
省9
797(1): 2019/10/24(木)14:28 ID:8POCU8vg(1) AAS
外部リンク[html]:hissi.org
798: 2019/10/24(木)15:21 ID:EIgWywm0(1/13) AAS
「できないことを仕事としてやらせるなんて、卑怯だぞ!」
「ほう? こんなこともできないのか。では、手本を見せてやろう」
俺はヘンゼルの手から斧を取ると、木を一本土台代わりの切り株に置く。
で、魔力を流して一振り。
カッコーンといい音を立てて、木は二つに割れて飛んだ。
やべ、ちょっと力んでやりすぎた。
薪割りって、一発で両断するもんじゃないんだよ。色々危ないから、斧刺して、もう一回木ごと打ちつけて割るべきだ。
そうしたらできた薪も今の俺みたいに飛んで行かない。
「とまぁ、ここまでしろとは言わん。普通に薪割りをしていろ」
俺から斧を受けと取ったヘンゼルは、もう一度刃がないことを確認している。
省12
799: 2019/10/24(木)15:22 ID:EIgWywm0(2/13) AAS
そこ、怯えるんじゃないの?
うーん、この子は良くわからんな。ヘンゼルくらい鼻っ柱が高いなら、俺も自分の子供の頃に覚えがあるから扱いやすいんだけど。
「やります! お仕事、やらせてください!」
なんでかやる気満々になった。
えー? これって簡単な炊事やってもらおうと思ってたんだけど、意気込みを買ってちょっときついことやらせるべき?
「グレーテ、ル! こんな変質者みたいな奴に何を言ってるんだ!」
「お前こそ何言ってるんだ、こら! 誰が変質者だ、誰が!」
腹立ったので、ヘンゼルには作る薪を四本追加した。
家の中に入っても、ヘンゼルは窓から室内を窺ってくる。
変質者みたいなことはしねーよ!
省6
800: 2019/10/24(木)15:24 ID:EIgWywm0(3/13) AAS
>>797
「もっとドロドロの薬品とか、なんの痕かもわからない染みとか」
「何を想像していたんだ、何を」
ちょっと想像力逞しすぎじゃないか?
「魔法使いなら怪しい本とか、大きな鍋とかがあると聞いてたんですけど。泉の精さまは違うんですね」
「そうした研究をする者もいるが、研究とは求めるもののある者がやることだ」
「泉の精さまには、求めるものはないのですか?」
「求めて得たものが、永遠に己の手の内にあるわけではない。求めることは、何かに束縛されることだ。得るだけ無駄だ、甲斐もない。そう知っているから、最初から求める気も起きない」
期待に応えようと王宮に上がって、地位を得て、失った。
あの国から持ち出す物などなくていい。
省2
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